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15:立て!グレートバスターマイデン 作:ほーがん
第15話「立て!グレートバスターマイデン」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
カケルは一歩前に出て、木嶋に言い放つ。
「先攻はもらうぜ!俺のターン!」
カケルは手札を確認し、”よし”と頷いた。
「俺は手札から《BVF・マイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》を召喚するぜ!」
鋼鉄の体に熱き闘志を宿す紅蓮のヒーローが、カケルの前に現れる。
「そして手札から《BVF・バスターローダー(☆7/光/機械/1500・2500)》を特殊召喚!」
黄金に輝くトランスポーターが轟音とともに、紅蓮のヒーローに並ぶ。
「こいつは自分のモンスターが《BVF・マイデン》しか存在しない場合、手札から特殊召喚できる!早速行くぜ!レッツ!ブレイヴ・ユナイト!!」
カケルの掛け声と共に、唸りを上げ『バスターローダー』が走り出し、『マイデン』も同時に飛び上がった。
「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・バスターローダー》で融合合体!」
『マイデン』はブロック状に変形し、人型に変形した『バスターローダー』の中心部へ格納されて行く。白煙を排出しながら、腕の先端から手首が迫り出す。それと同時に頭部が形成され、マスクを装着した。
「熱き正義が光り輝き、蔓延る闇を斬り払う!光の勇者ここに爆誕!合体召喚!!《BVF・バスターマイデン(☆8/光/機械/融合/2800・2600)》!!!」
光の勇者は拳を構え、カケルのフィールドに降り立った。
「融合のカード無しに融合召喚か・・・」
そう呟いた木嶋に、カケルは得意げに言った。
「俺の「BVF」には融合の魔法は必要ないぜ!フィールドの融合素材をそのまま墓地に送って融合召喚できる!これが、融合を越えた融合!!その名も『融合合体』だ!!!」
だが、木嶋はそれを鼻で笑った。
「へっ、生憎だが俺は融合なんざ興味ねぇな!大体、その程度の召喚法なんざ珍しくも何ともねぇ!」
カケルは木嶋を指差した。
「そう粋がってられんのも今のうちだぜ!俺はカードを1枚セットしてターンエンド!さぁ、制服野郎!どっからでもかかって来やがれ!!」
カケルの様子に木嶋は笑う。
「粋がってられるのも今のうちか・・・その言葉そっくりそのまま返してやるよ。俺のターン!!」
木嶋はドローしたカードを確認し、ニヤリと笑った。
「俺は手札から魔法カード《収斂進化》を発動!手札を1枚捨てる事で、相手フィールドのモンスター1体と同じレベルの昆虫族モンスターをデッキから特殊召喚する!お前のモンスターはレベルは8!よって俺はデッキからレベル8の昆虫族モンスター、《クィーン・ネオバグ(☆8/地/昆虫/3000・2900)》を特殊召喚する!!」
木嶋のフィールドに凄まじい羽音を響かせ、虫の女王が君臨した。
「い、いきなり攻撃力3000だって・・!!」
驚愕するカケル。しかし、木嶋の進撃はまだ終わらない。
「俺は《クィーン・ネオバグ》の効果を発動!1ターンに1度、自分のデッキ・手札・墓地から《ネオバグ》を1体特殊召喚できる!俺はデッキから《ネオバグ》を特殊召喚!!」
女王の産み落とした卵が孵り、『ネオバグ』が羽音を立てて出現する。
「さらに俺は、たった今手札から捨てた《スターイート・ワーム(☆1/光/昆虫/0・1900)》の効果発動!このカードはフィールドのモンスターのレベルを2つ下げる事で、墓地から特殊召喚できる!俺は《クィーン・ネオバグ》のレベルを2つ下げて特殊召喚!」
木嶋の墓地から、発光する幼虫が這い出した。
「この効果で特殊召喚した《スターイート・ワーム》はフィールドを離れる場合、除外される。そして手札から《プチモール(☆1/地/昆虫/チューナー/300・200)》を通常召喚だ!!」
カケルはたじろいだ。
「チューナーモンスター!!まさか!!」
木嶋は卑しい笑いを上げ、叫んだ。
「ああ、そのまさかだよ!!俺はレベル6となった《クィーン・ネオバグ》とレベル1の《スターイート・ワーム》にレベル1の《プチモール》をチューニング!!」
光の輪となった幼虫は、虫の女王ともう1体の幼虫の体を包み込んでゆく。
「可能性の幼子よ!今こそ殻を突き破り、絶望の翼を広げよ!シンクロ召喚!舞い上がれ!《究極完全成態 グレート・モルフォ(☆8/地/昆虫/シンクロ/3500・3000)》!!」
禍々しい模様の翼を広げた昆虫の王は爆風を起こしながら、フィールドを震撼させる。
「な、なんだこのモンスター・・・!!この威圧感・・・それにソリッドヴィジョンじゃない!!本物の風が吹いてる・・!!?」
驚きを隠せないカケル。木嶋は高らかに言った。
「ふははは!!!これこそが俺の切り札!!だが、お前にはこれだけじゃあ済まさねぇ!!」
木嶋はさらに手札のカードを取り出した。
「俺は永続魔法《密林の黄金樹液》を発動!このカードは自分のフィールドに昆虫族モンスターが2体以上存在する場合、1ターンに1度、墓地から昆虫族モンスターを1体特殊召喚できる!!蘇れ!《クィーン・ネオバグ》!!」
床を裂くように、女王が復活し怒号を上げた。
「おいおい、俺ちょっとピンチじゃねえか・・・!!」
カケルの額に汗が伝う。木嶋は構わず続けた。
「さらに《密林の黄金樹液》は自分の昆虫族モンスターの攻撃力を300アップさせる!!」
《究極完全成態 グレート・モルフォ》(ATK3500→3800)
《クィーン・ネオバグ》(ATK3000→3300)
《ネオバグ》(ATK1800→2100)
「そして1度フィールドを離れた事により、俺は《クィーン・ネオバグ》の効果をもう1度発動できる!デッキから《ネオバグ》を特殊召喚だ!!」
さらに産み落とされた卵の殻を突き破り、新たな『ネオバグ』が誕生する。
「新たな力、ここで試させてもらうぞ!!俺はレベル4の《ネオバグ》2体でオーバーレイ!!」
光の渦の中へ2体の昆虫型生命体が飛び込んだ。
「エクシーズ召喚!現れろ!《アサルトショット・マンティス(★4/炎/昆虫/エクシーズ/2200・1300)》!!」
両前足に機銃を備えたカマキリ型の生命体が他の昆虫に並んだ。
「え、エクシーズ召喚まで・・・!!」
カケルは歯を噛み締めた。
「《密林の黄金樹液》の効果により攻撃力300アップだ!!(ATK2200→2500)さらに《アサルトショット・マンティス》の効果を発動!!」
木嶋は《アサルトショット・マンティス》の下の重なっているカードを取り出し言った。
「1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分フィールドの昆虫族モンスターの攻撃力は800アップする!!」
《究極完全成態 グレート・モルフォ》(ATK3800→4600)
《クィーン・ネオバグ》(ATK3300→4100)
《アサルトショット・マンティス》(ATK2500→3300)
木嶋のフィールドの昆虫達は仲間の力を受け、さらに凶暴になってゆく。
「かなりヤバいぜこいつは・・・!!」
焦るカケルを余所に、木嶋は笑い光の勇者を指差した。
「バトルだ!!まずは《アサルトショット・マンティス》で、《BVF・バスターマイデン》を攻撃!!」
照準を光の勇者に合わせ、《アサルトショット・マンティス》は狙いを定め、機銃を掃射する。
「リチャードから聞いたぞ!!お前のモンスターはフィールドを離れたら、他のモンスターを特殊召喚できるんだってな!!だが、《アサルトショット・マンティス》はダメージステップ終了時までバトルする相手モンスターの効果を封じる!!」
その時。カケルは透かさず、セットしたカードを開いた。
「だったらこれだ!リバースカードオープン!罠カード《鋼の勇者》!!このカードは自分の「BVF」が特殊召喚されたモンスターと戦闘する時、その「BVF」の攻撃力をターン終了時まで元々の攻撃力分アップさせる!(ATK2800→5600)」
罠カードの力を受け、光の勇者は黄金のオーラを放ち始める。木嶋は焦り、手札のカードを取り出した。
「ちっ!俺は手札の《鋼鉄装甲蝶々(☆4/光/昆虫/1800・1200)》の効果を発動!このカードを手札から捨てることで、このターン自分フィールドの昆虫族モンスターは戦闘では破壊されず、ダメージは0になる!」
木嶋の手札から出現した蝶は鋼鉄の羽根を翻し、《アサルトショット・マンティス》の攻撃を逸らした。
「躱したか・・・。けど、このターンもうお前のモンスターじゃ《BVF・バスターマイデン》は倒せないぜ!」
カケルの言葉に木嶋は笑う。
「へっ、それもこのターンまでだ!次のターンからお前は俺のモンスターに怯える他ねぇんだよ!!俺はターンエンド!!」
木嶋のターンが終了したと同時に《BVF・バスターマイデン》の攻撃力は元に戻った。(ATK5600→2800)
カケルは一呼吸置いた。
「俺は信じる・・俺のデッキを・・・。俺のターン、ドロー!!!」
引いたカードを確認したカケルは笑う。
「来てくれたか・・・!!俺は装備魔法《勇者の聖剣ーブレイヴソード》を発動!!こいつを《BVF・バスターマイデン》に装備するぜ!!」
勇者の足下を裂き、輝く剣が出現する。光の勇者はそれを手に取ると大きく振りかざし、敵に向けて構えた。
「このカードを装備したモンスターは戦闘では破壊されなくなる!!そして、装備モンスターが相手モンスターと戦闘し、そのモンスターを倒せなかった場合、ダメージ計算後にそのモンスターを破壊する!!」
木嶋は苦い顔をする。
「このガキ・・・土壇場でそんなカードを・・・!!」
カケルは叫んだ。
「行け!!《BVF・バスターマイデン》!!《アサルトショット・マンティス》を攻撃!!」
光の勇者はスラスターを噴かし、上空へと飛び上がる。そして構えた剣を急降下と共に振り下ろした。
「『縦一文字切り』!!!」
しかし、その一撃では《アサルトショット・マンティス》は砕けない。
「ぐっ・・!!(LP4000→3500)《勇者の聖剣ーブレイヴソード》の効果発動!!《アサルトショット・マンティス》を破壊だ!!」
勇者の持つ聖剣が光り輝く。その眩い光に包まれ《アサルトショット・マンティス》は姿を消した。
「俺の《アサルトショット・マンティス》が・・・!!このガキ・・!!!」
木嶋の目に憎しみが宿る。
「まだ勝負は分からないぜ!俺はこれでターンエンドだ!!」
木嶋は静かに言った。
「どうやら本気を出す時が来たようだな・・・。希望なんざ無い事を教えてやる・・俺のターン!!」
デッキからカードを引いた木嶋はすぐさま叫んだ。
「思い知れ・・・ヘラルド様の力を!!《究極完全成態 グレート・モルフォ》の効果発動!!自分の墓地の昆虫族モンスターを2体除外することで、フィールドに存在するこのカードより攻撃力の低いモンスターを全て破壊する!!」
カケルはたじろいだ。
「な、なんだと!!」
木嶋は段々と黒いオーラを帯びて行く。墓地から2枚のカードを取り出し木嶋は言った。
「俺は墓地の《アサルトショット・マンティス》と《ネオバグ》を除外し、攻撃力4600以下のモンスターを全て破壊する!!!」
昆虫の王はその巨大な翼を翻し、無数の鱗粉を突風と共に飛ばした。鱗粉は鋭い針となり、場のモンスター達を襲う。光の勇者の装甲は砕け散り、虫の女王は悲痛な叫びを上げ、消え去った。
「お前、自分のモンスターまで・・!!」
カケルの言葉に木嶋は笑う。
「たかが《クィーン・ネオバグ》如き《究極完全成態 グレート・モルフォ》にとっては必要経費だ!!昆虫の王の糧となるならそれでいい!!」
カケルは言う。
「自分のモンスターを愛してないのかよあんたは!《BVF・バスターマイデン》の効果発動!このモンスターがフィールドを離れた時、墓地の「BVF」を1体特殊召喚できる!!俺は《BVF・バスターローダー》を守備表示で特殊召喚!!」
墓地が輝き、黄金のトランスポーターが復活する。
「そんなモンスターなんざ蹴散らしてくれる!!速攻魔法《オールナイト・ファイト》!!このカードを発動したターン、フィールドに存在するモンスターは全て攻撃表示になり、表示形式を変更できない!!」
木嶋の発動した魔法により『バスターローダー』は攻撃表示に変更される。カケルは苦い顔をした。
「バトルだ!!《究極完全成態 グレート・モルフォ》で《BVF・バスターローダー》を攻撃!!『モス・ポイズニック・ハリケーン』!!!」
昆虫の王より放たれた毒風は、『バスターローダー』目掛けて飛んで行く。その瞬間カケルが叫ぶ。
「《BVF・バスターローダー》は1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない!!」
しかし、木嶋は構わず続けた。
「ちっ!だが、ダメージは受けてもらうぞ!!」
毒風はフィールドを飛び越え、カケルを吹き飛ばした。その衝撃にカケルの体は舞い上がり、勢い良く壁に叩き付けられた。
「かはっ・・・・。(LP3500→400)」
うつ伏せに倒れ込むカケル。木嶋は笑いながら言った。
「ふははは!!どうだクソガキが!!思い知ったか!!これがヘラルド様の力だ!!!お前らのような危険因子はこうなるってことをよく覚えておけ!!」
カケルはゆっくりと顔を上げる。
「・・・どうして俺たちが、危険因子なんだ・・・?」
その言葉に木嶋が返す。
「当然だろ!?使い物にならなかったとはいえ『0042』が『神の鉄槌』の現し身であることは変わらねぇ!!お前らはその『0042』を庇い、しかも連れ戻そうとまでしてやがる!あんな化け物が外で暴れてみろ!事実を知った街の住人はパニックになる!!そんなことも分からないのか!?」
カケルは言った。
「あんたらは何がしたい?この『DWA』で何を企んでんだ?」
木嶋も言葉を続ける。
「俺達は世界の再建を目指している!『神の鉄槌』によって破壊されたこの世界を『神の鉄槌』の力を持ってして創り直す!その為の『0042』だった!だが、何者かによって『0042』の記憶は消され、外へと放たれた。必死の捜索の末に発見した時、お前の仲間が『0042』を庇ったんだ!!”靴を直してない”とか言う下らん理由でな!!」
「下らなくなんかねぇ!!!」
カケルは叫んだ。
「下らなくなんか・・ねぇ!!それは・・あいつにとって・・・遊牙にとって、大事な・・・大事な約束だったんだ!!」
木嶋は声を荒げる。
「そんなこと知ったこっちゃねぇ!!ヘラルド様の名誉の為、お前はここで叩き潰す!!」
カケルは立ち上がり言った。
「そのヘラルドって奴が、どんだけ悪い奴か知ってるのか!!?」
その言葉に木嶋は激昂する。
「ヘラルド様を侮辱する気か!!ヘラルド様はこの世界の再建の為、平和を取り戻すために身を削って働いている!!俺はその思想に賛同してここに来たんだ!!それを否定する意味がわかってるのか!!」
カケルは静かに言った。
「あんた・・・騙されてるんだよ・・・。ヘラルドに・・!」
カケルの言葉を遮るように木嶋は言い放つ。
「黙れ!!これ以上の侮辱は許さねぇぞ!!」
カケルは呟く。
「じゃあ、分からせてやる・・・このデュエルで!俺は《BVF・バスターローダー》の効果を発動!このカードがフィールドに存在する時に自分がダメージを受けた場合、そのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「BVF」を、手札・墓地から特殊召喚できる!!墓地より蘇れ!!《BVF・マイデン》!!」
紅蓮のヒーローが眩い光と共に復活し、カケルの前に降り立った。
「そんなモンスター出した所で何になる!!次のターン、《究極完全成態 グレート・モルフォ》の効果で破壊するまでだ!!俺はカードを1枚セットしてターンエンド!!」
その瞬間にカケルが口を開く。
「このターンのエンドフェイズに《勇者の聖剣ーブレイヴソード》の効果を発動!このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズに、デッキから「BVF」を1体手札に加える!俺はこの効果で《BVF・ハイパワードリル(☆5/地/機械/1600・1700)》を手札に加える!そして、俺のターン!!」
カケルは目を閉じた。
「(遊牙は俺を信じて背中を預けたんだ。俺は絶対に負けない。負ける訳にはいかねぇんだ。だから、頼む!俺のデッキ・・・!!)」
そしてデッキの手を伸ばし、カードを引く。
「ドロー!!!」
引いたカードは、烈火纏いし紅き隼。それを確認したカケルはフッと笑った。
「そうだよな・・・ここで負けるなんて、できねぇもんな・・・!!俺は手札から《BVF・ファイアーファルコン(☆3/炎/機械/1200・1200)》を召喚!!!」
叫びと共に、カケルの手札から炎の隼が飛び立つ。
「そして手札の《BVF・ハイパワードリル》の効果発動!自分のフィールドに《BVF・マイデン》が存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる!!」
イエローのボディを煌めかせ、巨大なドリルを備えたマシンが床を突き破り出現する。
「そして!自分のフィールドに《BVF・ファイアーファルコン》《BVF・ハイパワードリル》が揃っている場合、手札の《BVF・オーシャンキャリアー(☆4/水/機械/1000・2000)》を特殊召喚できる!!」
最後に水しぶきを上げ、青い潜水艦が浮上した。
「これで・・・全部揃った・・・!!!」
木嶋は笑う。
「どのモンスターも雑魚ばかり!!俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》には遠く及ばねぇ!!」
しかし。カケルもまた笑っていた。
「個々の力は小さいかもしれねぇ。だが、それが一つになった時、奇跡は必ずやって来る!!これが俺のとっておき!!最強の切り札だ!!レッツ!!アルティメット・ユナイト!!」
カケルは天を指差し叫ぶ。それと同時に5体、全ての「BVF」が飛び立つ。
「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・バスターローダー》《BVF・ファイアーファルコン》《BVF・ハイパワードリル》《BVF・オーシャンキャリアー》で究極融合合体!!!」
『マイデン』を格納し、人型へと変形した『バスターローダー』。その足へ分離した『ハイパワードリル』のボディが、2つに分かれた『オーシャンキャリアー』は腕と肩へそれぞれ合体する。『ファイヤーファルコン』の翼は背中へ。分離したドリルは胸へ合体し、3つ分かれ、そこには「BVF」のシンボルマークが。最後に『ファイヤーファルコン』の頭部を冠のように、『マイデン』の頭部にドッキングした。
「5つの正義を束ねし時、奇跡の勇者が現れる!!見よ!!これが勇気の究極進化系!!合体召喚・・・!!!」
凄まじい轟音と熱風。勇気の行き着く、その究極の姿。今最強の勇者が降臨する。
「勝利へ導け!!《BVF・グレートバスターマイデン(☆10/光/機械/融合/3000・3000)》!!!」
その姿に木嶋は圧倒される。
「な、なんだこのモンスターは・・・。」
カケルは言った。
「これが俺を勝利へと繋ぐ最強の切り札!!!『グレートバスターマイデン』だ!!!」
木嶋はすぐに平静を取り戻し、言い放った。
「だが、その攻撃力は高々3000!俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》の攻撃力4600には勝てない!!!」
カケルは言った。
「言っただろ、俺は負けない。最強の勇者はどんな敵にも屈しない。例えそれが、越えられないほど大きな壁だったとしても!!そこに勇気がある限り、俺の闘志は燃え続ける!!」
カケルの言葉と同時に勇者の瞳が光る。
「《BVF・グレートバスターマイデン》の効果!!相手フィールドに存在する全てのモンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする!!」
勇者の放つ光に、昆虫の王は怯み縮んで行く。(ATK4600→2300)
「ば、バカな!!俺の・・・俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》が!!!」
相手のモンスターを指差しカケルは叫んだ。
「行くぞ!!バトルだ!!《BVF・グレートバスターマイデン》で《究極完全成態 グレート・モルフォ》を攻撃!!!」
勇者は光の剣を取り出し、爆風とともに飛び立つ。
「ふざけるな!!『グレート・モルフォ』は倒させねぇ!!罠カード発動!!《ヒール・ノックアウト》!!!」
木嶋は透かさずセットしていたカードを開く。しかし、それと同時にカケルも声を上げた。
「《BVF・グレートバスターマイデン》はバトルフェイズ中に相手が発動したカードの効果を無効にする!!よって《ヒール・ノックアウト》は無効だ!!」
その言葉と共に木嶋の場から罠カードが消滅する。見上げたそこには勇者の剣が。
「『真っ向唐竹割り』!!!」
振り下ろされた剣は、悪しき虫の王を打ち砕いた。
「ぐはっ・・!!!(LP4000→3300)」
カケルは手札に残った最後のカードを取り出す。
「速攻魔法《勇気の一撃—ブレイヴ・スラッシュ—》を発動!!自分フィールドの「BVF」融合モンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、その攻撃力を500アップしてもう一度攻撃できる!!」
勇者の剣は巨大化し、炎を纏う。(ATK3000→3500)
「この・・俺が・・・1番隊の木嶋直都が・・・!!」
たじろぐ木嶋。カケルは声を擦り切らすほどに叫びを上げた。
「これで終わりだ!!行けぇぇええ!!!《BVF・グレートバスターマイデン》!!!」
炎の剣を掲げ、勇者は一気に駆け出した。
「『激熱のファイナル・ブレイヴ・スラッシュ』!!!」
その一閃は地を裂き、空を焦がし、真っ直ぐ木嶋へ向かった。
「ぐあああぁぁぁっ!!!(LP3300→0)」
そのエネルギーと爆風に木嶋は吹き飛び、倒れ込んだ。それと同時に木嶋を包んでいた黒いオーラが消え去った。
『勝者:仁ノ森カケル』
カケルはD・ディスクを仕舞い、木嶋へ近づく。
「あんたの本当の目的を教えてくれ。」
カケルの言葉に木嶋は言った。
「目的だと・・・?俺は、この街の平和を取り戻す。それだけだ。ヘラルド様はそれを実現すると約束してくださった。だから俺は1番隊の隊長になって、街の平和を乱すお前ら危険因子を・・・。」
木嶋の話にカケルは溜め息をついた。
「ヘラルドって奴は街の平和なんか考えちゃいない。あいつにあるのは”ノーン”とかいう奴への忠誠心だけだ。」
木嶋は不可解な顔をする。
「ノーンだと?なんだそいつは。ヘラルド様がそんな得体の知れないものに従っているわけがねぇ!」
その言葉を受けカケルは口を開いた。
「ヘラルドって奴は、世界の平和なんかどうだっていいらしい。ただ、ノーンという奴に従っているだけだ。恐らくルナも・・・お前らが『0042』って呼んでる子もノーンの命令を受けて造ったに違いねぇ。そして、その子を連れ戻せってあんたらに命令したのもな。」
木嶋は言った。
「バカな・・・!『0042』はリフォーマット実験に適合しなかった失敗作だぞ!仮に”ノーン”とかいう奴が居たとしてそいつは今更『0042』で何をする気だ!お前の話は辻褄が合わねぇぞ!!」
カケルも言葉を返す。
「じゃあ、ヘラルドはルナを、『0042』を使って何をしようとしてるのか、お前には分かるのかよ?」
木嶋は言葉を詰まらせる。
「それは・・・ヘラルド様には何か大きな目的があるんだろう。ヘラルド様は・・・俺に街の平和を約束したんだ・・・!!あの方は俺の希望なんだ!!」
その時。
部屋の天井が開き、何かの液体が流れ込んで来た。
「な、なんだこれ!!」
カケルと木嶋を囲むようにその液体は壁を伝い、床へと流れて来る。その液体を見て木嶋は驚愕した。
「こいつは・・・ベークライトか!!ど、どうしてこんな物がこの施設にあるんだ!!」
その時、木嶋のD・ディスクの《究極完全成態 グレート・モルフォ》のカードが光った。
『今までご苦労だったよ木嶋君。』
部屋に響く声。それを聞いた木嶋は叫んだ。
「その声は、ヘラルド様!!これは一体どういう事ですか!!?」
木嶋の問いにヘラルドは平然と答えた。
『この施設は元々、特別な実験施設でね。スパイが忍び込んだ時や敵が攻めて来た時など、最悪の事態を想定してこういう”ギミック”があるのさ。』
その言葉にカケルは思い出す。
「(遊牙の記憶の中にあった鉄格子の檻もこれと同じことか・・・!!)」
木嶋は大声で訴える。
「何故ですか!!何故、俺にこんな事を!!」
ヘラルドは当たり前のように言った。
『何故って、君が失敗したからだよ。残念だなぁ、もうちょっと頑張れると思っていたんだが。その少年を今通すわけには行かないんだよ。どうやら既に二人逃してるみたいだしね。』
じりじりとその液体は足下へ近づいて来る。
「ヘラルド様は街の平和を取り戻し、それを見せれくれると俺に約束しましたよね!!?あれは嘘だったのですか!!?」
必死の叫びをあしらうようにヘラルドは言った。
『ああ。そんなことも言ったかな。そうだ、木嶋君。人生の最後だし、君に真実を教えてあげよう。』
木嶋の目に涙が浮かぶ。声にならない声を漏らし、ヘラルドの言葉を聞いた。
『私はこの街の平和など全く興味ない。全ては”ノーン”様の為。「ゲート」を開き、『神の鉄槌』を復活させ、この世界を”再建”する。そうすれば全てはノーン様のものとなる。私はその手伝いをしている訳だ。理解できたかな?』
木嶋は小さく口を開く。
「嘘だ・・・そんな・・・。」
ヘラルドは淡々と告げた。
『”名誉の戦死”ってことで名前くらいは覚えといてあげるよ。それじゃさよなら。1番隊総隊長、木嶋直都君。』
ヘラルドの言葉が終わったと共に《究極完全成態 グレート・モルフォ》のカードは灰となって散った。
「おい、あんた!どうするんだよ!!あの液体、とても熱そうで触れっこないぜ!?」
カケルが話しかけるも、木嶋は膝を付いたまま動かない。
「・・・嘘だ・・・。」
カケルは続けて言う。
「天井の排気口・・・あそこなら脱出できそうだけど、壁は液体に覆われてるし登れねぇ。なぁ、おい!あんたも一緒に考えてくれよ!」
木嶋はうずくまった。
「もう・・・どうでもいい・・。」
カケルはしびれを切らし、木嶋の胸ぐらを掴んだ。
「あんた、街の平和を取り戻すんじゃなかったのかよ!!?平和が戻った街を見たいんじゃないのかよ!!?」
木嶋は細い声で言う。
「そんなの・・・もう無理だろ・・・俺は・・ここで・・・。」
迫る液体。室温が上がり、カケルは汗をかき始めた。
「んなのわかんねぇだろ!!まだ、まだ希望はある!!諦めんじゃねぇ!!」
突然、木嶋は叫んだ。
「どこに希望があんだよ!!!約束は嘘で!!俺はずっと嘘をつかれてて!!!目の前には高温のベークライト!!!ドアも塞がってる!!!こんな状況で希望なんてあるか!!!」
「ここに、あるさ!!」
その時。天井の排気口が開き、ロープが降りて来た。カケルは天井を見上げる。そこには、知っている顔があった。
「あんたは、ジェイミー・ホーガン!!!」
ホーガンは叫んだ。
「掴まれ!!二人とも!!」
カケルは急いでロープを掴んだ。動かない木嶋にカケルは叫んだ。
「あんたも来いよ!!」
木嶋は言う。
「俺は・・・もういい。ここを出たって、行く所なんかありはしねぇ。おれはここで”名誉の戦死”をするんだ。」
カケルは木嶋の腕を引っ張った。
「今度は俺が約束する。街の平和を、それをあんたに見せることも。だから、お前を散々騙して、俺の仲間を、ルナを得体の知れねぇことに使おうとしてるヘラルドを、その上に居るノーンって奴を、一緒にぶっ倒そうぜ!!」
木嶋は顔を上げた。
「・・・本当は・・・まだ、諦めたくない・・・。街の平和を。本当に・・・約束できるのか・・・。お前みたいな子どもに。」
カケルは笑った。
「”約束”だけはどうしても守らなきゃいけねぇ。これは、俺の仲間の信念であって、俺の信念でもあるんだ。」
木嶋はロープを掴んで言った。
「本当に、実現してもらうぞ。お前達に。」
カケルは笑顔で言う。
「任せろよ。」
その顔を見た木嶋はロープを掴む手を固く握りしめた。
そして。液体が足に浸かる寸前。ロープが引き上げられ、二人は部屋を脱出した。
次回第16話「凛香・決意の決闘」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
カケルは一歩前に出て、木嶋に言い放つ。
「先攻はもらうぜ!俺のターン!」
カケルは手札を確認し、”よし”と頷いた。
「俺は手札から《BVF・マイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》を召喚するぜ!」
鋼鉄の体に熱き闘志を宿す紅蓮のヒーローが、カケルの前に現れる。
「そして手札から《BVF・バスターローダー(☆7/光/機械/1500・2500)》を特殊召喚!」
黄金に輝くトランスポーターが轟音とともに、紅蓮のヒーローに並ぶ。
「こいつは自分のモンスターが《BVF・マイデン》しか存在しない場合、手札から特殊召喚できる!早速行くぜ!レッツ!ブレイヴ・ユナイト!!」
カケルの掛け声と共に、唸りを上げ『バスターローダー』が走り出し、『マイデン』も同時に飛び上がった。
「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・バスターローダー》で融合合体!」
『マイデン』はブロック状に変形し、人型に変形した『バスターローダー』の中心部へ格納されて行く。白煙を排出しながら、腕の先端から手首が迫り出す。それと同時に頭部が形成され、マスクを装着した。
「熱き正義が光り輝き、蔓延る闇を斬り払う!光の勇者ここに爆誕!合体召喚!!《BVF・バスターマイデン(☆8/光/機械/融合/2800・2600)》!!!」
光の勇者は拳を構え、カケルのフィールドに降り立った。
「融合のカード無しに融合召喚か・・・」
そう呟いた木嶋に、カケルは得意げに言った。
「俺の「BVF」には融合の魔法は必要ないぜ!フィールドの融合素材をそのまま墓地に送って融合召喚できる!これが、融合を越えた融合!!その名も『融合合体』だ!!!」
だが、木嶋はそれを鼻で笑った。
「へっ、生憎だが俺は融合なんざ興味ねぇな!大体、その程度の召喚法なんざ珍しくも何ともねぇ!」
カケルは木嶋を指差した。
「そう粋がってられんのも今のうちだぜ!俺はカードを1枚セットしてターンエンド!さぁ、制服野郎!どっからでもかかって来やがれ!!」
カケルの様子に木嶋は笑う。
「粋がってられるのも今のうちか・・・その言葉そっくりそのまま返してやるよ。俺のターン!!」
木嶋はドローしたカードを確認し、ニヤリと笑った。
「俺は手札から魔法カード《収斂進化》を発動!手札を1枚捨てる事で、相手フィールドのモンスター1体と同じレベルの昆虫族モンスターをデッキから特殊召喚する!お前のモンスターはレベルは8!よって俺はデッキからレベル8の昆虫族モンスター、《クィーン・ネオバグ(☆8/地/昆虫/3000・2900)》を特殊召喚する!!」
木嶋のフィールドに凄まじい羽音を響かせ、虫の女王が君臨した。
「い、いきなり攻撃力3000だって・・!!」
驚愕するカケル。しかし、木嶋の進撃はまだ終わらない。
「俺は《クィーン・ネオバグ》の効果を発動!1ターンに1度、自分のデッキ・手札・墓地から《ネオバグ》を1体特殊召喚できる!俺はデッキから《ネオバグ》を特殊召喚!!」
女王の産み落とした卵が孵り、『ネオバグ』が羽音を立てて出現する。
「さらに俺は、たった今手札から捨てた《スターイート・ワーム(☆1/光/昆虫/0・1900)》の効果発動!このカードはフィールドのモンスターのレベルを2つ下げる事で、墓地から特殊召喚できる!俺は《クィーン・ネオバグ》のレベルを2つ下げて特殊召喚!」
木嶋の墓地から、発光する幼虫が這い出した。
「この効果で特殊召喚した《スターイート・ワーム》はフィールドを離れる場合、除外される。そして手札から《プチモール(☆1/地/昆虫/チューナー/300・200)》を通常召喚だ!!」
カケルはたじろいだ。
「チューナーモンスター!!まさか!!」
木嶋は卑しい笑いを上げ、叫んだ。
「ああ、そのまさかだよ!!俺はレベル6となった《クィーン・ネオバグ》とレベル1の《スターイート・ワーム》にレベル1の《プチモール》をチューニング!!」
光の輪となった幼虫は、虫の女王ともう1体の幼虫の体を包み込んでゆく。
「可能性の幼子よ!今こそ殻を突き破り、絶望の翼を広げよ!シンクロ召喚!舞い上がれ!《究極完全成態 グレート・モルフォ(☆8/地/昆虫/シンクロ/3500・3000)》!!」
禍々しい模様の翼を広げた昆虫の王は爆風を起こしながら、フィールドを震撼させる。
「な、なんだこのモンスター・・・!!この威圧感・・・それにソリッドヴィジョンじゃない!!本物の風が吹いてる・・!!?」
驚きを隠せないカケル。木嶋は高らかに言った。
「ふははは!!!これこそが俺の切り札!!だが、お前にはこれだけじゃあ済まさねぇ!!」
木嶋はさらに手札のカードを取り出した。
「俺は永続魔法《密林の黄金樹液》を発動!このカードは自分のフィールドに昆虫族モンスターが2体以上存在する場合、1ターンに1度、墓地から昆虫族モンスターを1体特殊召喚できる!!蘇れ!《クィーン・ネオバグ》!!」
床を裂くように、女王が復活し怒号を上げた。
「おいおい、俺ちょっとピンチじゃねえか・・・!!」
カケルの額に汗が伝う。木嶋は構わず続けた。
「さらに《密林の黄金樹液》は自分の昆虫族モンスターの攻撃力を300アップさせる!!」
《究極完全成態 グレート・モルフォ》(ATK3500→3800)
《クィーン・ネオバグ》(ATK3000→3300)
《ネオバグ》(ATK1800→2100)
「そして1度フィールドを離れた事により、俺は《クィーン・ネオバグ》の効果をもう1度発動できる!デッキから《ネオバグ》を特殊召喚だ!!」
さらに産み落とされた卵の殻を突き破り、新たな『ネオバグ』が誕生する。
「新たな力、ここで試させてもらうぞ!!俺はレベル4の《ネオバグ》2体でオーバーレイ!!」
光の渦の中へ2体の昆虫型生命体が飛び込んだ。
「エクシーズ召喚!現れろ!《アサルトショット・マンティス(★4/炎/昆虫/エクシーズ/2200・1300)》!!」
両前足に機銃を備えたカマキリ型の生命体が他の昆虫に並んだ。
「え、エクシーズ召喚まで・・・!!」
カケルは歯を噛み締めた。
「《密林の黄金樹液》の効果により攻撃力300アップだ!!(ATK2200→2500)さらに《アサルトショット・マンティス》の効果を発動!!」
木嶋は《アサルトショット・マンティス》の下の重なっているカードを取り出し言った。
「1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分フィールドの昆虫族モンスターの攻撃力は800アップする!!」
《究極完全成態 グレート・モルフォ》(ATK3800→4600)
《クィーン・ネオバグ》(ATK3300→4100)
《アサルトショット・マンティス》(ATK2500→3300)
木嶋のフィールドの昆虫達は仲間の力を受け、さらに凶暴になってゆく。
「かなりヤバいぜこいつは・・・!!」
焦るカケルを余所に、木嶋は笑い光の勇者を指差した。
「バトルだ!!まずは《アサルトショット・マンティス》で、《BVF・バスターマイデン》を攻撃!!」
照準を光の勇者に合わせ、《アサルトショット・マンティス》は狙いを定め、機銃を掃射する。
「リチャードから聞いたぞ!!お前のモンスターはフィールドを離れたら、他のモンスターを特殊召喚できるんだってな!!だが、《アサルトショット・マンティス》はダメージステップ終了時までバトルする相手モンスターの効果を封じる!!」
その時。カケルは透かさず、セットしたカードを開いた。
「だったらこれだ!リバースカードオープン!罠カード《鋼の勇者》!!このカードは自分の「BVF」が特殊召喚されたモンスターと戦闘する時、その「BVF」の攻撃力をターン終了時まで元々の攻撃力分アップさせる!(ATK2800→5600)」
罠カードの力を受け、光の勇者は黄金のオーラを放ち始める。木嶋は焦り、手札のカードを取り出した。
「ちっ!俺は手札の《鋼鉄装甲蝶々(☆4/光/昆虫/1800・1200)》の効果を発動!このカードを手札から捨てることで、このターン自分フィールドの昆虫族モンスターは戦闘では破壊されず、ダメージは0になる!」
木嶋の手札から出現した蝶は鋼鉄の羽根を翻し、《アサルトショット・マンティス》の攻撃を逸らした。
「躱したか・・・。けど、このターンもうお前のモンスターじゃ《BVF・バスターマイデン》は倒せないぜ!」
カケルの言葉に木嶋は笑う。
「へっ、それもこのターンまでだ!次のターンからお前は俺のモンスターに怯える他ねぇんだよ!!俺はターンエンド!!」
木嶋のターンが終了したと同時に《BVF・バスターマイデン》の攻撃力は元に戻った。(ATK5600→2800)
カケルは一呼吸置いた。
「俺は信じる・・俺のデッキを・・・。俺のターン、ドロー!!!」
引いたカードを確認したカケルは笑う。
「来てくれたか・・・!!俺は装備魔法《勇者の聖剣ーブレイヴソード》を発動!!こいつを《BVF・バスターマイデン》に装備するぜ!!」
勇者の足下を裂き、輝く剣が出現する。光の勇者はそれを手に取ると大きく振りかざし、敵に向けて構えた。
「このカードを装備したモンスターは戦闘では破壊されなくなる!!そして、装備モンスターが相手モンスターと戦闘し、そのモンスターを倒せなかった場合、ダメージ計算後にそのモンスターを破壊する!!」
木嶋は苦い顔をする。
「このガキ・・・土壇場でそんなカードを・・・!!」
カケルは叫んだ。
「行け!!《BVF・バスターマイデン》!!《アサルトショット・マンティス》を攻撃!!」
光の勇者はスラスターを噴かし、上空へと飛び上がる。そして構えた剣を急降下と共に振り下ろした。
「『縦一文字切り』!!!」
しかし、その一撃では《アサルトショット・マンティス》は砕けない。
「ぐっ・・!!(LP4000→3500)《勇者の聖剣ーブレイヴソード》の効果発動!!《アサルトショット・マンティス》を破壊だ!!」
勇者の持つ聖剣が光り輝く。その眩い光に包まれ《アサルトショット・マンティス》は姿を消した。
「俺の《アサルトショット・マンティス》が・・・!!このガキ・・!!!」
木嶋の目に憎しみが宿る。
「まだ勝負は分からないぜ!俺はこれでターンエンドだ!!」
木嶋は静かに言った。
「どうやら本気を出す時が来たようだな・・・。希望なんざ無い事を教えてやる・・俺のターン!!」
デッキからカードを引いた木嶋はすぐさま叫んだ。
「思い知れ・・・ヘラルド様の力を!!《究極完全成態 グレート・モルフォ》の効果発動!!自分の墓地の昆虫族モンスターを2体除外することで、フィールドに存在するこのカードより攻撃力の低いモンスターを全て破壊する!!」
カケルはたじろいだ。
「な、なんだと!!」
木嶋は段々と黒いオーラを帯びて行く。墓地から2枚のカードを取り出し木嶋は言った。
「俺は墓地の《アサルトショット・マンティス》と《ネオバグ》を除外し、攻撃力4600以下のモンスターを全て破壊する!!!」
昆虫の王はその巨大な翼を翻し、無数の鱗粉を突風と共に飛ばした。鱗粉は鋭い針となり、場のモンスター達を襲う。光の勇者の装甲は砕け散り、虫の女王は悲痛な叫びを上げ、消え去った。
「お前、自分のモンスターまで・・!!」
カケルの言葉に木嶋は笑う。
「たかが《クィーン・ネオバグ》如き《究極完全成態 グレート・モルフォ》にとっては必要経費だ!!昆虫の王の糧となるならそれでいい!!」
カケルは言う。
「自分のモンスターを愛してないのかよあんたは!《BVF・バスターマイデン》の効果発動!このモンスターがフィールドを離れた時、墓地の「BVF」を1体特殊召喚できる!!俺は《BVF・バスターローダー》を守備表示で特殊召喚!!」
墓地が輝き、黄金のトランスポーターが復活する。
「そんなモンスターなんざ蹴散らしてくれる!!速攻魔法《オールナイト・ファイト》!!このカードを発動したターン、フィールドに存在するモンスターは全て攻撃表示になり、表示形式を変更できない!!」
木嶋の発動した魔法により『バスターローダー』は攻撃表示に変更される。カケルは苦い顔をした。
「バトルだ!!《究極完全成態 グレート・モルフォ》で《BVF・バスターローダー》を攻撃!!『モス・ポイズニック・ハリケーン』!!!」
昆虫の王より放たれた毒風は、『バスターローダー』目掛けて飛んで行く。その瞬間カケルが叫ぶ。
「《BVF・バスターローダー》は1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない!!」
しかし、木嶋は構わず続けた。
「ちっ!だが、ダメージは受けてもらうぞ!!」
毒風はフィールドを飛び越え、カケルを吹き飛ばした。その衝撃にカケルの体は舞い上がり、勢い良く壁に叩き付けられた。
「かはっ・・・・。(LP3500→400)」
うつ伏せに倒れ込むカケル。木嶋は笑いながら言った。
「ふははは!!どうだクソガキが!!思い知ったか!!これがヘラルド様の力だ!!!お前らのような危険因子はこうなるってことをよく覚えておけ!!」
カケルはゆっくりと顔を上げる。
「・・・どうして俺たちが、危険因子なんだ・・・?」
その言葉に木嶋が返す。
「当然だろ!?使い物にならなかったとはいえ『0042』が『神の鉄槌』の現し身であることは変わらねぇ!!お前らはその『0042』を庇い、しかも連れ戻そうとまでしてやがる!あんな化け物が外で暴れてみろ!事実を知った街の住人はパニックになる!!そんなことも分からないのか!?」
カケルは言った。
「あんたらは何がしたい?この『DWA』で何を企んでんだ?」
木嶋も言葉を続ける。
「俺達は世界の再建を目指している!『神の鉄槌』によって破壊されたこの世界を『神の鉄槌』の力を持ってして創り直す!その為の『0042』だった!だが、何者かによって『0042』の記憶は消され、外へと放たれた。必死の捜索の末に発見した時、お前の仲間が『0042』を庇ったんだ!!”靴を直してない”とか言う下らん理由でな!!」
「下らなくなんかねぇ!!!」
カケルは叫んだ。
「下らなくなんか・・ねぇ!!それは・・あいつにとって・・・遊牙にとって、大事な・・・大事な約束だったんだ!!」
木嶋は声を荒げる。
「そんなこと知ったこっちゃねぇ!!ヘラルド様の名誉の為、お前はここで叩き潰す!!」
カケルは立ち上がり言った。
「そのヘラルドって奴が、どんだけ悪い奴か知ってるのか!!?」
その言葉に木嶋は激昂する。
「ヘラルド様を侮辱する気か!!ヘラルド様はこの世界の再建の為、平和を取り戻すために身を削って働いている!!俺はその思想に賛同してここに来たんだ!!それを否定する意味がわかってるのか!!」
カケルは静かに言った。
「あんた・・・騙されてるんだよ・・・。ヘラルドに・・!」
カケルの言葉を遮るように木嶋は言い放つ。
「黙れ!!これ以上の侮辱は許さねぇぞ!!」
カケルは呟く。
「じゃあ、分からせてやる・・・このデュエルで!俺は《BVF・バスターローダー》の効果を発動!このカードがフィールドに存在する時に自分がダメージを受けた場合、そのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「BVF」を、手札・墓地から特殊召喚できる!!墓地より蘇れ!!《BVF・マイデン》!!」
紅蓮のヒーローが眩い光と共に復活し、カケルの前に降り立った。
「そんなモンスター出した所で何になる!!次のターン、《究極完全成態 グレート・モルフォ》の効果で破壊するまでだ!!俺はカードを1枚セットしてターンエンド!!」
その瞬間にカケルが口を開く。
「このターンのエンドフェイズに《勇者の聖剣ーブレイヴソード》の効果を発動!このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズに、デッキから「BVF」を1体手札に加える!俺はこの効果で《BVF・ハイパワードリル(☆5/地/機械/1600・1700)》を手札に加える!そして、俺のターン!!」
カケルは目を閉じた。
「(遊牙は俺を信じて背中を預けたんだ。俺は絶対に負けない。負ける訳にはいかねぇんだ。だから、頼む!俺のデッキ・・・!!)」
そしてデッキの手を伸ばし、カードを引く。
「ドロー!!!」
引いたカードは、烈火纏いし紅き隼。それを確認したカケルはフッと笑った。
「そうだよな・・・ここで負けるなんて、できねぇもんな・・・!!俺は手札から《BVF・ファイアーファルコン(☆3/炎/機械/1200・1200)》を召喚!!!」
叫びと共に、カケルの手札から炎の隼が飛び立つ。
「そして手札の《BVF・ハイパワードリル》の効果発動!自分のフィールドに《BVF・マイデン》が存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる!!」
イエローのボディを煌めかせ、巨大なドリルを備えたマシンが床を突き破り出現する。
「そして!自分のフィールドに《BVF・ファイアーファルコン》《BVF・ハイパワードリル》が揃っている場合、手札の《BVF・オーシャンキャリアー(☆4/水/機械/1000・2000)》を特殊召喚できる!!」
最後に水しぶきを上げ、青い潜水艦が浮上した。
「これで・・・全部揃った・・・!!!」
木嶋は笑う。
「どのモンスターも雑魚ばかり!!俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》には遠く及ばねぇ!!」
しかし。カケルもまた笑っていた。
「個々の力は小さいかもしれねぇ。だが、それが一つになった時、奇跡は必ずやって来る!!これが俺のとっておき!!最強の切り札だ!!レッツ!!アルティメット・ユナイト!!」
カケルは天を指差し叫ぶ。それと同時に5体、全ての「BVF」が飛び立つ。
「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・バスターローダー》《BVF・ファイアーファルコン》《BVF・ハイパワードリル》《BVF・オーシャンキャリアー》で究極融合合体!!!」
『マイデン』を格納し、人型へと変形した『バスターローダー』。その足へ分離した『ハイパワードリル』のボディが、2つに分かれた『オーシャンキャリアー』は腕と肩へそれぞれ合体する。『ファイヤーファルコン』の翼は背中へ。分離したドリルは胸へ合体し、3つ分かれ、そこには「BVF」のシンボルマークが。最後に『ファイヤーファルコン』の頭部を冠のように、『マイデン』の頭部にドッキングした。
「5つの正義を束ねし時、奇跡の勇者が現れる!!見よ!!これが勇気の究極進化系!!合体召喚・・・!!!」
凄まじい轟音と熱風。勇気の行き着く、その究極の姿。今最強の勇者が降臨する。
「勝利へ導け!!《BVF・グレートバスターマイデン(☆10/光/機械/融合/3000・3000)》!!!」
その姿に木嶋は圧倒される。
「な、なんだこのモンスターは・・・。」
カケルは言った。
「これが俺を勝利へと繋ぐ最強の切り札!!!『グレートバスターマイデン』だ!!!」
木嶋はすぐに平静を取り戻し、言い放った。
「だが、その攻撃力は高々3000!俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》の攻撃力4600には勝てない!!!」
カケルは言った。
「言っただろ、俺は負けない。最強の勇者はどんな敵にも屈しない。例えそれが、越えられないほど大きな壁だったとしても!!そこに勇気がある限り、俺の闘志は燃え続ける!!」
カケルの言葉と同時に勇者の瞳が光る。
「《BVF・グレートバスターマイデン》の効果!!相手フィールドに存在する全てのモンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする!!」
勇者の放つ光に、昆虫の王は怯み縮んで行く。(ATK4600→2300)
「ば、バカな!!俺の・・・俺の《究極完全成態 グレート・モルフォ》が!!!」
相手のモンスターを指差しカケルは叫んだ。
「行くぞ!!バトルだ!!《BVF・グレートバスターマイデン》で《究極完全成態 グレート・モルフォ》を攻撃!!!」
勇者は光の剣を取り出し、爆風とともに飛び立つ。
「ふざけるな!!『グレート・モルフォ』は倒させねぇ!!罠カード発動!!《ヒール・ノックアウト》!!!」
木嶋は透かさずセットしていたカードを開く。しかし、それと同時にカケルも声を上げた。
「《BVF・グレートバスターマイデン》はバトルフェイズ中に相手が発動したカードの効果を無効にする!!よって《ヒール・ノックアウト》は無効だ!!」
その言葉と共に木嶋の場から罠カードが消滅する。見上げたそこには勇者の剣が。
「『真っ向唐竹割り』!!!」
振り下ろされた剣は、悪しき虫の王を打ち砕いた。
「ぐはっ・・!!!(LP4000→3300)」
カケルは手札に残った最後のカードを取り出す。
「速攻魔法《勇気の一撃—ブレイヴ・スラッシュ—》を発動!!自分フィールドの「BVF」融合モンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、その攻撃力を500アップしてもう一度攻撃できる!!」
勇者の剣は巨大化し、炎を纏う。(ATK3000→3500)
「この・・俺が・・・1番隊の木嶋直都が・・・!!」
たじろぐ木嶋。カケルは声を擦り切らすほどに叫びを上げた。
「これで終わりだ!!行けぇぇええ!!!《BVF・グレートバスターマイデン》!!!」
炎の剣を掲げ、勇者は一気に駆け出した。
「『激熱のファイナル・ブレイヴ・スラッシュ』!!!」
その一閃は地を裂き、空を焦がし、真っ直ぐ木嶋へ向かった。
「ぐあああぁぁぁっ!!!(LP3300→0)」
そのエネルギーと爆風に木嶋は吹き飛び、倒れ込んだ。それと同時に木嶋を包んでいた黒いオーラが消え去った。
『勝者:仁ノ森カケル』
カケルはD・ディスクを仕舞い、木嶋へ近づく。
「あんたの本当の目的を教えてくれ。」
カケルの言葉に木嶋は言った。
「目的だと・・・?俺は、この街の平和を取り戻す。それだけだ。ヘラルド様はそれを実現すると約束してくださった。だから俺は1番隊の隊長になって、街の平和を乱すお前ら危険因子を・・・。」
木嶋の話にカケルは溜め息をついた。
「ヘラルドって奴は街の平和なんか考えちゃいない。あいつにあるのは”ノーン”とかいう奴への忠誠心だけだ。」
木嶋は不可解な顔をする。
「ノーンだと?なんだそいつは。ヘラルド様がそんな得体の知れないものに従っているわけがねぇ!」
その言葉を受けカケルは口を開いた。
「ヘラルドって奴は、世界の平和なんかどうだっていいらしい。ただ、ノーンという奴に従っているだけだ。恐らくルナも・・・お前らが『0042』って呼んでる子もノーンの命令を受けて造ったに違いねぇ。そして、その子を連れ戻せってあんたらに命令したのもな。」
木嶋は言った。
「バカな・・・!『0042』はリフォーマット実験に適合しなかった失敗作だぞ!仮に”ノーン”とかいう奴が居たとしてそいつは今更『0042』で何をする気だ!お前の話は辻褄が合わねぇぞ!!」
カケルも言葉を返す。
「じゃあ、ヘラルドはルナを、『0042』を使って何をしようとしてるのか、お前には分かるのかよ?」
木嶋は言葉を詰まらせる。
「それは・・・ヘラルド様には何か大きな目的があるんだろう。ヘラルド様は・・・俺に街の平和を約束したんだ・・・!!あの方は俺の希望なんだ!!」
その時。
部屋の天井が開き、何かの液体が流れ込んで来た。
「な、なんだこれ!!」
カケルと木嶋を囲むようにその液体は壁を伝い、床へと流れて来る。その液体を見て木嶋は驚愕した。
「こいつは・・・ベークライトか!!ど、どうしてこんな物がこの施設にあるんだ!!」
その時、木嶋のD・ディスクの《究極完全成態 グレート・モルフォ》のカードが光った。
『今までご苦労だったよ木嶋君。』
部屋に響く声。それを聞いた木嶋は叫んだ。
「その声は、ヘラルド様!!これは一体どういう事ですか!!?」
木嶋の問いにヘラルドは平然と答えた。
『この施設は元々、特別な実験施設でね。スパイが忍び込んだ時や敵が攻めて来た時など、最悪の事態を想定してこういう”ギミック”があるのさ。』
その言葉にカケルは思い出す。
「(遊牙の記憶の中にあった鉄格子の檻もこれと同じことか・・・!!)」
木嶋は大声で訴える。
「何故ですか!!何故、俺にこんな事を!!」
ヘラルドは当たり前のように言った。
『何故って、君が失敗したからだよ。残念だなぁ、もうちょっと頑張れると思っていたんだが。その少年を今通すわけには行かないんだよ。どうやら既に二人逃してるみたいだしね。』
じりじりとその液体は足下へ近づいて来る。
「ヘラルド様は街の平和を取り戻し、それを見せれくれると俺に約束しましたよね!!?あれは嘘だったのですか!!?」
必死の叫びをあしらうようにヘラルドは言った。
『ああ。そんなことも言ったかな。そうだ、木嶋君。人生の最後だし、君に真実を教えてあげよう。』
木嶋の目に涙が浮かぶ。声にならない声を漏らし、ヘラルドの言葉を聞いた。
『私はこの街の平和など全く興味ない。全ては”ノーン”様の為。「ゲート」を開き、『神の鉄槌』を復活させ、この世界を”再建”する。そうすれば全てはノーン様のものとなる。私はその手伝いをしている訳だ。理解できたかな?』
木嶋は小さく口を開く。
「嘘だ・・・そんな・・・。」
ヘラルドは淡々と告げた。
『”名誉の戦死”ってことで名前くらいは覚えといてあげるよ。それじゃさよなら。1番隊総隊長、木嶋直都君。』
ヘラルドの言葉が終わったと共に《究極完全成態 グレート・モルフォ》のカードは灰となって散った。
「おい、あんた!どうするんだよ!!あの液体、とても熱そうで触れっこないぜ!?」
カケルが話しかけるも、木嶋は膝を付いたまま動かない。
「・・・嘘だ・・・。」
カケルは続けて言う。
「天井の排気口・・・あそこなら脱出できそうだけど、壁は液体に覆われてるし登れねぇ。なぁ、おい!あんたも一緒に考えてくれよ!」
木嶋はうずくまった。
「もう・・・どうでもいい・・。」
カケルはしびれを切らし、木嶋の胸ぐらを掴んだ。
「あんた、街の平和を取り戻すんじゃなかったのかよ!!?平和が戻った街を見たいんじゃないのかよ!!?」
木嶋は細い声で言う。
「そんなの・・・もう無理だろ・・・俺は・・ここで・・・。」
迫る液体。室温が上がり、カケルは汗をかき始めた。
「んなのわかんねぇだろ!!まだ、まだ希望はある!!諦めんじゃねぇ!!」
突然、木嶋は叫んだ。
「どこに希望があんだよ!!!約束は嘘で!!俺はずっと嘘をつかれてて!!!目の前には高温のベークライト!!!ドアも塞がってる!!!こんな状況で希望なんてあるか!!!」
「ここに、あるさ!!」
その時。天井の排気口が開き、ロープが降りて来た。カケルは天井を見上げる。そこには、知っている顔があった。
「あんたは、ジェイミー・ホーガン!!!」
ホーガンは叫んだ。
「掴まれ!!二人とも!!」
カケルは急いでロープを掴んだ。動かない木嶋にカケルは叫んだ。
「あんたも来いよ!!」
木嶋は言う。
「俺は・・・もういい。ここを出たって、行く所なんかありはしねぇ。おれはここで”名誉の戦死”をするんだ。」
カケルは木嶋の腕を引っ張った。
「今度は俺が約束する。街の平和を、それをあんたに見せることも。だから、お前を散々騙して、俺の仲間を、ルナを得体の知れねぇことに使おうとしてるヘラルドを、その上に居るノーンって奴を、一緒にぶっ倒そうぜ!!」
木嶋は顔を上げた。
「・・・本当は・・・まだ、諦めたくない・・・。街の平和を。本当に・・・約束できるのか・・・。お前みたいな子どもに。」
カケルは笑った。
「”約束”だけはどうしても守らなきゃいけねぇ。これは、俺の仲間の信念であって、俺の信念でもあるんだ。」
木嶋はロープを掴んで言った。
「本当に、実現してもらうぞ。お前達に。」
カケルは笑顔で言う。
「任せろよ。」
その顔を見た木嶋はロープを掴む手を固く握りしめた。
そして。液体が足に浸かる寸前。ロープが引き上げられ、二人は部屋を脱出した。
次回第16話「凛香・決意の決闘」
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101 | 4:逆襲の木嶋 | 1000 | 2 | 2015-05-06 | - | |
67 | 5:約束の価値 | 900 | 2 | 2015-05-07 | - | |
126 | 6:四賢人のヘラルド | 1034 | 2 | 2015-05-07 | - | |
47 | 7:激闘のデッドジャック | 1014 | 2 | 2015-05-08 | - | |
52 | 8:潜入!『DWA』 | 872 | 2 | 2015-05-11 | - | |
65 | 補足編:登場オリカ説明:木嶋使用カード | 706 | 2 | 2015-05-14 | - | |
110 | 9:風の王者・2番隊隊長リチャード | 950 | 2 | 2015-05-14 | - | |
95 | 10:41番目のデュエルロイド | 885 | 2 | 2015-05-18 | - | |
167 | 11:閉ざされた記憶 | 1180 | 2 | 2015-05-22 | - | |
65 | 12:全てを見通す者『Known』 | 890 | 4 | 2015-05-26 | - | |
49 | 13:決着 武者VS騎士 | 934 | 2 | 2015-05-30 | - | |
50 | 14:四賢人最後の一人・その名はマーナ | 914 | 2 | 2015-06-02 | - | |
116 | 15:立て!グレートバスターマイデン | 928 | 2 | 2015-06-10 | - | |
47 | 15.5:魂の誤作動 | 829 | 2 | 2015-06-11 | - | |
122 | 16:凛香・決意の決闘 | 963 | 2 | 2015-06-12 | - | |
112 | 17:死闘の果てに | 1042 | 2 | 2015-06-12 | - | |
46 | 18:月の使者―ルナティックロイド― | 911 | 2 | 2015-06-15 | - | |
96 | 19:覚醒の証・月狂眼の覚醒龍 | 940 | 2 | 2015-06-16 | - | |
102 | 20:生きとし生ける者の希望 | 963 | 2 | 2015-06-17 | - | |
81 | 21:戻ってゆく日常 | 911 | 2 | 2015-06-18 | - | |
84 | 22:遊牙先生のデュエル教室 | 1101 | 4 | 2015-06-18 | - | |
90 | 23:意地の張り合い!昆虫レース開幕? | 927 | 3 | 2015-06-22 | - | |
119 | オリカ説明:リチャード編 | 804 | 2 | 2015-06-22 | - | |
96 | 23.5:輝岩鎧竜の逆鱗 | 859 | 4 | 2015-06-23 | - | |
47 | 24:開幕!チャリティーデュエル大会 | 904 | 3 | 2015-06-24 | - | |
78 | メインキャラ解説 | 735 | 4 | 2015-06-25 | - | |
106 | 25:ルナ、デュエルします! | 1055 | 3 | 2015-06-25 | - | |
66 | 26:心に巣食う魔物 | 913 | 3 | 2015-06-26 | - | |
76 | 27:太古のデュエル!恐竜VSマンモス? | 944 | 3 | 2015-06-27 | - | |
82 | 28:銀河に響け!スペースアイドル再び | 953 | 3 | 2015-06-29 | - | |
121 | 29:二日目開始!誘惑される遊牙? | 887 | 3 | 2015-07-01 | - | |
94 | 30:ルナ、またまたデュエルします! | 930 | 3 | 2015-07-10 | - | |
127 | 31:光差す道となれ! | 998 | 5 | 2015-07-11 | - | |
105 | 32:ぶつかり合う本気 | 899 | 4 | 2015-07-20 | - | |
214 | 33:出揃った出場者 | 2024 | 3 | 2015-07-22 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/11/23 新商品 TERMINAL WORLD 2 カードリスト追加。
- 11/24 18:18 評価 1点 《エビルナイト・ドラゴン》「《真紅眼の黒竜》で良すぎるモンスタ…
- 11/24 18:11 評価 3点 《千年原人》「のちに《千年の眠りから覚めし原人》としてリメイク…
- 11/24 18:06 評価 3点 《トライホーン・ドラゴン》「のちに《メメント・ホーン・ドラゴン…
- 11/24 18:01 評価 4点 《ファイヤー・ウイング・ペガサス》「唯一のレベル6・炎・獣族。 …
- 11/24 17:54 評価 3点 《メテオ・ドラゴン》「《メテオ・ブラック・ドラゴン》の融合素材…
- 11/24 17:49 評価 4点 《メテオ・ブラック・ドラゴン》「同じ素材で《流星竜メテオ・ブラ…
- 11/24 17:43 ボケ ウィッチクラフトマスター・ヴェールの新規ボケ。ほーう?では君が、私…
- 11/24 17:38 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 11/24 17:32 評価 3点 《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》「デーモンとレッドアイズを繋…
- 11/24 17:19 評価 4点 《串刺しの落とし穴》「発動タイミングが攻撃宣言時というレアな落…
- 11/24 17:12 評価 6点 《トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール》「召喚酔いしないトゥ…
- 11/24 16:39 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 11/24 16:25 評価 4点 《ジェムナイト・ルマリン》「《ジェムナイト・パーズ》の融合素材…
- 11/24 16:15 デッキ 俺の最強のシュラッグ
- 11/24 16:11 評価 7点 《メタル・リフレクト・スライム》「主にラーデッキ等でEXデッキか…
- 11/24 15:52 評価 1点 《レッドアイズ・ブラックメタルドラゴン》「《メタル・デビルゾア…
- 11/24 15:52 評価 5点 《ジェムナイト・ラピス》「《ジェムナイトレディ・ラピスラズリ》…
- 11/24 15:42 評価 8点 《ジェムナイト・ルビーズ》「《ジェムナイト》の融合モンスターの…
- 11/24 15:39 評価 1点 《メタル・デビルゾア》「メタル化の強化で《メタル化・魔法反射装…
- 11/24 15:33 評価 1点 《女剣士カナン》「カードのイラストより希少性で人気が高いくっこ…
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そしてストーリーも絶望に堕ちた木嶋さんに希望の手を差し伸べる美しい内容で、とても読み応えがありました。 (2015-06-10 07:07)
5体合体はやってみたかったネタです。1体のモンスターが複数のモンスターと融合してパワーアップするのはコンタクト融合に似てますね。今気づきました。木嶋さんはこれから味方として動いてくれるのかは、次回からにご期待ください。 (2015-06-11 23:32)