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HOME > 遊戯王SS一覧 > 3:熱血勇者・仁ノ森カケル

3:熱血勇者・仁ノ森カケル 作:ほーがん

第3話「熱血勇者・仁ノ森カケル」



ここは遊牙の仲間が住まう屋敷。そこにたどり着いた遊牙とルナは、屋敷のドアをノックした。
「俺だ。開けてくれ。」
遊牙の声に、ドアの向こうからガチャッという解錠の音がすると、ドアが勢いよく開いた。
「おぉ遊牙!随分遅かったな!なんかいい掘り出し物でもあったのか!?」
ドアを開けた主は、大きな声でそう言った。
「いや、掘り出し物は無かったが、新しい仲間ができた。」
遊牙はそう言うと、後ろに立っていたルナを前に行かせた。
ルナは緊張した面持ちで、ゆっくり口を開く。
「あ、あのぉ、ルナって、いいます。えと、その・・・。」
ルナを前に、ドアを開けた少年は震える声で言った。

「おい・・遊牙・・。お前、とうとう野良犬や野良猫じゃ飽きたらず、人間まで拾って来たのか!!?」

「(やっぱり、受け入れられて無いじゃないかー!)」
その言葉にルナは心で叫んだ。
「まぁ、カケル。彼女にもいろいろ訳があるんだ。」
遊牙の言葉に相手の少年――名をカケルと言う――は大きく首を横に振った。
「いやいや!待て!確かに今までお前は、放っておけないって理由で色んな動物を拾って来た。お前は優しい奴だ、それは俺も知ってる。でもな、さすがに人間を拾って来るって、ええ・・・」
カケルは頭を抱え込んだ。その様子を見たルナは悲しげな顔で言う。
「やっぱり、迷惑だよね。ごめんね遊牙。・・・さよなら。」
「ルナ!」
ルナは振り向き、走り去ろうとした。しかし。

「ちょっと待って。」

ドアの向こう、カケルの後ろから声が響く。その声に、ルナはピタッと足を止めた。
「遊牙が連れて来た子でしょ。それなりの理由があるんじゃないの。」
声の主の少女はドアの前のカケルを押しのけ、ルナの前に立った。
「話してみて。あたしが聞くから。」
少女は真面目な顔で、ルナに言う。
「・・・・はい。」
そして、ルナは自分が何者か、自分に何があったのか、そしてどうやって遊牙と出会ったのかを少女たちに話した。


「そっかぁ・・・大変だったんだなぁ・・・」
話を一通り聞き終えたカケルは、すすり泣きながらそう言った。
「なるほど・・・。遊牙にとって”ここに来ていい”って言ったのはこの子との大事な約束なわけね。」
「ああ。当然だ。」
少女の言葉に遊牙がうなずく。
「カケルは?まだなんか言いたいことあるの?」
カケルは鼻を啜りながら力強く言った。
「いいや!こんな話聞かされちまったら反対なんてできるかよ!」
少女は振り向き、ドアの向こうに向かって叫ぶ。
「皆の意見はこうだけど、ガネリおばさんはどうなの?」
その声に反応するように、呼ばれた本人が姿を現した。
「皆で決めたことなら、私はとやかく言わないよ。」
その初老の女性は微笑み、言った。
「じゃあ、ルナ。今日からあなたはあたし達の仲間。それでいい?」
少女の言葉にルナの顔が明るくなった。


「はい!」


屋敷の中に入ったルナは高い天井を見上げて口を開けた。
「凄い・・・。」
「ルナはそこに座って。」
少女に言われ、ルナは暖炉の前の椅子にちょこんと座った。
「さて、自己紹介するね。あたしは牧瀬凛香。で、こっちのアホっぽいのが仁ノ森カケル。」
凛香はカケルを指さした。
「よろしくな、ルナ!っておい、凛香!アホとはなんだアホとは!」
カケルの抗議を無視し、凛香は続ける。
「で、この人が屋敷の持ち主のガネリおばさん。」
ガネリおばさんと呼ばれた初老の女性は、ルナの手を握って言った。
「大丈夫。何も心配いらないのよ。ここがあなたの家。そして、今日からあなたは私の娘であり、ここに居る全員があなたの家族よ。」
おばさんの言葉に、ルナはうっすらと涙を浮かべる。
「ありがとう、ございます・・・。」
ルナはおばさんの手を握りしめながら嗚咽を漏らし始めた。
「よかったな、ルナ。」
遊牙の言葉に、涙を流しながらルナは頷いた。

「・・・よし!デュエルしようぜ!デュエル!」

突然、カケルが口を開いた。
「どうした、カケル?」
遊牙は訊ねる。
「ほら、新しい仲間が増えたって事で歓迎デュエルでもしようかなってさ!」
その言葉にルナの顔がぱぁっと明るくなった。
「ほんとに!」
「へぇ~、あんたにしてはまともな意見ね。」
凛香はカケルに挑発するような目で言う。
「何を!よし、凛香!デュエルの相手はお前だ!」
カケルは凛香を指さして言った。
「いいわよ!あんたなんかギタギタにしてやるわ!!」
ルナは小声で遊牙に訊ねる。
「ねぇ、二人は仲が悪いの?」
遊牙は笑って答える。
「互いを信頼しているからこそ、ああやって好きな事を言い合えるんだ。」
ルナは”なるほど”といった顔で二人を見つめた。
「そうだ、せっかくの歓迎会ならごちそうが無いとね。」
おばさんはそう言うとキッチンの方へと足を運んだ。

カケルと凛香は、それぞれのD・ディスクを展開し構える。
「さぁ、熱き勇者の力見せてやるぜ!」
「あんたこそ、あたしの強さを思い知るがいいわ!」


「デュエル!(LP4000 VS LP4000)」


先に動き出したのはカケルだった。
「俺のターンから行かせてもらうぜ!手札から魔法カード《ブレイヴ・サイン!》発動!」

魔法の発動と共に、高い天井にサーチライトが光った。

「デッキから『BVF(ブレイヴファイター)』モンスターを手札に加えるぜ!俺はこの効果で《BVF・ファイアーファルコン(☆3/炎/機械/1200・1200)》を手札に加える!」

カケルのデッキからカードが迫り出し、手札に加えられる。

「そして、手札から《BVF・ファイアーファルコン》を特殊召喚!このカードは自分のフィールドにカードが無い場合、手札から特殊召喚できる!さらに、手札からこのモンスターを召喚するぜ!」

カケルは得意げな顔で手札のカードを取り出した。

「来い!異星より来りし鋼鉄のヒーロー!《BVF・マイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》!!」

紅蓮のボディを煌めかせ、熱き正義の闘士『マイデン』が拳を構えフィールドに降り立った。


「さっそく来たか、カケルのフェイバリットモンスター。」
そのモンスターを見た遊牙が呟く。
「・・・ふぇーばりっと?」
キョトンとしてそう言ったルナに遊牙が教える。
「お気に入りのカードってことだ。」
ルナはまた”なるほど”といった顔で二人のデュエルを見つめた。


「さぁ、行くぜ!レッツ!!ブレイヴ・ユナイト!!」

カケルのかけ声で『マイデン』と『ファイアーファルコン』が飛び上がる。

「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・ファイアーファルコン》で融合合体!」

変形した『ファイアーファルコン』が『マイデン』の背中にドッキングし、その姿を新たな形に変えてゆく。


「熱き思いと勇気を滾らせ、爆炎の勇者ここに見参!!合体召喚!!《BVF・ファイアーマイデン(☆6/炎/機械/融合/2200・2200)》!!!」


烈火の隼の力を得た『マイデン』は、燃え滾る炎の勇者となって場に舞い出た。

「『BVF』の融合は、フィールドの融合素材をそのまま墓地に送る事で《融合》のカード無しに融合召喚できる!どうだ!これが俺の融合を超えた融合、その名も『融合合体』だぁぁっ!!!」

カケルは天を指差し高らかに叫んだ。


「なんか暑苦しい・・・。」
ルナは目を細めながら呟く。
「まぁ、あれがカケルのデュエルスタイルだからな。」
遊牙はキメ顔のカケルを見ながら言った。


「ふん!合体したからなんだってのよ!」

凛香は『ファイアーマイデン』を指差し叫ぶ。

「それはこれから分かるぜ!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドォ!!」

カケルのターンが終わり、凛香へと行動権が移る。


「そんな合体ロボ、あたしのモンスターで踏み潰してやるんだから!ドロー!」

凛香はドローカードを確認し、そのカードをそのまま発動した。

「あたしは手札から魔法カード《化石調査》を発動!デッキからレベル6以下の恐竜族モンスターを手札に加える!あたしはレベル4の恐竜族モンスター《神速のティラプトル(☆4/地/恐竜/1700・700)》を手札に加える!」

デッキのカードを手札に加えた凛香は、そのカードをD・ディスクにセッティングした。

「そして、《神速のティラプトル》を召喚!」

フィールドに鋭いかぎ爪を後ろ足に備えた小型の肉食恐竜が姿を現す。

「《神速のティラプトル》の効果発動!このカードの召喚に成功した時、デッキからレベル6以下の恐竜族モンスター1体を手札に加える!あたしはデッキから《3頭を持つキング・恐獣(☆6/地/恐竜/1600・1200)》を手札に加える!」

新たなカードが凛香の手札に加わる。

「《神速のティラプトル》のもう一つの効果発動!1ターンに1度、手札の恐竜族モンスターを捨てることで、このターン《神速のティラプトル》は捨てたモンスターと同じレベルになる!あたしはたった今手札に加えた、《3頭を持つキング・恐獣》を捨てて《神速のティラプトル》のレベルを4から6に変更する!」

小型肉食恐竜が鳴き声を上げ、そのレベルは4から6に変わった。

「そして、速攻魔法《暴君強襲!》を発動!自分の墓地から「恐獣」モンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚する!あたしは《3頭を持つキング・恐獣》を特殊召喚!」

三つの頭を持つ恐竜が鋭利な牙を光らせながら出現し、その巨体を震わせた。


「さぁ、行くわよ!あたしはレベル6の《神速のティラプトル》と《3頭を持つキング・恐獣》でオーバーレイ!永劫の氷地に眠る、太古の強者よ!研ぎ澄まされた本能で時代の波に牙を剥け!」


フィールドに出現した光の渦に2体の恐竜が飛び込んでゆく。

「エクシーズ召喚!唸れ!《氷結恐竜 クリオロフォ(★6/水/恐竜/エクシーズ/2200・2000)》!!」

特徴的なトサカを持った大型の肉食恐竜が咆哮を上げ、フィールドに凄まじい冷気を放った。

「来たか、怪獣め!!この《BVF・ファイアーマイデン》が成敗してくれる!!」

カケルは凛香のエクシーズモンスターを指差し言う。

「なっ、怪獣じゃなくて恐竜!あたしは《氷結恐竜 クリオロフォ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使うことで、全ての相手モンスターの攻撃力・守備力を0にする!!」

放たれた冷気に活力を奪われ『ファイアーマイデン』は膝を付いた。(ATK2200・DEF2200→0・0)

「くっ、俺の《BVF・ファイアーマイデン》がっ!!卑劣な怪獣め!!」

カケルは『ファイアーマイデン』と同じモーションで膝を付きながら凛香に向かって叫んだ。

「だから、恐竜だっつーの!バトル!《氷結恐竜 クリオロフォ》で《BVF・ファイアーマイデン》に攻撃!『フリージングスタンプ』!!」

凛香が指差した方向へ肉食恐竜は猛スピードで駆け出し、凍りついた『ファイアーマイデン』目掛けて突き進む。

しかし。

「この瞬間、リバースカードを発動!罠カード《鋼の勇者》!!こいつは自分の場の『BVF』モンスターが特殊召喚されたモンスターとバトルする時に発動できる!このターンのエンドフェイズまで自分の場の『BVF』モンスターの攻撃力は元々の攻撃力分アップする!!(ATK0→2200)」

勇者の瞳に光が宿る。氷を砕き飛ばし烈火の勇者は立ち上がった。

「でも攻撃力は互角、このままじゃ相打ちよ!」

「構うもんか!行けぇぇええ『ファイアーマイデン』!!!」

炎を纏う勇者の拳が、肉食恐竜目掛け放たれる。しかし、それと同時に恐竜の鋭い牙が勇者の体を突き刺した。
クロスカウンターの状態となった2体は、互いの炎と冷気を解放しながら爆発し吹き飛んだ。

「あたしのクリオロフォがっ・・・」

「くっ、すまねぇ『ファイアーマイデン』・・・。だが、この瞬間、《BVF・ファイアーマイデン》の効果発動!」

カケルが立ち上がり叫ぶ。

「このカードが破壊され墓地へ送られた場合、墓地から《BVF・マイデン》を1体特殊召喚できる!蘇れ、《BVF・マイデン》!!」

爆発の粉塵を振り払い、鋼鉄の勇者が復活を遂げた。

「やるじゃない!あたしはカードを1枚セットして、ターンエンド!」

フィールドにカードが伏せられ、凛香はターンを終えた。


「なんか、二人とも楽しそう。」
ルナはまじまじとデュエルを見つめながら口を開く。
「ルナはデュエルをしないのか。」
遊牙が横から訊ねる。
「私はデュエルした事無いから・・・。でも、二人を見てたらやってみたくなって来ちゃった!」


カケルは自分のデッキに手を伸ばした。
「頼むぜ、俺のデッキ・・・ドロー!!」

ドローカードを確認したカケルはニヤリと笑った。

「来たか・・・!!行くぜ、俺は手札から《BVF・ハイパワードリル(☆5/地/機械/1600・1700)》を特殊召喚!!」

轟音とともに地を裂き、無限軌道と巨大なドリルを備えたマシンが出現する。

「こいつは自分の場に《BVF・マイデン》が存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

2体のマシンを前に凛香が口を開く。

「また『BVF』が2体・・・。さぁ、次はどんな合体ロボがでるのかしら?」

カケルは得意げに叫ぶ。

「出し惜しみなんてしないぜ!!行くぜ、レッツ!!ブレイヴ・ユナイト!!」

『ハイパワードリル』がパーツごとに分離し、飛び上がった『マイデン』の各部へとドッキングしてゆく。


「俺は《BVF・マイデン》と《BVF・ハイパワードリル》で融合合体!地を裂く叫びを轟かせ、大地の勇者ただいま到着!!」


『マイデン』の胸部に合体した巨大なドリルが3つに割れ、その中から『BVF』のマークが現れたと同時に蒸気が吹き出し、汽笛が高鳴る。

「合体召喚!!《BVF・ドリルマイデン(☆7/地/機械/融合/2600・1200)》!!」

大地の力を経てパワーアップした『マイデン』は『ドリルマイデン』となり、煙を立ちこめフィールドに降り立った。

「見たか凛香!これが《BVF・マイデン》の新たな進化だ!!」

凛香はカケルの融合モンスターを見て、汗を流した。

「(ルナを楽しませようと、カケルのノリに乗ってみたけどあたしの場にはモンスターはゼロ・・・。この状況で攻撃力2600はまずいわね・・。)」

焦る凛香を余所にカケルは続ける。

「相手のフィールドにモンスターはいない!!バトルだ!《BVF・ドリルマイデン》でダイレクトアタック!!」

大地の勇者は両腕のドリルをうならせ、凛香目掛けフィールドを突き抜ける。

「くっ、あたしはリバースカードを発動!罠カード《化石復元》!自分の墓地に存在するレベル6以下の恐竜族モンスターを攻撃表示で特殊召喚する!私は墓地から《3頭を持つキング・恐獣》を特殊召喚!!」

凛香の罠カードにより、墓地の恐獣が復活した。

「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘・効果で破壊されない!」

「だが、ダメージは受けてもらうぜ!《BVF・ドリルマイデン》で《3頭を持つキング・恐獣》を攻撃!」

勇者のドリルに、3つ首の恐獣はなんとか耐えたが、差分のダメージは衝撃となって凛香へ向かう。

「くっ・・・!!(LP4000→LP3000)」

ダメージに凛香がたじろぐ。

「この瞬間、《BVF・ドリルマイデン》の効果発動!このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に、このカードをエクストラデッキに戻すことで、相手に《BVF・ドリルマイデン》の攻撃力分のダメージを与える!!」

「そんな!」

カケルは《BVF・ドリルマイデン》のカードをD・ディスクから取り出し、エクストラデッキに仕舞い込んだ。

「さぁ、凛香!2600のダメージを喰らえ!!」

『ドリルマイデン』から分離したドリルパーツが、凛香に向かって飛ばされた。

「ああっ!!!(LP3000→400)」

しかし、凛香は倒れる事無くその場に踏みとどまる。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!さぁ、凛香!かかってこい!!」


凛香はゆっくりとデッキに手を伸ばした。

「あたしの・・・ターン!!」

ドローしたカードを見て、凛香はフッ、と笑った。


「あ、凛香さん笑った・・・。」
ルナがボソッと呟く。
「何か良いカードでも引いたのか。」
デュエルを見ながら遊牙もそう呟いた。


「あたしは魔法カード《ダイナソー・ライド》を発動!手札からレベル4以下の恐竜族モンスターを特殊召喚する!」

凛香は手札のモンスターを取り出しD・ディスクにセッティングした。

「いでよ!《グローイング・ザウルス(☆4/風/恐竜/1200・1200)》!!」

頭の大きな子どもの恐竜が、凛香のフィールドに座り込む。

「《グローイング・ザウルス》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、このカードのレベルを6または8に変更できる!あたしは《グローイング・ザウルス》のレベルを8にする!」

凛香の宣言と共に子どもの恐竜は立ち上がり、みるみる内に巨大な大人の恐竜へと成長した。

「そして、《3頭を持つキング・恐獣》の効果発動!1ターンに1度、墓地の恐竜族モンスターを1体除外する事でこのカードのレベルを2つ上げる事ができる!あたしは墓地の《神速のティラプトル》を除外し、レベルを2つ上げる!」

3つ首の恐獣は咆哮を上げ、自身のレベルを上げた。

「これで、レベル8のモンスターが2体!あいつを呼ぶ気だな凛香!!」

カケルが叫ぶ。

「さっきはよくもやってくれたわね、カケル!今度はあたしの番よ!あたしはレベル8の《グローイング・ザウルス》と《3頭を持つキング・恐獣》でオーバーレイ!」

閃光となった2体の恐竜が、勢いよく光の渦に飛び込んでゆく。


「6500万年の時を越え、王者の牙は蘇る。大地を揺るがすその咆哮に万物よ跪け!エクシーズ召喚!太古の覇王、《怒濤恐竜 ガルノダウラス(★8/炎/恐竜/エクシーズ/3300・600)》!!」


2対の角を持った巨大な恐獣が炎熱を纏い出現し、フィールドを震え上がらせた。

「攻撃力3300・・・・何時見てもそいつはおっかねぇぜ・・!!」

カケルは冷や汗をかきながらも笑っている。

「そのままバトルよ!あたしは《怒濤恐竜 ガルノダウラス》でカケルにダイレクトアタック!!」

耳を劈くような咆哮を上げた炎熱の恐獣は大口を開け、無数の牙を光らせながらカケル目掛けて猛進する。

しかし、その刹那。カケルの場のカードが開いた。

「俺はリバースカードを発動!速攻魔法《正義の味方はいつもそばに》!!LPを半分払い、デッキ・墓地から《BVF・マイデン》を攻撃表示で特殊召喚する!!蘇れ!紅蓮のヒーロー《BVF・マイデン》!!(LP4000→2000)」

カケルの墓地が輝き、鋼鉄のヒーローは再び復活を遂げた。

「さらにこのターン、《BVF・マイデン》は戦闘では破壊されない!!これでお前の《怒濤恐竜 ガルノダウラス》に攻撃されようと、俺のLPはまだ600残る!!」

だが、凛香は相変わらず笑っていた。

「あたしはこのターン中に、あんたが《BVF・マイデン》を出して来ることは分かってた!あたしが『ガルノダウラス』を出しても、カケルなら絶対に《BVF・マイデン》を出して来る。このターンを凌いで来るってね!!」

カケルは凛香の言葉に驚愕する。

「な、なんだと!!」

凛香は不敵に笑う。

「あたしがこのターンにドローしたのは《ダイナソー・ライド》でも《グローイング・ザウルス》でもないわ!手札から《剣聖恐獣(光/恐竜/☆8/2400・2000)》の効果発動!!自分の恐竜族モンスターが相手モンスターとバトルする時、このカードを手札から捨てる事で、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を2400ダウンさせる!!」

「何っ!!?」

剣のようなトサカを持つ恐竜の幻影が《BVF・マイデン》に突き刺さる。《BVF・マイデン》はみるみる内に色褪せ、その力を失った。(ATK1900→0)

「あたしは《怒濤恐竜 ガルノダウラス》で《BVF・マイデン》に攻撃!!『バーニングバイト』!!」

炎熱の恐獣は勇者のボディに牙を突き立てた。勇者はカケルを守るかのように耐え凌ごうとしたが、あまりのパワーと恐獣の炎熱で吹き飛ばされた。

「ぐああぁぁっ!!!!(LP2000→0)」

カケルは爆風に倒れ込み、LPを失った。


『勝者:牧瀬凛香』


凛香はやり切った顔でカケルの前に立った。
「今回は私の勝ちね。カケル。」
カケルもまた凛香と同じ顔で言った。
「はー負けた負けた!はははっ!でも、次は絶対俺が勝つぜ!」

「すごかった!二人ともありがとう!」
ルナは嬉々とした目で拍手をした。
「ああ、良いデュエルだった。」
遊牙もルナと一緒に拍手をした後、カケルに手を伸ばして彼を起こした。

「みんなー、食事ができましたよー。」

ちょうど、キッチンからおばさんの声が響いた。
「さ、行こうルナ。」
遊牙は座っているルナに微笑んだ。
「うん!」
ルナは立ち上がり、遊牙の後に付いて行った。




一方ここは、DWA本部。

「ずいぶんとイラついているようだね、木嶋くん。」

背を向けて立つ目の前の人物の言葉に、木嶋はドキッとしておもわず声が上擦る。

「へぇっ!?あ、いや!そんなことはないです!はい!」
「まぁ、いい。君は確か例の少年と直接デュエルをしているそうだね。」

仰々しく話すその人物に、木嶋は背筋を伸ばして口を開いた。

「はい、そうであります!」
「どうだった?」

木嶋は困惑して聞き返す。

「ど、どうだったといいますと・・・?」
「強かったか?それとも、弱かったのか?」

その言葉に木嶋はあの時のデュエルの結末を思いだした。

「それは、えーと、その。まぁ、それなりの実力者だったと見ています。はい。」
「まぁ君が負けたくらいだからねぇ。生半可な奴じゃ勝てないだろうね。」

背を向けていた男は、木嶋の方へ向き直った。

「今、問題が2つあってね。」
「問題、ですか?」

その男は突然、木嶋に近づき恐ろしい形相で言った。

「まず1つは、君たちが『0042』を取り逃がしたことだよ。」
「は、はい!大変申し訳ございません!」

木嶋は一歩下がると深々と頭を下げた。

「あと、もう1つはその少年が『0042』を匿っているという事だ。」
「そうでありますです!はい!」

木嶋は混乱し呂律を乱した。

「木嶋くん、チャンス欲しいかな。」
「へ?」

男の以外な言葉に木嶋は顔を上げる。

「もし、少年の居場所を突き止め、少年を倒し、なおかつ『0042』を捕獲できたとしたら、君を1番隊の総括責任者に任命しよう。」
「ほ、本当でありますか!!?」

男はニヤリと笑う。

「ああ、そのために必要な力はこちらで用意しよう。」

そう言うと男は木嶋にカードを差し出した。

「これは、白枠のカード・・・!」
「できるかな、君に?」

木嶋は真剣な表情で両足を揃え、敬礼をした。

「お任せ下さい!!」



次回第4話「逆襲の木嶋」




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ター坊
仲間たちに向かう魔の手。次回が気になる切り方です。デュエル構成の他に、こういった文章表現も見てて面白いです。 (2015-05-05 21:37)
ほーがん
ター坊さんコメントありがとうございます。
お褒め頂きありがとうございます。
しかしながら、デュエル構成はあんまり自信ないです。 (2015-05-06 03:11)

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