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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第1話:悪魔を宿す少年

第1話:悪魔を宿す少年 作:光芒








「あの、赤崎さんと黒田さんは“虹彩の皇子(こうさいのおうじ)”という方のことはご存知でしょうか?」

 この世界のどこにでもある公立の高等学校である美那丘高校。御多分に漏れず、デュエルモンスターズが盛んということを除いては普通の学校であるといえる。そんな高校の学生食堂ではその場所に似つかない一人の金色のロングヘアーが際立つ美少女が目をキラキラと輝かせていた。
 少女の名前は白朧院 梓(はくろういん あずさ)。デュエルディスクの開発・製造・販売を担っている大企業『ハクロウコーポレーション』の令嬢であるが、家族間のトラブルから実家を飛び出して今は一人暮らしをしている。
 現在彼女が住んでいるのはとある人物から紹介されたアパートであるが、住んでいる場所が例え実家と比べ物にならないほど小さく狭い場所であったとしてもその気品はまるで失われておらず、デュエルにおいても鮮やかなS召喚で相手を圧倒するだけの強さを持っていた。

「虹彩の皇子?」
「オイラは朝のニュースで見たんだなぁ。なんでも悪いやつらを倒して回ってるって聞いたぞぉ」
「今のこのご時世にそのような方が存在するとは驚きました。もちろん良い意味ですよ?」
「全くだなぁ。柄の悪い奴らが減ってオイラの父ちゃん母ちゃんも安心してたぞぉ」

 彼女と向かい合って座る二人の男子高校生の反応は正反対であった。茶色のショートヘアーに華奢で小柄な少年は首をかしげるが、その隣に座っている熊のように大型な少年は大盛のどんぶり飯を片手にうんうん、と頷いた。
 大柄な少年の名前は黒田 盛雄(くろだ もりお)。実家は商店街で『トントン飯』という定食屋を営んでおり、その味と量、そして手ごろな安さで近隣の学生たちの胃袋事情の救世主となっている店だ。もちろん彼も立派なデュエリストであり、その間延びした喋り方とのんびりとした性格からは想像できないようなデュエルを見せてくれる。

(そんなことが起きてるんだ……あんまりニュースとか見てなかったからなぁ)
―――あのさ遊季都くん、もうちょっと世の中の流行に気を遣った方がいいと思うよ? あ、でもそんな世情に疎い遊季都くんをアタシ流に染めてしまうのも面白いかもー?
(余計なお世話だよ、ラズベリー!)
―――にゅふふ~、冗談だってば!

 そんな中、小柄な少年―――赤崎 遊季都(あかざき ゆきと)の脳裏には一人の若い女性の声が響く。丁寧な言葉遣いに優しい性格、小柄で華奢、男性というより女性寄りの見た目をしていることから周囲からは軽く見られがちな遊季都であるが、そんな彼には普通の人間とは決定的に違うことがあった。
 それは、この世界には存在しえない存在である“悪魔”と契約していることだ。元々悪魔というものは自分たちの世界である魔界で暮らしていたが、天界の住人である天使たちの侵攻によって魔界は壊滅。一部の悪魔たちは遊季都たちの住む人間の世界へと逃れた。遊季都に話しかけた女性型悪魔・ラズベリーもそのうちの一人である。
 ラズベリーをはじめとした悪魔たちは勢力の立て直しのために必要な“人間の負の心”を求めて人間と契約を結んでおり、その人間の負の心を糧に悪魔たちはデュエルモンスターズのカードへと変貌する。当然悪魔同士で戦うこともあるが、残党狩りに現れる天使の目を逃れるためにこの世界でのポピュラーなゲームであるデュエルモンスターズで戦うことが悪魔の間では暗黙のルールとなっているのだ。

「ちなみにその虹彩の皇子は凄腕のデュエリストでもあるそうです。どれほどのデュエリストか手合わせをしてみたいですね……」
「白朧院さん積極的なんだなぁ」
「曲がりなりにもデュエリストですから私も。ところで赤崎さんと黒田さんは放課後にお時間はありますでしょうか? 実はデッキを調整したので試運転をしてみたくて……」
「僕は大丈夫ですけど……白朧院さんバイトは大丈夫ですか?」
「今日はお休みですので時間はあります」
「だったらオイラが相手になるぞぉ! オイラもデッキを回してみたいんだなぁ」
「そうですか、では放課後にお願い致しますね。お互いに『チャレンジャーZ』の一員として悔いのないデュエルをしましょうね」

 遊季都・梓・盛雄。同じ高校の同じクラスということ以外に共通点のない三人を結びつけたもの、それがデュエルモンスターズである。とある人物の提案によって三人は『チャレンジャーZ』というデュエルチームを結成した。そして彼ら三人は「挑戦者」として全国の高校生デュエリストの中から日本一を決定する『デュエル甲子園』に参加している。
 公式大会では何の実績もないチャレンジャーZであるが、優勝候補の一角に数えられていた四国の『竜馬高校』を撃破して勝ち上がるなど大会のダークホースとして注目を浴びていた。そして注目の存在になるということは、他校からマークされるということでもある。マークされてもなお勝ち上がれるチームになるため、彼らは研鑽を惜しむことは無い。その一環がこういったデュエルによる実技であった。



「どうやらこのデュエルは私の勝利のようですね。《TG ブレード・ガンナー》でダイレクトアタックです! “シュート・ブレード”!」

TG ブレード・ガンナー ATK3300

「うわああっ!!」

盛雄 LP1700→LP0

 梓と盛雄のデュエルはS(シンクロ)召喚を多用して強力なSモンスターを出す【TG】デッキを扱う梓に軍配が上がった。しかし、盛雄も【磁石の戦士】デッキで梓を翻弄するなど勝敗はどちらに転んでもおかしくはないデュエルであった。

「赤崎さん、私たちのデュエルはどうでしたか!」
「うん、白朧院さんも黒田くんもいいデュエルでしたよ。二人とも自分のデッキの持ち味をよく出せていたと思います」
「でもオイラは赤崎くんにも白朧院さんにも負けてしまったんだなぁ……」

 放課後に集まった三人はそれぞれ二度デュエルを行い、結果は遊季都が梓と盛雄に勝利して2勝、梓が遊季都に敗れたものの盛雄に勝利して1勝1敗、盛雄が二人に敗れて2敗というものであった。

「でも負けたことから学べることもあります。盛雄くんが今回のデュエルで改善点を見つけてそれを次に活かせればこの負けも意味のあるものになりますよ」
―――なんだか遊季都くんデュエルの先生みたい。背は三人の中で一番低いのに
(だから一言多いってば!!)

 デュエルに明け暮れた挙句、太陽はすっかり西の空へと沈みそうになっていた。あまり帰りが遅くなると家族を心配させてしまうため、遊季都たちは帰路につくことにした。梓、盛雄と別れた遊季都は急ぎ足で自宅へと向かう。
 家庭の事情で親と別れて暮らしている遊季都は小町という名の祖母と二人で暮らしていた。心優しい祖母である、帰りが遅いと要らぬ心配をかけてしまう可能性があった。

(まずい、早く帰らないとばっちゃんに心配かけちゃう)
―――変にまじめななんだから遊季都くんは……もっと遊ばないと女を知らないままおじいちゃんになっちゃうわよ?
(えっ。そ、それは……ちょっと)
―――お前が不真面目すぎるだけだろう、ラズベリー。遊季都もこいつの言うことを一々真に受けるな。

 遊季都の中ではラズベリーとは別の男性の声が響く。その声の主の名はポップロック。遊季都と契約した二人目の悪魔であり、かつては他の人間と契約した悪魔として遊季都と敵対していた者である。しかし、その人間とのデュエルに勝利した遊季都の下に今はその身柄を移しており、今はラズベリーと共に遊季都の悪魔となっているのだ。

―――心配するな遊季都よ。未成年が遅くまで出歩くのはこの世界の法に反するかもしれないが、我々が同伴とあればそうも目くじらは立てられないはずだ。
―――アタシたちが親戚として遊季都くんの家に居候してる、って設定が役立つわね! ということでこれから梓ちゃんの部屋にでも乗り込んで二人でキャッキャウフフなことを……
(なんでそこで白朧院さんの名前が出てくるの!? 僕と白朧院さんには本当に何にもないからね?)
―――いわゆる逆玉という奴か。お前も隅に置けないな遊季都。
(ポップロックまでラズベリーに乗っからないで! 誰も止める人いなくなっちゃうから!)

 脳内で自分と二人の悪魔が漫才のようなやり取りを繰り広げている中。遊季都の行く先には一人の男子高校生が立っていた。自分のものとは違う学生服を着たその少年は地図のようなものを広げて困っている様子である。
 もちろん見ず知らずの人間であるため、遊季都がどうこうする必要はないのであるが、元来心優しく人の良い性格の遊季都である。困っている人を見て見ぬふりができる人間ではなかった。

「あの……何かありましたか?」
「あっ、えっと……実は道に迷ってしまいまして」
「!?」

 遊季都より20センチ近く背の高いその少年の顔を見た遊季都は思わず生唾を飲む。年齢は自分と同じ高校生くらいと思えるが、自分とは違う炎のような鮮やかな紅い髪に高級なルビーとエメラルドをそのままはめ込んだような美しい瞳が印象的な女性顔負けの美男子であった。

(す、すごくカッコいい……イケメンってこういう人のことを言うんだ……)
―――えっ、遊季都くんってまさかそっち? うわぁ……
(ラズベリーは黙ってて)

 わー、マジトーンだ。というラズベリーのツッコミを無視して遊季都は少年の持つ地図を覗き込む。大判の地図であるためか、細かい地名まではわからない代物であった。これでは道に迷うのも無理はないだろう。

「えっと、どこへ行きたいんですか? もし僕がわかるところであれば案内しますけど」
「そうですか? ありがとうございます。えっと……“ニューサニーアップ事務所”という場所に行きたいのですが……」
「ニューサニーアップ事務所!?」

 ニューサニーアップ事務所、とは橘 勝彦(たちばな まさひこ)が経営するデュエル事務所のことであり、所属しているプロデュエリストたちによる教育・指導やイベント・商品の企画・開催・協賛などデュエルモンスターズ関連の色々な仕事を請け負っている。遊季都にとっては決して知らない場所ではなかった。

「はい」
「えっと……そこならここからそう遠くはないので案内できますよ」
「そうですか……ありがとうございます!」

 そう言って彼はペコリと頭を下げた。安心した様子の少年はニッコリと柔和な笑みを浮かべる。その美しさは遊季都はもちろんラズベリーやポップロックも舌を巻くほどであった。

―――うーん、遊季都くんの可愛さをそのままにカッコよさを加えた感じのイケメン。遊季都くんが成長したらこんな感じになるのかな?
(ぼ、僕がこんなカッコよくなんて……それにしてもニューサニーアップ事務所に何の用だろう)
―――あの事務所には「クィーン・フォース」のようなアイドルデュエリストもいるからな。大方そこのオーディションでも受けにいくのではないか? だが、それよりも……
「あ、あの! そういえば自己紹介がまだでしたね。僕は美那丘高校に通う高校一年生の赤崎 遊季都と言います!」
「赤崎さん……ですか、まさか同学年とは思いませんでした」
「同学年? 僕はてっきり上級生かと……」
―――遊季都くんちっちゃいもんねー。
「ああ……俺も赤崎さんのことを年下だと思っていたのでおあいこですね。えっと、俺は……」










―――高海 遊大(たかみ ゆうだい)と言います。宜しくお願いします、赤崎さん。








 高海 遊大と赤崎 遊季都。決して出会うことのないはずの二人が、今ここで出会った。














(―――ふむ、炎のように紅い髪にオッドアイの美少年……まさかこの少年は……)












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ヒラーズ
会ってしまった運命、さて...この先の展開は...? (2019-01-04 17:29)
ター坊
やったよ!出演したよ、梓!盛雄!
なんだか遊大が都市伝説みたいな存在になってますね。そんな中で出会った遊季都。少しウホッな感じもしましたがそんな訳でもなく。何故異世界から来た遊大がニューサニーアップ事務所を目指すのか。見所の1つになりそうです。
(2019-01-04 20:03)
光芒
ヒラーズさん
杏子「遂に出会った遊季都と遊大。同い年ということもあってすぐに打ち解けた二人だけど、そんな二人を取り囲む怪しい連中が。なによあんたたち! って遊季都の過去と関係があるってどういうことなの! 次回! “目覚める覇王”!デュエルスタンバイ!」

ター坊さん
遊季都を出す以上、梓と盛雄の二人は出さないわけにはいきませんので。ただこの二人の口調とか設定はこれで間違いないでしょうか。

>そんな中で出会った遊季都。少しウホッな感じもしましたがそんな訳でもなく。
藤吉 碧(セントラル校漫研部長)「遊大きゅんと遊季都きゅんなら画になりそうだと思いませんか?」
遊希「なんだぁ、てめぇ……」

>何故異世界から来た遊大がニューサニーアップ事務所を目指すのか。見所の1つになりそうです。
仰る通り、ここもこのコラボの見所の一つになっています。ただター坊さんからしてみればちょっと辛い展開があるかもしれませんが。
(2019-01-04 22:32)
ター坊
二人の口調→全く問題ありません。それとラズベリーのにゅふふ笑いもやってくれてありがたいです。

画になる?→どちらも奥手なのでどちらが攻めになるか問題です。
遊路「おいおい。相思相愛だったらJCだって人妻だって食っちまう男だけどBLは専門外だな。まぁ演技指導くらいなら」

展開→死んで永久離脱とかNTRの胸糞展開でない限りは平気です。杏子の安定次回予告では一悶着? (2019-01-05 01:56)

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