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23.5:輝岩鎧竜の逆鱗 作:ほーがん
第23.5話「輝岩鎧竜の逆鱗」
青空の戻った街。路地裏にて、一人の少年はデュエルをしていた。
「ぼ、僕は《古のルール》を発動!手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する!来てくれ!《ストーン・ドラゴン(☆7/地/岩石/2000・2300)》!」
少年の場に岩石の体を持った竜が出現する。
「はぁ?なんだその雑魚は?」
少年の対戦相手の男は、少年のモンスターを指差す。
「こ、これは僕のお気に入りのカードで・・・。」
対戦相手の男は卑しい笑い声を上げた。
「あっははは!お前、頭おかしいんじゃねぇの?そんな効果も持たねぇ古臭い雑魚がお気に入りだとぉ!?デュエルなめてんじゃねぇぞ!!」
少年は思わず怯む。男は声を荒げて言った。
「お前がデュエル始めたって言うから仕方なく相手してやってんのに、その程度のモンスターとはどういうつもりだ!!」
「で、でも・・・」
少年の目に涙が浮かぶ。男は少年を睨み、自分のデッキに手を伸ばした。
「俺様になめた真似するとどうなるか教えてやる、俺のターン!!」
一方、その頃。カケルは大会の告知の為、街を回っていた。
「えーと、後はレイカさんの家と源三のじいさんとこか。」
マップを見ながら歩くカケル。その時、通りかかった路地から声が聞こえた。
「うあぁぁっ!!(LP4000→0)」
路地から出て来た少年は、カケルの前に倒れた。その後に続いて一人の男が少年の前に立った。
「いいか!!お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!そんな紙切れでデュエルしようなんざ無理だっつーの!!」
男はそう言うと、歩き去って行った。カケルは少年に声を掛ける。
「おい、お前。大丈夫か?何があった?」
少年はうつぶせていた顔を上げる。
「ぼ、僕は・・・。」
少年の顔を見たカケルは思い出したように言った。
「お前は、ケンジじゃねぇか!あの男に一体何されて・・・ん?それはデッキか?お前、とうとうデュエル始めたのか!」
その少年、ケンジは手に持ったデッキを思わず隠した。
「か、カケル兄ちゃんには、関係ないよ・・・。」
カケルは腰の鞄から紙を取り出した。
「あ、そうだ!デュエル始めたんならさ、これに出てみないか?きっと楽しいぜ!」
その紙の記されている文字を、ケンジは読み上げる。
「チャリティーデュエル大会・・・。」
カケルは笑顔で言う。
「な?面白そうだろ?ケンジも出てみろよ!絶対楽しいからさ!」
一瞬、明るい顔をしたケンジ。しかし、その脳裏にさっきまでのデュエルが思い出される。
『『お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!』』
「僕は・・・いい。」
ケンジは顔を伏せ、逃げるように走り出した。
「お、おい!ケンジ!」
カケルは心配そうな顔でその背中を見つめた。
街のはずれにある、古ぼけた小さな家。ケンジはそこで母親と二人で暮らしていた。
ドアを開けるケンジ。キッチンに立つ母は帰って来た息子の姿を見て言った。
「あら、おかえりケンジ。初めてのデュエルどうだった?」
ケンジはふてくされた顔で言う。
「・・・こんなんじゃ、デュエルできないよ。」
その言葉を聞き、ケンジの母は手を止め、ケンジに近づいた。
「どうしたの?デュエルで負けちゃったの?」
ケンジは涙を流し叫んだ。
「こんなカードじゃ勝てっこないよ!何が父さんの形見だ!!僕はもっと強いカードがよかったのに!」
ケンジは顔を伏せたまま階段を駆け上がる。母は叫んだ。
「ちょっとケンジ!!なんてこと言うの!!」
母の声に足を止めることなく、ケンジは部屋へ飛び込んだ。そしてベッドに顔を埋め嗚咽を漏らす。
「僕だって・・・僕だって・・・。」
手に握りしめていたデッキ。その中から《ストーン・ドラゴン》のカードを取り出し、ケンジは呟く。
「僕だって・・・このカードが大好きだ・・・。父さんが大事にしてたカードだから・・・でも・・・。」
『『お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!』』
頭に響く男の声。ケンジは涙声で言った。
「うっ・・ううっ・・・父さん・・・僕にもデュエルできる時が来るって・・・そう言ったじゃないか・・・。」
その時。ケンジの頭に低く鈍い声が響いた。
『貴様は・・・力を欲しているな・・・。』
「だっ、誰だ?」
慌てて飛び起きるケンジ。しかし部屋には誰もいない。
『なるほど・・・力に飢えている。強者を挫き、跪かせたいと願っている。』
ケンジは周りを見渡し言った。
「だ、誰なんだ!どこにいる!」
『貴様に力をやろう・・・そう、強者を打ち砕き、跪かせる力をな。』
その瞬間。声の主はケンジの前にうっすらと姿を現した。
「な、なんだお前は・・・!」
『力得て、己の欲望を満たすが良い。それが余の復活の糧となる。』
折れた片翼に4本の指。その黒い影はケンジの目から光を奪った。
「・・・これが・・・僕の力。」
ケンジはデッキのカードを見た。デッキは光り、新たなカードが創造される。
『戦え。そして、自らを見下す全てを薙ぎ払え。』
ケンジは立ち上がった。階段を降り、1階へと向かいドアを開ける。その姿を見たケンジの母は声を掛けた。
「ちょっと、ケンジどこ行くのよ!?」
ケンジは静かに言う。
「大丈夫だよ、母さん。少し出かけてくるね。」
ケンジはあの路地裏に立っていた。その路地裏にさっきの男が現れる。
「おい、てめぇ。呼び出したからにはそれ相応のカードを持って来たんだろうな。」
ケンジは穏やかな物腰で言った。
「ああ。さっきは悪かったよ。今度はちゃんと本気を出すから。」
そして。男は抜けた腰を引き摺り、後ずさりながら言った。
「こ、攻撃が実体化して・・・!!な、なんなんだよそのモンスターは・・・!!」
ケンジは笑って言った。
「ははは。これが君の最後だ。《輝岩鎧竜ストーン・ドラグネス》でダイレクトアタック。」
路地の暗闇の中、竜の眼が光る。放たれた衝撃波は男の体を吹き飛ばした。
「・・・これで、誰も僕を馬鹿にはしない。僕はもう、誰にも負けない。」
大会編へ続く。
青空の戻った街。路地裏にて、一人の少年はデュエルをしていた。
「ぼ、僕は《古のルール》を発動!手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する!来てくれ!《ストーン・ドラゴン(☆7/地/岩石/2000・2300)》!」
少年の場に岩石の体を持った竜が出現する。
「はぁ?なんだその雑魚は?」
少年の対戦相手の男は、少年のモンスターを指差す。
「こ、これは僕のお気に入りのカードで・・・。」
対戦相手の男は卑しい笑い声を上げた。
「あっははは!お前、頭おかしいんじゃねぇの?そんな効果も持たねぇ古臭い雑魚がお気に入りだとぉ!?デュエルなめてんじゃねぇぞ!!」
少年は思わず怯む。男は声を荒げて言った。
「お前がデュエル始めたって言うから仕方なく相手してやってんのに、その程度のモンスターとはどういうつもりだ!!」
「で、でも・・・」
少年の目に涙が浮かぶ。男は少年を睨み、自分のデッキに手を伸ばした。
「俺様になめた真似するとどうなるか教えてやる、俺のターン!!」
一方、その頃。カケルは大会の告知の為、街を回っていた。
「えーと、後はレイカさんの家と源三のじいさんとこか。」
マップを見ながら歩くカケル。その時、通りかかった路地から声が聞こえた。
「うあぁぁっ!!(LP4000→0)」
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「いいか!!お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!そんな紙切れでデュエルしようなんざ無理だっつーの!!」
男はそう言うと、歩き去って行った。カケルは少年に声を掛ける。
「おい、お前。大丈夫か?何があった?」
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「ぼ、僕は・・・。」
少年の顔を見たカケルは思い出したように言った。
「お前は、ケンジじゃねぇか!あの男に一体何されて・・・ん?それはデッキか?お前、とうとうデュエル始めたのか!」
その少年、ケンジは手に持ったデッキを思わず隠した。
「か、カケル兄ちゃんには、関係ないよ・・・。」
カケルは腰の鞄から紙を取り出した。
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その紙の記されている文字を、ケンジは読み上げる。
「チャリティーデュエル大会・・・。」
カケルは笑顔で言う。
「な?面白そうだろ?ケンジも出てみろよ!絶対楽しいからさ!」
一瞬、明るい顔をしたケンジ。しかし、その脳裏にさっきまでのデュエルが思い出される。
『『お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!』』
「僕は・・・いい。」
ケンジは顔を伏せ、逃げるように走り出した。
「お、おい!ケンジ!」
カケルは心配そうな顔でその背中を見つめた。
街のはずれにある、古ぼけた小さな家。ケンジはそこで母親と二人で暮らしていた。
ドアを開けるケンジ。キッチンに立つ母は帰って来た息子の姿を見て言った。
「あら、おかえりケンジ。初めてのデュエルどうだった?」
ケンジはふてくされた顔で言う。
「・・・こんなんじゃ、デュエルできないよ。」
その言葉を聞き、ケンジの母は手を止め、ケンジに近づいた。
「どうしたの?デュエルで負けちゃったの?」
ケンジは涙を流し叫んだ。
「こんなカードじゃ勝てっこないよ!何が父さんの形見だ!!僕はもっと強いカードがよかったのに!」
ケンジは顔を伏せたまま階段を駆け上がる。母は叫んだ。
「ちょっとケンジ!!なんてこと言うの!!」
母の声に足を止めることなく、ケンジは部屋へ飛び込んだ。そしてベッドに顔を埋め嗚咽を漏らす。
「僕だって・・・僕だって・・・。」
手に握りしめていたデッキ。その中から《ストーン・ドラゴン》のカードを取り出し、ケンジは呟く。
「僕だって・・・このカードが大好きだ・・・。父さんが大事にしてたカードだから・・・でも・・・。」
『『お前のデッキみてぇなのは、世間じゃ”紙束”って呼ぶんだよ!!』』
頭に響く男の声。ケンジは涙声で言った。
「うっ・・ううっ・・・父さん・・・僕にもデュエルできる時が来るって・・・そう言ったじゃないか・・・。」
その時。ケンジの頭に低く鈍い声が響いた。
『貴様は・・・力を欲しているな・・・。』
「だっ、誰だ?」
慌てて飛び起きるケンジ。しかし部屋には誰もいない。
『なるほど・・・力に飢えている。強者を挫き、跪かせたいと願っている。』
ケンジは周りを見渡し言った。
「だ、誰なんだ!どこにいる!」
『貴様に力をやろう・・・そう、強者を打ち砕き、跪かせる力をな。』
その瞬間。声の主はケンジの前にうっすらと姿を現した。
「な、なんだお前は・・・!」
『力得て、己の欲望を満たすが良い。それが余の復活の糧となる。』
折れた片翼に4本の指。その黒い影はケンジの目から光を奪った。
「・・・これが・・・僕の力。」
ケンジはデッキのカードを見た。デッキは光り、新たなカードが創造される。
『戦え。そして、自らを見下す全てを薙ぎ払え。』
ケンジは立ち上がった。階段を降り、1階へと向かいドアを開ける。その姿を見たケンジの母は声を掛けた。
「ちょっと、ケンジどこ行くのよ!?」
ケンジは静かに言う。
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ケンジはあの路地裏に立っていた。その路地裏にさっきの男が現れる。
「おい、てめぇ。呼び出したからにはそれ相応のカードを持って来たんだろうな。」
ケンジは穏やかな物腰で言った。
「ああ。さっきは悪かったよ。今度はちゃんと本気を出すから。」
そして。男は抜けた腰を引き摺り、後ずさりながら言った。
「こ、攻撃が実体化して・・・!!な、なんなんだよそのモンスターは・・・!!」
ケンジは笑って言った。
「ははは。これが君の最後だ。《輝岩鎧竜ストーン・ドラグネス》でダイレクトアタック。」
路地の暗闇の中、竜の眼が光る。放たれた衝撃波は男の体を吹き飛ばした。
「・・・これで、誰も僕を馬鹿にはしない。僕はもう、誰にも負けない。」
大会編へ続く。
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