第169話 到着､世界樹　作：ヒラーズ

「セージも仲間に入れて欲しい？」
「うん、あのまま取り残しておくとレンギアさんと同じ事をしちゃうから・・・」
まぁ、分からなくはない。置いて行かれてるしな、ハルも・・・。
「別に連れても構わない。ただ行くか行かないかの判断はセージにかかってる。よく考える事だ」
「・・・分かった！」
そう言ってハルは走り去り、俺を残す。
「・・・」
それから数分もせずにハルはセージを連れてやってくる。
「決まりました！セージも行くって」
「・・・よろしくお願いします」
早いな、決まったんなら良いんだが・・・。
「改めまして、セージ・ルクセンと申します・・・気弱いものですが・・・よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。セージ」
その言葉でセージの表情が明るくなり、無邪気に喜ぶ。
「・・・はい！」
そういえば、セージの能力は何だろう・・・？聞いてみるか。
「それとセージ、お前さんの能力は何だ？」
「具体的には分かりません。けど、これだけは分かります。セージは1度見た能力を真似できるんです・・・それだけじゃありません、所持しているカードを変えることができるんです・・・」
なるほど、【スキルコピー】と【カードチェンジ（札変更）】を持ってるのか。
「じゃあ、ネクロが言っていた素早い動きは？」
「映画を観て覚えました・・・」
ハァ！？映画を観てそんな動きを覚える奴までいるのか・・・！？
恐ろしいな・・・。
「試しにデッキを変更しますね・・・セージの本気デッキ！」
そう言ってセージはデッキを取り出し、デッキトップのカードを見る。
「うん！成功！」
マジか・・・本当に変更したのか・・・。
そう思った時、ネクロが背後から話しかけてくる。
「雑談は終わったかね？そろそろ出発しよう」
「・・・そうだな」
こうして、同じ世界樹の子供「セージ・ルクセン」を仲間に加えて世界樹を目指す事になった。










歩いて数時間、俺達はシベリアまで到着し、後は世界樹を探すだけとなったんだが・・・。
「・・・多分、近くにすごいでかい木があるんだが・・・アレだよな？」
「疑いなくアレだね」
「後は・・・ろくおんでーたを見つけるだけだね」
「セージとハルはあそこの中で生まれたんだ・・・」
その口調ぶりからすると自分が世界樹の子供であることを理解していない？
「兎に角、世界樹近くの町を目指すぞ」
「うん」
「はい！」
「面倒くさいねぇ・・・」
いっそ突入すると言う手は悪くはないが、何かしろ取り逃がしは御免被りたいからな。慎重に探していたい。
「取りあえず、電源が生きているパソコンを探すぞ。隕石が降った影響で雪も降ってなければ氷点下もない。探しやすいはずだ。ハル、地形の把握は？」
そう言うとハルは地面に地図を描き始める。
それにつられ、セージも地図を続けて描き始める。
「・・・」
「・・・」
黙々と描き続ける二人、次第に地図が完成し、手を止める。
「ここに円が描いてある場所がぼく達の現在位置、目標はここから3㎞先の建物だね」
「ここから3㎞・・・発電所か！」
「さすが陸也さん！勘が鋭い！」
いや、どう考えてもそこしかないんだが・・・。
「じゃあ早速、そこに転移するか」
「うん！」
「セージちゃん、途中で酔わないでよ？」
「・・・酔うんですか？」
俺は能力を使い、発電所近くまで転移したのであった。


















発電所、入り口前―――――
「さすが発電所と言ったところか、電気の量が半端ないな」
「うん・・・ものすごい量で蓄電されてる・・・」
「多分だけど、ここの全電力の50％は世界樹にいってると思う」
（え・・・知らないのセージだけ！？もっと勉強しなくちゃ・・・）

俺達は発電所の内部に入り、データを探す。
あちこちの個室や、会議室、電算室などさまざまな部屋の中を探索する。
そして・・・。
「見つけたぞ、ロッカールームに置いてあるとはな・・・」
「じゃあ起動するかねぇ」
俺はいつも通りセキュリティを破り、録音データを再生する。

『シベリアに着いた・・・、けどそこに神話の「世界樹」はなかった・・・私は・・・とんだ無駄足をしてしまった・・・ｸﾞｽｯ・・・。もう・・・希望などは・・・ないのね。信じなきゃよかった・・・あったのは巨大な「樹」じゃなくて「機」だった』

話している途中で泣き出しているのか言い方が少し変化している。
唯一の希望だったのだな。

『中にはコールドスリープ装置が置いてあったわ・・・。ここまで・・・ここまで来ておいて、希望があんな機械なんて・・・おかしいわ！
・・・私は、この世界樹で眠りにつく事を決めた。それならマナニアハンターズに襲われる心配はないと確信した。




・・・もし、またクォーツやジェム、ハルに会えるなら―――――









―――――謝りたい！事件に巻き込まれてひどい目に遭ったことと―――――






―――――私が今まで行ってきたことに―――――






―――――もし会えないと言うなら…私を忘れて生きて欲しい―――――




―――――私は最低な…科学者だわ、機械の神の計画を止めようとしたばかりに多くの犠牲を払った。無慈悲な人―――――





―――――もう時間ね…長い道のりだった…後悔もあった、きっとこれが「裁き」なのね―――――




―――――さようなら……クォーツ、ジェム、ハル…そして…ごめんね―――――




』


「・・・ここで終わってるな」
「機械仕掛けの神様（デウス・エクス・マキナ）の計画を止めようとしていたのか・・・これはもうただ事では済みそうにないよ」
「ああ、だが先ずは目の前の事を片付ける。それからだ」
クォーツとジェムの作り主・・・最後まで心配してたんだな。
なら・・・会わせなければならない願いは叶えざるえないな。
「行こう、世界樹に向かう」
「そうだねぇ・・・」
「うん・・・」
「はい・・・」
俺達はロッカールームを出て、このまままっすぐ、世界樹に向かっていった。
そして世界樹の入り口の目の前に立ち、内部に侵入したのだった。













その頃、ダークテラとは違う地下施設では・・・。
『なるほど・・・全てはあの魔法生物、いや転生者が原因だったか・・・よくやった中将、お前はもう動かなくても良い。後は我がやろう』
大きい円柱のような機械は人物との連絡を切り、自身を起動した。
『百騎兵・・・いや、【白き邪神】白皇陸也・・・この世界における最大の脅威・・・』












次回、マザー・コンピューター
※タイトルが変わる可能性があります。