第175話 旅は道連れ､神の野望　作：ヒラーズ

あー・・・えーと・・・どうしよう。
策略が見事に砕かれた俺は大変ながら気まずい！
俺の船に子供を乗せても良いんだが、あまり乗せすぎると対艦戦に巻き込まれた時の被害がど偉い事になるんだが・・・。
「・・・それはどう言う事だ？」
俺の問いにハルとセージはニッコリと笑い、理由を言った。
「ぼく・・・決めたんだ！これからも陸也さんについて行くって！」
「私もです！誰も居ない・・・廃墟だけの世界で寂しくいるのは・・・正直、嫌です」
分からなくはない。ここにいる人類ってもう絶滅してるレベルだからな。
「なるほどな、宛てがないからついて行く。それがお前さんらの判断か？」
「うん・・・！そしてぼくに目標ができたんだ」
その言葉に俺は首を傾げ、問いかける。
「どんな目標だ？」
「陸也さんのように強く、優しい人外になる事！」
いやいや・・・何か勘違いされているようになってるけど！？
あくまでこの性格はたくさんの経験をしたからであり、ものを言わせているだけだぞ！？
「・・・言ったはずだが、ハル達はハル達だ。俺にならなくていい」
「そうよ、貴方達の道があるのだから。陸也さんのようにならなくてもいいのよ」
俺達は若干ながら反対するが・・・。
「だからだよ」
「「！！」」
「だからぼく達は世界をみる必要があるんだ。だからぼく達は陸也さんについて行く・・・それに」
・・・それに？
「陸也さんと一緒にいれば、独りぼっちにならずに済むと思うんだ！だから・・・ついて行く！」
ハル達は真剣な眼で俺を見つめる。そこまで発破をかけられては正直断り辛い。
俺は「やれやれ…」と言って後ろを向く。
「いいのか？俺について行けば、地獄行きは確実だぞ？」
「構わないよ・・・それが、ぼくの意思だから」
俺は肩を落とし、ため息を吐く。
別に駄目とは言っていない。それで良いのかと俺は正直迷った。
だが、ハル達の真剣な態度を見て俺はそれを受け入れた。

「・・・分かった、ならついてこい」
それを聞いたハル達は喜んだ。
「やったぁ！」
「嬉しいです！」
その後、船に戻る前に俺達はダークテラを全て周り、世界樹の種を植えていった。そして・・・。













「これで、最後の一粒ですね」
「うん！これで全部だよ」
「育てばいいわね」
「・・・育つさ、汚染率のない栄養だけ残った土に植えれば話は別さ。手入れも必要ない」
そうして俺達はゲートのある洞窟の前に来る。
「さて、もう一つの地球でのやるべき事を・・・果たしますかね」
「そうね、ようやくクォーツ達に会えるわ」
俺達は洞窟内のライトテラのゲートに飛び込み、クロノス・ノアに戻った。






クロノス・ノアの船首甲板に出てきた俺は転生体に戻ると同時に俺達の前にクォーツ達が待っていた。
「あっ！あるじさま・・・！」
「百騎兵！遅かったじゃねぇか！」
そしてクォーツとジェムにとって懐かしい存在と合流した。
その時だった。
「！？」
クォーツの失われた記憶が若干戻ったのだった。
「…っ！」
クォーツとジェムは涙を流し、レンギアに向かって、駆け寄った。
「あるじさま！！」
「マスター！！」
「クォーツ！ジェム！」
レンギアはクォーツとジェムを抱きしめ、泣いた。
「ごめんね…ごめんね…！」と謝り、強く抱きしめた。
クォーツも「お帰り…あるじさま！」と泣きながら言った。


「・・・（こりゃあ、しばらく泣き止まんな）」
「・・・3人だけにしてあげようぜ」
「そうだね」
そう言って俺達はクォーツ、ジェム、レンギアを甲板に残し、内部に入る。
後にハル達を仲間にした事を全員に言ったが、まるでわかっていたかのように問題なく接している。
「・・・」
俺は操縦室に行き、操縦席に座り指示を出す。
「ふきゅ・・・（若干速度を落として旋回する。運航を再開せよ）」
船は旋回し、運航を再開した。











あれから3日後・・・俺は客間にて、レンギアの話を聞いていた。
「ふきゅ（そろそろ話して貰うぞ、機械仕掛けの神の計画を）」
「そうね、あなたに助けられて以上、クォーツ達に会わせて貰った。
その恩は大きいわ。いいわ、私が何故、機械の神の計画を阻止に走ったのか教える時ね」
「・・・」
「あれは・・・私がダークテラに転移する前の事よ・・・当時私はマナニアハンターズに所属していた研究・開発班のスタッフだった。多くの手柄を立てていた私は、研究所を持つと同時に人造人間の作成を行っていたわ」
「きゅ（それが・・・クォーツとジェムか？）」
「ええ、けどあの時はまだ完成してなかったわ」
完成してない？となるとクォーツとジェムは完成してまだ間もなかったのか？
「何事もなく開発が進んで全てが順調だった・・・けどある日、私はある計画を聞いたわ。機械仕掛けの神の悪事を・・・その名は・・・





―――――「人類粛正計画」―――――





人類の繁栄のためには多くの理不尽を犠牲にし、有能な人間のみを残して繁栄を狙う、実に馬鹿馬鹿しい計画だったわ」
なるほど・・・繁栄のためにそんなくだらん計画を・・・。
「勿論、魔法生物の捕獲及び駆除はその計画に含まれてたわ。私はそれには大きく反対した。けど強行する動きを見られたから、私は機械仕掛けの神の重要データを2つ奪う事にしたの」
「もきゅ？（どんなデータだ？）」
「1つは「人を見極める」データ、2つは「世界修復」の重要データを奪ったわ。これさえなければあの神はただの機械よ」
確かにそれさえなければ動かんわな。
「だけど・・・大きな誤算があったわ。私が奪ったデータをクォーツとジェムにプログラミングを終えて、完成させて1年経った頃に、マナニアハンターズの戦闘部隊から襲撃があった。彼らにとって私は「裏切り者」・・・いや「反逆者」だったわ。神のデータを奪って、それをクォーツ達の一部にしたもの・・・言われて当然だった。雇われた兵士は全員やられて、残った私とクォーツ、ジェムは試作段階の転移装置を起動させ、逃げ切った。そして今に至るわ」

ふむ・・・人類を粛正する計画とはいえ大胆すぎないか？
「そこで私は昨日、予言能力を使って救いの手を探した結果、百騎兵さん。あなたしかいなかった。そこで私から頼みがあるの・・・聞いてもらえるかしら」
・・・どんな頼みだ？
「きゅ（聞こうじゃないか）」
「・・・機械の神「異界の夢」を倒して欲しいの。あの機械をあのままにしていればこの地球がダークテラと同じようになるわ・・・！私では・・・太刀打ちできない！」
「・・・」
俺は考えた、この頼みを受けるか、受けないべきか。
途方もなく悩んだ。

そんな時だった。
「あるじさま・・・」
クォーツが客間に入り、俺の前に立つ。
「話・・・聞きました・・・」
「・・・」
「百騎兵さん・・・ぼくからもお願いしていいですか・・・？」
俺は黙り込みクォーツのわがままを聞くことにした。
「あるじさまの願いを・・・叶えて欲しい・・・です」
「クォーツ・・・」
さすがに仲間からもそう言われてしまえば断れない。
「きゅ（分かった。ただ情報はよこせ、いいな？）」
そう言ったとたんレンギアは俺を抱きしめ、喜ぶ。
「ありがとう！百騎兵さん！」
だがこの時の俺は知らなかった。
この先の戦いは・・・世界を賭けた戦いになると言う事に気づきすらしなかった。













ダークテラ編　完

次回、機械の神､起動
※タイトルが変わる可能性があります。