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HOME > 遊戯王SS一覧 > 32:ぶつかり合う本気

32:ぶつかり合う本気 作:ほーがん

第32話「ぶつかり合う本気」



『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』


笑ってカケルは言う。

「先攻はもらうぜ!俺のターン!!手札から《BVF・ファイアーファルコン(☆3/炎/機械/1200・1200)》を特殊召喚!このモンスターは自分のフィールドにカードが存在しない場合、手札から特殊召喚できる!!」

赤き隼は炎熱を纏い、空中を飛び回る。

「そしてこいつを召喚だ!さぁ、来い!《BVF・マイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》!!」

紅蓮の勇者は、その鋼鉄のボディを煌めかせフィールドに降り立った。

「いつものってとこね。またファイアーマイデン?」

凛香の呟きにカケルはチッチと指を振る。

「そいつはどうかな?俺はさらにこいつを特殊召喚するぜ!!その翼で闇を切り裂け!《BVF・マイティウィング(☆4/風/機械/1800・1000)》!!」

遥か上空でその翼が光る。急降下し、カケルの前に現れた高速戦闘機はスラスターを噴かし垂直に着陸した。

「このモンスターは自分フィールドに「BVF」モンスターが2体以上存在する場合、手札から特殊召喚できる!!行くぜ!!レッツ!!ブレイヴ・ユナイト!!」

掛け声に合わせ、飛び立つ3機のマシン。

「俺は《BVF・マイデン》《BVF・ファイアーファルコン》《BVF・マイティウィング》で融合合体!!」

前後で分離したマイティウィングの後部は、ファイアーファルコンの翼に合体。その翼をより巨大なものに変化させる。そしてマイデンの背中へその翼は合体し、残った前部は手足と胸の装甲にドッキングした。


「紅き火鳥と疾風の翼!2つの心を1つに合わせ、勇気の炎で闇を引き裂け!炎翼の勇者、ここに見参!合体召喚!!《BVF・カイザーマイデン(☆8/炎/機械/融合/2700・2000)》!!」


巨大な翼を持った勇者は、空中からカケルの前へ降り立ち大地を振るわせた。

「新しいブレイヴファイター・・・一体どんな能力があるのかしら?」

「それはこれからは分かるぜ!カードを2枚セットしてターンエンドだ!」



凛香はデッキに手を伸ばした。

「本気のデュエルね・・・。見せてあげるわよ!私のターン!」

引いたカードを確認した凛香は、手札のカードを取り出した。

「永続魔法カード《急速進化薬》発動!このカードは1ターンに1度自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札のモンスター1体を墓地に捨てることで、捨てたモンスターより低いレベルの恐竜族モンスターをデッキから特殊召喚できる!私は手札の《ディメンションドクス(☆8/地/恐竜/2300・2000)》を墓地に捨てて、デッキから《ミラクルハンマーヘッド(☆6/光/恐竜/2100・1800)》を特殊召喚!」

巨大な槌のような頭を持った恐竜が巨体を振るわせ現れる。

「そして《ミラクルハンマーヘッド》の効果発動!このモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから恐竜族モンスター1体を除外できる!私はデッキから《3頭を持つキング・恐獣(☆6/地/恐竜/1600・1200)》を除外する!」

凛香のデッキからカードが迫り出す。

「さらに墓地の《ディメンションドクス》の効果発動!このカードを墓地から除外する事で、除外されている恐竜族モンスターを特殊召喚できる!私は《3頭を持つキング・恐獣》を特殊召喚!」

3つの頭をもった恐獣は咆哮を上げながら、凛香の前に躍り出た。

「これでレベル6のモンスターが2体か・・・。やる気だな凛香!!」

カケルの声に答えるように凛香は言った。

「行くわよ!!私はレベル6の《ミラクルハンマーヘッド》と《3頭を持つキング・恐獣》でオーバーレイ!!」

2体の恐竜は光の渦へ飛び込んだ。


「永劫の氷地に眠る、太古の強者よ!研ぎ澄まされた本能で時代の波に牙を剥け!エクシーズ召喚!唸れ!《氷結恐竜 クリオロフォ(★6/水/恐竜/エクシーズ/2200・2000)》!!」


特徴的なトサカもった恐獣は凄まじい冷気を放ちながら、その牙を光らせた。

「まだよ!こんなものじゃ終わらせないわ!私は手札から《神速のティラプトル(☆4/地/恐竜/1700・700)》を召喚!」

獰猛な小型の肉食獣は、軽快な動きで凛香の前に現れた。

「《神速のティラプトル》の効果発動!このカードの召喚に成功した時、デッキからレベル6以下の恐竜族モンスターを手札に加えることができる!私はデッキから《ロックブレイカー(☆6/地/恐竜/2600・200)》を手札に加えるわ!」

さらに凛香は言葉を続ける。

「《氷結恐竜 クリオロフォ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使うことで相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力を0にする!『フリージング・ドレイン』!!」

放たれた冷気は渦を巻き、炎翼の勇者を囲んだ。その鋼鉄のボディは凍り付いていき、力を失った勇者は膝を付いた。(ATK2700→0 DEF2000→0)

「そして《神速のティラプトル》の効果発動!手札の恐竜族モンスターを捨てることで、このカードのレベルをターンの終わりまで捨てたモンスターと同じレベルにする!私は手札の《ロックブレイカー》を捨てて《神速のティラプトル》のレベルを6に変更する!さぁここからが本番よ!速攻魔法《暴君強襲!》発動!墓地から《3頭を持つキング・恐獣》を特殊召喚!」

カケルは思わず身構えた。

「またレベル6のモンスターが2体!まだ行くのか・・・!」

凛香は笑って言う。

「本気でって言ったのはカケルでしょ!手加減なんかしてあげないんだから!私はレベル6の《神速のティラプトル》と《3頭を持つキング・恐獣》でオーバーレイ!」

再び出現した光の渦へ2体の肉食獣は飛び込んで行く。


「大地を闊歩する重鎮よ!その威厳溢れる姿で、抗う者を踏み砕け!エクシーズ召喚!轟け!《重鎮恐竜 カマラマス(★6/地/恐竜/エクシーズ/2300・2800)》!!」


長い首と尾をしならせ大地の重鎮は、その巨体を誇示するかのようにフィールドを闊歩した。

「流れるような連続エクシーズ・・・!魅せてくれるじゃねーか!」

カケルの言葉通り、凛香は流れるように進めた。

「ふっ、まだまだよ!《重鎮恐竜 カマラマス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で手札・墓地からレベル6以下の恐竜族モンスターを特殊召喚する!私は墓地から《ロックブレイカー》を特殊召喚!!」

2対の角を持つ角竜は、墓地から勢いよく出現した。

「この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。でも効果を使うことはできる!私は《ロックブレイカー》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、除外されている恐竜族モンスターを特殊召喚できる!来て!《ディメンションドクス》!」

幻のような身体をもった竜脚獣はフワフワと浮きながら凛香の前に現れる。

「さらに《ロックブレイカー》は自身の効果で特殊召喚したモンスターと同じレベルになる!よってレベルは《ディメンションドクス》と同じ8になる!」

カケルは思わず声を上げた。

「レベル8ってことは、まさか!!」

それに答えるように凛香は言い放った。

「私はレベル8になった《ロックブレイカー》と《ディメンションドクス》でオーバーレイ!!6500万年の時を越え、王者の牙は蘇る。大地を揺るがすその咆哮に万物よ跪け!」

そして。炎熱の恐獣は光の渦からその姿を現した。


「エクシーズ召喚!太古の覇王《怒濤恐竜 ガルノダウラス(★8/炎/恐竜/エクシーズ/3300・600)》!!」


猛火と共に恐獣は咆哮を上げた。炎熱を振り撒き、恐獣はカケルを見下ろした。

「これが凛香の本気か・・・面白れぇ!!」

自らを見下ろす3体の恐竜にカケルは笑う。凛香はカケルのフィールドを指差し言った。

「このターンで終わりよ!バトル!《氷結恐竜 クリオロフォ》で《BVF・カイザーマイデン》を攻撃!『フリージング・スタンプ』!!」

冷気を帯びた恐獣は、凍り付いた勇者に突進する。その巨体から繰り出される一撃に勇者の装甲はむなしく崩れ去った。

ように思えた。しかし。

「俺はこの瞬間《BVF・カイザーマイデン》の効果発動!!」

カケルの叫びに恐獣の動きが止まる。

「この効果はこいつがフィールドに存在する時、1度だけ発動できる!!相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力がこのカードを上回っている場合、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!!」

「そんな!?」

勇者の瞳に光が灯る。装甲に付いた氷は砕け散り、勇者は立ち上がった。そして背中の巨大な翼を取り外すと、ブーメランのように投げつけ3体の恐竜を切り裂いた。

「わ、私の恐竜達が・・・!」

カケルはさらに言った。

「そして!この効果で破壊したモンスターの数だけ、墓地から「BVF」モンスターを特殊召喚できる!!さぁ蘇れ!!《BVF・マイデン》、《BVF・ファイアーファルコン》、《BVF・マイティウィング》!!」

カケルの墓地が輝き、3体のBVFが復活する。

「へへっ、お前がクリオロフォの効果で攻撃力を下げてくれたおかげだぜ!!ありがとな!!」

凛香は少しムスッとした顔で言う。

「むっ、なんかむかつく・・・。まぁ、いいわ。これから取り返せばいいんだもの!私はカードを2枚セットして、ターンエンド!」



カケルは得意げに言う。

「さぁ、戦いはこっからだぜ!!俺のタァーン!!」

引いたカードを確認した後、カケルは言った。

「まずは攻撃力0のカイザーをなんとかしなきゃな!リバースカード発動!罠カード《スクランブル・チェンジ》!自分フィールドの「BVF」融合モンスターを除外し、そのモンスターと同じレベルの「BVF」融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!!俺は《BVF・カイザーマイデン》を除外して、《BVF・バスターマイデン(☆8/光/機械/融合/2800・2600)》を特殊召喚だ!!」

カケルの前に光輝く勇者が降り立つ。

「行くぜ!レッツ!ブレイヴ・ユナイト!!俺は《BVF・マイデン》と《BVF・ファイアーファルコン》で融合合体!!」

紅蓮の勇者のボディに、烈火の隼が合体してゆく。


「熱き思いと勇気を滾らせ、爆炎の勇者ここに見参!!合体召喚!!《BVF・ファイアーマイデン(☆6/炎/機械/融合/2200・2200)》!!!」


炎の勇者は、拳を握りフィールドに躍り出た。

「そして《BVF・バスターマイデン》の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドのこのカード以外の「BVF」を手札に戻すことで墓地からレベル4以下の「BVF」を特殊召喚できる!!俺は《BVF・マイティウィング》を手札に戻し、《BVF・マイデン》を墓地から特殊召喚!!」

カケルの墓地から紅蓮の勇者が拳を突き上げ蘇る。

「さらに手札から《BVF・マイティウィング》を召喚だ!!もう一回行くぜ!!レッツ!!ブレイヴ・ユナイト!!」

戦闘機の上に飛び乗った紅蓮の勇者は、大空へ飛び立った。


「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・マイティウィング》で融合合体!!疾風の力をその手に掴み、広がる青空へ舞い上がれ!!合体召喚!!《BVF・ウィングマイデン(☆6/風/機械/融合/2400・1700)》!!」


風の力を得た勇者は、その翼を広げる。急降下した風の勇者は地面に舞い降り、ポーズを決めた。

「この巻き返し。やっぱりカケルはすごいわね・・・。」

凛香は笑って呟く。カケルは凛香のフィールドを指差した。

「《BVF・ウィングマイデン》の効果発動!!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カードを3枚まで破壊できる!!俺はその伏せカードを破壊するぜ!!」

風の勇者は翼のジャイロエンジンから突風を起こし、凛香のカードを吹き飛ばそうとした。その瞬間、凛香のカードが開く。

「私だって負けてられないわ!罠カード《Re:オーバーレイ》発動!このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる!墓地からエクシーズモンスターを特殊召喚する!戻って来て!!《怒濤恐竜 ガルノダウラス》!!」

凛香のフィールドが燃え上がり、炎熱の恐獣が復活を遂げる。

「さらに相手フィールドのモンスター1体を、この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターのオーバーレイユニットにできる!私は《BVF・バスターマイデン》を吸収するわ!!」

「何ぃ!?」

光の勇者は炎熱の恐獣に引き込まれ、オーバーレイユニットに変化した。

「さらにもう1枚!破壊された罠カード《ジュラシック・バーニング》の効果発動!セットされたこのカードが破壊された時、墓地からレベル6以下の恐竜族モンスターを特殊召喚する!私は墓地から《ロックブレイカー》を特殊召喚!!」

並び立つ2体の恐竜。カケルは思わず笑う。

「はははっ!!さすが凛香は強えな!一筋縄じゃいかないぜ!」

凛香は言う。

「そういうカケルも強いわよ。本当にね。」
「どうしたんだよ凛香?急に冷めた顔して。」

心配そうに言うカケル。

「別に冷めてなんかないわよ!ただ、カケルは強いなぁって思っただけ。デュエルだけじゃなくてね。」

凛香は言葉を続けた。

「DWAに乗り込んだ時、私と遊牙を先に行かせて一人で戦ってくれたじゃない。あの時カケルが強さを見せてくれたから、私もヘラルドに立ち向かう事ができたの。」

カケルは困惑する。

「な、なんだよ急に。仲間と助け合うのは当然のことだろ?」

「それを当然と思えるのが、カケルの強さなのよ。私はその強さに何度も助けられた・・・。ありがとう、カケル。」

凛香の言葉を聞き、カケルは照れくさそうにした。

「よくわかんねぇけど、まぁ、なんだ!お互い強くなったって事だろ!」

凛香は頷く。

「そうね。DWAでのデュエルを経て私達は強くなった。私はこれからも、もっと強くなりたい。カケル、遊牙、ルナ。大切な仲間と一緒に。」

「ああ、俺達はいつまでも仲間だ。一緒に強くなって行くんだ。だからは今は・・・」

カケルの言葉に続けるように凛香は言った。

「全力を尽くして、本気のデュエルをする!お互い強くなる為に!さぁ、かかって来なさい!カケル!!」

「おうよ!!バトルだ!!《BVF・ファイアーマイデン》で《ロックブレイカー》を攻撃!!」

炎を纏う拳を握り、勇者は飛び出す。

「この瞬間、《BVF・ファイアーマイデン》の効果発動!!」

カケルの言葉に続けて凛香が口を開く。

「《BVF・ファイアーマイデン》が戦闘を行う時、その攻撃力はバトルの終わりまで自身以外の「BVF」モンスターの数×600アップする!!(ATK2200→2800)」

カケルは笑う。

「覚えてたか、ファイアーマイデンの能力を!」

同じように凛香も笑う。

「何年一緒に居ると思ってんのよ!そのくらい知ってるんだから!」

そして、突き出された勇者の拳は恐竜の角を砕いた。

「ううっ!!(LP4000→3800)でも、残った《BVF・ウィングマイデン》じゃ《怒濤恐竜 ガルノダウラス》は倒せないわ!!」

しかし、カケルのフィールドでカードが開く。

「罠カード《鋼の勇者》発動!自分フィールドの「BVF」1体が特殊召喚された相手モンスターとバトルする時、その攻撃力は元々の攻撃力分アップする!!俺は《BVF・マイティウィング》の攻撃力をアップするぜ!!(ATK2400→4800)」

カケルは炎熱の恐獣を指差した。

「バトルだ!!《BVF・マイティウィング》で《怒濤恐竜 ガルノダウラス》を攻撃!!」

すかさず凛香は口を開く。

「私は《怒濤恐竜 ガルノダウラス》の効果発動!!」

その言葉に続けるようにカケルが口を挟んだ。

「《怒濤恐竜 ガルノダウラス》が戦闘を行う時、オーバーレイユニットを全て使う事でフィールドのモンスターを全て破壊できる、だよな!」

炎熱の恐獣の炎がフィールドに広がり、やがて爆炎となった凄まじい衝撃にフィールドのモンスターは吹き飛ばされた。

「ふふ、カケルも覚えてるじゃない!」

爆風の中、カケルは笑う。

「へへっ、まぁな!!《BVF・ファイアーマイデン》が破壊された事で効果発動だ!!墓地より蘇れ《BVF・マイデン》!!」

紅蓮の勇者は拳を構える。カケルは凛香を指差した。

「《BVF・マイデン》で凛香にダイレクトアタックだ!!『縦一文字斬り』!!」

剣を取り出した勇者は一気に駆け出すと、凛香に向かって斬撃を飛ばした。

「うっ!!(LP3800→1900)」

ダメージによろけた凛香。しかし、その顔は笑っていた。

「やっぱりカケルは強い・・・!こんな楽しいデュエル、まだまだ終わらせたくないわね!」

「ああ、楽しいぜ!お前との本気のデュエル!!俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ!」



凛香はデッキに手を伸ばす。

「お願い、私のデッキ!私のターン!!」

そして、引いたカードと場のカードを確認し頷いた。

「ふふっ、まだ勝負はこれからよ!私は永続魔法《急速進化薬》の効果発動!手札の《暗黒ドリケラトプス(☆6/地/恐竜/2400・1500)》を墓地へ捨て、デッキから《名将・怒呂前御(☆4/地/恐竜/1500・1300)》を特殊召喚するわ!」

凛香の前に袴を履き、刀を持った恐竜が出現した。

「《名将・怒呂前御》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、墓地のレベル4以下の恐竜族モンスターを特殊召喚できる!私は《神速のティラプトル》を特殊召喚!そして私は特殊召喚したモンスターの攻撃力分のダメージを受ける・・・!」

墓地が光り、小型の肉食獣が復活する。

「ううっ・・・!!(LP1900→200)《名将・怒呂前御》の効果を使ったターン、自分フィールドのレベル4以下の恐竜族モンスターはレベル6になる!!」

カケルは身構えた。

「来るのか・・・!」

凛香は叫んだ。

「私はレベル6になった《名将・怒呂前御》と《神速のティラプトル》でオーバーレイ!!」

2体の恐竜は、フィールドに出現した光の渦へ勢いよく飛び込んだ。


「ジュラの頂きに立つ、狩猟の王よ!密林に光る眼滾らせ、全ての獲物を噛み砕け!!エクシーズ召喚!!《狩猟恐竜 アロザウラス(★6/地/恐竜/エクシーズ/2800・2000)》!!」


出現したのは鋭利な牙と爪を誇る獰猛なハンター。咆哮を上げた恐獣は威圧するようにカケルのフィールドを睨みつけた。

「ここに来て攻撃力2800か・・・。」

凛香は言い放つ。

「《狩猟恐竜 アロザウラス》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功した時、自分フィールドのカード1枚と相手フィールドのモンスター1体を破壊する!私は《急速進化薬》を破壊して、《BVF・マイデン》を破壊!!」

恐獣は長い尾をしならせ、紅蓮の勇者に叩き付けた。

「俺のマイデンが・・・!」

さらに凛香は言葉を続けた。

「《狩猟恐竜 アロザウラス》のさらなる効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、このモンスターは1度のバトルフェイズに2回攻撃できる!!」

恐獣は咆哮を上げた。凛香はカケルを指差し言う。

「バトルよ!!《狩猟恐竜 アロザウラス》でカケルにダイレクトアタック!!」

牙を剥き、恐獣は一気に駆け出す。その牙はカケルの身を貫くように思えた。

しかし。正義の味方は、どんな時でも友を護りにやって来る。

「リバースカードオープン!速攻魔法《正義の味方はいつもそばに》!!ライフを半分払い、自分のデッキ・墓地から《BVF・マイデン》を攻撃表示で特殊召喚する!!蘇れ《BVF・マイデン》!!(LP4000→2000)」

間一髪、カケルの前に紅蓮の勇者が復活する。凛香は構わず続けた。

「《正義の味方はいつもそばに》の効果で特殊召喚された《BVF・マイデン》は、このターン戦闘で破壊されない。でも、ダメージは受けてもらうわ!!《狩猟恐竜 アロザウラス》で《BVF・マイデン》にダブルアタック!!」

再び動き出した恐獣は、紅蓮の勇者に突進する。巨体から繰り出される一撃に勇者はよろめくが、決して倒れはしない。恐獣はすかざす尾を鞭のように振り、勇者のボディに叩き付けた。装甲が傷つきボロボロになりながらも、勇者は地面に背を付けなかった。

「ぐっ!!(LP2000→1100→200)」

凛香は笑って言った。

「これでお互いのライフは200。私は自分にできる事を全てやったわ。次はカケルの番、でしょ?」

「ああ・・・。そうだな・・!!」

カケルは笑う。お互いのフィールドにはモンスターが1体のみ、手札は0。全ては次のドローで決まる。

「《狩猟恐竜 アロザウラス》は攻撃したターンのエンドフェイズに守備表示になる。私はこれでターンエンド!」



カケルは目を瞑った。

「(これで全部決まる・・・!!応えてくれ、俺のデッキ!!)」

そしてデッキに手を伸ばした。

「俺のターン!!ドロー!!」

目を開き、引いたカードを確認する。そのカードを見た時、カケルは思わず笑った。

「ふふっ、お前か。ありがとよ、俺のデッキ。」

「(笑ってる・・・。何を引いたのかしら?)」

そしてカケルは笑いながら言った。

「自分フィールドに《BVF・マイデン》が存在する場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる・・・!!」

勢いよくD・ディスクにセットされるカード。カケルは高らかに言った。

「来い!!大地の覇者!!《BVF・ハイパワードリル(地/機械/☆5/1600・1700)》!!」

地面を裂き、ドリルを持った黄色いマシンが勇者に並ぶ。それを見た凛香も察したように笑う。

「なるほどね・・・。やるじゃない、カケル。さぁ!最後はかっこ良く決めてよね!!」

カケルは天を指差し叫んだ。

「やってやるぜ!!レッツ!!ブレイヴ・ユナイト!!」

2体のマシンは空中へ飛び上がった。

「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・ハイパワードリル》で融合合体!!」


「地を裂く叫びを轟かせ大地の勇者、定刻通りにただいま到着!!合体召喚!!《BVF・ドリルマイデン(☆7/地/機械/融合/2600・1200)》!!」


大地の力を得た勇者は胸のシンボルマークを輝かせ、カケルの前に降り立った。

「これがカケルの本気。カケルの全力・・・。」

凛香は呟く。カケルは恐獣を指差した。

「バトルだ!!《BVF・ドリルマイデン》で《狩猟恐竜 アロザウラス》を攻撃!!『ギガント・ドリル・スマッシャー』!!!」

両腕のドリルを唸らせ、勇者は飛び出す。高速回転する二重螺旋は、恐獣の牙を打ち砕いた。

「そして!!《BVF・ドリルマイデン》の効果発動!!このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に、このカードをエクストラデッキに戻すことで・・・」

その言葉に凛香が割り込む。

「相手に《BVF・ドリルマイデン》の攻撃力分のダメージを与える!楽しかったわよ、カケル!・・ありがとう。」

ロケットパンチのように飛んで行く両腕のドリルは、凛香のフィールドを突き抜けた。

(LP200→0)



『勝者:仁ノ森カケル』



へたり込んだ凛香に、カケルが歩み寄る。
「楽しかったぜ、凛香!!」
カケルは手を差し伸べる。凛香はその手を取り、立ち上がった。
「ええ、私も。さすがカケルね!よーし!私ももっと強くならなきゃ!!カケルを圧倒できるくらいに!!」
「圧倒って・・・。」
カケルは笑う。凛香も同じように笑った。そして、凛香はようやく気づく。
「あ!そういえば!」
「ん?どうした?」
D・ディスクの画面を見せて、凛香は言った。
「ポイント決めてなかった!」
「ああ、確かに!勢いだけで始めちったからな・・・。」
凛香は少し考えてから口を開く。
「お互い170ポイントだから50くらいでいいかな?ダメ?」
カケルは笑って言った。
「うーん、ダメだな!却下だ!」
「ええっ!!じゃあ、いくつがいいのよ!?」
その言葉を聞き、カケルは笑いながら歩き始めた。
「いらねぇよ!!お前からポイント取るなんて後味悪いからな!!」
凛香は困ったように言う。
「え、でも・・・!」
カケルは後ろに手を振りながら言った。
「また屋敷でな!んじゃ!」
走り去って行くカケル。凛香は溜め息を付いた。
「全く、かっこつけなんだから。」







同じ頃。控え室の中で、レイジは一人頭を抱えていた。

『レイジ。』

「なんだ・・・。」

頭の中に響く声。それは深く暗い音でレイジに語る。

『余には見える。貴様の弱さが。』

「僕の弱さだと・・・。」

『そうだ。脆く、崩れようとする貴様の心が。余には分かる。』

レイジの額に汗が伝う。息を荒くしてレイジは言った。

「”ノーン”・・・。お前はそう名乗ったな。一週間前、突然僕の頭に入り込んで来て・・・。」

『”神の鉄槌”。貴様には分かるだろう、その名の意味が。』

レイジの肩が震える。

「忘れるものか・・・。この街は、僕にとって・・・。」

『取り戻したければ、余に従え。』

レイジは擦れた声で言う。

「本当に出来るんだろうな・・・。姉さんを・・・。」

『ああ。貴様の望みは叶い、余は真の復活を遂げる。』

「お前は一体何者なんだ。真の復活とはどういう意味だ・・・。」

その問いに声の主は言った。


『天にそびえる黄金の星。全てはそこから始まった。忌まわしき記憶の鱗片。神の眠りし罪業の地”カテドラル”。余はもう一度、あの地へ立つのだ。』


声は憎しみの篭った音で呟く。

『・・・自らの、肉体を持ってして。』





次回第33話「出揃った出場者」
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ター坊
恐竜VSマイデン。ナイスファイトでした。それにしてもレイジの影にいるノーンの存在。あいつとまた戦うのか?次回は波乱を予感させる要素を含めながら出場者が決まるようです。楽しみに待ってます。 (2015-07-20 07:11)
ほーがん
ター坊さんコメントありがとうございます。
ノーンが何を考えているのか、何をしようとしているのか。全ては本編で明らかになります。次回は決戦前夜のような話になると思います。またお読み頂けたら嬉しく思います。 (2015-07-20 07:30)
ギガプラント
頭に3連エクシーズで1キルか…?と思ったら突然全滅。一気に形成が逆転して逆1キルか…?と思ったらまだまだ終わらない。実にヒヤヒヤする良いデュエルでした。 (2015-07-20 11:34)
ほーがん
ギガプラントさんコメントありがとうございます。
デュエル構成には正直自信がないのですが、楽しんでいただけたのなら幸いです。そして、何気にコメントがキリ番になってますね。おめでとうございます(?) (2015-07-21 13:05)

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46 15.5:魂の誤作動 827 2 2015-06-11 -
121 16:凛香・決意の決闘 959 2 2015-06-12 -
111 17:死闘の果てに 1039 2 2015-06-12 -
45 18:月の使者―ルナティックロイド― 908 2 2015-06-15 -
95 19:覚醒の証・月狂眼の覚醒龍 938 2 2015-06-16 -
102 20:生きとし生ける者の希望 962 2 2015-06-17 -
81 21:戻ってゆく日常 910 2 2015-06-18 -
84 22:遊牙先生のデュエル教室 1101 4 2015-06-18 -
90 23:意地の張り合い!昆虫レース開幕? 927 3 2015-06-22 -
119 オリカ説明:リチャード編 804 2 2015-06-22 -
96 23.5:輝岩鎧竜の逆鱗 859 4 2015-06-23 -
47 24:開幕!チャリティーデュエル大会 904 3 2015-06-24 -
78 メインキャラ解説 735 4 2015-06-25 -
105 25:ルナ、デュエルします! 1052 3 2015-06-25 -
65 26:心に巣食う魔物 910 3 2015-06-26 -
75 27:太古のデュエル!恐竜VSマンモス? 941 3 2015-06-27 -
81 28:銀河に響け!スペースアイドル再び 950 3 2015-06-29 -
120 29:二日目開始!誘惑される遊牙? 885 3 2015-07-01 -
94 30:ルナ、またまたデュエルします! 929 3 2015-07-10 -
127 31:光差す道となれ! 998 5 2015-07-11 -
104 32:ぶつかり合う本気 896 4 2015-07-20 -
214 33:出揃った出場者 2022 3 2015-07-22 -

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