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13:決着 武者VS騎士 作:ほーがん
第13話「決着 武者VS騎士」
その男はあのパイプの前に立っていた。
「・・・・やはり、どうにも・・・心配だ。」
そう呟いた男は目を閉じ、そのパイプの中へ飛び込んだ。
「俺のターン!」
遊牙は勢い良くカードを引いた。
「俺は手札から《コープスナイト・ウェイス(☆4/闇/アンデット/1700・0)》を召喚!」
闇の甲冑に身を包んだ騎士が剣を構え、フィールドに現れる。
「お前の発動した《剣激合戦》の効果により、《コープスナイト・ウェイス》の攻撃力は800アップする。(ATK1700→2500)」
さらに遊牙は手札のカードを取り出す。
「そして、手札から《コープスナイト・カリン(☆3/闇/アンデット/チューナー/1600・0)》の効果発動!このカードを手札から墓地に捨てる事で、このターン自分フィールドの「コープスナイト」全ての攻撃力は500アップする!(ATK2500→3000)」
『ウェイス』は仲間の力を得て、黒いオーラを放ち始める。
「バトルだ!!俺は《コープスナイト・ウェイス》で《剣激武将 シラヌイ》を攻撃!」
遊牙の言葉にカゲロウが笑う。
「攻撃力の劣るモンスターで、《剣激武将 シラヌイ》を攻撃するか・・・少年、何か策があるな?」
その言葉に答えるように、遊牙は手札のカードを見せた。
「この瞬間、《コープスナイト・メディ(☆4/闇/アンデット/1200・0)》の効果を発動!このカードを手札から捨て、自分フィールドの「コープスナイト」1体の攻撃力をダメージステップ終了時まで1000アップさせる!これで《コープスナイト・ウェイス》の攻撃力が、お前のモンスターの攻撃力を上回る!(ATK3000→4000)」
さらに仲間の力を与えられた『ウェイス』は武将に向けて剣を振りかざした。
しかし。
「この時を待っていた!《剣激武将 シラヌイ》の効果発動!自分の場の「剣激武者」モンスターが元々の攻撃力より高い攻撃力を持つ相手モンスターと戦闘する時、オーバーレイユニットを1つ使うことで、そのモンスターの攻撃力を100にする!」
「何っ!?」
武将は禍々しい妖気を放つ刀を振る。その妖気は『ウェイス』の体を取り囲み、力を奪って行く。
「さぁ、返り討ちだ!行け!《剣激武将 シラヌイ》よ!」
武将の股がる漆黒の戦馬が駆け出す。構えられた妖刀は騎士の体を水平に斬り落とした。
「ぐああぁぁっ!!!(LP4000→300)」
斬撃の余波に遊牙は倒れ込んだ。
「そして!《剣激武将 シラヌイ》の効果はまだ続く!このモンスターが自身の効果を受けた相手モンスターを戦闘破壊した時、その攻撃力は破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする!(ATK3800→5500)」
凄まじい覇気を放ち、武将は場を威圧する。その妖気はカゲロウのフィールドを包み込んで行く。
「攻撃力5500・・・!!」
武将の放つ殺気と、その攻撃力に凛香は身を震わせた。
「どうした少年。某の期待を裏切るのか?」
カゲロウの言葉に遊牙は立ち上がる。
「・・・俺は墓地の《コープスナイト・メディ》の効果を発動。自分フィールドの「コープスナイト」が破壊されたターン、このモンスターを墓地から守備表示で特殊召喚できる。」
遊牙の墓地から闇の女騎士が復活しフィールドに膝を付いた。
「エンドフェイズに《コープスナイト・ウェイス》の効果でデッキから《コープスナイト・エリー(☆3/闇/アンデット/チューナー/1000・0)》を手札に加える。俺はこれでターンエンド。」
ターンがカゲロウへと移る。刀型のD・ディスクにカゲロウは手を伸ばした。
「某のターン、ドロー!」
カードを引いた後、カゲロウは言った。
「この瞬間!《剣激武将 シラヌイ》の効果発動!自分のスタンバイフェイズに、このカード以外の自分の場のカードを全て破壊する!」
武将の放つ覇気が勢いを増し、カゲロウのフィールドのカードを吹き飛ばした。
「だが、伏せていた罠カード《不意打ちの一閃》の効果発動!セットされていたこのカードが破壊された時、デッキから「剣激武者」1体を特殊召喚する!見参せよ、《剣激武者 スグハ(☆4/風/戦士/1300・900)》!」
反りの無い刀を携え、若武者が武将に並んだ。
「そして某は、《剣激武者 ハバキ(☆4/風/戦士/1600・1150)》を召喚!」
短刀を何本も腰に差した武者は、両手に刀を持ち、剣舞しながら場に出現する。
「またレベル4のモンスターが2体・・・。」
遊牙は呟く。カゲロウは右腕を上げ高らかに叫んだ。
「では参らん!某はレベル4の《剣激武者 スグハ》と《剣激武者 ハバキ》でオーバーレイ!」
光の渦の中へ2体の武者は飛び込んだ。
「先見秀でし疾風の策士よ、軍配振るいて勝利を導かん!エクシーズ召喚!いざ参らん!《剣激参謀 カガリ(★4/風/戦士/エクシーズ/1800・800)》!」
軍配団扇を振るい、初老の参謀が武将の隣に降り立った。
「秀でた参謀とは、武将を立て勝利を導くもの!《剣激参謀 カガリ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分の場の「剣激武者」1体は相手に直接攻撃できる!某が選ぶモンスターは《剣激武将 シラヌイ》!!」
遊牙はたじろぐ。
「攻撃力5500のダイレクトアタック・・・!」
カゲロウは遊牙を指差し笑う。
「さぁ、少年よ!己が道を行くならば、この一撃を防いでみせよ!《剣激武将 シラヌイ》で少年にダイレクトアタック!!」
武将は戦馬に鞭を打つ。構えられた刀が黒い妖気を放ち、遊牙に迫った。
だが、その刹那。遊牙は手札のカードを取り出した。
「俺は手札から《コープスナイト・ヴェルナンド(☆6/闇/アンデット/2400・0)》の効果を発動!相手の直接攻撃時にこのカードを手札から捨て、その攻撃を無効にする!そしてそのバトルフェイズは強制終了する!」
武将の一撃を騎士の幻影が受け止めた。
「やはりな!はっはっは!少年よ、なかなか一筋縄ではいかないようだな!面白いではないか!できればこのデュエル、すぐには終わらせたくないものだな!」
カゲロウは口を大きく開けて笑った。その様子を見た遊牙は疑問を口にする。
「お前は一体何が目的だ。早く俺達を排除したいんじゃないのか?」
カゲロウの口がニヤリと笑う。
「さっきの話はあくまで建前だ。未知の相手とのデュエル!これほど面白いものはない!」
遊牙は困惑する。
「面白いだと・・・?」
カゲロウは言う。
「例え敵同士であっても、やるならば面白いデュエルの方がいいだろう?さぁ、いかにして某を打ち破るか、しかと見物させてもらおうではないか!某はこれにてターンエンド!」
凛香の横に立っていたミシェルはフッと笑うと出口の方へ歩き出した。
「さて、私は散歩にでも行こうかね。」
部屋を出る直前、ミシェルは凛香の方へ振り向いた。
「別に私は味方でもないけど一応言っておくわ。女は強くなきゃダメよ。仲間を引っ張って行けるくらいね。それじゃ。」
その言葉に凛香はただ頷く。ミシェルは向き直り、長い廊下を歩き出した。
「俺は・・・前に進む!俺のターン!ドロー!」
遊牙は引いたカードを手札に加え、別のカードをD・ディスクにセットした。
「俺は《コープスナイト・エリー》を召喚!その効果により墓地から《コープスナイト・ウェイス》を特殊召喚する!」
フィールドに現れた少女の剣士は手に持つ短剣を投げると、フィールドに穴を開けた。その穴から『ウェイス』が釣り上げられ、復活する。
「俺はレベル4の《コープスナイト・ウェイス》にレベル3の《コープスナイト・エリー》をチューニング!」
『エリー』の体は光の輪となり、『ウェイス』の周りを囲んで行く。
「闇の甲冑よ!鋼の闘志をその身に宿し、敵を切り裂く騎士となれ!シンクロ召喚!現れろ!《コープスナイト・デッドジャック(☆7/闇/アンデット/シンクロ/2500・2000)》!!」
誇り高き騎士は、その手に持つ剣を掲げフィールドに舞い降りた。
「シンクロモンスター・・・なるほど。それが貴様の切り札か!」
カゲロウは不敵な笑みを浮かべる。
「さらに俺は《コープスナイト・メディ》のもうひとつの効果を発動!このカードをフィールドから除外することでデッキから「コープスナイト」1体を墓地に送ることができる!この効果により、俺はデッキから《コープスナイト・クレス(☆2/闇/アンデット/1100・0)》を墓地に送る!」
遊牙のフィールドから女騎士が消え、デッキからカードが迫り出す。それを手に取った遊牙はそのまま墓地に送った。
「さらに、墓地に存在する《コープスナイト・ヴェルナンド》の効果発動!このカードが墓地に存在し、自分の墓地に「コープスナイト」以外のカードが存在しない場合、このカード以外の「コープスナイト」1体を除外することで、自分のフィールドの「コープスナイト」1体の攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分アップする!」
墓地が光り、遊牙は出て来たカードを取り出した。
「俺は墓地から《コープスナイト・ウェイス》を除外しその攻撃力を《コープスナイト・デッドジャック》にプラスする!!(ATK2500→4200)」
カゲロウは声を上げた。
「攻撃力を上げた所で《剣激武将 シラヌイ》はその攻撃力を100にする!また何か策があるのか少年!それとも苦し紛れの一手か!」
その言葉に遊牙は返す。
「俺は墓地の《コープスナイト・クレス》の効果発動!自分の墓地に「コープスナイト」以外のカードが存在しない場合、デュエル中1度だけ相手の墓地の魔法・罠カードを発動できる!俺が発動するのは、永続魔法《剣激合戦》!!」
遊牙のフィールドにカゲロウの使った魔法カードが表示された。
「このカードはフィールドに「剣激武者」が存在する場合、相手フィールドのモンスターの効果は無効になり、攻撃力を800アップする。よってお前の《剣激武将 シラヌイ》《剣激参謀 カガリ》の効果は無効となる!!」
《剣激武将 シラヌイ》(ATK5500→2600→3400)
《剣激参謀 カガリ》(ATK1800→2600)
「某のカードを利用するとは!面白いぞ少年!」
さらに、遊牙は手札のカードを墓地へと送る。
「俺は手札から《コープスナイト・ギリー(☆1/闇/アンデット/100・0)》の効果を発動!このカードを手札から墓地に捨てることで、このターン、自分フィールドの「コープスナイト」シンクロモンスター1体は2回攻撃できる!」
小柄な騎士の幻影が『デッドジャック』の持つ剣に溶け込み、黒いオーラを纏わせた。遊牙は相手のモンスターを指差し叫ぶ。
「バトルだ!!《コープスナイト・デッドジャック》で《剣激参謀 カガリ》を攻撃!!『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
騎士の斬撃は音も無く放たれ、一瞬の閃光の中参謀は水平に切り裂かれた。
「そしてこの瞬間、手札の《コープスナイト・サミュエル(☆1/闇/アンデット/チューナー/0・100)》の効果を発動!このカードを手札から除外することで、このターン自分フィールドの「コープスナイト」が、相手モンスターをバトルで破壊した時に発生するダメージは2倍になる!!」
カゲロウは驚愕する。
「うおっ!!(LP4000→800)今のは響いたぞ、少年!!」
遊牙は言った。
「《コープスナイト・ギリー》の効果で『デッドジャック』はまだ攻撃できる!これで終わりだ!《コープスナイト・デッドジャック》で《剣激武将 シラヌイ》を攻撃!!!」
再び、闇の騎士は剣を構え飛び上がる。目下に捉えるは武将の姿。
「『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
無音の斬撃。それは静かに武将の刃ごと切り裂く。
そう、誰もが思った。しかし。
「某は墓地の罠カード《不意打ちの一閃》の効果を発動!!」
カゲロウの叫びに『デッドジャック』の動きが止まる。
「某のライフが1000以下で自分の場の「剣激武者」モンスターが攻撃を受けた時、墓地のこのカードを除外することで、その「剣激武者」の攻撃力をダメージ計算時のみ2倍にする!!(ATK3400→6800)」
武将の怒号がフィールドを震撼させた。凄まじい妖気がフィールドを黒く包み込んで行く。だが、騎士の攻撃はもう止める事は出来ない。
「武将とは、人の上に立ち軍を率いる者!例え劣勢だとしてもただでは死なん!!《不意打ちの一閃》の効果により、この戦闘で発生するダメージはお互いのプレイヤーが受ける!!!」
「何っ!?」
騎士の剣が武将の刀に弾かれる。その勢いのまま吹き飛んだ騎士を、武将は二振りの刀で斬り抜けた。
その衝撃は爆風となり互いのプレイヤーにぶつかる。
「はっはっは!!面白かったぞ、少年!!!(LP800→0)」
「ぐああぁっ!!!(LP300→0)」
両者は同じ勢いで吹き飛び、倒れ込んだ。
『Draw:引き分け』
しばらくして遊牙は起き上がった。
「引き分け・・・。」
顔を上げたそこにはカゲロウの姿があった。
「くっ・・・。」
カゲロウは笑って手を差し伸べる。
「はっはっは!久々に面白いデュエルだったぞ、少年よ!」
その言葉にカケルがぼやく。
「俺にはワンキルしたくせに・・・。」
遊牙はその手を取らずに立ち上がった。
「どうするんだ。俺は勝ってもいないし、負けてもいない。俺達を力ずくで排除するのか?」
カゲロウは言う。
「そんなことはせん。それは某も同じことだからな。ただ、楽しませてくれた礼に某が知っている事を教えてやろう。」
遊牙の元に凛香とカケルが集まる。
「ノーン殿は、もう一度『ゲート』を開けようとしている。」
カゲロウの言葉に遊牙が返す。
「そんなことをしたら、また『神の鉄槌』がやってくる!!今度こそ終わりになるぞ!!」
カゲロウは言う。
「ノーン殿は『神の鉄槌』の力を手に入れることで、世界の復興を目指している。某はそう聞いている。この世界を破壊したのは『神の鉄槌』。破壊する力があるのなら創る力もあるに違いない。ノーン殿はそう考えているのだ。」
横から凛香が口を挟む。
「でも、あのミシェルって人が言ってたわ。ノーンは『我々は英雄なり。すなわち世界は英雄に対し奉仕しなければならない。』って言ってたって。これはどういう意味よ。」
凛香の問いにカゲロウは答える。
「おそらく世界が元にもどった後、ノーン殿は自ら世界を治めようとしているのだろう。世界を直し、救った人物になるのだ。文句を言う奴もあるまい。」
その言葉に遊牙が疑問を示す。
「『おそらく』とは、どういうことだ。」
カゲロウは言った。
「某は・・・ノーン殿に会ったことはない。某が聞いているのは『ゲート』を開けようとしていることと、世界の復興を目指しているということだけだ。」
そのままカゲロウは言葉を続ける。
「某はこの『DWA』が、ノーン殿がこの街の、この世界の平和を実現すると信じている。かつての『DWA』がそうだったように。」
カゲロウはカケルを指差した。
「そこの少年から聞いた。仲間を助けに来たそうだな。その仲間を捕らえ、ノーン殿が何をしようとしているのかはわからん。だが、その仲間を使い、何かを成し遂げようとするノーン殿も正義。その仲間を取り返そうとする貴様らもまた別の正義だ。」
三人に背を向けカゲロウは歩き去って行く。
「某は味方ではない。だが、敵でもないと言っておこう。前に進むのであれば、己の信じた正義を貫くことだ。」
去って行く途中、カゲロウは後ろに向かって何かを放り投げた。カケルは慌ててそれをキャッチする。
「これは・・・。」
遊牙と凛香が詰め寄る。それはタッチパネル式の端末だった。画面に触れたとたん、複雑な間取りのような物が表示される。
「これって、ここの構造図じゃない?」
凛香の言葉に遊牙が頷く。
「ああ。俺はこの場所に何があるのかを知っている。ルナはおそらく・・・ここだ。」
遊牙が指差した場所をカケルが読み上げる。
「ええと・・・『生体培養実験室』・・・?」
その端末をポケットに仕舞い込み遊牙は歩き出す。
「『生体培養実験室』・・・俺の・・生まれた場所だ。」
一方、ゴミ箱に落ちた男は咳き込みながら立ち上がる。
「くっ・・・こんな所から入れって言ってたのか俺は・・・ちょっとひどいことしたかな・・。」
男は回りを見渡す。そこはどうやら居住施設の一室のようだった。
「誰かの個室か・・・?」
その時、背後から悲鳴が響く。
「な、何よあんたはぁぁぁー!!!」
男は振り向いた。そこに居たのは・・・。
「このワタクシの部屋に・・・マーナ様の部屋に入り込むなんて・・・このへんたいおとこー!!!」
幼い姿の少女だった。
次回第14話「四賢人最後の一人・その名はマーナ」
その男はあのパイプの前に立っていた。
「・・・・やはり、どうにも・・・心配だ。」
そう呟いた男は目を閉じ、そのパイプの中へ飛び込んだ。
「俺のターン!」
遊牙は勢い良くカードを引いた。
「俺は手札から《コープスナイト・ウェイス(☆4/闇/アンデット/1700・0)》を召喚!」
闇の甲冑に身を包んだ騎士が剣を構え、フィールドに現れる。
「お前の発動した《剣激合戦》の効果により、《コープスナイト・ウェイス》の攻撃力は800アップする。(ATK1700→2500)」
さらに遊牙は手札のカードを取り出す。
「そして、手札から《コープスナイト・カリン(☆3/闇/アンデット/チューナー/1600・0)》の効果発動!このカードを手札から墓地に捨てる事で、このターン自分フィールドの「コープスナイト」全ての攻撃力は500アップする!(ATK2500→3000)」
『ウェイス』は仲間の力を得て、黒いオーラを放ち始める。
「バトルだ!!俺は《コープスナイト・ウェイス》で《剣激武将 シラヌイ》を攻撃!」
遊牙の言葉にカゲロウが笑う。
「攻撃力の劣るモンスターで、《剣激武将 シラヌイ》を攻撃するか・・・少年、何か策があるな?」
その言葉に答えるように、遊牙は手札のカードを見せた。
「この瞬間、《コープスナイト・メディ(☆4/闇/アンデット/1200・0)》の効果を発動!このカードを手札から捨て、自分フィールドの「コープスナイト」1体の攻撃力をダメージステップ終了時まで1000アップさせる!これで《コープスナイト・ウェイス》の攻撃力が、お前のモンスターの攻撃力を上回る!(ATK3000→4000)」
さらに仲間の力を与えられた『ウェイス』は武将に向けて剣を振りかざした。
しかし。
「この時を待っていた!《剣激武将 シラヌイ》の効果発動!自分の場の「剣激武者」モンスターが元々の攻撃力より高い攻撃力を持つ相手モンスターと戦闘する時、オーバーレイユニットを1つ使うことで、そのモンスターの攻撃力を100にする!」
「何っ!?」
武将は禍々しい妖気を放つ刀を振る。その妖気は『ウェイス』の体を取り囲み、力を奪って行く。
「さぁ、返り討ちだ!行け!《剣激武将 シラヌイ》よ!」
武将の股がる漆黒の戦馬が駆け出す。構えられた妖刀は騎士の体を水平に斬り落とした。
「ぐああぁぁっ!!!(LP4000→300)」
斬撃の余波に遊牙は倒れ込んだ。
「そして!《剣激武将 シラヌイ》の効果はまだ続く!このモンスターが自身の効果を受けた相手モンスターを戦闘破壊した時、その攻撃力は破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする!(ATK3800→5500)」
凄まじい覇気を放ち、武将は場を威圧する。その妖気はカゲロウのフィールドを包み込んで行く。
「攻撃力5500・・・!!」
武将の放つ殺気と、その攻撃力に凛香は身を震わせた。
「どうした少年。某の期待を裏切るのか?」
カゲロウの言葉に遊牙は立ち上がる。
「・・・俺は墓地の《コープスナイト・メディ》の効果を発動。自分フィールドの「コープスナイト」が破壊されたターン、このモンスターを墓地から守備表示で特殊召喚できる。」
遊牙の墓地から闇の女騎士が復活しフィールドに膝を付いた。
「エンドフェイズに《コープスナイト・ウェイス》の効果でデッキから《コープスナイト・エリー(☆3/闇/アンデット/チューナー/1000・0)》を手札に加える。俺はこれでターンエンド。」
ターンがカゲロウへと移る。刀型のD・ディスクにカゲロウは手を伸ばした。
「某のターン、ドロー!」
カードを引いた後、カゲロウは言った。
「この瞬間!《剣激武将 シラヌイ》の効果発動!自分のスタンバイフェイズに、このカード以外の自分の場のカードを全て破壊する!」
武将の放つ覇気が勢いを増し、カゲロウのフィールドのカードを吹き飛ばした。
「だが、伏せていた罠カード《不意打ちの一閃》の効果発動!セットされていたこのカードが破壊された時、デッキから「剣激武者」1体を特殊召喚する!見参せよ、《剣激武者 スグハ(☆4/風/戦士/1300・900)》!」
反りの無い刀を携え、若武者が武将に並んだ。
「そして某は、《剣激武者 ハバキ(☆4/風/戦士/1600・1150)》を召喚!」
短刀を何本も腰に差した武者は、両手に刀を持ち、剣舞しながら場に出現する。
「またレベル4のモンスターが2体・・・。」
遊牙は呟く。カゲロウは右腕を上げ高らかに叫んだ。
「では参らん!某はレベル4の《剣激武者 スグハ》と《剣激武者 ハバキ》でオーバーレイ!」
光の渦の中へ2体の武者は飛び込んだ。
「先見秀でし疾風の策士よ、軍配振るいて勝利を導かん!エクシーズ召喚!いざ参らん!《剣激参謀 カガリ(★4/風/戦士/エクシーズ/1800・800)》!」
軍配団扇を振るい、初老の参謀が武将の隣に降り立った。
「秀でた参謀とは、武将を立て勝利を導くもの!《剣激参謀 カガリ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分の場の「剣激武者」1体は相手に直接攻撃できる!某が選ぶモンスターは《剣激武将 シラヌイ》!!」
遊牙はたじろぐ。
「攻撃力5500のダイレクトアタック・・・!」
カゲロウは遊牙を指差し笑う。
「さぁ、少年よ!己が道を行くならば、この一撃を防いでみせよ!《剣激武将 シラヌイ》で少年にダイレクトアタック!!」
武将は戦馬に鞭を打つ。構えられた刀が黒い妖気を放ち、遊牙に迫った。
だが、その刹那。遊牙は手札のカードを取り出した。
「俺は手札から《コープスナイト・ヴェルナンド(☆6/闇/アンデット/2400・0)》の効果を発動!相手の直接攻撃時にこのカードを手札から捨て、その攻撃を無効にする!そしてそのバトルフェイズは強制終了する!」
武将の一撃を騎士の幻影が受け止めた。
「やはりな!はっはっは!少年よ、なかなか一筋縄ではいかないようだな!面白いではないか!できればこのデュエル、すぐには終わらせたくないものだな!」
カゲロウは口を大きく開けて笑った。その様子を見た遊牙は疑問を口にする。
「お前は一体何が目的だ。早く俺達を排除したいんじゃないのか?」
カゲロウの口がニヤリと笑う。
「さっきの話はあくまで建前だ。未知の相手とのデュエル!これほど面白いものはない!」
遊牙は困惑する。
「面白いだと・・・?」
カゲロウは言う。
「例え敵同士であっても、やるならば面白いデュエルの方がいいだろう?さぁ、いかにして某を打ち破るか、しかと見物させてもらおうではないか!某はこれにてターンエンド!」
凛香の横に立っていたミシェルはフッと笑うと出口の方へ歩き出した。
「さて、私は散歩にでも行こうかね。」
部屋を出る直前、ミシェルは凛香の方へ振り向いた。
「別に私は味方でもないけど一応言っておくわ。女は強くなきゃダメよ。仲間を引っ張って行けるくらいね。それじゃ。」
その言葉に凛香はただ頷く。ミシェルは向き直り、長い廊下を歩き出した。
「俺は・・・前に進む!俺のターン!ドロー!」
遊牙は引いたカードを手札に加え、別のカードをD・ディスクにセットした。
「俺は《コープスナイト・エリー》を召喚!その効果により墓地から《コープスナイト・ウェイス》を特殊召喚する!」
フィールドに現れた少女の剣士は手に持つ短剣を投げると、フィールドに穴を開けた。その穴から『ウェイス』が釣り上げられ、復活する。
「俺はレベル4の《コープスナイト・ウェイス》にレベル3の《コープスナイト・エリー》をチューニング!」
『エリー』の体は光の輪となり、『ウェイス』の周りを囲んで行く。
「闇の甲冑よ!鋼の闘志をその身に宿し、敵を切り裂く騎士となれ!シンクロ召喚!現れろ!《コープスナイト・デッドジャック(☆7/闇/アンデット/シンクロ/2500・2000)》!!」
誇り高き騎士は、その手に持つ剣を掲げフィールドに舞い降りた。
「シンクロモンスター・・・なるほど。それが貴様の切り札か!」
カゲロウは不敵な笑みを浮かべる。
「さらに俺は《コープスナイト・メディ》のもうひとつの効果を発動!このカードをフィールドから除外することでデッキから「コープスナイト」1体を墓地に送ることができる!この効果により、俺はデッキから《コープスナイト・クレス(☆2/闇/アンデット/1100・0)》を墓地に送る!」
遊牙のフィールドから女騎士が消え、デッキからカードが迫り出す。それを手に取った遊牙はそのまま墓地に送った。
「さらに、墓地に存在する《コープスナイト・ヴェルナンド》の効果発動!このカードが墓地に存在し、自分の墓地に「コープスナイト」以外のカードが存在しない場合、このカード以外の「コープスナイト」1体を除外することで、自分のフィールドの「コープスナイト」1体の攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分アップする!」
墓地が光り、遊牙は出て来たカードを取り出した。
「俺は墓地から《コープスナイト・ウェイス》を除外しその攻撃力を《コープスナイト・デッドジャック》にプラスする!!(ATK2500→4200)」
カゲロウは声を上げた。
「攻撃力を上げた所で《剣激武将 シラヌイ》はその攻撃力を100にする!また何か策があるのか少年!それとも苦し紛れの一手か!」
その言葉に遊牙は返す。
「俺は墓地の《コープスナイト・クレス》の効果発動!自分の墓地に「コープスナイト」以外のカードが存在しない場合、デュエル中1度だけ相手の墓地の魔法・罠カードを発動できる!俺が発動するのは、永続魔法《剣激合戦》!!」
遊牙のフィールドにカゲロウの使った魔法カードが表示された。
「このカードはフィールドに「剣激武者」が存在する場合、相手フィールドのモンスターの効果は無効になり、攻撃力を800アップする。よってお前の《剣激武将 シラヌイ》《剣激参謀 カガリ》の効果は無効となる!!」
《剣激武将 シラヌイ》(ATK5500→2600→3400)
《剣激参謀 カガリ》(ATK1800→2600)
「某のカードを利用するとは!面白いぞ少年!」
さらに、遊牙は手札のカードを墓地へと送る。
「俺は手札から《コープスナイト・ギリー(☆1/闇/アンデット/100・0)》の効果を発動!このカードを手札から墓地に捨てることで、このターン、自分フィールドの「コープスナイト」シンクロモンスター1体は2回攻撃できる!」
小柄な騎士の幻影が『デッドジャック』の持つ剣に溶け込み、黒いオーラを纏わせた。遊牙は相手のモンスターを指差し叫ぶ。
「バトルだ!!《コープスナイト・デッドジャック》で《剣激参謀 カガリ》を攻撃!!『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
騎士の斬撃は音も無く放たれ、一瞬の閃光の中参謀は水平に切り裂かれた。
「そしてこの瞬間、手札の《コープスナイト・サミュエル(☆1/闇/アンデット/チューナー/0・100)》の効果を発動!このカードを手札から除外することで、このターン自分フィールドの「コープスナイト」が、相手モンスターをバトルで破壊した時に発生するダメージは2倍になる!!」
カゲロウは驚愕する。
「うおっ!!(LP4000→800)今のは響いたぞ、少年!!」
遊牙は言った。
「《コープスナイト・ギリー》の効果で『デッドジャック』はまだ攻撃できる!これで終わりだ!《コープスナイト・デッドジャック》で《剣激武将 シラヌイ》を攻撃!!!」
再び、闇の騎士は剣を構え飛び上がる。目下に捉えるは武将の姿。
「『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
無音の斬撃。それは静かに武将の刃ごと切り裂く。
そう、誰もが思った。しかし。
「某は墓地の罠カード《不意打ちの一閃》の効果を発動!!」
カゲロウの叫びに『デッドジャック』の動きが止まる。
「某のライフが1000以下で自分の場の「剣激武者」モンスターが攻撃を受けた時、墓地のこのカードを除外することで、その「剣激武者」の攻撃力をダメージ計算時のみ2倍にする!!(ATK3400→6800)」
武将の怒号がフィールドを震撼させた。凄まじい妖気がフィールドを黒く包み込んで行く。だが、騎士の攻撃はもう止める事は出来ない。
「武将とは、人の上に立ち軍を率いる者!例え劣勢だとしてもただでは死なん!!《不意打ちの一閃》の効果により、この戦闘で発生するダメージはお互いのプレイヤーが受ける!!!」
「何っ!?」
騎士の剣が武将の刀に弾かれる。その勢いのまま吹き飛んだ騎士を、武将は二振りの刀で斬り抜けた。
その衝撃は爆風となり互いのプレイヤーにぶつかる。
「はっはっは!!面白かったぞ、少年!!!(LP800→0)」
「ぐああぁっ!!!(LP300→0)」
両者は同じ勢いで吹き飛び、倒れ込んだ。
『Draw:引き分け』
しばらくして遊牙は起き上がった。
「引き分け・・・。」
顔を上げたそこにはカゲロウの姿があった。
「くっ・・・。」
カゲロウは笑って手を差し伸べる。
「はっはっは!久々に面白いデュエルだったぞ、少年よ!」
その言葉にカケルがぼやく。
「俺にはワンキルしたくせに・・・。」
遊牙はその手を取らずに立ち上がった。
「どうするんだ。俺は勝ってもいないし、負けてもいない。俺達を力ずくで排除するのか?」
カゲロウは言う。
「そんなことはせん。それは某も同じことだからな。ただ、楽しませてくれた礼に某が知っている事を教えてやろう。」
遊牙の元に凛香とカケルが集まる。
「ノーン殿は、もう一度『ゲート』を開けようとしている。」
カゲロウの言葉に遊牙が返す。
「そんなことをしたら、また『神の鉄槌』がやってくる!!今度こそ終わりになるぞ!!」
カゲロウは言う。
「ノーン殿は『神の鉄槌』の力を手に入れることで、世界の復興を目指している。某はそう聞いている。この世界を破壊したのは『神の鉄槌』。破壊する力があるのなら創る力もあるに違いない。ノーン殿はそう考えているのだ。」
横から凛香が口を挟む。
「でも、あのミシェルって人が言ってたわ。ノーンは『我々は英雄なり。すなわち世界は英雄に対し奉仕しなければならない。』って言ってたって。これはどういう意味よ。」
凛香の問いにカゲロウは答える。
「おそらく世界が元にもどった後、ノーン殿は自ら世界を治めようとしているのだろう。世界を直し、救った人物になるのだ。文句を言う奴もあるまい。」
その言葉に遊牙が疑問を示す。
「『おそらく』とは、どういうことだ。」
カゲロウは言った。
「某は・・・ノーン殿に会ったことはない。某が聞いているのは『ゲート』を開けようとしていることと、世界の復興を目指しているということだけだ。」
そのままカゲロウは言葉を続ける。
「某はこの『DWA』が、ノーン殿がこの街の、この世界の平和を実現すると信じている。かつての『DWA』がそうだったように。」
カゲロウはカケルを指差した。
「そこの少年から聞いた。仲間を助けに来たそうだな。その仲間を捕らえ、ノーン殿が何をしようとしているのかはわからん。だが、その仲間を使い、何かを成し遂げようとするノーン殿も正義。その仲間を取り返そうとする貴様らもまた別の正義だ。」
三人に背を向けカゲロウは歩き去って行く。
「某は味方ではない。だが、敵でもないと言っておこう。前に進むのであれば、己の信じた正義を貫くことだ。」
去って行く途中、カゲロウは後ろに向かって何かを放り投げた。カケルは慌ててそれをキャッチする。
「これは・・・。」
遊牙と凛香が詰め寄る。それはタッチパネル式の端末だった。画面に触れたとたん、複雑な間取りのような物が表示される。
「これって、ここの構造図じゃない?」
凛香の言葉に遊牙が頷く。
「ああ。俺はこの場所に何があるのかを知っている。ルナはおそらく・・・ここだ。」
遊牙が指差した場所をカケルが読み上げる。
「ええと・・・『生体培養実験室』・・・?」
その端末をポケットに仕舞い込み遊牙は歩き出す。
「『生体培養実験室』・・・俺の・・生まれた場所だ。」
一方、ゴミ箱に落ちた男は咳き込みながら立ち上がる。
「くっ・・・こんな所から入れって言ってたのか俺は・・・ちょっとひどいことしたかな・・。」
男は回りを見渡す。そこはどうやら居住施設の一室のようだった。
「誰かの個室か・・・?」
その時、背後から悲鳴が響く。
「な、何よあんたはぁぁぁー!!!」
男は振り向いた。そこに居たのは・・・。
「このワタクシの部屋に・・・マーナ様の部屋に入り込むなんて・・・このへんたいおとこー!!!」
幼い姿の少女だった。
次回第14話「四賢人最後の一人・その名はマーナ」
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104 | 32:ぶつかり合う本気 | 896 | 4 | 2015-07-20 | - | |
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魅力的だなんて、お褒めの言葉ありがとうございます。 (2015-06-03 19:31)