熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！②　作：はにわ

　
「ーー先攻は俺だ！」

生徒会大戦第三戦、開幕。
その先攻を握ったのは透矢。
初期の５枚の手札をデッキからドローし、それを見て素早く戦略を立てようとするーー。

「ーーえっ？！」

透矢は引いた５枚、その中の１枚を見て素頓狂な声を上げた。

（こ、このカードはーー？）

透矢はそのカードを手にしながらまじまじと見つめる。
端からその様子を見れば、まるで自分の知らない、未知のカードをドローしたかのようだ。

「・・・ん？
どうかしたのかい、遊戦名！」

「い、いえ・・・べ、別に」

「う～ん？」

なんでもない、という透矢を訝しむように炎魅子。

（な、なんで『このカード』が？
いつの間に俺のデッキに・・・？）

透矢は戸惑った。
今、使っているデッキは昨日の夜に微調整を加えたデッキ。
毎日触っているデッキ故、その内容がどんなものか、１枚１枚記憶している。

ところが『そのカード』はデッキに入れた記憶はない。
というより『そのカード』は昨日の『夢』でーー。

「おいおい、１ターン目から長考かい？
随分、慎重じゃないか」

「あ、す、すいません」

カードを見つめたまま動かない透矢。
どうやら幾ばくかの時が過ぎていたらしく、炎魅子が声を上げる。
透矢は慌てた様子でそのカードを手札に戻すと、それを見た炎魅子が首を傾げる。

（よく分からねぇけど、とにかくデュエルに集中しないとーー）

『そのカード』が何故、自分のデッキに、そして自分が入れたもので無い以上、誰が入れたのか？
大いなる疑問が透矢を惑わすが、とにもデュエルを中断するわけにもいかない。

透矢は改めてそのカード以外の４枚の手札を確認して、戦略を立てる。

「め、メインフェイズ！
俺は『三騎士 白銀の盾』を守備表示で召喚！」

まず召喚されたモンスターは、透矢のデッキの起点として便利な『白銀の盾』。
白く輝く鎧に身を包んだ、美しき銀髪の女戦士。
１ターンに１度、戦闘では破壊されないという優れた防御能力を持つ。

レベルは４、守備力は１１００。

「白銀の盾の効果！
召喚に成功した時、デッキから『三騎士』モンスターを選択してデッキのトップに置く！
俺は『影縫いの微刃』を選択する！」

「あいよ」

白銀の盾の効果を発動され、炎魅子が頷く。
デッキのトップに任意の『三騎士』モンスターを置く効果。
これでデッキをシャッフルされない限り、次にそのカードを引く事は確定となる。

「カードを１枚、セットして、ターン、エンド・・・」

そしてリバース・カードが１枚。
無難な１ターンを終えた透矢。
しかしターンエンドを宣言してからも、彼の視線は手札の『そのカード』に注がれていた。

（どういうことだ・・・？
あれは『夢』じゃなかったのか？）

透矢は未だ記憶に新しい昨日の夢を思い出す。
その情景が示す通り、あれは間違いなく『夢』のはずである。
そして『夢』ならば『そのカード』が存在するはずもなく、デッキに入れられるはずもない。

（誰かがいつの間に俺のデッキに投入したーー？）

いや、それは有り得ない、と透矢は首を振る。
このデッキは『お姉さん』が自分に預けてくれたものであり、ある意味命よりも大事なもの。
透矢は風呂や寝る時以外、このデッキを肌身離さず持っている。
他人にいじれるはずがないのだ。

（どうなってんだ？
『夢』なのか、『夢』じゃないのか？
訳が分からねぇ！）

混乱する透矢。

「おーい、遊戦名？
どうしたい、やっぱりまだなんかやることがあんのか？」

「ーーえ、あ・・・」

「じぃっ、とカード見つめちゃってさ。
あたしのターン、始めていいかい？」

「す、すいません、どうぞ！」

「あはは！
寝ぼけてんじゃないだろーね？」

再び炎魅子に声を掛けられて我に返る透矢。
炎魅子からすれば、ターンエンドを宣言しながら、手札のカードを睨み付けるように見つめられては、そういう風に勘繰るのも無理はない。

透矢は慌てつつその意志がないことを伝えると、炎魅子はおかしそうに笑った。

ーー透矢は戸惑う。
何故、自分のデッキに昨日の『夢』の中でお姉さんがくれたカードが入っているのか、ということにーー。