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18:七星候 作:天
「リ、リンク召喚だとォ~~~」
シクスが顔を引き吊らせて驚く。まさかユーイ以外の相手にそれを再び見せつけられるとは思っていなかった。
しかしその驚愕はシクスだけのものではない。
「おいおいおい、こりゃあとんでもないことになったドン!」
ケンザンも身を乗り出してそれを示す。
「ああ、まさか俺以外にもリンク召喚を使う奴がいるとなんてな。別に唯一のリンク召喚使いだってことにプライドを持ってたっつーわけじゃあないが、やはりショックってやつはあるもんだぜ」
ユーイにとってリンク召喚は、少ない魔力でも強いモンスターに対抗できる戦略としてデッキに組み込んでいたものだ。
しかし今となっては《ブリッツ・マジシャン》は欠け換えのないパートナーとなっている。その絆こそが他の決闘者にはないアドバンテージと言えたのだが、ここにきてそれはユーイだけのものではなくなってしまうかもしれなかった。
ユーイはレイヤの召喚したリンクモンスターを見やる。
暴走召喚師アレイスター(リンク2/ATK1800)
《暴走召喚師アレイスター》の放つ威圧感はかなりのものだ。魔力が暴走しているかのように渦巻いている。
そしてユーイだけには確かに分かる。この魔力の肌触りはリンクモンスター特有のものだった。
(間違いない。確かにこのモンスターは《ブリッツ・マジシャン》と同じリンクモンスターだ。しかも《ブリッツ・マジシャン》より上位―――リンク2のリンクモンスター。一体どんな力を持っているのか・・・)
レイヤがリンク召喚を使ったのには驚いたが、《暴走召喚師アレイスター》の攻撃力は1800。単純な戦闘力では攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》には敵わない。
だが仮にもアカデミアの入試を首席で合格した男が意味もなくこんなモンスターを召喚するわけがない。まだ何かレイヤには狙いがあるはずだった。
ユーイはごくりと唾を飲み込み、二人のデュエルの行方を見据える。
一方、そのレイヤはフッとため息をついた。
「私は元来、争い事は好まない。ならば何故こんな下らないデュエルを受けたか・・・。それはこのデュエルが降りかかる火の粉だからだ。降りかかる火の粉は払わなくてはならない。そして私は火の粉を払うのに、容赦はしないッ!」
レイヤは手札を切る。それは先ほど《召喚師アレイスター》の効果で手札に加えたばかりのカードだ。
「手札より《召喚魔術》を発動ッ!《召喚魔術》は《融合》と同様に融合召喚を行う魔法カードッ!ただし「召喚獣」融合モンスターを融合召喚する場合に限り、自分の手札・フィールドと互いの墓地のモンスターを融合素材とすることができるッ!」
「更に融合召喚だとッ!?馬鹿なッ!エクストラデッキから特殊召喚されるモンスターは全てエクストラゾーンに顕現するッ!故にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターは1体しか自分のフィールドに存在できないはずだッ!!そんなことも知らないのかッ!?」
「無知はキミの方だ、シクス・タイタン。リンクモンスターのリンクマーカーが差し示すメインモンスターゾーンは、エクストラゾーンと同等として扱われる。よってリンクモンスターが自分フィールドに存在する時、そのリンク先にならば新たにエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することが可能なのだ」
「なッ!?」と絶句するシクスに構わず、《暴走召喚師アレイスター》がにやりと笑い両手を掲げる。
その上空に《暴走魔法陣》と同じ模様の魔法陣が現れた。こちらは暴走していないのか青白い光を放っており安定しているように見える。
「私は墓地の《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》を融合ッ!融合召喚!!次元の壁を突き砕き現れよ、レベル6《召喚獣コキュ―トス》!!」
その魔法陣にビキリとヒビが入る。それは次第に広がっていき、やがて魔法陣は割れたガラスのようにバラバラと崩壊していった。
そしてその隙間から巨大な影が這い出してくる。
それはドラゴン。全身を氷に覆われた巨大なドラゴンであった。
召喚獣コキュ―トス(星6/DEF2900)
魔法陣から完全に抜け出した《召喚獣コキュ―トス》は《暴走召喚師アレイスター》の右後方に鎮座すると体を横たえ守備表示を取る。その守備力は最上級モンスターでも簡単には突き崩せぬほどの固さを誇る。
「さらに墓地から除外された《召喚隷獣ウンディナ》はフィールドの融合モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせることができる」
召喚獣コキュ―トス(ATK1800→2300/DEF2900→3400)
《召喚隷獣ウンディナ》の効果により融合モンスターである《召喚獣コキュ―トス》のステータスはそれぞれ500ずつアップした。
その守備力は3400。もはや最上級モンスターであろうと並のモンスターでは手も足も出ない数値である。
(くッ・・・守備力3400だと・・・!まずは守備を固めるつもりかッ!?)
「《召喚獣コキュ―トス》を守備固めだと考えているなら甘いぞ、シクス・タイタン。私はバトルフェイズに入る」
「なにッ!?」
シクスの考えを見透かしレイヤがバトル宣言を行う。
しかしレイヤのフィールドには、エクストラゾーンに攻撃力1800の《暴走召喚師アレイスター》が攻撃表示でいるものの、メインモンスターゾーンの《召喚獣コキュ―トス》は守備表示。攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》をバトルで倒せるモンスターはいないように思われる。
しかしレイヤにその常識は通じなかった。
「《召喚獣コキュ―トス》は守備表示のまま攻撃することができるのだッ!《召喚獣コキュ―トス》で《シャドウナイトデーモン》を攻撃ッ!」
横たわり守備表示のままの《召喚獣コキュ―トス》がガパッと巨大な口を開く。
攻撃対象とされたことで《シャドウナイトデーモン》が剣を構えて応戦しようと駆け出すが、それより早く《召喚獣コキュ―トス》の極寒のブレスが発せられ一瞬にして《シャドウナイトデーモン》を氷付けにする。
シクス(LP4000→3700)
「クッ・・・!」
《シャドウナイトデーモン》がやられたことで、シクスのモンスターゾーンはがら空きだ。
「さらに《暴走召喚師アレイスター》で追撃!!」
《暴走召喚師アレイスター》が暴走する魔力をシクスに集中させる。赤味を帯びた魔力は、まるで数本の帯のようになってシクスを襲った。
「ぐあああぁ・・・!」
シクス(LP3700→1900)
レイヤの連続攻撃にシクスのLPは半分以下にまで減らされた。
その結果に満足したよう頷いて、レイヤはターンエンドした。
現在の互いの状況は以下の通りだ。
シクス(LP1900/手札2枚)
モンスター
なし
魔法・罠
万魔殿(フィールド)
伏せカード1枚
レイヤ(LP4000/手札4枚)
エクストラ
暴走召喚師アレイスター(ATK1800)
メイン
召喚獣コキュ―トス(DEF3400)
魔法・罠
暴走魔法陣(フィールド)
状況は圧倒的にレイヤ優勢である。
エクストラゾーンの《暴走召喚師アレイスター》はまだしも、守備力3400を誇る《召喚獣コキュ―トス》を倒さねばレイヤへの直接攻撃が通らないというのが厄介だ。
しかし本当に恐るべきなのは、この布陣をレイヤはたった2枚の手札消費でなし得たことである。
手札は決闘者にとって可能性そのもの。まだ残り4枚のレイヤに対し、シクスはすでに2枚。次のドローフェイズで1枚補充できるとは言え、すでにかなり追い込まれているのは確かだ。ここで逆転に繋がるカードを引かなくてはシクスに勝ち目はないだろう。
「くぅ、ボクのターン!ドロー!」
苦々しげにデッキからカードをドローしたシクスだったが、そのカードを見てその表情を緩めた。
「クク。リンク召喚だけではなく融合召喚まで操るとはさすがにちょいと驚いたよ、早乙女レイヤ。だが、いい気になるのはここまでだ。やはり最後に勝つのは貴族たるこのボクだッ!」
表情を変えることないレイヤに構わずシクスはドローしたばかりのカードを切る。
「魔法カード《おろかな埋葬》を発動ッ!デッキから《トリック・デーモン》を墓地に送るッ!」
《おろかな埋葬》はデッキからモンスターを1体墓地に送る魔法カード。モンスターの中には墓地で真価を発揮するものも多く、それらとのコンボで破壊やサーチ等の強力な効果を生む。総じてデッキの始動足り得る強力な魔法カードである。
その効果の強力さ故にかなりのレアカードでもあるのだが、このカードをデッキに入れられている辺りさすがに七星候の財力は一般の決闘者とは違う。
「そして《トリック・デーモン》が墓地に送られたことにより、そのモンスター効果が発動するッ!《トリック・デーモン》は墓地に送られた場合、デッキから【デーモン】カード1枚をデッキに加えるッ!」
シクスもまた《おろかな埋葬》を、サーチ効果を持つ《トリック・デーモン》と組み合わせることによってサーチカードとして運用していたようだ。
フィールドに羊らしき頭蓋骨を被った少女の悪魔が現れ、悪戯そうな笑みを浮かべながらデッキからカードを引き抜くとシクスに差し出す。
受け取ったカードを見せてシクスは笑う。そのカードはユーイには見覚えのあるカードだった。
「ボクが手札に加えたのは、この《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》のカードだッ!そしてボクはこの《ジェネシス・デーモン》を通常召喚するッ!」
シクスのフィールドに巨大な玉座が現れる。
玉座の周りには闇が漂う。その闇はやがて形を成し、玉座に座る巨大な悪魔として顕現した。
シクスのエースモンスター《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》が召喚されたのである。
戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン(星8/ATK1500)
・
・
・
「レベル8のモンスターをいきなり召喚した!?」
驚きの声を上げるユーイ達に、三沢ダイキが答えてやる。
「妥協召喚だ。上級以上のモンスターの中には、リリースなしで通常召喚できるという効果を持つものがいる。その効果を行使して召喚することを俗にそう呼ぶ。この手の上級モンスターは手札事故の可能性を減らせるため使い勝手は良いが、しかしこの妥協召喚には条件やデメリットが付属する場合が多い。見ろ、《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》の場合はステータス半減のデメリットがあるようだ」
ダイキの言う通り、確かに《ジェネシス・デーモン》の攻撃力は半分の数値である1500に留まっている。
「攻撃力1500じゃ、イケメン兄ちゃんのモンスターには届かないジャン?」
「確かに半減した《ジェネシス・デーモン》の攻撃力では早乙女レイヤのモンスターには敵わない。だが、シクス・タイタンの狙いはおそらく戦闘ではない。妥協召喚しても《ジェネシス・デーモン》のモンスター効果がなくなるわけではないからな」
・
・
・
「その通りッ!!」とシクスがダイキの推測を肯定する。
「《ジェネシス・デーモン》には手札・墓地の【デーモン】カードを除外することでフィールドのカード1枚を破壊する効果があるッ!ボクは墓地の《トリック・デーモン》を除外し、この効果を行使するッ!」
《ジェネシス・デーモン》の周囲に妖しいもやが立ち込め始める。それらは集まり《トリック・デーモン》に似た形を成した。
「【デーモン】の魂を弾にして撃ち出すというわけか。やってみるがいい。だが一つ忠告しておいてやる。私の《召喚獣コキュ―トス》には破壊効果は通用しない。狙うならば《暴走召喚師アレイスター》をよく狙って撃つんだな」
シクスにとって厄介なのは高い守備力の《召喚獣コキュ―トス》である。だがその《召喚獣コキュ―トス》には効果では破壊されない耐性が備わっている。如何に《ジェネシス・デーモン》と言えどこれを破壊することはできない。
しかしシクスは鼻で笑う。
「フン、誰がキミのモンスターを破壊すると言った!?ボクが《ジェネシス・デーモン》の効果で破壊するのは・・・《ジェネシス・デーモン》自身だッ!!」
「なに?」
一瞬、レイヤに訝しむ表情が生まれる。
フィールドに漂っていた《トリック・デーモン》の霊魂が標的を貰ったとばかりに味方であるはずの《ジェネシス・デーモン》目掛けて襲いかかった。その体を貫通し、その魂を刈り取る。
《ジェネシス・デーモン》は苦悶の声を上げながら掻き消えていった。
「自らの効果で自分自身を破壊するとは・・・。何が狙いだ?」
「ククク、それはこのカードの発動条件を満たすためだッ!」
シクスは自分のフィールドに伏せられているカードを指し示す。
「このカードは自分のレベル8以上のモンスターが破壊されたターンにのみ発動できるカードッ!!ボクのデッキに眠る最強のモンスターを呼び出すカードだッ!!」
シクスの伏せカードが翻る。
「速攻魔法《デーモンとの駆け引き》ッ!!」
すると《ジェネシス・デーモン》が消えたその場所から真っ黒い何かが湧き出してきた。それは空気に触れると硬質化し、黒い体皮となる。それらが積み重なり、やがて1体の竜へと姿を変えた。
「強大な悪魔との契約に従い現れろ!!狂乱と死を司る黒竜よ!!特殊召喚ッ!!レベル8《バーサーク・デッド・ドラゴン》!!」
それは不気味なドラゴンだった。
細い体躯は真っ黒い体皮に覆われ、頭には二本の角、そしてその顔はゾンビのようにおぞましい凶相だ。
バーサーク・デッド・ドラゴン(星8/ATK3500)
「攻撃力3500・・・ッ!?」
シクスの召喚したモンスターのステータスに、観衆がどよめきを発する。
それも当然かもしれない。ほとんどの新入生にとって、装備魔法等によって強化されているならばともかく元々の攻撃力が3000を超えるようなモンスターなど宝物級、見たこともない代物だ。
「この《バーサーク・デッド・ドラゴン》は、遥か昔、我がタイタン家があの『錘の国』にて五大貴族として名を馳せた名家より賜ったものッ!!まさに代々受け継がれてきた我が家の家宝とも言えるカードよッ!このシクスがタイタン家の名誉にかけ、名実共にNo.1を勝ち取るに相応しいモンスターであろうッ!!」
シクスの言葉通り《バーサーク・デッド・ドラゴン》の発する威圧感は《ジェネシス・デーモン》のそれを超える重苦しさ。戦闘力だけならば、クローディアの《古代の機械巨人―アルティメット・パウンド》すらも上回るだけに、生半可なモンスターでないのは確かだ。
・
・
・
「タイタン家の名誉・・・。そうか、そういうことか」
シクスの言葉を受けて、ダイキが何か納得がいったようにぽつりと呟く。
「何です?」
「いや、あのシクスという少年は試験の時から妙にNo.1ルーキーというのにこだわっていたから気になっていたんだ。ようやく今の言葉でその訳が分かったのさ」
「というと?」
ユーイが訊くと、ダイキは片目をつむる。
「キミは確か『首飾りの国』から来たんだったな。『七星候(セブン・スターズ)』のことを詳しく知っているかい?」
「いえ・・・」
ユーイが首を振ると、ダイキは「だろうね」と頷く。
「七星候とは、この『秤の国』で王の次に力を持っている七家の貴族の総称だ。
錬金術研究の第一人者にして我が国の融合召喚の祖と言われる七星候筆頭『大徳寺』家
元は傭兵稼業だったが大昔の戦争で功を立て貴族に任じられた『タイタン』家
昔は吸血鬼の一族として恐れられ呪法の使い手として名高い『ムーク』家
高い実力を持つ決闘者を多く輩出している『天上院』家
女系一族ながら高い戦闘能力で武勲を上げた『タイラー』家
諜報や密偵など隠密行動に長ける『黒蠍』家
そして没落したアビドス家に代わり最近これに仲間入りした『万城目』家
この七つの血族が七大貴族としてこの国の中枢を担っているんだ」
ダイキはシクスに視線を向ける。
「彼―――シクス・タイタンの家はその中でも序列二位の名家だ。しかし現当主である彼の父上は穏健派の上に病弱で、その代になってからタイタン家の勢いは翳りを見せ始めた。最近は同じ武闘派のタイラー家や新進気鋭の万城目家に勢いで押されているという。このままでは没落したアビドス家の二の舞で、どこぞの他家に地位を奪われかねないという噂まである・・・」
「人聞きの悪い話をするな、三沢」
ダイキがそこまで話したところで、それに割って入ってくる者がいた。
声の方を振り返ると、それは万城目シュンだった。
「アビドス家が没落したのは、勝手に向こうが力を失ったからだ。我が万城目家が裏で手を回したなどと噂されているらしいが、天に誓ってそんなことはない」
シュンは相変わらず抜き身の刃のように鋭い視線をダイキに向ける。
確かに今のダイキの言い方では万城目家がアビドス家の地位を奪ったと言っているように聞こえる。シュンが怒るのも無理はない。
ダイキは「やぶ蛇だったか」と舌を出すが―――
(いや、たぶん『わざと』だな。この人、万城目って人が近くにいるのが分かっててわざとこんな話をしていたんだ)
ユーイはそう睨んだ。
どうやらこの二人はライバルと言うに近い関係らしい。
「もう、こんな時に何を言い争ってるのさ」
睨むシュン、飄々としているダイキ。そんな二人の間に入ったのは丸藤カケルだった。
見るとカケルだけではない。
天上院アスナ、十六夜アキラ、そして影丸ユウリ。
そこには生徒会メンバーが集結していた。
「うお、生徒会の人達だ」
「ホントだ、すげーオーラ」
「三女神が揃ってるぞ、マジで美人だな」
新入生達から次々に声が上がるが、逆に生徒会メンバーの威圧感に押され輪は崩れた。少しの間に生徒会メンバーとユーイ達四人を残して他の新入生は離れてしまう。まるでモーゼの海割りのようだ。
「去年の入学試験で首席合格したのは、この万城目くんだ」
生徒会メンバーを引き連れたユウリがゆっくりとユーイを見る。
「そして、そのことが万城目家の七星候入りの決定打になったのはすでに周知の事実。大方、シクス・タイタンの狙いはそれだったのでしょう」
言うユウリに、おずおずとリュウカが訊く。
「つまりシクスくんは、入学試験に首席合格することでタイタン家を復権させようとしていたということですか?そしてそれが叶わなったから、ここで早乙女くんを倒して力を示そうと・・・?」
「たぶんね。アカデミアに政治を持ち込むなんて無粋だけれど、人には誰しも背負うものがあって当たり前。それ自体は誰にも責められるものではないわ。むしろその『意地』という強い意思は決闘者をより強くする。今は彼の闘いを観させてもらいましょう」
ユウリはそう言って視線をシクス達へと移す。
それを追って皆が二人のデュエルへと再び注意を向けたが、そんな中でユーイだけはユウリの姿から目を逸らせずにいた。
(この声は・・・)
― ― ― ― ― ― ― ― ―
使用カード
《暴走召喚師アレイスター》
リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/魔法使い族/攻1800
【リンクマーカー:左下/右下】
種族と属性が異なるモンスター2体
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「召喚師アレイスター」として扱う。
(2):このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、融合モンスターが融合召喚された場合に発動できる。手札を1枚選んで捨て、デッキから「召喚魔術」または「法の聖典」1枚を手札に加える。
(3):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。 デッキから「魔法名-「大いなる獣」」1枚を手札に加える。
《召喚魔術》
通常魔法
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。「召喚獣」融合モンスターを融合召喚する場合、自分フィールド及び自分・相手の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。
(2):このカードが墓地に存在する場合、除外されている自分の「召喚師アレイスター」1体を対象として発動できる。墓地のこのカードをデッキに戻し、対象のモンスターを手札に加える。
《召喚獣コキュートス》
融合・効果モンスター
星6/水属性/ドラゴン族/攻1800/守2900
「召喚師アレイスター」+水属性モンスター (1):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(2):このカードは表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う。
《おろかな埋葬》
通常魔法(制限カード)
(1):デッキからモンスター1体を墓地へ送る。
《トリック・デーモン》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守 0
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが効果で墓地へ送られた場合、 または戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「トリック・デーモン」以外の「デーモン」カード1枚を手札に加える。
《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守2000
(1):このカードはリリースなしで召喚できる。 (2):このカードの(1)の方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になり、エンドフェイズに破壊される。
(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。
(4):1ターンに1度、自分の手札・墓地の「デーモン」カード1枚を除外し、 フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
《デーモンとの駆け引き》
速攻魔法
レベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地へ送られたターンに発動する事ができる。自分の手札またはデッキから「バーサーク・デッド・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
《バーサーク・デッド・ドラゴン》
効果モンスター
星8/闇属性/アンデット族/攻3500/守 0
このカードは「デーモンとの駆け引き」の効果でのみ特殊召喚が可能。
相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃が可能。
自分のターンのエンドフェイズ毎にこのカードの攻撃力は500ポイントダウンする。
シクスが顔を引き吊らせて驚く。まさかユーイ以外の相手にそれを再び見せつけられるとは思っていなかった。
しかしその驚愕はシクスだけのものではない。
「おいおいおい、こりゃあとんでもないことになったドン!」
ケンザンも身を乗り出してそれを示す。
「ああ、まさか俺以外にもリンク召喚を使う奴がいるとなんてな。別に唯一のリンク召喚使いだってことにプライドを持ってたっつーわけじゃあないが、やはりショックってやつはあるもんだぜ」
ユーイにとってリンク召喚は、少ない魔力でも強いモンスターに対抗できる戦略としてデッキに組み込んでいたものだ。
しかし今となっては《ブリッツ・マジシャン》は欠け換えのないパートナーとなっている。その絆こそが他の決闘者にはないアドバンテージと言えたのだが、ここにきてそれはユーイだけのものではなくなってしまうかもしれなかった。
ユーイはレイヤの召喚したリンクモンスターを見やる。
暴走召喚師アレイスター(リンク2/ATK1800)
《暴走召喚師アレイスター》の放つ威圧感はかなりのものだ。魔力が暴走しているかのように渦巻いている。
そしてユーイだけには確かに分かる。この魔力の肌触りはリンクモンスター特有のものだった。
(間違いない。確かにこのモンスターは《ブリッツ・マジシャン》と同じリンクモンスターだ。しかも《ブリッツ・マジシャン》より上位―――リンク2のリンクモンスター。一体どんな力を持っているのか・・・)
レイヤがリンク召喚を使ったのには驚いたが、《暴走召喚師アレイスター》の攻撃力は1800。単純な戦闘力では攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》には敵わない。
だが仮にもアカデミアの入試を首席で合格した男が意味もなくこんなモンスターを召喚するわけがない。まだ何かレイヤには狙いがあるはずだった。
ユーイはごくりと唾を飲み込み、二人のデュエルの行方を見据える。
一方、そのレイヤはフッとため息をついた。
「私は元来、争い事は好まない。ならば何故こんな下らないデュエルを受けたか・・・。それはこのデュエルが降りかかる火の粉だからだ。降りかかる火の粉は払わなくてはならない。そして私は火の粉を払うのに、容赦はしないッ!」
レイヤは手札を切る。それは先ほど《召喚師アレイスター》の効果で手札に加えたばかりのカードだ。
「手札より《召喚魔術》を発動ッ!《召喚魔術》は《融合》と同様に融合召喚を行う魔法カードッ!ただし「召喚獣」融合モンスターを融合召喚する場合に限り、自分の手札・フィールドと互いの墓地のモンスターを融合素材とすることができるッ!」
「更に融合召喚だとッ!?馬鹿なッ!エクストラデッキから特殊召喚されるモンスターは全てエクストラゾーンに顕現するッ!故にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターは1体しか自分のフィールドに存在できないはずだッ!!そんなことも知らないのかッ!?」
「無知はキミの方だ、シクス・タイタン。リンクモンスターのリンクマーカーが差し示すメインモンスターゾーンは、エクストラゾーンと同等として扱われる。よってリンクモンスターが自分フィールドに存在する時、そのリンク先にならば新たにエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することが可能なのだ」
「なッ!?」と絶句するシクスに構わず、《暴走召喚師アレイスター》がにやりと笑い両手を掲げる。
その上空に《暴走魔法陣》と同じ模様の魔法陣が現れた。こちらは暴走していないのか青白い光を放っており安定しているように見える。
「私は墓地の《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》を融合ッ!融合召喚!!次元の壁を突き砕き現れよ、レベル6《召喚獣コキュ―トス》!!」
その魔法陣にビキリとヒビが入る。それは次第に広がっていき、やがて魔法陣は割れたガラスのようにバラバラと崩壊していった。
そしてその隙間から巨大な影が這い出してくる。
それはドラゴン。全身を氷に覆われた巨大なドラゴンであった。
召喚獣コキュ―トス(星6/DEF2900)
魔法陣から完全に抜け出した《召喚獣コキュ―トス》は《暴走召喚師アレイスター》の右後方に鎮座すると体を横たえ守備表示を取る。その守備力は最上級モンスターでも簡単には突き崩せぬほどの固さを誇る。
「さらに墓地から除外された《召喚隷獣ウンディナ》はフィールドの融合モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせることができる」
召喚獣コキュ―トス(ATK1800→2300/DEF2900→3400)
《召喚隷獣ウンディナ》の効果により融合モンスターである《召喚獣コキュ―トス》のステータスはそれぞれ500ずつアップした。
その守備力は3400。もはや最上級モンスターであろうと並のモンスターでは手も足も出ない数値である。
(くッ・・・守備力3400だと・・・!まずは守備を固めるつもりかッ!?)
「《召喚獣コキュ―トス》を守備固めだと考えているなら甘いぞ、シクス・タイタン。私はバトルフェイズに入る」
「なにッ!?」
シクスの考えを見透かしレイヤがバトル宣言を行う。
しかしレイヤのフィールドには、エクストラゾーンに攻撃力1800の《暴走召喚師アレイスター》が攻撃表示でいるものの、メインモンスターゾーンの《召喚獣コキュ―トス》は守備表示。攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》をバトルで倒せるモンスターはいないように思われる。
しかしレイヤにその常識は通じなかった。
「《召喚獣コキュ―トス》は守備表示のまま攻撃することができるのだッ!《召喚獣コキュ―トス》で《シャドウナイトデーモン》を攻撃ッ!」
横たわり守備表示のままの《召喚獣コキュ―トス》がガパッと巨大な口を開く。
攻撃対象とされたことで《シャドウナイトデーモン》が剣を構えて応戦しようと駆け出すが、それより早く《召喚獣コキュ―トス》の極寒のブレスが発せられ一瞬にして《シャドウナイトデーモン》を氷付けにする。
シクス(LP4000→3700)
「クッ・・・!」
《シャドウナイトデーモン》がやられたことで、シクスのモンスターゾーンはがら空きだ。
「さらに《暴走召喚師アレイスター》で追撃!!」
《暴走召喚師アレイスター》が暴走する魔力をシクスに集中させる。赤味を帯びた魔力は、まるで数本の帯のようになってシクスを襲った。
「ぐあああぁ・・・!」
シクス(LP3700→1900)
レイヤの連続攻撃にシクスのLPは半分以下にまで減らされた。
その結果に満足したよう頷いて、レイヤはターンエンドした。
現在の互いの状況は以下の通りだ。
シクス(LP1900/手札2枚)
モンスター
なし
魔法・罠
万魔殿(フィールド)
伏せカード1枚
レイヤ(LP4000/手札4枚)
エクストラ
暴走召喚師アレイスター(ATK1800)
メイン
召喚獣コキュ―トス(DEF3400)
魔法・罠
暴走魔法陣(フィールド)
状況は圧倒的にレイヤ優勢である。
エクストラゾーンの《暴走召喚師アレイスター》はまだしも、守備力3400を誇る《召喚獣コキュ―トス》を倒さねばレイヤへの直接攻撃が通らないというのが厄介だ。
しかし本当に恐るべきなのは、この布陣をレイヤはたった2枚の手札消費でなし得たことである。
手札は決闘者にとって可能性そのもの。まだ残り4枚のレイヤに対し、シクスはすでに2枚。次のドローフェイズで1枚補充できるとは言え、すでにかなり追い込まれているのは確かだ。ここで逆転に繋がるカードを引かなくてはシクスに勝ち目はないだろう。
「くぅ、ボクのターン!ドロー!」
苦々しげにデッキからカードをドローしたシクスだったが、そのカードを見てその表情を緩めた。
「クク。リンク召喚だけではなく融合召喚まで操るとはさすがにちょいと驚いたよ、早乙女レイヤ。だが、いい気になるのはここまでだ。やはり最後に勝つのは貴族たるこのボクだッ!」
表情を変えることないレイヤに構わずシクスはドローしたばかりのカードを切る。
「魔法カード《おろかな埋葬》を発動ッ!デッキから《トリック・デーモン》を墓地に送るッ!」
《おろかな埋葬》はデッキからモンスターを1体墓地に送る魔法カード。モンスターの中には墓地で真価を発揮するものも多く、それらとのコンボで破壊やサーチ等の強力な効果を生む。総じてデッキの始動足り得る強力な魔法カードである。
その効果の強力さ故にかなりのレアカードでもあるのだが、このカードをデッキに入れられている辺りさすがに七星候の財力は一般の決闘者とは違う。
「そして《トリック・デーモン》が墓地に送られたことにより、そのモンスター効果が発動するッ!《トリック・デーモン》は墓地に送られた場合、デッキから【デーモン】カード1枚をデッキに加えるッ!」
シクスもまた《おろかな埋葬》を、サーチ効果を持つ《トリック・デーモン》と組み合わせることによってサーチカードとして運用していたようだ。
フィールドに羊らしき頭蓋骨を被った少女の悪魔が現れ、悪戯そうな笑みを浮かべながらデッキからカードを引き抜くとシクスに差し出す。
受け取ったカードを見せてシクスは笑う。そのカードはユーイには見覚えのあるカードだった。
「ボクが手札に加えたのは、この《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》のカードだッ!そしてボクはこの《ジェネシス・デーモン》を通常召喚するッ!」
シクスのフィールドに巨大な玉座が現れる。
玉座の周りには闇が漂う。その闇はやがて形を成し、玉座に座る巨大な悪魔として顕現した。
シクスのエースモンスター《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》が召喚されたのである。
戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン(星8/ATK1500)
・
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「レベル8のモンスターをいきなり召喚した!?」
驚きの声を上げるユーイ達に、三沢ダイキが答えてやる。
「妥協召喚だ。上級以上のモンスターの中には、リリースなしで通常召喚できるという効果を持つものがいる。その効果を行使して召喚することを俗にそう呼ぶ。この手の上級モンスターは手札事故の可能性を減らせるため使い勝手は良いが、しかしこの妥協召喚には条件やデメリットが付属する場合が多い。見ろ、《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》の場合はステータス半減のデメリットがあるようだ」
ダイキの言う通り、確かに《ジェネシス・デーモン》の攻撃力は半分の数値である1500に留まっている。
「攻撃力1500じゃ、イケメン兄ちゃんのモンスターには届かないジャン?」
「確かに半減した《ジェネシス・デーモン》の攻撃力では早乙女レイヤのモンスターには敵わない。だが、シクス・タイタンの狙いはおそらく戦闘ではない。妥協召喚しても《ジェネシス・デーモン》のモンスター効果がなくなるわけではないからな」
・
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「その通りッ!!」とシクスがダイキの推測を肯定する。
「《ジェネシス・デーモン》には手札・墓地の【デーモン】カードを除外することでフィールドのカード1枚を破壊する効果があるッ!ボクは墓地の《トリック・デーモン》を除外し、この効果を行使するッ!」
《ジェネシス・デーモン》の周囲に妖しいもやが立ち込め始める。それらは集まり《トリック・デーモン》に似た形を成した。
「【デーモン】の魂を弾にして撃ち出すというわけか。やってみるがいい。だが一つ忠告しておいてやる。私の《召喚獣コキュ―トス》には破壊効果は通用しない。狙うならば《暴走召喚師アレイスター》をよく狙って撃つんだな」
シクスにとって厄介なのは高い守備力の《召喚獣コキュ―トス》である。だがその《召喚獣コキュ―トス》には効果では破壊されない耐性が備わっている。如何に《ジェネシス・デーモン》と言えどこれを破壊することはできない。
しかしシクスは鼻で笑う。
「フン、誰がキミのモンスターを破壊すると言った!?ボクが《ジェネシス・デーモン》の効果で破壊するのは・・・《ジェネシス・デーモン》自身だッ!!」
「なに?」
一瞬、レイヤに訝しむ表情が生まれる。
フィールドに漂っていた《トリック・デーモン》の霊魂が標的を貰ったとばかりに味方であるはずの《ジェネシス・デーモン》目掛けて襲いかかった。その体を貫通し、その魂を刈り取る。
《ジェネシス・デーモン》は苦悶の声を上げながら掻き消えていった。
「自らの効果で自分自身を破壊するとは・・・。何が狙いだ?」
「ククク、それはこのカードの発動条件を満たすためだッ!」
シクスは自分のフィールドに伏せられているカードを指し示す。
「このカードは自分のレベル8以上のモンスターが破壊されたターンにのみ発動できるカードッ!!ボクのデッキに眠る最強のモンスターを呼び出すカードだッ!!」
シクスの伏せカードが翻る。
「速攻魔法《デーモンとの駆け引き》ッ!!」
すると《ジェネシス・デーモン》が消えたその場所から真っ黒い何かが湧き出してきた。それは空気に触れると硬質化し、黒い体皮となる。それらが積み重なり、やがて1体の竜へと姿を変えた。
「強大な悪魔との契約に従い現れろ!!狂乱と死を司る黒竜よ!!特殊召喚ッ!!レベル8《バーサーク・デッド・ドラゴン》!!」
それは不気味なドラゴンだった。
細い体躯は真っ黒い体皮に覆われ、頭には二本の角、そしてその顔はゾンビのようにおぞましい凶相だ。
バーサーク・デッド・ドラゴン(星8/ATK3500)
「攻撃力3500・・・ッ!?」
シクスの召喚したモンスターのステータスに、観衆がどよめきを発する。
それも当然かもしれない。ほとんどの新入生にとって、装備魔法等によって強化されているならばともかく元々の攻撃力が3000を超えるようなモンスターなど宝物級、見たこともない代物だ。
「この《バーサーク・デッド・ドラゴン》は、遥か昔、我がタイタン家があの『錘の国』にて五大貴族として名を馳せた名家より賜ったものッ!!まさに代々受け継がれてきた我が家の家宝とも言えるカードよッ!このシクスがタイタン家の名誉にかけ、名実共にNo.1を勝ち取るに相応しいモンスターであろうッ!!」
シクスの言葉通り《バーサーク・デッド・ドラゴン》の発する威圧感は《ジェネシス・デーモン》のそれを超える重苦しさ。戦闘力だけならば、クローディアの《古代の機械巨人―アルティメット・パウンド》すらも上回るだけに、生半可なモンスターでないのは確かだ。
・
・
・
「タイタン家の名誉・・・。そうか、そういうことか」
シクスの言葉を受けて、ダイキが何か納得がいったようにぽつりと呟く。
「何です?」
「いや、あのシクスという少年は試験の時から妙にNo.1ルーキーというのにこだわっていたから気になっていたんだ。ようやく今の言葉でその訳が分かったのさ」
「というと?」
ユーイが訊くと、ダイキは片目をつむる。
「キミは確か『首飾りの国』から来たんだったな。『七星候(セブン・スターズ)』のことを詳しく知っているかい?」
「いえ・・・」
ユーイが首を振ると、ダイキは「だろうね」と頷く。
「七星候とは、この『秤の国』で王の次に力を持っている七家の貴族の総称だ。
錬金術研究の第一人者にして我が国の融合召喚の祖と言われる七星候筆頭『大徳寺』家
元は傭兵稼業だったが大昔の戦争で功を立て貴族に任じられた『タイタン』家
昔は吸血鬼の一族として恐れられ呪法の使い手として名高い『ムーク』家
高い実力を持つ決闘者を多く輩出している『天上院』家
女系一族ながら高い戦闘能力で武勲を上げた『タイラー』家
諜報や密偵など隠密行動に長ける『黒蠍』家
そして没落したアビドス家に代わり最近これに仲間入りした『万城目』家
この七つの血族が七大貴族としてこの国の中枢を担っているんだ」
ダイキはシクスに視線を向ける。
「彼―――シクス・タイタンの家はその中でも序列二位の名家だ。しかし現当主である彼の父上は穏健派の上に病弱で、その代になってからタイタン家の勢いは翳りを見せ始めた。最近は同じ武闘派のタイラー家や新進気鋭の万城目家に勢いで押されているという。このままでは没落したアビドス家の二の舞で、どこぞの他家に地位を奪われかねないという噂まである・・・」
「人聞きの悪い話をするな、三沢」
ダイキがそこまで話したところで、それに割って入ってくる者がいた。
声の方を振り返ると、それは万城目シュンだった。
「アビドス家が没落したのは、勝手に向こうが力を失ったからだ。我が万城目家が裏で手を回したなどと噂されているらしいが、天に誓ってそんなことはない」
シュンは相変わらず抜き身の刃のように鋭い視線をダイキに向ける。
確かに今のダイキの言い方では万城目家がアビドス家の地位を奪ったと言っているように聞こえる。シュンが怒るのも無理はない。
ダイキは「やぶ蛇だったか」と舌を出すが―――
(いや、たぶん『わざと』だな。この人、万城目って人が近くにいるのが分かっててわざとこんな話をしていたんだ)
ユーイはそう睨んだ。
どうやらこの二人はライバルと言うに近い関係らしい。
「もう、こんな時に何を言い争ってるのさ」
睨むシュン、飄々としているダイキ。そんな二人の間に入ったのは丸藤カケルだった。
見るとカケルだけではない。
天上院アスナ、十六夜アキラ、そして影丸ユウリ。
そこには生徒会メンバーが集結していた。
「うお、生徒会の人達だ」
「ホントだ、すげーオーラ」
「三女神が揃ってるぞ、マジで美人だな」
新入生達から次々に声が上がるが、逆に生徒会メンバーの威圧感に押され輪は崩れた。少しの間に生徒会メンバーとユーイ達四人を残して他の新入生は離れてしまう。まるでモーゼの海割りのようだ。
「去年の入学試験で首席合格したのは、この万城目くんだ」
生徒会メンバーを引き連れたユウリがゆっくりとユーイを見る。
「そして、そのことが万城目家の七星候入りの決定打になったのはすでに周知の事実。大方、シクス・タイタンの狙いはそれだったのでしょう」
言うユウリに、おずおずとリュウカが訊く。
「つまりシクスくんは、入学試験に首席合格することでタイタン家を復権させようとしていたということですか?そしてそれが叶わなったから、ここで早乙女くんを倒して力を示そうと・・・?」
「たぶんね。アカデミアに政治を持ち込むなんて無粋だけれど、人には誰しも背負うものがあって当たり前。それ自体は誰にも責められるものではないわ。むしろその『意地』という強い意思は決闘者をより強くする。今は彼の闘いを観させてもらいましょう」
ユウリはそう言って視線をシクス達へと移す。
それを追って皆が二人のデュエルへと再び注意を向けたが、そんな中でユーイだけはユウリの姿から目を逸らせずにいた。
(この声は・・・)
― ― ― ― ― ― ― ― ―
使用カード
《暴走召喚師アレイスター》
リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/魔法使い族/攻1800
【リンクマーカー:左下/右下】
種族と属性が異なるモンスター2体
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「召喚師アレイスター」として扱う。
(2):このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、融合モンスターが融合召喚された場合に発動できる。手札を1枚選んで捨て、デッキから「召喚魔術」または「法の聖典」1枚を手札に加える。
(3):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。 デッキから「魔法名-「大いなる獣」」1枚を手札に加える。
《召喚魔術》
通常魔法
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。「召喚獣」融合モンスターを融合召喚する場合、自分フィールド及び自分・相手の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。
(2):このカードが墓地に存在する場合、除外されている自分の「召喚師アレイスター」1体を対象として発動できる。墓地のこのカードをデッキに戻し、対象のモンスターを手札に加える。
《召喚獣コキュートス》
融合・効果モンスター
星6/水属性/ドラゴン族/攻1800/守2900
「召喚師アレイスター」+水属性モンスター (1):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(2):このカードは表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う。
《おろかな埋葬》
通常魔法(制限カード)
(1):デッキからモンスター1体を墓地へ送る。
《トリック・デーモン》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守 0
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが効果で墓地へ送られた場合、 または戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「トリック・デーモン」以外の「デーモン」カード1枚を手札に加える。
《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守2000
(1):このカードはリリースなしで召喚できる。 (2):このカードの(1)の方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になり、エンドフェイズに破壊される。
(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。
(4):1ターンに1度、自分の手札・墓地の「デーモン」カード1枚を除外し、 フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
《デーモンとの駆け引き》
速攻魔法
レベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地へ送られたターンに発動する事ができる。自分の手札またはデッキから「バーサーク・デッド・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
《バーサーク・デッド・ドラゴン》
効果モンスター
星8/闇属性/アンデット族/攻3500/守 0
このカードは「デーモンとの駆け引き」の効果でのみ特殊召喚が可能。
相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃が可能。
自分のターンのエンドフェイズ毎にこのカードの攻撃力は500ポイントダウンする。
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