運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑤　作：はにわ

　
「ーーよし、俺のターンの続き、行くぜ！」

透矢のターン。
既にカードをドローしているため、そのままメインフェイズへと移行する。

（お兄ちゃんの場にカードがない・・・。
向こうには『ミサギ』がーー）

千鶴はまず場の状況を見定めた。
デュエル・キラーの場には強敵である『ミサギ』に加え、厄介な効果を持つ永続魔法『ウインドミルレイジ』、そして何気なく伏せられたカードが１枚。

（早いところ何か手を打たないとーー）

（どんどん不利になるばかり、ってか）

この時、千鶴と透矢の不思議にも同調（リンク）していた。
透矢にとってはターンを繋いでくれたアリアスに報いるためにも、このまま何も出来ずに負けることなどあってはならない。

「ーー俺はまず、墓地の『女帝の勅命』の効果を発動！」

「ほう？
墓地で発動する効果か」

「１つ目の効果を使用したこのカードが墓地にあるとき、このカードを除外することで、デッキから『女帝の聖杖』を１枚手札に加える事が出来る！」

（女帝の聖杖ーーか）

透矢はまず『女帝の勅命』の第２の効果を使用。
同一ターンに二つの効果は使用できないため、１ターン待つ必要があったのだ。
だがこれにより、透矢は頼りにしている『女帝の聖杖』を手札に加えたのである。

「持ってきたぜ、ラグナシア」

（なかなかスムーズに我を引き寄せたな。
誉めてやろう、透矢）

「へへ・・・っ、ありがとさん。
ま、いっちょ頼むぜ」

自然に透矢が話しかけると、女帝も応えてくれる。
何にでも適応力の高い彼は、もはや当たり前のように会話するのだった。
また相変わらず上から下を見るような女帝の物言いだが、口調には親しみが込められていた。

（独り言・・・？）

（お兄ちゃん、誰と話してるんだろう？）

しかし声を出して会話したせいか、デュエル・キラーと千鶴にも聞こえてしまい、心の中で訝しむ。
もちろん二人には女帝の声は届いていない。

（もしかして昨日のお昼、お兄ちゃんが話してくれた意志を持つカードと話してる・・・とか？）

冗談半分で聞いていた昨日のお昼時の会話を千鶴は思い出した。
だが本当にカードに意志や魂があり、透矢が話をしているとでも言うのか。
声を聞くことが出来ない千鶴には、透矢を信じたいという気持ちもあり、最終的な判断が下せないようだった。

「よし、次に俺は手札から魔法カードを発動！
『女帝の施し』！」

「施し・・・だと？」

「自分の手札、またはフィールドに『女帝の聖杖』があるときに発動出来るカードさ！
手札の『三騎士』を１枚墓地に送り、デッキからカードを２枚ドローする！」

透矢はカードの効果を説明しながら、女帝のカードを手札から公開する。
もちろんさっき加えたばかりだから、見せられなくても手札にあるのは当たり前だが、ここはルールに則っている。

「『影縫いの微刃』を１枚墓地に送り、２枚ドロー！」

コストに選ばれたのは『影縫いの微刃』。
実はここには見えない『防衛策』も同時に仕込まれている。
そうしてカードを新たに２枚ドローした透矢。
それを見た透矢がはっとなる。

（炎魅子先輩がくれた・・・カードだ！）

２枚の内、１枚は炎魅子がデュエル終了時に手渡してくれたカード。
この局面で引き当てられた事に、透矢は心の中で勇気をもらった気になる。

「手札から魔法カード！
『爆炎の胎動』を発動！」

「ーー何っ？！」

発動されたそのカード。
デュエル・キラーが思いの外、驚いたような大声を発する。

「そ、それは・・・確か先輩のーー」

「ああ！
炎魅子先輩が預けてくれたんだよ」

「くっ！」

「手札の炎属性モンスターを公開し、その同名モンスターをデッキから手札に加えるぜ！」

炎魅子から受け継いだカードを透矢は有効に活用する。
公開するカードはもちろん『轟炎の剣』、デッキから同じカードをサーチする。
これにより手札に予め揃えていた２枚と合わせて、３枚となる。

「そして『轟炎の剣』の効果！
手札に３枚揃っているとき、その内の１枚を墓地に送り、残りの２枚を特殊召喚する！」

「来たかーー」

あるいは予定通りなのか。

轟炎の剣の特殊能力を使い、透矢の場に二人の赤い女剣士が舞い下りる。
二人ともレベルは４で、攻撃力は１７００。
そのままではミサギの域にはまだまだ程遠い。

「まだまだ行くぜ！
手札から装備魔法、『トライ・リバイブ』！」

「む・・・っ！」

「墓地の三騎士モンスターを１体特殊召喚！
このカードを装備する！」

「・・・そういうことか」

「今、墓地に行った『轟炎の剣』を特殊召喚！」

透矢の怒濤のコンボが続く。
ドローするカード全てが、このターンの透矢の行動を可能とするかのように。
まさに天性の引きなのかもしれない。

かくして轟炎の剣を３枚を場に揃えた透矢。
ここまで来れば次の一手は言うまでもないだろう。

「ーートライ・フォーメーション！
フォーメーション・ドライ！」

轟炎の剣が紅き光の柱へと姿を変えて、それらが融合し一本の大きな光の柱となった。
そうやってこのデュエル二体目のＴ・Ｆモンスターとなる、紅き軍神がその姿を発現させる。

「ーーＴ・Ｆ召喚！
『轟剣の女傑 ヴァルバレア』！」

炎の闘気を身に纏う、Ｔ・Ｆモンスターの中で最高峰の攻撃能力を持つヴァルバレア。

ミサギを倒せるモンスターは、やはりこのヴァルバレアしかいないーー。