第92話 明かされる僅かな過去　作：ヒラーズ

しばらくしてクォーツ達は、大きな町に着く。
「おい、着いたぞ。レクス公国だ」
陸也がクォーツ達を起こし、装甲車から降ろす。
「・・・（この町が・・・）」
「・・・（これはまた興味深い）」
クォーツ達は記憶の世界の探索に入ろうとすると、陸也が止め、1件の民家に案内される。







とある民家前にて－

「すまねぇな。上司に待機命令を食らわされてな、悪いが俺の家でゆっくりしてってくれ」
クォーツ達は無理矢理、陸也の家に入れられ、その場で待機する事になった。
「待ってろ、お茶を持ってくる」
陸也はクォーツ達をリビングで待機させ、キッチンへ行く。
その間、クォーツ達はリビングを捜索していた。
「・・・珍しいな」
「？何がですか？ノイエさん」
ノイエは周りの背景を見て、不思議そうな顔をする。
「私が入った事がある記憶世界は背景が途切れていたり、人物の影、姿がブレていたりしていてな。こうやってはっきりと背景や町並み、人物の姿、ましてや物体、塵すら見える記憶世界は初めてだ」
シャルが何やら写真立てのようなものを見つけ、ノイエに見せる。
「これ・・・恐らく彼の家族でしょうか？」
白髪の男の子とその隣に写る二人の男女、その中の一人の女性は白い魔女帽子を被り、白いローブを着ている。
「奴の家族写真だろう・・・ん？」
ノイエは家族写真を見て、違和感を覚える。
「この女・・・どこかで」
ノイエは「こいつどこかで見たことある」ような顔をする。
「何見てんだ？」
後ろから陸也が話しかけ、写真を取り上げる。
「・・・俺の家族に興味があるのか？」
「・・・」
ノイエは勇気を振り絞って、陸也に問いかける。
「その写真に写っている女性はお前の母親か？」
「ああ、母さんは魔女だったよ、俺に色んな事を教えてくれるし、優しい。何より母さんは魔法が使えて、デュエルもできた人だった」
「！（やはり・・・！コイツの母親は・・・！）この者の名は？」
「？コキュートス＝プラムだが？」
「！？」
陸也が言った名でノイエの顔色が変わる。
「どうしたんですか？」
「顔色が悪いけど、知ってるの？」
ノイエは陸也が持って来たお茶を飲み、落ち着いた後に答える。
「知ってるも何も、この者は六代目ヴァルプルギスの夜会の議長だ・・・通称《時の旧支配者》と呼ばれた史上最強の魔女だ」
「「・・・え？」」
シャルとクォーツは驚き、少し後ずさりする。
「ほう？お前さん、母さんの二つ名を知ってるのか・・・」
「・・・（まさかコイツ・・・プラムの子なのか！？）」
「・・・知り合いだったのか？」
「知り合いも何も・・・私の師匠だ」
ノイエの爆弾発言に全員がどん引きする。
「ノイエさんの・・・・」
「師匠！？」
「マジかよ・・・母さんの弟子だったんかよ・・・」
「ホント、ボクも驚き・・・」
その時、クォーツは思っていた事を言葉として漏らしてしまう。
「まさか・・・あるじさまって・・・魔女の子供！？」
「ん？誰だあるじさまって？」
「あっ・・・」
「クォーツさん・・・なんてことを」








「なるほど、お前さんらは未来から来たという事か」
「うん・・・」
「それで・・・、未来の俺が赤い月の影響でおかしくなったからそれを何とかするために過去に来たという訳か？」
「はい・・・そうです」
「・・・」
シャルは陸也に嘘をつくが、嘘に引っかかったのか、容易に話が進む。
「要するに時間を動かす術が欲しいんです」
「うむ、タチの悪い月を沈めるべく、時間を動かす方法が欲しいと？」
「そうなんです・・・ありませんか？」
陸也は考え、何かを思い出したのか、鍵を取り出す。
「無くはない、ただ普通にくれてやるのはつまらん。こちらの要求を呑んでもらう」
陸也はノイエに指を指し、言う。
「そこの魔女、ノイエと言ったか？俺とデュエルしろ。勝ち負けは問わん、退屈凌ぎを付き合ってもらう」
意外な要求にクォーツ達はずっこける。
「あるじさま・・・それ要求になってない」
「全くだよ・・・てっきり命を差し出せと言うかと思ったよ」
「俺をどこの邪神と思ってるんだお前さんらは・・・」
「・・・ルールを言え」
陸也はメモ用紙を取り出し、ルールを書き出す。
「こんな感じだ」

『先攻ドローあり』
『LP8000』
『リンク、ペンデュラムあり』
『禁止、制限、準制限カードあり』
『エクストラデッキのカードは12枚まで』

「随分と緩いルールですね」
「しょうがないだろ、こうじゃないと俺もできねぇんだよ」
ノイエと陸也はディスクを構え、言う。


「「デュエル」」



次回、前世のあるじさま

※タイトルが変わる可能性があります。