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10:入学試験終了 作:天
デュエルの勝敗が決したことで、フィールドから《ブリッツ・マジシャン》や《開闢の騎士》の姿が消えていく。
《開闢の騎士》は役目を果たしたことにホッとした顔をし、《ブリッツ・マジシャン》は明るく『バイバ~イ』と手を振りながら消えていった。
と、試合を観ていたコート下の受験生や観覧席から大きな歓声が上がった。
皆、まさか一受験生が『アカデミアの魔女』に勝つとは思っていなかったのだろう。一様に驚きを持ってその結果を受け止めていた。
デュエルに敗れたクローディアがユーイに歩み寄る。
「まずはおめでとうと言わせてもらうノネ。君が今期の合格者第一号なノネ」
デュエルには負けたにも関わらずクローディアに疲労の色も恥じる雰囲気もない。むしろ思い通りに事が運んだような余裕が見える。
「これがあんたの望んだ結果なのか?」
「何のことなノネ?」
意外な歓声に少し戸惑いながらもユーイはクローディアの心中を計ろうとするが、彼女はとぼける。
「それよりもこの歓声に応えてあげたらどうなノネ? みんな君の健闘を讃えているノネ」
言われて、少し躊躇はあったがユーイは手を上げて応えた。歓声はますます大きくなっていく。
「今はとりあえずこの勝利を素直に喜ぶと良いノネ。大変なのはこれからなのだから・・・」
未だイマイチ納得いかないという顔のユーイを残し、クローディアはコートを下りていく。
そこでシュンが何か言いたげにしていたが、それにも関わらずクローディアは出口に向かう。
しかしその出口で待ち構えていた人物までは無視できなかった。
その姿を認めてクローディアは「フフフ」と微笑む。
「何か可笑しいですか、クローディア先生?」
響ヒスイは厳しい視線をクローディアに向ける。
「それとも、元〝錐国宮廷決闘者・執行者No.7『戦車(チャリオッツ)』〟のメディチ執行官とお呼びした方が宜しいか?」
クローディアは笑みを消したりはしない。
しかしヒスイがその名を告げると、目尻をピクリと動かした。
「流石は響先生、博識でいらっしゃるノネ。ずいぶんと古い名前をご存知なノネ」
笑みを消すどころかますます深めて答える。
「さっき武藤ユーイにも言ったけれど、狙い通りに事が運んだなら自然と笑みが浮かぶものなノネ」
「それはこの茶番の話ですか?」
挑発と言われても仕方ないクローディアの煽り文句に、自然とヒスイの言葉も強くなる。
「こんな茶番を演じなければ、ユーイが試験に落ちるとでもお思いでしたか?」
ヒスイから見ても、クローディアの真の実力はあんなものではないはずだった。彼女が本気だったなら、ユーイがどんな奇策に出たとしても万が一にも勝ち目はなかっただろう。
であれば、クローディアは敢えて『勝ったら合格』という誓約をしてデュエルを行い、わざと負けることでユーイを合格させたように見える。そんなものユーイに対する侮辱に他ならない。茶番という表現でも余りあるというものだ。
ヒスイのその静かな剣幕に、クローディアはため息をつく。
「普通に通ってもらっても意味がないノネ。ワタシと闘って合格を勝ち取るくらいでなければ、この先の闘いを勝ち抜く見込みはないノネ」
その返答の意味するところが分からず、ヒスイは訝る。
「この先の・・・? 貴女は一体何の話を―――」
「一つ忠告するノネ」
ヒスイの言葉を遮るようにクローディアは人差し指を立てた。
「貴女は武藤ユーイに対して過保護すぎるノネ。親の過保護は得てして子の成長を妨げるものなノネ」
「そんなこと――――」
ない、とは言えなかった。それはヒスイ自身も気付いていたことだったからだ。
「『アカデミアの魔女』らしく、もう一つ予言をしてあげるノネ。近い将来、このアカデミアで何らかの事が起きるノネ。そしてその中心には必ず武藤ユーイがいることになるノネ」
「――――!」
「その時、彼を守れるのは貴女ではなく、『彼自身の力』なノネ」
これ以上話すことはないとばかりに、クローディアはヒスイの横を過ぎていく。
振り向いてヒスイは最後に問う。
「貴女は一体ここで何をしようとしているんですか!?」
しかし彼女はそれに答えることはなく、会場を後にして行った。
残されたヒスイは一抹の不安だけを植え付けられ、奥歯を噛み締める。
(一体ユーイに何をするつもりかは知らないが、ユーイは私が守ってみせる。この命に代えてもッ・・・!)
1年前にしたのと同じ決意をもう一度その胸に深く刻み、ヒスイは決然と地を踏みしめた。
・
・
・
・
クローディアが会場を去っていくのを見送ると、シュンはおもむろに観覧席を仰いだ。
視線の先にはユウリ達の姿がある。
「面白いデュエルだったわね」
そう言って立ち上がるユウリにならいその場の皆が席を立つ。
しかし返答は誰からもない。
(それで良い・・・)とユウリは小さく微笑む。
入学試験合格を掛けて行ったデュエルに勝った時点で、すでにユーイはアカデミアの新入生となった。
それはユウリ達の可愛い後輩であると同時にライバルとなったことを意味している。これから互いに切磋琢磨し凌ぎを削ることになるライバルだ。しかもあのクローディアを下したとなれば、それは強大な壁となって自身の前に立ち塞がるかもしれない。アカデミアのトップに立つ生徒会メンバーにとっては『面白い』では済まない相手だ。それが分かっているからこそ皆一様に厳しい表情を浮かべているのだった。
(早乙女レイヤに武藤ユーイ・・・。今年も楽しい学園生活になりそうね)
未だコート上でどうすればいいのか戸惑っているユーイに視線を送り、ユウリは他の生徒会メンバーを引き連れてその場を後にした。
・
・
・
・
こうしてデュエル・アカデミアに関わる者達に様々な想いを抱かせながら、今期の入学試験は概ね滞りなく幕を下ろしたのだった。
《開闢の騎士》は役目を果たしたことにホッとした顔をし、《ブリッツ・マジシャン》は明るく『バイバ~イ』と手を振りながら消えていった。
と、試合を観ていたコート下の受験生や観覧席から大きな歓声が上がった。
皆、まさか一受験生が『アカデミアの魔女』に勝つとは思っていなかったのだろう。一様に驚きを持ってその結果を受け止めていた。
デュエルに敗れたクローディアがユーイに歩み寄る。
「まずはおめでとうと言わせてもらうノネ。君が今期の合格者第一号なノネ」
デュエルには負けたにも関わらずクローディアに疲労の色も恥じる雰囲気もない。むしろ思い通りに事が運んだような余裕が見える。
「これがあんたの望んだ結果なのか?」
「何のことなノネ?」
意外な歓声に少し戸惑いながらもユーイはクローディアの心中を計ろうとするが、彼女はとぼける。
「それよりもこの歓声に応えてあげたらどうなノネ? みんな君の健闘を讃えているノネ」
言われて、少し躊躇はあったがユーイは手を上げて応えた。歓声はますます大きくなっていく。
「今はとりあえずこの勝利を素直に喜ぶと良いノネ。大変なのはこれからなのだから・・・」
未だイマイチ納得いかないという顔のユーイを残し、クローディアはコートを下りていく。
そこでシュンが何か言いたげにしていたが、それにも関わらずクローディアは出口に向かう。
しかしその出口で待ち構えていた人物までは無視できなかった。
その姿を認めてクローディアは「フフフ」と微笑む。
「何か可笑しいですか、クローディア先生?」
響ヒスイは厳しい視線をクローディアに向ける。
「それとも、元〝錐国宮廷決闘者・執行者No.7『戦車(チャリオッツ)』〟のメディチ執行官とお呼びした方が宜しいか?」
クローディアは笑みを消したりはしない。
しかしヒスイがその名を告げると、目尻をピクリと動かした。
「流石は響先生、博識でいらっしゃるノネ。ずいぶんと古い名前をご存知なノネ」
笑みを消すどころかますます深めて答える。
「さっき武藤ユーイにも言ったけれど、狙い通りに事が運んだなら自然と笑みが浮かぶものなノネ」
「それはこの茶番の話ですか?」
挑発と言われても仕方ないクローディアの煽り文句に、自然とヒスイの言葉も強くなる。
「こんな茶番を演じなければ、ユーイが試験に落ちるとでもお思いでしたか?」
ヒスイから見ても、クローディアの真の実力はあんなものではないはずだった。彼女が本気だったなら、ユーイがどんな奇策に出たとしても万が一にも勝ち目はなかっただろう。
であれば、クローディアは敢えて『勝ったら合格』という誓約をしてデュエルを行い、わざと負けることでユーイを合格させたように見える。そんなものユーイに対する侮辱に他ならない。茶番という表現でも余りあるというものだ。
ヒスイのその静かな剣幕に、クローディアはため息をつく。
「普通に通ってもらっても意味がないノネ。ワタシと闘って合格を勝ち取るくらいでなければ、この先の闘いを勝ち抜く見込みはないノネ」
その返答の意味するところが分からず、ヒスイは訝る。
「この先の・・・? 貴女は一体何の話を―――」
「一つ忠告するノネ」
ヒスイの言葉を遮るようにクローディアは人差し指を立てた。
「貴女は武藤ユーイに対して過保護すぎるノネ。親の過保護は得てして子の成長を妨げるものなノネ」
「そんなこと――――」
ない、とは言えなかった。それはヒスイ自身も気付いていたことだったからだ。
「『アカデミアの魔女』らしく、もう一つ予言をしてあげるノネ。近い将来、このアカデミアで何らかの事が起きるノネ。そしてその中心には必ず武藤ユーイがいることになるノネ」
「――――!」
「その時、彼を守れるのは貴女ではなく、『彼自身の力』なノネ」
これ以上話すことはないとばかりに、クローディアはヒスイの横を過ぎていく。
振り向いてヒスイは最後に問う。
「貴女は一体ここで何をしようとしているんですか!?」
しかし彼女はそれに答えることはなく、会場を後にして行った。
残されたヒスイは一抹の不安だけを植え付けられ、奥歯を噛み締める。
(一体ユーイに何をするつもりかは知らないが、ユーイは私が守ってみせる。この命に代えてもッ・・・!)
1年前にしたのと同じ決意をもう一度その胸に深く刻み、ヒスイは決然と地を踏みしめた。
・
・
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クローディアが会場を去っていくのを見送ると、シュンはおもむろに観覧席を仰いだ。
視線の先にはユウリ達の姿がある。
「面白いデュエルだったわね」
そう言って立ち上がるユウリにならいその場の皆が席を立つ。
しかし返答は誰からもない。
(それで良い・・・)とユウリは小さく微笑む。
入学試験合格を掛けて行ったデュエルに勝った時点で、すでにユーイはアカデミアの新入生となった。
それはユウリ達の可愛い後輩であると同時にライバルとなったことを意味している。これから互いに切磋琢磨し凌ぎを削ることになるライバルだ。しかもあのクローディアを下したとなれば、それは強大な壁となって自身の前に立ち塞がるかもしれない。アカデミアのトップに立つ生徒会メンバーにとっては『面白い』では済まない相手だ。それが分かっているからこそ皆一様に厳しい表情を浮かべているのだった。
(早乙女レイヤに武藤ユーイ・・・。今年も楽しい学園生活になりそうね)
未だコート上でどうすればいいのか戸惑っているユーイに視線を送り、ユウリは他の生徒会メンバーを引き連れてその場を後にした。
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こうしてデュエル・アカデミアに関わる者達に様々な想いを抱かせながら、今期の入学試験は概ね滞りなく幕を下ろしたのだった。
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
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まぁクローディア先生が何か不穏なことを言っていましたが、今はまだ気にしない気にしない♪
次回は『決闘者ファイル♯2』を投稿予定です。え、前回の予告? スマン、ありゃウソだった
(2018-01-30 12:26)