EP37　炎のドラゴン対決！！　作：ター坊

「まず入場しますのは風峰プロ自らが推薦したデュエリストチーム…その実力の全容はまだ未知数！今日は全てを見せてくれ！！今年度デュエル甲子園のダークホースとなるか！？チーム、チャレンジャーＺぅぅ！！」
暗闇となっている会場に三筋のスポットライトが照らされる時、戦いの火蓋が切って落とされる。暑苦しい実況と重厚な音楽と共に遊季都達はスポットライトの光に導かれるまま中央のデュエルフィールドに赴く。
「さて、チームリーダーである赤崎遊季都選手は第１回戦は対戦相手不在のため不戦勝ということで未だにその戦術は誰も見ていません。風峰プロ、彼はどのような戦いを見せてくれるのでしょう？」
「それは見てのお楽しみですよ。ただ少なくともこの会場を沸かせるようなデュエルをしてくれると信じています」
解説席に座る遊路の口調は仕事口調だが、言葉の節々からは遊季都達を激励しつつも少しハードルを上げてからかうような感じもする。
「続きましてはベスト４に入った事もある四国の強豪！！竜馬高校デュエル部！！入場！」
竜馬高校の選手入場と共に観客席の一角からバサッバサッと風を切る大旗の音と地鳴りのような絶叫が挙がる。
「フレェェェッl！！フレェェェッ！！！タッ！ツッ！マッ！」
船に掲げる大漁旗に負けんばかりの大きさの旗は《必勝　四国の竜馬》と刺繍されており、応援団であろう長ランの集団が覇気溢れる声でエールを送る。
【うわぁ…暑苦しそうな体育会系】
【うん…すごいね】
竜馬高校の気合いの応援にラズベリーは軽く引き、遊季都は圧倒される。そんな轟音の中で入場し、先頭に立つのはフィーリス女学園に絡まれた時に助け船を出してくれた坂木凌馬であった。あの時とは柄が違うがやはりアロハシャツにハーフパンツとこんな大舞台でもラフな格好を貫いている。しかしそれだけ神経が図太く、会場のプレッシャーに圧されていない証でもあり、その度胸もデュエリストとしては必須の才能である。
「おまさんらとのデュエル、楽しみにしちょったぜよ」
「はい。僕もです。よろしくお願いします」
「おう。ええ試合をの」
遊季都と凌馬はリング上で軽く言葉を交わし、すぐ所定の位置に着いた。
「それではデュエル開始！！」
「「「デュエル！！」」」

審判の号令と共に遊季都の第一歩が始まった。

「ワシのターンちや。ワシは永続魔法『機竜軍（デスアーミー・ドラグーン）の蹂躙』を発動するぜよ。ワシのこのターンの通常召喚を放棄する代わりにレベル７以上の機竜軍１体を特殊召喚できる。ワシは『機竜軍ライフルシュート』を特殊召喚ぜよ！！」
轟音を響かせ、出現したのは細長い刺のように伸びた銃身を持つ籠手をはめたドラゴンであった。
「ライフルシュートの効果発動！手札からカードを１枚墓地に送ることで、相手の手札をランダムに１枚選んで捨てさせるぜよ！」
手札が銃弾となり、ライフルシュートの銃に装填されると、ライフルシュートは銃身をめい一杯伸ばし、遊季都を見据える。
「ライフルシュート、一番右を狙いちや！」
バンッと大きさにしては小さい銃声が響くと遊季都の手札に当たった。
「くっ…」
墓地に送られたのは『焔獄竜-トウリュウ』。戦闘補助をしてくれるカードなので、重量級モンスターとの殴り合いでは少し不安かもしれない。
「ほぅ。ワシと同じ炎属性ドラゴンのデッキか。面白うなってきたぜよ。ライフルシュートの更なる効果、この効果で撃ち抜いたのがモンスターだった場合、相手にそのレベル×１００のダメージを与える！」

遊季都:LP 8000→7700

「さらに、ワシが手札コストにした魔法カード『竜弾（ドラダン）-アサルトフレア』の効果！機竜軍の効果の発動のために墓地に送られた場合、相手に５００ダメージを与えてデッキから同名カードを手札に加えるぜよ」

遊季都:LP 7700→7200

（凄い…。ヘビー級モンスターを出した上、ハンデスでアドを取りながらデッキの片鱗を見られた。しかもそのコストを最小限に抑えてダメージまで…）
【ちょっと遊季都くん！いっつも敵に感心してる！】
【あっ。ごめん。その…興奮したって言うか…】
【えっ…デュエル中にぼっk】
【違うってば！】
「ん？なんじゃ？」
「いいえ。あんまりにも見事だったので…」
「はっは。そんなで見とれてたらすっ転ぶぜよ。今度はおまさんの力見せてもらうちや。ワシのターンはエンドぜよ」
「はい！僕のターン、ドロー。魔法カード『焔獄の飛翔』を発動します。これで僕はデッキから『焔獄竜-ダークファイヤー』を特殊召喚します！」
遊季都の初手は『暗黒の竜王』に似たモンスターで、鱗は焼けた溶岩のように所々赤黒い。
「『焔獄の飛翔』の効果で坂木さんも手札から１体モンスターを攻撃表示で特殊召喚する権利を得ます。どうしますか？」
「当然、あやかるぜよ。来い『機竜軍マシンアサルト』！！」
焔獄竜の登場に呼応するように現れたのは五指がマシンガンとなっている武装竜だった。


ここで一旦、解説が挟まる。
「まさかの炎のドラゴン対決になりましたねぇ。しかし風峰プロ。これって遊季都選手が不利になったんではないでしょうか？」
「本来、『焔獄の飛翔』のデメリットは一概にデメリットとは言えません。手札誘発しかない場合は特殊召喚するメリットはないので相手は見過ごすんです」
「ですが、凌馬選手はヘビー級モンスターのオンパレードになってしまいましたが…」
「確かにそうですね。ただ遊季都選手もこれは分かった展開でしょう。つまり今回彼は凌馬選手の戦力を引き摺り出した、と見るべきでしょう。まぁ続きを見てみましょうか」


「マシンアサルトの特殊召喚に成功したことでデッキから『竜弾-キラーショット』をサーチするぜよ」
「なら僕も効果を使います。ダークファイヤーは１ターンに１度、攻撃を放棄する代わりに相手に１０００ダメージを与えます。行け！」
ダークファイヤーの漆黒の炎のブレスが凌馬を襲う。
「あっちぃぜよ」

凌馬:LP 8000→7000

「けど、こんなんじゃ足りんぜよ？」
「それはどうでしょう」
「ん？…あっ！」
「僕のレベル４以上のドラゴン族がモンスターとの戦闘、または自身の効果によって相手に１０００以上のダメージを与えた時、ドライヴ条件を達成！」
「なっ！ドライヴ召喚やか！！」
「そっちが銃なら僕は剣です！ドライヴ召喚！！赤き剣の鬼神、『剣竜鬼-ブレードバスター』！！」
焼けた鉄のような赤い大剣、反って生える２本の頭の角、筋肉質なボディー、それは巨体のドラゴニュートというよりは竜顔の赤鬼といった風貌であった。
「それじゃあ行きます！僕はブレードバスターでライフルシュートに攻撃！」

剣竜鬼-ブレードバスター ATK 2600 VS 機竜軍ライフルシュート ATK 2300

凌馬:LP 7000→6700

「さらにブレードバスターがモンスターを戦闘によって破壊した時、効果が発動します！これでマシンアサルトを墓地に送って８００ダメージを与えます」
ブレードバスターが振りかぶった剣の赤い衝撃波がマシンアサルト当たり、砕け散った。

凌馬:LP 6700→5900

「どうですか？」
「やられたぜよ…」
攻めた遊季都も追い詰められた凌馬も口許の口角がニヤリと上がる。二人はＤブロック突破を賭けた一戦を繰り広げてこそいるが、敵対とは異なる感情も確かに存在しているのだ。
「僕はカードを２枚セットしてターンエンド」
「楽しましてくれるのぅ。ワシのターン、ドロー。ワシは『機竜軍の蹂躙』の効果で手札から『機竜軍スプレットガトリング』を特殊召喚！」
両腕にガトリング砲を装備したドラゴンが銃口をブレードバスターに向ける。
「ブレードバスターは相手がモンスターを召喚・特殊召喚する度に攻撃力が３００アップします」
「ほんならこっちぜよ。スプレットガトリングの効果で手札からキラーショットを墓地に送ってブレードバスターを破壊ちや！」
ガトリングが回転し、銃弾が乱れ飛ぶが
「罠カード『焔獄の火柱』を発動します！」
灼熱の炎の柱が乱射される銃弾の雨を焼き尽くす。
「『焔獄の火柱』は装備カードとなり、攻撃力を５００アップし、効果破壊の耐性を与えてくれます」
「ならそっちぜよ。コストとして墓地に送ったキラーショットの効果で『焔獄の火柱』を破壊し、デッキからもう１枚のキラーショットを手札に加える。ワシはこれでターンエンド」
「僕のターン、ドロー。チューナーモンスター『焔獄竜-フレアスター』を召喚して効果で墓地からトウリュウを特殊召喚。レベル３のトウリュウにレベル４のフレアスターをチューニング！赤き輝き放つ翼を翻し、紅蓮の刃で敵を焼き尽くせ！シンクロ召喚、『焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット』！！」
炎の円陣を突き抜け現れたのは炎の輝きを放つ宝石の翼を持つ美しいドラゴンであった。
「さらにブレードバスターの効果！相手の墓地から攻撃力１５００以上のモンスター１体を効果を無効にして攻撃表示で特殊召喚します。僕はライフルシュートを選びます」
ブレードバスターの雄叫びによって地面が割れるとそこからやられた筈のライフルシュートが現れる。
「ブレードバスターの攻撃力は３００アップし、バトルです！ブレードバスターでライフルシュートを攻撃！」

剣竜鬼-ブレードバスター ATK 2900 VS 機竜軍ライフルシュート ATK 2300

凌馬:LP 5900→5300

「さらにブレードバスターの効果でスプレットガトリングを墓地に送り、８００ダメージ！」

凌馬:LP 5300→4500

「さらにルビーウィング・スカーレットでダイレクトアタック！」

焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット ATK 2500　直接攻撃

凌馬:LP 4500→2000

「のぉっとっと…」
ルビーウィングの突進攻撃を受けて凌馬は僅かによろける。
「ここまでやられるとは…やっぱおまさんは面白いぜよ」
「僕も楽しいです。僕はこれでターンエンドです」
「ワシのターン、ドロー！よっしぁ、ごっつい引きじゃ！！ワシは『死者蘇生』を発動してスプレットガトリングを特殊召喚！さらにチューナーモンスター『機竜軍ブローバックパーン』を召喚！」
「チューナー！？」
「ワシも行くぜよ。ワシはレベル８のスプレットガトリングにレベル２ブローバックパーンをチューニング！轟く数多の銃声が重なる時、未来をも貫く破壊の力が起動する！シンクロ召喚、ワシの最強カード！『機竜軍ジェノサイドフォートレス』！！」
円環が重なりシンクロ召喚されたのは今までも充分なサイズを誇っていた機竜軍よりもさらにふたまわり程も大きい巨大な武装竜。腕だけでなく肩や脚、背中にまでガトリングやバズーカ、ミサイル、レーザー砲を搭載したまさに要塞とも言うべき圧巻の姿であった。
「手札を２枚墓地に送り、ジェノサイドフォートレスの効果発動！墓地に送った分だけ、相手フィールドのカードを墓地送りぜよ！！」
「させません！ルビーウィング・スカーレットの効果発動！フィールドで相手モンスターの効果が発動した時、その発動を無効にしてそのモンスターを破壊し、その攻撃力の半分の数値のダメージを相手に与えます！」
ルビーウィング・スカーレットの赤い翼から光が放たれ、巨竜の要塞を貫かんと伸びるが

ﾊﾞﾘﾊﾞﾘ…ガイン！！

光が弾かれ四方に飛び散った。
「ジェノサイドフォートレスは他のモンスターの効果を受けんぜよ」
「そんな…」
「ジェノサイドフォートレス、一斉掃射ちや！！」
雨などと言う比喩は生易しい、それ程の銃弾とミサイルとレーザービームがフィールドに降り注ぎ、遊季都の優勢を支えたドラゴン達を爆撃する。
「さらに墓地に送ったアサルトフレアとキラーショットのそれぞれの効果で５００ダメージと追加の破壊を受けてもらうぜよ。そしてデッキから同名のアサルトフレアとキラーショットを手札に」

遊季都:LP 7200→6700

「セットカードまでも…」
キラーショットの効果で遊季都のセットカードも破壊され、フィールドはがら空きとなった。
「さっきのお返しぜよ！ジェノサイドフォートレスで攻撃宣言時、相手に１０００ダメージを与え、さらにダイレクトアタック！！」

機竜軍ジェノサイドフォートレス ATK 3200　直接攻撃

遊季都:LP 6700→5700→2500

「おおっと遊季都選手！！一気にライフの差を縮められたぁぁ！！フィールドもがら空き、まさに絶望的だぁ！」
実況の熱狂さとは対照的に遊路はモニター越しの遊季都の表情を見てほくそ笑む。
（絶望的？こんな良い表情が絶望を抱いてる人間の顔か？）