２ｎｄデュエル流石再び！次元竜の侵攻！⑨　作：はにわ

　
遂に召喚された凌斗のエースモンスター・『次元竜神 エンパイア』。
今までの次元竜を凌駕するその力が透矢を誘う。

「ーー次元竜が除外されたことで、『次元昇竜』、さらに連動して『次元への誘い』が発動！
俺はデッキから『レギア』を特殊召喚し、お前はモンスターを１枚除外する！」

「・・・ああ」

凌斗の場に再三、その姿を見せたレギア。
透矢はまたデッキからモンスターを除外する。

「まだだ！
除外されたレギアと『イグナフ』が効果を発動！
レギアの効果でお前は更にカードを除外！
イグナフの効果で１枚ドローする！」

「うぅ・・・もうデッキのモンスターが半分くらいいなくなったな」

モンスターを除外しながら透矢が嘆くのを聞いて、凌斗もカードをドローしながら嫌味な笑みを見せる。

（ち・・・っ、キーカードを積みすぎたか？
被ってきやがる・・・）

凌斗はドロー効果を操り、手札を切らすことがない。
しかしながら手札にあるのは、既に場に出ている『次元昇竜』、『次元の裂け目』、『次元への誘い』ばかり。
これらはこのデッキのキーカードだから多目に入れているが、
時折こうして必要もないのに手札に来てしまうことがある。

（まぁいい・・・エンパイアが出た今、勝利は目前だ）

凌斗は巨大な光のモンスター、エンパイアを見る。
今までにこれを出して負けたことは１度もない、まさに勝利を呼ぶカードなのだ。

「エンパイアの攻撃力は２０００！
だが、このエンパイアは除外されたモンスターの数１枚につき、２００ポイントアップする！」

今までの次元竜は１枚につき１００だった。
しかしエンパイアは最強の次元竜と呼ぶだけあり、その上昇値は倍。

然るにその攻撃力はーー驚異の４６００ーー。

「こ、攻撃力、４６００ぅ！？」

もはや神の域すら超えた攻撃力に透矢が大きくのけ反り、観客もざわめく。
その反応に満足そうな凌斗。
しかしエンパイアの能力はそれだけでない。

「１つ言っておくぞ。
エンパイアが場に存在する限り、俺の場の『次元』カードは効果で破壊されないんだぜ！」

「マジかよ・・・それだけの攻撃力を持ちながら、カードの効果でも破壊されないのかよ？」

「そういうことだ。
くくく、飲み込みが早いじゃねぇか」

（しかも『次元』カードってことは、あの３枚の次元魔法・罠カードもか？
例え、破壊カードを引いても無駄ってことか）

エンパイアがもたらした凌斗の場に対する強力な耐性。
攻撃力４０００を超えるモンスターなどそうそう出すことは出来ず、また効果でも破壊されないなら、ある意味完璧である。

（ますます・・・引くしかねぇ。
それも早いこと、な）

攻撃力４０００に耐え抜くのは至難の業。
タイムリミットは精々、あと１、２ターンというところだろう。

それまでにーー引く、それ以外に勝機はない。

「行くぞ、バトルフェイズ！」

エンパイアが咆哮を上げる。
まずはこのターンのバトルフェイズを凌がなくてはならない。
レギアの攻撃力ですら、既に２５００。
この２体の攻撃に耐え抜けるのか。

「エンパイアで、その猪口才な下級女戦士を攻撃！
『次元崩震、ＤＤ・クェイク』！」

凌斗の攻撃宣言を受けて、エンパイアが一際高い咆哮を上げ、何対もの翼が羽ばたく。
すると周囲の空間が歪み始め、ガラスがひび割れるかのような音が強く響く。
やがて空間の歪みは透矢のフィールドを侵し、そこにいる蒼き槍迅を見えない何かが呑み込もうとするーー。

「ーーリバース・カード！
罠カード・『白銀の護陣（しろがねのごじん）』！」

「罠カードか！」

「自分フィールド上の『三騎士』モンスターが攻撃対象になった時、発動出来る！
デッキか手札から『白銀の盾』を墓地に捨てることでこのターン、戦闘による破壊から護る！」

罠カード『白銀の護陣』。
本来は墓地へ捨てられるはずの『白銀の盾』は除外ゾーンへ行く。
しかしその白く輝く『意志』が、蒼き槍迅を取り巻き、エンパイアの攻撃から身を守った。

「ちっ・・・」

「蒼き槍迅は破壊されないぜ！」

「だがダメージ計算は忘れるな！
しかも、今、また除外モンスターが増えたことにより、エンパイアの攻撃力はアップしているぞ！」

戦闘による破壊は免れた。
しかしダメージまでは防げず、エンパイアの攻撃力は更に上昇して４８００、蒼き槍迅の攻撃力は２７００、差し引き２１００が透矢へのダメージとなる。
これで透矢のライフは残り１５００ーー。

「レギアの攻撃力も上がっているが・・・あと１００足らないか。
ーーちっ、しぶとい奴め！」

レギアの攻撃力も２６００。
装備魔法で強化している蒼き槍迅には及ばず、苦々しそうに凌斗が舌打ちする。

「罠カード、『白銀の護陣』の効果！
バトルフェイズ終了時に、俺はカードを１枚ドローするぜ！」

透矢はデッキから、やや力みがちにカードをドローする。

（ーーく、来ないか・・・！）

ドローしたそのカードは待ち人ではない。
だがデッキに入っている以上、ドローし続ければいつかは引ける。
問題はその機会があと何回くるか、だ。

「俺はターンエンドだ」

凌斗はそのままターンを終了させ、返ってきた透矢のターン。
ドローフェイズ、透矢は念じるようにカードをドローする。

（ぐ・・・ダメ、か！）

しかし引けない。

凌斗の除外によって透矢のデッキは残りおおよそ半分。
それでも約２０枚の中から１枚を引き当てるというのは、簡単なことではない。

ドローフェイズを終わってスタンバイフェイズ。
本来なら何もせず流すターンだが、このタイミングで蒼き槍迅の攻撃力の上昇値が下がり、２３００となった。

ーーメインフェイズ。
ドローフェイズでドローしたカードはモンスターカード。
最悪、守備表示で場に出し、耐えるしかないかーー。

「おっと、言い忘れてたが、 エンパイアは守備モンスター相手でも、貫通してダメージを与えるぞ！」

「貫通・・・へ、へへ、いよいよ逃げ場はない、ってことか」

「くくく、絶望したか？
はっはっはっはっ！」

本来、守備でモンスターを出せば攻撃されてもダメージはない。
しかしながらエンパイアは貫通能力を持つ。
しかもその攻撃力はーーもはや、再び語る必要もあるまい。
透矢、絶体絶命の危機・・・か。

「まだだ！
装備魔法『三剣の誓い』の効果により、俺は再びデッキから蒼き槍迅を捨てる！
攻撃力が４００アップだ！」

透矢はデッキから３枚目となる蒼き槍迅を抜き、除外ゾーンへ送る。
これにより、蒼き槍迅の攻撃力はまた２７００に戻った。

しかし。

「おいおい、エンパイアのパワーを上げてくれるのか？
くくく、嬉しいねぇ。
遂に５０００の大台だよ」

凌斗が嬉しそうに笑う。
エンパイアの攻撃力は、カードが元々持っている数値としては最高の５０００。
レギアも２７００になり、強化した蒼き槍迅に並んでしまった。

「そして！
『三剣の誓い』の効果を２回使用した時、装備モンスターを破壊することでカードを１枚ドロー出来る！」

三剣の誓いの最後の効果により、蒼き槍迅は破壊された。
当然除外され、エンパイアたちの攻撃力は更に上昇。

「何！
ドローのためにモンスターを犠牲にするだと？！」

攻撃力２７００もあったモンスターを犠牲にしてまで得たかった機会。
それがドロー。
蒼き槍迅の力ではどのみち、エンパイアは倒せない。
ならば可能性を追うーー。

だがこれが本当の最後。

（このドローで決まる・・・。
引けなきゃ俺の負け。
でも引ければーー）

引ければ勝てる。
異常な攻撃力、効果による破壊耐性を備えた、あのエンパイアを倒せるのだ。

（頼むぜ・・・俺のデッキ！
信じてるぜ！）

「ーーカード、ドローっっ！！」

渾身の気合いと共にドローされた最後の一枚。
透矢はたった１つの道筋を紡げるのか。

ーーデュエルの終幕。
ついにその時は来た。