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14:四賢人最後の一人・その名はマーナ 作:ほーがん
第14話「四賢人最後の一人・その名はマーナ」
「このワタクシの部屋に・・・マーナ様の部屋に入り込むなんて・・・このへんたいおとこー!!!」
少女の姿を見たその男―ジェイミー・ホーガン―は困惑する。
「こんな子ども、俺が居た時に居たか・・・?」
ゴシックファッションに身を包んだその少女は、ホーガンに詰め寄る。
「あなた何!?ワタクシの部屋に入り込んで何をしようとしているの!?ま、まさか・・・!!」
ホーガンは息を飲む。しかし、少女は突然赤面し始めた。
「わ、ワタクシのファン!?もー!だからって勝手に入り込むなんて・・・ファンならちゃんと言ってくれれば・・・。」
もじもじとする少女を無視しホーガンは出口を探し始めた。
「ちょ、ちょっと無視しないでよ!」
ホーガンは訊ねる。
「なぜ君のような子どもがこんな場所にいる?それより出口はどこだ。」
少女は胸を張って言う。
「子どもだなんて、ワタクシこう見えても立派なレディなのよ!」
その言葉をホーガンは適当に受け流す。
「あーはいはい。全く今の『DWA』は何を考えているんだ・・・。」
少女はムッとした顔でD・ディスクを構えた。
「ワタクシのファンじゃないなら、あなたはやっぱり変態男ってことじゃない!」
ホーガンは肩をすくめる。
「残念だがお嬢ちゃんの相手をしてる時間はない。俺は急ぎの用があるんだ。」
少女はホーガンを睨む。
「なら、尚更通す訳にはいかないわ。侵入者をみすみす逃がすなんて四賢人としてあり得ないもの。」
その言葉にホーガンの表情が変わる。
「四賢人!?この・・子どもが?」
少女は地団駄を踏んだ。
「だーかーら!子どもっていうなー!もう許さないんだから!さっさとD・ディスクを構えなさいよ!」
ホーガンは言われる通りD・ディスクを構える。
「本当にこの子が四賢人なのか・・・しかし、今の四賢人は・・・。」
少女はホーガンを指差す。
「見てなさい!このマーナ様がけちょんけちょんにしてやるんだから!」
ホーガンは呟く。
「仕方ない。やるしかないか。」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのはホーガン。
「先攻は貰う!俺のターン!俺は手札の《BFー曙のファルシオン(☆3/闇/鳥獣/1500・1200)》の効果を発動!このカードを手札から捨てることで、デッキから永続魔法《黒い旋風》を手札に加える!」
ホーガンのデッキからカードが迫り出す。
「そして永続魔法《黒い旋風》を発動!このカードは自分が「BF」を召喚する度に、デッキから召喚したモンスターより低い攻撃力を持つ「BF」を手札に加えることができる!俺は手札から《BFー極北のブリザード(☆2/闇/鳥獣/チューナー/1300・0)》を召喚!」
小柄な鳥獣がホーガンのフィールドに出現し、部屋の中を飛び回る。
「《黒い旋風》の効果により俺はデッキから《BFー閃光のパタ(☆1/闇/鳥獣/チューナー/500・100)》を手札に加える!そして《BFー極北のブリザード》の効果発動!」
その言葉と同時に、ホーガンの墓地が光る。
「《BFー極北のブリザード》の召喚に成功した時、墓地からレベル4以下の「BF」を守備表示で特殊召喚できる!舞い戻れ《BFー曙のファルシオン》!」
幅の広い剣を携えた鳥獣がフィールドに飛び出した。
「さぁ、行くぞ!俺はレベル3の《BFー曙のファルシオン》にレベル2の《BFー極北のブリザード》をチューニング!」
2つの光の輪へ鳥人の剣士が飛び込む。
「黒き旋風よ!怒濤の刃振りかざし、地を這う敵を両断せよ!シンクロ召喚!吹き荒れろ!《BF-睥睨のハルバード(☆5/闇/鳥獣/シンクロ/2300・500)》!!」
戦斧を振りかざし、屈強な鳥人が相手を威圧する。
「シンクロ召喚・・・ふーん、あなたもそうなのね。」
マーナはニヤリと笑う。
「この瞬間《BF-睥睨のハルバード》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地からレベル3以下の「BF」を守備表示で特殊召喚できる!再び蘇れ《BFー曙のファルシオン》!」
さらにホーガンは手札のカードをD・ディスクにセッティングする。
「俺は手札の《BFー閃光のパタ》の効果を発動!このカードは自分フィールドに存在するシンクロモンスター以外の「BF」モンスター1体のレベルを1つ下げ、手札から特殊召喚できる!俺は《BFー曙のファルシオン》のレベルを1つ下げ《BFー閃光のパタ》を特殊召喚!」
針のような細い剣を備えた鳥人が他の「BF」に並んだ。
「すまないが、早速切り札を呼ばせて貰う!俺はレベル5の《BF-睥睨のハルバード》とレベル2となった《BFー曙のファルシオン》にレベル1の《BFー閃光のパタ》をチューニング!」
再び出現した光の輪に2体の鳥人が包み込まれる。
「黒き烈風よ!威厳の剣を持ちて、天空を駆け巡れ!シンクロ召喚!舞い踊れ!《BF-威光のフランベルジェ(☆8/闇/鳥獣/シンクロ/3000・1200)》!!」
波打つ長剣を携え、誇り高き鳥人の騎士がフィールドに舞い降りる。
「さらに俺は手札から魔法カード《フェザー・レイン》を発動!自分フィールドの鳥獣族モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手に与える!本来このカードを発動したターン、そのモンスターは攻撃できない!だが先攻1ターン目に発動すればこのデメリットは無いも同じだ!!」
鳥人の騎士が、黒い翼を翻す。突風とともに無数の羽根がマーナを襲った。
「うっ!いきなりダメージなんて!(LP4000→2500)もっとレディを優しく扱ったらどう!?」
ホーガンは気にせず続ける。
「俺はこれでターンエンド!さぁ、君のターンだ。」
ムカっとした顔でマーナはカードを引く。
「容赦しないんだから!ワタクシのターン!ワタクシは手札からフィールド魔法《ライブステージ・ギャラクシードーム》を発動!」
その言葉と共に周りの景色は輝かしいライブステージへと変貌する。ホーガンは周りを見渡し困惑する。
「な、なんだこのフィールド魔法は・・!」
マーナはウィンクして言った。
「これがワタクシ専用のステージよ!《ライブステージ・ギャラクシードーム》の効果発動!自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、1ターンに1度手札から「スペースアイドル」を特殊召喚できる!ワタクシはこの効果で《スペースアイドル・モモコ(☆2/光/天使/チューナー/800・900)》を特殊召喚!」
ステージの上に、煌めかしい衣装に身を包んだアイドルが手を振って現れる。
「そしてワタクシは《スペースアイドル・シノン(☆4/光/天使/1700・1600)》を召喚!」
ステージにポニーテールの髪型をしたアイドルが増える。
「チューナーとチューナー以外のモンスターが揃った・・・来るのか!!」
身構えたホーガン。マーナは両手を上げ高らかに叫んだ。
「ワタクシはレベル4の《スペースアイドル・シノン》にレベル2の《スペースアイドル・モモコ》をチューニング!!」
ステップを踏むようにジャンプしたアイドルは光の輪となり、もう一人のアイドルを包み込んでゆく。
「星々煌めく今宵の空に、乙女の夢が溢れ出す!奇跡の歌声よ、銀河に響け!シンクロ召喚!《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ(☆6/光/天使/シンクロ/0・2500)》!!」
輝かしい星々を引き連れ、美しい歌姫がフィールドに光臨する。スタンドマイクを手に華やかな衣装を身に纏った星のアイドルは、ステージに降り立ちポーズを決めた。
「これまた随分ケバいシンクロモンスターだな・・・。」
ホーガンの呟きにマーナはムッとして言う。
「ワタクシのモンスターにケチつけないで!全く、今に見てなさい!《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》の効果発動!このモンスターが攻撃表示でシンクロ召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスター全てのコントロールを得る!!」
マーナの言葉にホーガンは驚愕する。
「な、なんだと!!」
星のアイドルは笑顔で駆け出し、鳥人の騎士に手を差し伸べる。鳥人の騎士は赤面しながらその手を取り、アイドルの後へついて行ってしまった。
「『ギャラクシー☆キラリ』が存在する限り、奪ったモンスターはワタクシの物よ!」
「くっ・・俺のフランベルジェが・・・。」
マーナはがら空きになったホーガンのフィールドを指差し、得意げに言い放つ。
「さぁ、《BF-威光のフランベルジェ》!あなたの好きな『ギャラクシー☆キラリ』を傷つけようとする、あの男をやっつけなさい!」
その命令どおり鳥人の騎士は剣を構えた。漆黒の翼を羽ばたかせ一気にホーガンへ詰め寄る。
「『アイドル親衛あたーっく』!!!」
振り下ろされた剣にホーガンは吹き飛んだ。
「ぐぁぁああっ!!(LP4000→1000)くっ、フランベルジェの攻撃名はそんなものじゃないぞ・・!」
倒れ込んだホーガンは小言を良いながら立ち上がった。
「攻撃名なんてなんでもいいのよ!ワタクシはカードを1枚セットして、ターンエンド!」
ホーガンは自分のデッキに手を伸ばす。
「どうする・・・俺のターン、ドロー!」
ホーガンはドローしたカードを確認しニヤリと笑う。それをそのまま手札に加え、別のカードを取り出した。
「俺は魔法カード《BFーリバイブ》を発動!手札を1枚捨て、墓地に存在する「BF」を2体手札に戻す!俺は手札の《BFー青影のクナイ(☆1/闇/鳥獣/100・100)》を墓地に捨て、墓地から《BFー極北のブリザード》と《BF-睥睨のハルバード》を手札に戻す!《BF-睥睨のハルバード》はシンクロモンスターの為、エクストラデッキに戻る!」
墓地のカードが迫り出し、それぞれの場所へと戻って行く。
「俺は《BFー極北のブリザード》を召喚!そして永続魔法《黒い旋風》の効果発動!デッキから《BFー幻月のククリ(☆2/闇/鳥獣/チューナー/1000・0)》を手札に加える!さらに《BFー極北のブリザード》の効果も発動し、墓地から《BFー曙のファルシオン》を特殊召喚!!」
ホーガンのD・ディスクに乗り墓地を突ついた『極北のブリザード』は、仲間を守備表示で復活させた。
「さらに手札の《BFー幻月のククリ》を墓地に捨て、《BFー青影のクナイ》の効果を発動!このカードは手札を1枚捨てることで、デュエル中1度だけ墓地から特殊召喚できる!」
忍者の姿をした小柄な鳥人はその体格に見合わない巨大なクナイを背負い、フィールド上で腕を組み鼻を鳴らした。
「俺はレベル3の《BFー曙のファルシオン》とレベル1の《BFー青影のクナイ》にレベル2の《BFー極北のブリザード》をチューニング!!」
光の輪の中へ2体の鳥人が飛び込んだ。
「黒き旋風よ!研ぎ澄まされたその刃で、強者の鎧を打ち砕け!シンクロ召喚!轟き叫べ!《BFー至高のスクラマサクス(☆6/闇/鳥獣/シンクロ/2400・1800)》!!」
幅の広い長剣を携えた鳥人はホーガンにフィールドに降り立ち、その翼を広げた。
「この瞬間、《BFー至高のスクラマサクス》の効果発動!このカードのシンクロ召喚成功時に相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを守備表示にする!!」
鳥人は腕を振り上げ、勢い良く剣を床に突き刺した。その衝撃で床が大きく揺れ、相手のモンスターがバランスを崩し膝を付いた。
「バトルだ!!《BFー至高のスクラマサクス》で《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》を攻撃!」
その言葉にマーナが笑う。
「あなたのモンスターの攻撃力は2400。ワタクシの《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》の守備表示は2500。その攻撃力じゃワタクシのモンスターには勝てないわ!」
だが、ホーガンもまた笑っていた。
「どうかな!《BFー至高のスクラマサクス》が守備表示モンスターを攻撃した場合、そのモンスターはダメージ計算前にデッキに戻る!!」
鳥人は舞い上がり、アイドルの真上で剣を構える。翼を翻し一気に加速した鳥人はその巨大な剣を振り下ろした。
しかし、その時。マーナのフィールドでカードが開く。
「だったらリバースカードを発動するわ!罠カード《握手会チケット》!!」
鳥人の手がアイドルの頭上で止まる。
「自分の「スペースアイドル」が相手から攻撃を受けた時、そのモンスターのコントロールを得るわ!」
ホーガンは焦る。
「な、何!?またか!!」
剣を構える鳥人に、アイドルは涙を浮かべた目でチケットを差し出す。鳥人は剣を投げ捨て、そのチケットを受け取ると笑顔を取り戻したアイドルと握手を交わした。
「スクラマサクス・・・お前まで・・!」
苦い顔をするホーガンを見て、マーナは得意げに笑う。
「これであなたはモンスターは全部ワタクシのものになったわ!もう打つ手無しかしら?」
ホーガンは肩を落とす。
「俺の手札はあと1枚・・・。ま、まさかこんな子どもに負かされるとは・・・。」
ホーガンは残されたカードを見て溜め息をついた。
「はぁ、残ったカードは使えない通常魔法だけ・・・。長年デュエリストをやっているが、まさかこんなお嬢さんに倒されるなんて・・・。意を決してここまで来たのになぁ・・・。でもしょうがないか。負けは負けだ・・・。あ、意味はないけど一応これ伏せとくか。」
ホーガンはべらべらと独り言を喋りながらカードを伏せた。
「俺はターンエンド。はぁ。」
ホーガンの様子にマーナは高々と笑った。
「あははは!ワタクシのたくてくすに圧倒されちゃったのね!まぁ、この状況じゃ無理もないわね!」
ホーガンは肩を落としたまま下を向いている。
「それじゃ、お望みどおりとどめを刺してあげる!ワタクシのターン!!」
マーナはカードを引き、そのままの手でホーガンを指差した。
「《BF-威光のフランベルジェ》を攻撃表示に変更して、そのままダイレクトアタック!!」
鳥人の騎士は剣を構え、一気に舞い上がる。
「これでワタクシの勝ちよ!やったー!!」
飛び跳ねて喜ぶマーナ。だが、その瞬間。ホーガンは顔を上げた。
「リバースカード発動!罠カード《カムバック&バトル》!!」
ホーガンの場で開いたカードに、鳥人の騎士の動きが止まった。
「このカードは、自分が持ち主のモンスターが攻撃してきた時に発動できる!コントロールを奪われたモンスターを全て奪い返す!戻って来い!《BF-威光のフランベルジェ》、《BFー至高のスクラマサクス》!!」
正気を取り戻した鳥人達は剣を仕舞い込み、ホーガンの元へと戻った。
「な・・・何よそれ!あなたさっき伏せたカードは魔法だって言ってたじゃない!」
ホーガンは不敵に笑う。
「三文芝居はいつか役に立つ。遠い祖先の言い伝えさ!《カムバック&バトル》の効果はまだ続く!この効果でコントロールを取り戻したモンスター1体と相手フィールドのモンスターはそれぞれ攻撃表示になり、戦闘を行わなければならない!」
罠カードが光り、アイドルはスタンドマイクを持って立ち上がる。
「そんな・・・『ギャラクシー☆キラリ』の攻撃力は0・・・!」
ホーガンはマーナを指差し言った。
「ここで正しい攻撃名を教えてあげよう!バトルだ!《BF-威光のフランベルジェ》で《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》を攻撃!!」
鳥人の騎士は波打つ長剣を構え、アイドルの上空へと飛び立った。
「『デッドリィ・ブラックスラッシュ』!!!」
放たれた斬撃と暴風に星のアイドルが消し飛ぶ。衝撃の余波にマーナも後方へ吹き飛ばされた。
「このワタクシが、ワタクシが負けるなんてぇー!!(LP2500→0)」
『勝者:ジェイミー・ホーガン』
展開したD・ディスクを仕舞い込み、ホーガンはマーナの前に立った。
「さぁ、出口を教えてもらおうか。」
だが、その瞬間マーナはホーガンの足を払い、宙返りをして立ち上がった。
「いてて・・何するんだ。」
転んだホーガンにマーナは言った。
「やっぱり四賢人としてあなたを逃がす訳にはいかないわ!」
ホーガンはやれやれと立ち上がる。
「全く・・本当に四賢人なのか?」
真剣な顔でマーナは言い返す。
「だからそうだって言ってるでしょ!ワタクシは選ばれた戦士なの!」
ホーガンは淡々と返す。
「じゃあ、ここに書いてあるのはなんだ?」
ホーガンが指を差したそこには名前が書き記されていた。ホーガンはそれを読み上げる。
「”ドレガン専用部屋”。この名前なら知っている。かつての四賢人”ドレガン”。だが、奴は数年前に行方不明になっている。」
それを聞いたマーナの目が潤み始める。
「そうよ。ここはパパの部屋。でも、今はワタクシの部屋よ!ワタクシはパパの後を継いだの!だから今はワタクシが四賢人なのよ!」
ホーガンはなるほど、と肩を竦めた。
「そうか。じゃあ、君はこの『DWA』で何がしたい。四賢人になって何を求めるんだ?」
ホーガンの問いにマーナは小さな声で答える。
「そんなの・・・。パパみたいに強くなって・・・人の役に立って・・それで・・・。」
マーナはだんだんと涙声になってゆく。
「”ノーン”という奴を知っているか?」
下を向いて目を擦るマーナにホーガンは訊ねた。
「ノーン・・・?いいえ知らないわ。」
マーナの言葉にそっと胸を撫で下ろしたホーガンは、改めて言った。
「マーナ、出口はどこか教えてくれないか。俺は、大切な仲間を助けなければいけない。その為にここに来たんだ。」
マーナは部屋の奥、金属製の棚を指差した。
「あの向こうに隠し通路があるわ。」
ホーガンはその棚の方へ歩き出した。その途中、マーナの方を振り向き礼を言う。
「ありがとう、マーナ。」
棚をずらすと、そこには人一人ほどの穴が開いていた。そこへ入り込もうとした時、後ろからマーナの声が響いた。
「パパ、帰ってくるかしら!」
ホーガンは言った。
「全て終わったら、俺が探して来るさ。」
その言葉にマーナは言う。
「優しいのね、あなた。」
ホーガンは笑った。
「世話焼きなのは血筋でね。それでは、また。」
そう言うと、ホーガンはマーナの部屋を後にした。
一方、その頃。遊牙達は。
「ここを真っ直ぐだ。それから突き当たりのデュエルリングがある部屋を抜けて、そこから左。」
カゲロウの残した端末を持ち、歩きながら遊牙は説明する。
「いよいよ、ルナの元へたどり着くのね。」
凛香は真剣な面持ちで言う。
「でもよ、あのホーガンが言ってたことがなんか気になるぜ。」
カケルの言葉に遊牙が頷く。
「ああ。”今まで通りのルナで居るとは言い切れない”・・・。何か、嫌な予感がする・・・。」
そして部屋の前に着き、遊牙は扉のタッチパネルに触れた。
『遺伝子認証確認:解除』
「今思えば、これが開く理由も分かる・・・。さぁ、あとはここを抜けて・・・」
その時だった。
「おうおう。まぁこりもせずに来たってか。危険因子のガキどもが。」
その部屋の中から響いた、聞き覚えのある声に遊牙は身を構える。
「お前は・・・!!」
その卑しい笑いと表情。遊牙は初めてルナと出会った時の事を思い出す。そして、その場に現れた者達のことを。
「ああ、俺だよ。1番隊総隊長、木嶋直都様だ!!」
遊牙は叫ぶ。
「そこをどけ!俺達はルナの所へ行かなければならない!!」
木嶋が言葉を返す。
「どけって言われてどく訳あるかよ。ヘラルド様の名誉の為、てめえら危険因子はこの俺が叩き潰す!!」
そう言うと木嶋はD・ディスクを構えた。
それに合わせて前に出ようとした遊牙をカケルが止める。
「先に行けよ。」
「カケル、なにを・・・」
何か言おうとした遊牙を首を振って遮り、カケルは木嶋を睨む。
「あんたの相手は俺だぜ!!」
凛香が言う。
「カケル一人置いて行くなんて出来る訳無いでしょ!」
カケルは凛香を見つめた。
「あんまり俺を見くびるなよ凛香。なーに、すぐにぶっ倒して追いつくからさ。さぁ、行けよ二人とも!」
遊牙は頷き、凛香の手を引っ張った。
「行かせるかガキ共!!」
先へ進もうとする二人に木嶋が掴み掛かろうとする。しかし、素早く前に出たカケルが、木嶋の顔面すれすれで拳を放った。
「相手は俺だって言ってんだろうが・・・!!」
その気迫に押された木嶋は去って行く二人を一瞥した後、カケルを凄まじい形相で睨みつけた。
「俺に喧嘩を売った事を後悔させてやる!!!」
カケルもすかざす言葉を返す。
「俺の喧嘩を買ったこと、後悔させてやるよ・・・!!」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
次回第15話「立て!グレートバスターマイデン」
「このワタクシの部屋に・・・マーナ様の部屋に入り込むなんて・・・このへんたいおとこー!!!」
少女の姿を見たその男―ジェイミー・ホーガン―は困惑する。
「こんな子ども、俺が居た時に居たか・・・?」
ゴシックファッションに身を包んだその少女は、ホーガンに詰め寄る。
「あなた何!?ワタクシの部屋に入り込んで何をしようとしているの!?ま、まさか・・・!!」
ホーガンは息を飲む。しかし、少女は突然赤面し始めた。
「わ、ワタクシのファン!?もー!だからって勝手に入り込むなんて・・・ファンならちゃんと言ってくれれば・・・。」
もじもじとする少女を無視しホーガンは出口を探し始めた。
「ちょ、ちょっと無視しないでよ!」
ホーガンは訊ねる。
「なぜ君のような子どもがこんな場所にいる?それより出口はどこだ。」
少女は胸を張って言う。
「子どもだなんて、ワタクシこう見えても立派なレディなのよ!」
その言葉をホーガンは適当に受け流す。
「あーはいはい。全く今の『DWA』は何を考えているんだ・・・。」
少女はムッとした顔でD・ディスクを構えた。
「ワタクシのファンじゃないなら、あなたはやっぱり変態男ってことじゃない!」
ホーガンは肩をすくめる。
「残念だがお嬢ちゃんの相手をしてる時間はない。俺は急ぎの用があるんだ。」
少女はホーガンを睨む。
「なら、尚更通す訳にはいかないわ。侵入者をみすみす逃がすなんて四賢人としてあり得ないもの。」
その言葉にホーガンの表情が変わる。
「四賢人!?この・・子どもが?」
少女は地団駄を踏んだ。
「だーかーら!子どもっていうなー!もう許さないんだから!さっさとD・ディスクを構えなさいよ!」
ホーガンは言われる通りD・ディスクを構える。
「本当にこの子が四賢人なのか・・・しかし、今の四賢人は・・・。」
少女はホーガンを指差す。
「見てなさい!このマーナ様がけちょんけちょんにしてやるんだから!」
ホーガンは呟く。
「仕方ない。やるしかないか。」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのはホーガン。
「先攻は貰う!俺のターン!俺は手札の《BFー曙のファルシオン(☆3/闇/鳥獣/1500・1200)》の効果を発動!このカードを手札から捨てることで、デッキから永続魔法《黒い旋風》を手札に加える!」
ホーガンのデッキからカードが迫り出す。
「そして永続魔法《黒い旋風》を発動!このカードは自分が「BF」を召喚する度に、デッキから召喚したモンスターより低い攻撃力を持つ「BF」を手札に加えることができる!俺は手札から《BFー極北のブリザード(☆2/闇/鳥獣/チューナー/1300・0)》を召喚!」
小柄な鳥獣がホーガンのフィールドに出現し、部屋の中を飛び回る。
「《黒い旋風》の効果により俺はデッキから《BFー閃光のパタ(☆1/闇/鳥獣/チューナー/500・100)》を手札に加える!そして《BFー極北のブリザード》の効果発動!」
その言葉と同時に、ホーガンの墓地が光る。
「《BFー極北のブリザード》の召喚に成功した時、墓地からレベル4以下の「BF」を守備表示で特殊召喚できる!舞い戻れ《BFー曙のファルシオン》!」
幅の広い剣を携えた鳥獣がフィールドに飛び出した。
「さぁ、行くぞ!俺はレベル3の《BFー曙のファルシオン》にレベル2の《BFー極北のブリザード》をチューニング!」
2つの光の輪へ鳥人の剣士が飛び込む。
「黒き旋風よ!怒濤の刃振りかざし、地を這う敵を両断せよ!シンクロ召喚!吹き荒れろ!《BF-睥睨のハルバード(☆5/闇/鳥獣/シンクロ/2300・500)》!!」
戦斧を振りかざし、屈強な鳥人が相手を威圧する。
「シンクロ召喚・・・ふーん、あなたもそうなのね。」
マーナはニヤリと笑う。
「この瞬間《BF-睥睨のハルバード》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地からレベル3以下の「BF」を守備表示で特殊召喚できる!再び蘇れ《BFー曙のファルシオン》!」
さらにホーガンは手札のカードをD・ディスクにセッティングする。
「俺は手札の《BFー閃光のパタ》の効果を発動!このカードは自分フィールドに存在するシンクロモンスター以外の「BF」モンスター1体のレベルを1つ下げ、手札から特殊召喚できる!俺は《BFー曙のファルシオン》のレベルを1つ下げ《BFー閃光のパタ》を特殊召喚!」
針のような細い剣を備えた鳥人が他の「BF」に並んだ。
「すまないが、早速切り札を呼ばせて貰う!俺はレベル5の《BF-睥睨のハルバード》とレベル2となった《BFー曙のファルシオン》にレベル1の《BFー閃光のパタ》をチューニング!」
再び出現した光の輪に2体の鳥人が包み込まれる。
「黒き烈風よ!威厳の剣を持ちて、天空を駆け巡れ!シンクロ召喚!舞い踊れ!《BF-威光のフランベルジェ(☆8/闇/鳥獣/シンクロ/3000・1200)》!!」
波打つ長剣を携え、誇り高き鳥人の騎士がフィールドに舞い降りる。
「さらに俺は手札から魔法カード《フェザー・レイン》を発動!自分フィールドの鳥獣族モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手に与える!本来このカードを発動したターン、そのモンスターは攻撃できない!だが先攻1ターン目に発動すればこのデメリットは無いも同じだ!!」
鳥人の騎士が、黒い翼を翻す。突風とともに無数の羽根がマーナを襲った。
「うっ!いきなりダメージなんて!(LP4000→2500)もっとレディを優しく扱ったらどう!?」
ホーガンは気にせず続ける。
「俺はこれでターンエンド!さぁ、君のターンだ。」
ムカっとした顔でマーナはカードを引く。
「容赦しないんだから!ワタクシのターン!ワタクシは手札からフィールド魔法《ライブステージ・ギャラクシードーム》を発動!」
その言葉と共に周りの景色は輝かしいライブステージへと変貌する。ホーガンは周りを見渡し困惑する。
「な、なんだこのフィールド魔法は・・!」
マーナはウィンクして言った。
「これがワタクシ専用のステージよ!《ライブステージ・ギャラクシードーム》の効果発動!自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、1ターンに1度手札から「スペースアイドル」を特殊召喚できる!ワタクシはこの効果で《スペースアイドル・モモコ(☆2/光/天使/チューナー/800・900)》を特殊召喚!」
ステージの上に、煌めかしい衣装に身を包んだアイドルが手を振って現れる。
「そしてワタクシは《スペースアイドル・シノン(☆4/光/天使/1700・1600)》を召喚!」
ステージにポニーテールの髪型をしたアイドルが増える。
「チューナーとチューナー以外のモンスターが揃った・・・来るのか!!」
身構えたホーガン。マーナは両手を上げ高らかに叫んだ。
「ワタクシはレベル4の《スペースアイドル・シノン》にレベル2の《スペースアイドル・モモコ》をチューニング!!」
ステップを踏むようにジャンプしたアイドルは光の輪となり、もう一人のアイドルを包み込んでゆく。
「星々煌めく今宵の空に、乙女の夢が溢れ出す!奇跡の歌声よ、銀河に響け!シンクロ召喚!《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ(☆6/光/天使/シンクロ/0・2500)》!!」
輝かしい星々を引き連れ、美しい歌姫がフィールドに光臨する。スタンドマイクを手に華やかな衣装を身に纏った星のアイドルは、ステージに降り立ちポーズを決めた。
「これまた随分ケバいシンクロモンスターだな・・・。」
ホーガンの呟きにマーナはムッとして言う。
「ワタクシのモンスターにケチつけないで!全く、今に見てなさい!《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》の効果発動!このモンスターが攻撃表示でシンクロ召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスター全てのコントロールを得る!!」
マーナの言葉にホーガンは驚愕する。
「な、なんだと!!」
星のアイドルは笑顔で駆け出し、鳥人の騎士に手を差し伸べる。鳥人の騎士は赤面しながらその手を取り、アイドルの後へついて行ってしまった。
「『ギャラクシー☆キラリ』が存在する限り、奪ったモンスターはワタクシの物よ!」
「くっ・・俺のフランベルジェが・・・。」
マーナはがら空きになったホーガンのフィールドを指差し、得意げに言い放つ。
「さぁ、《BF-威光のフランベルジェ》!あなたの好きな『ギャラクシー☆キラリ』を傷つけようとする、あの男をやっつけなさい!」
その命令どおり鳥人の騎士は剣を構えた。漆黒の翼を羽ばたかせ一気にホーガンへ詰め寄る。
「『アイドル親衛あたーっく』!!!」
振り下ろされた剣にホーガンは吹き飛んだ。
「ぐぁぁああっ!!(LP4000→1000)くっ、フランベルジェの攻撃名はそんなものじゃないぞ・・!」
倒れ込んだホーガンは小言を良いながら立ち上がった。
「攻撃名なんてなんでもいいのよ!ワタクシはカードを1枚セットして、ターンエンド!」
ホーガンは自分のデッキに手を伸ばす。
「どうする・・・俺のターン、ドロー!」
ホーガンはドローしたカードを確認しニヤリと笑う。それをそのまま手札に加え、別のカードを取り出した。
「俺は魔法カード《BFーリバイブ》を発動!手札を1枚捨て、墓地に存在する「BF」を2体手札に戻す!俺は手札の《BFー青影のクナイ(☆1/闇/鳥獣/100・100)》を墓地に捨て、墓地から《BFー極北のブリザード》と《BF-睥睨のハルバード》を手札に戻す!《BF-睥睨のハルバード》はシンクロモンスターの為、エクストラデッキに戻る!」
墓地のカードが迫り出し、それぞれの場所へと戻って行く。
「俺は《BFー極北のブリザード》を召喚!そして永続魔法《黒い旋風》の効果発動!デッキから《BFー幻月のククリ(☆2/闇/鳥獣/チューナー/1000・0)》を手札に加える!さらに《BFー極北のブリザード》の効果も発動し、墓地から《BFー曙のファルシオン》を特殊召喚!!」
ホーガンのD・ディスクに乗り墓地を突ついた『極北のブリザード』は、仲間を守備表示で復活させた。
「さらに手札の《BFー幻月のククリ》を墓地に捨て、《BFー青影のクナイ》の効果を発動!このカードは手札を1枚捨てることで、デュエル中1度だけ墓地から特殊召喚できる!」
忍者の姿をした小柄な鳥人はその体格に見合わない巨大なクナイを背負い、フィールド上で腕を組み鼻を鳴らした。
「俺はレベル3の《BFー曙のファルシオン》とレベル1の《BFー青影のクナイ》にレベル2の《BFー極北のブリザード》をチューニング!!」
光の輪の中へ2体の鳥人が飛び込んだ。
「黒き旋風よ!研ぎ澄まされたその刃で、強者の鎧を打ち砕け!シンクロ召喚!轟き叫べ!《BFー至高のスクラマサクス(☆6/闇/鳥獣/シンクロ/2400・1800)》!!」
幅の広い長剣を携えた鳥人はホーガンにフィールドに降り立ち、その翼を広げた。
「この瞬間、《BFー至高のスクラマサクス》の効果発動!このカードのシンクロ召喚成功時に相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを守備表示にする!!」
鳥人は腕を振り上げ、勢い良く剣を床に突き刺した。その衝撃で床が大きく揺れ、相手のモンスターがバランスを崩し膝を付いた。
「バトルだ!!《BFー至高のスクラマサクス》で《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》を攻撃!」
その言葉にマーナが笑う。
「あなたのモンスターの攻撃力は2400。ワタクシの《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》の守備表示は2500。その攻撃力じゃワタクシのモンスターには勝てないわ!」
だが、ホーガンもまた笑っていた。
「どうかな!《BFー至高のスクラマサクス》が守備表示モンスターを攻撃した場合、そのモンスターはダメージ計算前にデッキに戻る!!」
鳥人は舞い上がり、アイドルの真上で剣を構える。翼を翻し一気に加速した鳥人はその巨大な剣を振り下ろした。
しかし、その時。マーナのフィールドでカードが開く。
「だったらリバースカードを発動するわ!罠カード《握手会チケット》!!」
鳥人の手がアイドルの頭上で止まる。
「自分の「スペースアイドル」が相手から攻撃を受けた時、そのモンスターのコントロールを得るわ!」
ホーガンは焦る。
「な、何!?またか!!」
剣を構える鳥人に、アイドルは涙を浮かべた目でチケットを差し出す。鳥人は剣を投げ捨て、そのチケットを受け取ると笑顔を取り戻したアイドルと握手を交わした。
「スクラマサクス・・・お前まで・・!」
苦い顔をするホーガンを見て、マーナは得意げに笑う。
「これであなたはモンスターは全部ワタクシのものになったわ!もう打つ手無しかしら?」
ホーガンは肩を落とす。
「俺の手札はあと1枚・・・。ま、まさかこんな子どもに負かされるとは・・・。」
ホーガンは残されたカードを見て溜め息をついた。
「はぁ、残ったカードは使えない通常魔法だけ・・・。長年デュエリストをやっているが、まさかこんなお嬢さんに倒されるなんて・・・。意を決してここまで来たのになぁ・・・。でもしょうがないか。負けは負けだ・・・。あ、意味はないけど一応これ伏せとくか。」
ホーガンはべらべらと独り言を喋りながらカードを伏せた。
「俺はターンエンド。はぁ。」
ホーガンの様子にマーナは高々と笑った。
「あははは!ワタクシのたくてくすに圧倒されちゃったのね!まぁ、この状況じゃ無理もないわね!」
ホーガンは肩を落としたまま下を向いている。
「それじゃ、お望みどおりとどめを刺してあげる!ワタクシのターン!!」
マーナはカードを引き、そのままの手でホーガンを指差した。
「《BF-威光のフランベルジェ》を攻撃表示に変更して、そのままダイレクトアタック!!」
鳥人の騎士は剣を構え、一気に舞い上がる。
「これでワタクシの勝ちよ!やったー!!」
飛び跳ねて喜ぶマーナ。だが、その瞬間。ホーガンは顔を上げた。
「リバースカード発動!罠カード《カムバック&バトル》!!」
ホーガンの場で開いたカードに、鳥人の騎士の動きが止まった。
「このカードは、自分が持ち主のモンスターが攻撃してきた時に発動できる!コントロールを奪われたモンスターを全て奪い返す!戻って来い!《BF-威光のフランベルジェ》、《BFー至高のスクラマサクス》!!」
正気を取り戻した鳥人達は剣を仕舞い込み、ホーガンの元へと戻った。
「な・・・何よそれ!あなたさっき伏せたカードは魔法だって言ってたじゃない!」
ホーガンは不敵に笑う。
「三文芝居はいつか役に立つ。遠い祖先の言い伝えさ!《カムバック&バトル》の効果はまだ続く!この効果でコントロールを取り戻したモンスター1体と相手フィールドのモンスターはそれぞれ攻撃表示になり、戦闘を行わなければならない!」
罠カードが光り、アイドルはスタンドマイクを持って立ち上がる。
「そんな・・・『ギャラクシー☆キラリ』の攻撃力は0・・・!」
ホーガンはマーナを指差し言った。
「ここで正しい攻撃名を教えてあげよう!バトルだ!《BF-威光のフランベルジェ》で《スペースアイドル・ギャラクシー☆キラリ》を攻撃!!」
鳥人の騎士は波打つ長剣を構え、アイドルの上空へと飛び立った。
「『デッドリィ・ブラックスラッシュ』!!!」
放たれた斬撃と暴風に星のアイドルが消し飛ぶ。衝撃の余波にマーナも後方へ吹き飛ばされた。
「このワタクシが、ワタクシが負けるなんてぇー!!(LP2500→0)」
『勝者:ジェイミー・ホーガン』
展開したD・ディスクを仕舞い込み、ホーガンはマーナの前に立った。
「さぁ、出口を教えてもらおうか。」
だが、その瞬間マーナはホーガンの足を払い、宙返りをして立ち上がった。
「いてて・・何するんだ。」
転んだホーガンにマーナは言った。
「やっぱり四賢人としてあなたを逃がす訳にはいかないわ!」
ホーガンはやれやれと立ち上がる。
「全く・・本当に四賢人なのか?」
真剣な顔でマーナは言い返す。
「だからそうだって言ってるでしょ!ワタクシは選ばれた戦士なの!」
ホーガンは淡々と返す。
「じゃあ、ここに書いてあるのはなんだ?」
ホーガンが指を差したそこには名前が書き記されていた。ホーガンはそれを読み上げる。
「”ドレガン専用部屋”。この名前なら知っている。かつての四賢人”ドレガン”。だが、奴は数年前に行方不明になっている。」
それを聞いたマーナの目が潤み始める。
「そうよ。ここはパパの部屋。でも、今はワタクシの部屋よ!ワタクシはパパの後を継いだの!だから今はワタクシが四賢人なのよ!」
ホーガンはなるほど、と肩を竦めた。
「そうか。じゃあ、君はこの『DWA』で何がしたい。四賢人になって何を求めるんだ?」
ホーガンの問いにマーナは小さな声で答える。
「そんなの・・・。パパみたいに強くなって・・・人の役に立って・・それで・・・。」
マーナはだんだんと涙声になってゆく。
「”ノーン”という奴を知っているか?」
下を向いて目を擦るマーナにホーガンは訊ねた。
「ノーン・・・?いいえ知らないわ。」
マーナの言葉にそっと胸を撫で下ろしたホーガンは、改めて言った。
「マーナ、出口はどこか教えてくれないか。俺は、大切な仲間を助けなければいけない。その為にここに来たんだ。」
マーナは部屋の奥、金属製の棚を指差した。
「あの向こうに隠し通路があるわ。」
ホーガンはその棚の方へ歩き出した。その途中、マーナの方を振り向き礼を言う。
「ありがとう、マーナ。」
棚をずらすと、そこには人一人ほどの穴が開いていた。そこへ入り込もうとした時、後ろからマーナの声が響いた。
「パパ、帰ってくるかしら!」
ホーガンは言った。
「全て終わったら、俺が探して来るさ。」
その言葉にマーナは言う。
「優しいのね、あなた。」
ホーガンは笑った。
「世話焼きなのは血筋でね。それでは、また。」
そう言うと、ホーガンはマーナの部屋を後にした。
一方、その頃。遊牙達は。
「ここを真っ直ぐだ。それから突き当たりのデュエルリングがある部屋を抜けて、そこから左。」
カゲロウの残した端末を持ち、歩きながら遊牙は説明する。
「いよいよ、ルナの元へたどり着くのね。」
凛香は真剣な面持ちで言う。
「でもよ、あのホーガンが言ってたことがなんか気になるぜ。」
カケルの言葉に遊牙が頷く。
「ああ。”今まで通りのルナで居るとは言い切れない”・・・。何か、嫌な予感がする・・・。」
そして部屋の前に着き、遊牙は扉のタッチパネルに触れた。
『遺伝子認証確認:解除』
「今思えば、これが開く理由も分かる・・・。さぁ、あとはここを抜けて・・・」
その時だった。
「おうおう。まぁこりもせずに来たってか。危険因子のガキどもが。」
その部屋の中から響いた、聞き覚えのある声に遊牙は身を構える。
「お前は・・・!!」
その卑しい笑いと表情。遊牙は初めてルナと出会った時の事を思い出す。そして、その場に現れた者達のことを。
「ああ、俺だよ。1番隊総隊長、木嶋直都様だ!!」
遊牙は叫ぶ。
「そこをどけ!俺達はルナの所へ行かなければならない!!」
木嶋が言葉を返す。
「どけって言われてどく訳あるかよ。ヘラルド様の名誉の為、てめえら危険因子はこの俺が叩き潰す!!」
そう言うと木嶋はD・ディスクを構えた。
それに合わせて前に出ようとした遊牙をカケルが止める。
「先に行けよ。」
「カケル、なにを・・・」
何か言おうとした遊牙を首を振って遮り、カケルは木嶋を睨む。
「あんたの相手は俺だぜ!!」
凛香が言う。
「カケル一人置いて行くなんて出来る訳無いでしょ!」
カケルは凛香を見つめた。
「あんまり俺を見くびるなよ凛香。なーに、すぐにぶっ倒して追いつくからさ。さぁ、行けよ二人とも!」
遊牙は頷き、凛香の手を引っ張った。
「行かせるかガキ共!!」
先へ進もうとする二人に木嶋が掴み掛かろうとする。しかし、素早く前に出たカケルが、木嶋の顔面すれすれで拳を放った。
「相手は俺だって言ってんだろうが・・・!!」
その気迫に押された木嶋は去って行く二人を一瞥した後、カケルを凄まじい形相で睨みつけた。
「俺に喧嘩を売った事を後悔させてやる!!!」
カケルもすかざす言葉を返す。
「俺の喧嘩を買ったこと、後悔させてやるよ・・・!!」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
次回第15話「立て!グレートバスターマイデン」
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115 | 15:立て!グレートバスターマイデン | 926 | 2 | 2015-06-10 | - | |
46 | 15.5:魂の誤作動 | 827 | 2 | 2015-06-11 | - | |
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78 | メインキャラ解説 | 735 | 4 | 2015-06-25 | - | |
105 | 25:ルナ、デュエルします! | 1051 | 3 | 2015-06-25 | - | |
65 | 26:心に巣食う魔物 | 910 | 3 | 2015-06-26 | - | |
75 | 27:太古のデュエル!恐竜VSマンモス? | 941 | 3 | 2015-06-27 | - | |
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次はカケルの切り札が出てきます。次回も読んでもらえれば嬉しいです。 (2015-06-03 19:34)