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17:No.1ルーキー 作:天
集まっているのは顔ぶれからして新入生達のようだった。
皆、何か興奮したような顔でこの騒ぎを楽しんでいる。
「こりゃ、何の騒ぎだドン!?」
「ここからじゃあ分からない。中に行ってみよう」
ユーイとケンザンは人だかりを掻き分けて騒ぎの中心へと進んでいく。
そこにいたのは二人の人物だった。
「あれは・・・」
それは見覚えのある顔だった。
少しウェーブのかかった金髪の少年。着ているのは『オベリスク・ブルー』の制服だ。
以前、街でチヨに絡んでいた貴族の息子。一度デュエルした相手の顔はそう忘れられるものではない。
「シクス・タイタン!やっぱりあいつも受かってたのか!」
シクスの魔力量はユーイよりずっと上だった。性格はともかく、デュエルの技量もなかなか。
確かデュエルした時もアカデミアの入学試験を受けると言っていたし、きっと受かっていると思っていた。
「ユーイの知り合いドン?」
「まぁ知り合いと言えば知り合いかな」
「もう一人の奴は・・・」
輪の中心にいるもう一人に注意を向けようとして―――しかし先に声をかけられる。
「早乙女レイヤ。今年度の首席新入生らしいですよ」
声の主を見ると、またも見知った顔だった。
小柄な二人の人物がこちらに手を振っている。
「リュウア!リュウカ!」
ユーイが気付くと、リュウカはにっこり微笑み、リュウカはピースしてにっかりと笑う。
リュウアとリュウカ。『杖の国』出身のこの双子の兄妹もケンザン同様、入学試験の時に知り合った二人だ。顔立ちはそっくりで見分けが付けにくいが、髪を一つ結びにしているのが兄のリュウアで二つ結びにしている方が妹のリュウカだった。
「噂は聞いてるジャン。実技試験ではご活躍だったらしいジャン」
「これからは同級生ですね。仲良くして下さい」
リュウアが軽口を言い、リュウカが丁寧にお辞儀する。
ケンザンもそれに返す形でにっかりと笑む。
「俺はケンザン。よろしく頼むドン」
リュウア、リュウカもそれぞれの反応を返す。
「お前、語尾が変ジャン。おもしれー」
「よろしくお願いします。ケンザンくん」
リュウアとケンザンはそれから互いの語尾について何か言い合いをしていたが、割愛する。すぐに親しくなれたみたいで良かった良かった。
さて、シクスと対峙しているもう一人の人物へと視線を向ける。
それは先ほど出会ったばかりの方向音痴のぼんやりイケメンだった。相変わらず無表情を顔に貼り付けてぼうっと突っ立っている。
「首席ってのは、入学試験を一番の成績で合格したってことだよな?」
未だ言い合いを続けるケンザンとリュウアを尻目に、隣のリュウカに訊く。
「はい。何でもぶっちぎりの成績だったらしいですよ。新入生代表で挨拶されてましたけど、ユーイくん入学式に出てなかったんですか?」
「ちょっと体調不良でね。それよりその首席新入生がこんなところで何を?」
あのぼんやりイケメンがまさか首席入学者だったとは驚きだ。
だがそんな彼がこんなところでシクス相手に何をやっているんだろう。入学式終了直後にこんな中庭で何か行われるなんてことは聞かされていない。
「『決闘』ですよ。デュエルを漢字にした決闘ではなく、互いの誇りと意地をかけた『決闘』です」
「『決闘』?」
「仕掛けたのは、あちらの金髪の方です。名前は確か・・・」
言いよどむリュウカに助け船を出そうとするが、それよりも早く答えが聞こえた。
「彼はシクス・タイタン。七星候の一角・タイタン家の御曹司さ」
振り返ると短い黒髪を逆立てた青年が立っていた。こちらも入学試験の時に見た顔だ。
「『ラー・イエロー』2年の三沢ダイキだ。よろしく」
確か彼もカケルと同じく生徒会のメンバーだったはずだ。入学式後にこの騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。
「デュエルディスクを配られた途端にデュエルとは、血気盛んだな今年の新入生は」
「止めなくて良いんですか?」
「俺も一応生徒会メンバーだからな、不正な行為があったんなら止めなくてはならないだろうが、見たところこれは正当な決闘のようだ。不当な手順で仕掛けられたデュエルでない限り、いくら生徒会と言っても他人のデュエルに手出しはできんさ。デュエルを挑むのは決闘者の正当な権利だからな」
さすがはデュエル・アカデミアだ。これだけの騒ぎにも関わらず、それがデュエルによるものならば静観の構え。ダイキの言葉には決闘者としての矜持が見える。
ユーイもリュウカもその言葉に納得し、そのデュエルの成り行きを見守ることにした。
レイヤとシクスを取り囲むオーディエンスのボルテージはそうしている間にも高まっている。
なにせ新入生にとっては入学後初のデュエルだ。しかもそれが首席入学者と七星候の御曹司の対戦となれば、そのデュエルへの期待は大きい。
その様子を眺めながら、シクスが口を開いた。
「まさかこんなに大事になるとはね。自然と人々の注目を集めてしまうのは高貴なる家柄に生まれた運命(さだめ)かな」
まるでミュージカルでも演じているかのような大仰な身振り。
対するレイヤはそれを無表情のままぼんやりと見ている。
「キミに・・・決闘を挑まれる・・・理由がない・・・」
小さな声ではあるが、それを問うレイヤ。
さもありなんとシクスは頷く。
「『納得』だよ、早乙女レイヤ」
「『納・・・得』?」
「キミが首席合格であることに異議を唱えるつもりはないさ。アカデミアの判断基準ではそうだったのだろう。それにいちいち文句をつけるほど、ボクは矮小な人間ではない」
集まった観衆に聞こえるようシクスは声を張る。
「だけどね、それがそのままキミの実力だとは思えないんだよ。アカデミアの判断基準はあくまで人間の裁量だからね。キミは平民だろう?このままでは貴族であるボク達を差し置いて首席を取ったことに疑問を抱く者も少なくないはず。だからキミには是非ボク達を『納得』させるだけの力を示してもらいたいのさ。『納得』するってのは大事だからね。そこでキミにその機会を設けさせてもらったのさ。ボクとデュエルで闘う機会をね」
シクスの演説の間もレイヤは聞こえているのかいないのか全く表情を変えない。
しかしのそのそと懐からデッキを取り出しデュエルディスクに装填した。
「・・・それは、このデュエルを受けるという意思表示かな?」
シクスの確認に、レイヤはこくりと頷く。
「良いね。どちらが本当のNo.1ルーキーか決めるとし・・・ん?」
意気揚々とデュエルディスクを構えようとしたシクスの動きが止まる。レイヤの視線が自分ではない誰かを捉えていることに気付いたからだ。
それを追うと、そこにはユーイ達がいた。
シクスは一瞬表情を歪めたが、すぐに取り繕う。
「これはこれは、まぐれで合格を決めたと噂の平民・武藤ユーイくんじゃあないか!」
親しげながら明らかに嘲りを含んだ物言いにリュウア達がむっとする。
入学試験の時も似たような状況があったが、その時もリュウア達は不快感をあらわにしていた。『杖の国』には行ったことがないが、そこにはこの手の差別意識はないのだろうか。
「『オシリスレッド』か・・・。ドロップアウト寸前のキミにはお似合いのチームだね」
ユーイの制服を見て鼻を鳴らすシクスに、辛抱のないリュウアが食ってかかろうとする。
しかしユーイはそれを制す。
「よせ、リュウア。彼の言ってることは間違いじゃあない。もう一度クローディア先生と闘えと言われたって、今の俺じゃあ逆立ちしたって百回に一回も勝てやしないだろう。あれは本当にまぐれで勝利を拾っただけさ」
それは謙遜ではなく本心だ。
ユーイとクローディアとの実力の差は比べるのもおこがましいほどだろう。あの一勝はまさに奇跡の一勝だったのだ。
もっとも決闘者によっては「デュエルに偶然はない」と主張する者もいるようだが。
「フン、まぁいいさ。このデュエルで本当のNo.1ルーキーはこのボクであることを証明してあげるよ。キミはボクの華々しいデビュー戦をそこで歯噛みしながら観ているがいい!」
「なんなんだ、あいつ!すげームカつくジャン!」
ユーイ達など取るに足らないとばかりにシクスは彼らと関わるのを見限り、その態度にリュウアはますます頭から蒸気を上げる。
「こうなりゃオイラはあっちのイケメンにいちゃんを応援するジャン!」
本当にリュウアはリュウカと正反対の性格だ。直情的というか短絡的というか。
しかしシクスの力は一度デュエルしているユーイには分かっている。性格は確かに悪いがシクスの魔力量は新入生の中でも屈指だろう。
対するレイヤの実力は未知数だが、首席合格はまさか伊達ではあるまい。
(面白いデュエルになりそうだ!)
ユーイは実力者同士のデュエルにわくわくしていた。
レイヤは表情を変えることなく、そんなユーイを見つめていた。
「そうだ!ただデュエルだけしてもつまらない。何か賭けようじゃないか」
シクスがそんなことを言い出す。
レイヤは興味なさげに聞き流しているようだ。
「例えば・・・ボクが勝ったら、1年間キミがボクの下僕になる・・・とかね」
「いいよ・・・」
レイヤはそんなシクスの申し出を即答で了承した。
意外な反応に目を丸くする。
「じゃあ・・・私が勝ったら・・・キミは1年間・・・貴族としての特権を行使できない・・・というのは・・・どう?もちろん・・・別邸も使えないから・・・寮に入ってもらう・・・」
レイヤはそんなことを提案する。
これまでの印象的には無害な奴かと思っていたが、なかなかどうして強かで嫌らしい申し出だ。リュウアに至っては「あいつ、なかなかやるジャン!」と称賛しているくらいだ。
シクスは歯をぎりりと噛む。
「このボクが・・・他の平民と一緒に寮で生活する・・・だと・・・!」
それは貴族としてのプライドが高いシクスにとって耐え難い屈辱だろう。
1年間下僕となる、というシクスの申し出に充分見合う交換条件だ。
「・・・良いだろう、その話、乗ってやるよ!」
シクスがデュエルディスクを掲げる。
レイヤもそれに応じた。
「「デュエル!!」」
シクスとレイヤがそれぞれデッキから初手を引き抜く。
シクスはその手札を見てほくそ笑む。
抜群に良い手札というわけではないが、あと1ピース揃えば強力なモンスターを呼ぶことができる。
「先攻はもらう!ボクは《シャドウナイトデーモン》を召喚ッ!」
機先を制したシクスが手札からモンスターを召喚する。
シャドウナイトデーモン(星4/ATK2000)
現れたのは金色の鎧を着た騎士のような悪魔だ。《シャドウナイトデーモン》は悪魔族にしては珍しい風属性。風のように素早い剣技を操り、高い攻撃力を誇る。
「《シャドウナイトデーモン》の攻撃力は下級モンスターとしては最高クラス。だがその攻撃力を維持するにはスタンバイフェイズ毎にライフコストが必要になる。しかし―――」
《シャドウナイトデーモン》の維持コストは自分のスタンバイフェイズ毎に900ポイントと決して安い値ではない。普通ならばそう簡単にはデッキに組み込めないモンスターだ。
しかしシクスのデッキにはそれを可能にするカードが用意されていた。
「フィールド魔法《万魔殿(パンディモニウム)―悪魔の巣窟―》を発動ッ!」
シクスがカードを発動すると、それまでただの中庭だった辺りの景色が一変する。
巨大生物の骨でできたような柱や床が出現し、まるで魔王の玉座とでもいうような雰囲気になる。
「《万魔殿―悪魔の巣窟―》は【デーモン】達の居城ッ!この中では【デーモン】モンスター達のライフコストは支払わなくてよくなるッ!まさに地獄の一丁目だッ!」
シクスの言葉通り、フィールドが《万魔殿》へと変わったことにより《シャドウナイトデーモン》の放つ威圧感が増したような気がする。
シクスの操る【デーモン】達にとっては、まさにホームグラウンドというわけだ。
「カードを1枚伏せて、ボクのターンは終了だッ!」
これでシクスのフィールドは、攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》、そのライフコストをなくすフィールド魔法《万魔殿》、そして伏せカードが1枚という構成となった。
確かに攻撃力2000という数値は、単独ならばほとんどの下級モンスターに打ち勝てる強さではある。しかし展開としてはスタンダード過ぎて少々味気ないものだ。シクスはまだその真価を見せてはいないということだろう。
「私のターン・・・ドロー・・・」
レイヤがカードをドローする。
それを手札に加えるのをシクスはじっと見つめていた。
(『早乙女』などという家名は聞いたことがない。どこの馬の骨かも分からぬ下民のくせにどうやって首席を取ったか知らないが、このデュエルでその化けの皮をひっぺがしてくれる・・・!)
先ほどは、アカデミアの判断に異議などないと言っていたシクスだったが、その実はらわたが煮えくるくらいの怒りを秘めていた。
(今年度、ボク以上の家柄を持つ受験生はいなかった!ならば、なぜ首席合格者がボクじゃあない!?ましてやこんな下民風情がこのボクを差し置いて首席になるなど、断じて認められるかッ!!)
シクスはその怒りを心中に秘めきれず、声を張り上げる。
「さぁ、キミのターンだよ!早乙女レイヤ!首席合格とやらの力、見せてくれないかッ!?」
挑発するシクスを見て、レイヤは初めて薄く笑う。
「・・・良かろう」
(・・・なんだ?)
シクスのうなじを何かがざわりと走った。
(雰囲気が・・・変わった?)
これまで闘志らしきものはおろか、やる気さえあるのかないのかはっきりとは分からなかったレイヤから、突如静かなる闘気が溢れ出す。
レイヤ自身の見た目にそう大きな変化はない。笑みも口元がそういう形に歪んでいるだけ。しかし彼が纏う雰囲気は確かに一変していた。
まるで遥かな高みから見下ろされているかのような重圧。見た目はシクスとそう変わらない歳の青年なのに、老練な達人を前にしているかのような圧倒的な存在感を感じる。
「こ、虚仮脅しだ・・・ッ!こんなものッ!」
すくみそうになる自分を鼓舞するかのようにシクスが言葉を荒げる。動揺しているのは一目瞭然だ。
レイヤはシクスに構うことなく手札からカードを発動する。
「私もフィールド魔法を発動させてもらう」
そう言ってレイヤがカードを発動すると、《万魔殿》と化していたフィールドがさらに変化する。
赤く妖しい光を放つ魔法陣が地面に浮かび上がった。
「こ、これは・・・!?」
「フィールド魔法《暴走魔法陣》。このカードが発動した時、私はデッキから《召喚師アレイスター》を手札に加えることができる」
レイヤはデッキからモンスターを選ぶと、すぐにそのカードをデュエルディスクにセットする。
「そしてその《召喚師アレイスター》を召喚。さらに《召喚師アレイスター》が召喚に成功した時、デッキから魔法カード《召喚魔術》を手札に加える」
レイヤのフィールドに杖と魔導書らしき本を手にした白フードの青年が姿を現した。
召喚師アレイスター(星4/ATK1000)
《召喚師アレイスター》が魔導書をハラハラと捲り、その中からカードを1枚取り出すとレイヤへと渡す。おそらくそれが《召喚魔術》という魔法カードなのだろう。
「そしてフィールドに《召喚師アレイスター》が存在していることで、私は手札から《召喚隷獣ウンディナ》を特殊召喚する」
《召喚師アレイスター》の隣に、宙に浮く水の球が現れた。それはやがて形を変え、女の子の姿となる。
召喚隷獣ウンディナ(星2/ATK800)
【召喚隷獣】は《召喚師アレイスター》の操る使い魔のような存在である。よってフィールドに《召喚師アレイスター》が存在する時、手札から特殊召喚することができる共通効果を持っている。
その中で水属性を司るのが《召喚隷獣ウンディナ》のようだ。
続け様にモンスターを召喚することに成功したレイヤにシクスは憎々しげな視線を向ける。
「と、突然ペラペラと喋り出したかと思えば、貧弱なモンスターを次々と・・・。そんなモンスター共でボクの《シャドウナイトデーモン》を倒せるとでも――――」
「キミは武藤ユーイとクローディア・デ・メディチのデュエルを見たのか?」
「――――は?」
自分の言葉を遮って不意に投げ掛けられたその問いに、シクスは口を開けたまま呆ける。
しかしレイヤはそんなことはお構い無しだ。
「武藤ユーイのリンク召喚を見たのかと訊いている」
レイヤが何を聞きたいのかは分からないが、『リンク召喚』―――その言葉にシクスは口を閉じぎりりと奥歯を軋ませる。
再び忌々しい記憶が甦ってきた。
観衆の輪の中にいるユーイをぎろりと睨むが、当のユーイは訝るだけ。
「・・・確かにその二人のデュエルは見た。その・・・リンク召喚とやらもね。しかしそれが何だと言うんだ!?」
正確には、ただ見ただけではなくその威力も一度味わっている。『リンク召喚』という言葉の響きだけで胸糞が悪くなるほど、しっかりと胸に刻まれている。
だがレイヤはそんなことは露知らず、またも薄く笑んだ。
「そうか。ならばキミに見比べてもらうことにしよう。武藤ユーイのリンク召喚と『私のリンク召喚』、どちらがより優れているのかをッ!」
レイヤは相手の反応を待つことなく、手を掲げる。
「開け!正しき道を照らすサーキット!!」
レイヤの掲げた手が輝き、上空にリンク召喚のゲートが出現した。
「「なにッ!?」」
シクスと、そして観戦していたユーイの声が揃う。
上空に出現したゲートは確かにユーイが操るものと同じものに見える。
ただ違うのは、ほんのり色付いている矢印の位置と数。レイヤの出したゲートには左下と右下の二つの矢印が薄く光を発していた。
「アローヘッドを確認した。召喚条件は、種族と属性の異なるモンスター2体。私は《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》をリンクマーカーにセットする」
レイヤの言葉に応じて、フィールドの《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》がそれぞれ黒と青の粒子となって指定された矢印へと吸い込まれていく。
「サーキットコンバイン!現れろ、リンク2《暴走召喚師アレイスター》!!」
ゲートから飛び出してきたのは、異形の姿と化した《召喚師アレイスター》だった。
頭からは二本の角が生え、左腕は悪魔か獣のそれに変わっている。背中には元々持っていた杖が刺さっており、以前の理知的な雰囲気は消え禍々しい赤いオーラを纏っている。
「こ、これは・・・」
まさかの事態にシクスが愕然とする。いつかの悪夢が再び目の前で繰り広げられたのだ。しかも今度は使い手を変えて。
「リンク召喚を使えるのは・・・武藤ユーイだけではないということだ」
早乙女レイヤは無感情の瞳を妖しく光らせた。
― ― ― ― ― ― ―
使用カード
《シャドウナイトデーモン》
効果モンスター
星4/風属性/悪魔族/攻2000/守1600
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に 900ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが相手プレイヤーに与えるダメージは半分になる。
《万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-》
フィールド魔法
「デーモン」という名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。 戦闘以外で「デーモン」という名のついたモンスターカードが破壊されて墓地へ送られた時、 そのカードのレベル未満の「デーモン」という名のついたモンスターカードを デッキから1枚選択して手札に加える事ができる。
《暴走魔法陣》
フィールド魔法
「暴走魔法陣」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「召喚師アレイスター」1体を手札に加える事ができる。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
《召喚師アレイスター》
効果モンスター(制限カード)
星4/闇属性/魔法使い族/攻1000/守1800
(1):このカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで1000アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが召喚・リバースした場合に発動できる。 デッキから「召喚魔術」1枚を手札に加える。
《召喚隷獣ウンディナ》
効果モンスター(オリジナル)
星2/水属性/水族/攻 800/守 400
(1):このカードはフィールドに「召喚師アレイスター」が存在する時、手札から特殊召喚できる。
(2):このカードがフィールド・墓地から除外された場合に発動できる。自分フィールドの融合モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。
皆、何か興奮したような顔でこの騒ぎを楽しんでいる。
「こりゃ、何の騒ぎだドン!?」
「ここからじゃあ分からない。中に行ってみよう」
ユーイとケンザンは人だかりを掻き分けて騒ぎの中心へと進んでいく。
そこにいたのは二人の人物だった。
「あれは・・・」
それは見覚えのある顔だった。
少しウェーブのかかった金髪の少年。着ているのは『オベリスク・ブルー』の制服だ。
以前、街でチヨに絡んでいた貴族の息子。一度デュエルした相手の顔はそう忘れられるものではない。
「シクス・タイタン!やっぱりあいつも受かってたのか!」
シクスの魔力量はユーイよりずっと上だった。性格はともかく、デュエルの技量もなかなか。
確かデュエルした時もアカデミアの入学試験を受けると言っていたし、きっと受かっていると思っていた。
「ユーイの知り合いドン?」
「まぁ知り合いと言えば知り合いかな」
「もう一人の奴は・・・」
輪の中心にいるもう一人に注意を向けようとして―――しかし先に声をかけられる。
「早乙女レイヤ。今年度の首席新入生らしいですよ」
声の主を見ると、またも見知った顔だった。
小柄な二人の人物がこちらに手を振っている。
「リュウア!リュウカ!」
ユーイが気付くと、リュウカはにっこり微笑み、リュウカはピースしてにっかりと笑う。
リュウアとリュウカ。『杖の国』出身のこの双子の兄妹もケンザン同様、入学試験の時に知り合った二人だ。顔立ちはそっくりで見分けが付けにくいが、髪を一つ結びにしているのが兄のリュウアで二つ結びにしている方が妹のリュウカだった。
「噂は聞いてるジャン。実技試験ではご活躍だったらしいジャン」
「これからは同級生ですね。仲良くして下さい」
リュウアが軽口を言い、リュウカが丁寧にお辞儀する。
ケンザンもそれに返す形でにっかりと笑む。
「俺はケンザン。よろしく頼むドン」
リュウア、リュウカもそれぞれの反応を返す。
「お前、語尾が変ジャン。おもしれー」
「よろしくお願いします。ケンザンくん」
リュウアとケンザンはそれから互いの語尾について何か言い合いをしていたが、割愛する。すぐに親しくなれたみたいで良かった良かった。
さて、シクスと対峙しているもう一人の人物へと視線を向ける。
それは先ほど出会ったばかりの方向音痴のぼんやりイケメンだった。相変わらず無表情を顔に貼り付けてぼうっと突っ立っている。
「首席ってのは、入学試験を一番の成績で合格したってことだよな?」
未だ言い合いを続けるケンザンとリュウアを尻目に、隣のリュウカに訊く。
「はい。何でもぶっちぎりの成績だったらしいですよ。新入生代表で挨拶されてましたけど、ユーイくん入学式に出てなかったんですか?」
「ちょっと体調不良でね。それよりその首席新入生がこんなところで何を?」
あのぼんやりイケメンがまさか首席入学者だったとは驚きだ。
だがそんな彼がこんなところでシクス相手に何をやっているんだろう。入学式終了直後にこんな中庭で何か行われるなんてことは聞かされていない。
「『決闘』ですよ。デュエルを漢字にした決闘ではなく、互いの誇りと意地をかけた『決闘』です」
「『決闘』?」
「仕掛けたのは、あちらの金髪の方です。名前は確か・・・」
言いよどむリュウカに助け船を出そうとするが、それよりも早く答えが聞こえた。
「彼はシクス・タイタン。七星候の一角・タイタン家の御曹司さ」
振り返ると短い黒髪を逆立てた青年が立っていた。こちらも入学試験の時に見た顔だ。
「『ラー・イエロー』2年の三沢ダイキだ。よろしく」
確か彼もカケルと同じく生徒会のメンバーだったはずだ。入学式後にこの騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。
「デュエルディスクを配られた途端にデュエルとは、血気盛んだな今年の新入生は」
「止めなくて良いんですか?」
「俺も一応生徒会メンバーだからな、不正な行為があったんなら止めなくてはならないだろうが、見たところこれは正当な決闘のようだ。不当な手順で仕掛けられたデュエルでない限り、いくら生徒会と言っても他人のデュエルに手出しはできんさ。デュエルを挑むのは決闘者の正当な権利だからな」
さすがはデュエル・アカデミアだ。これだけの騒ぎにも関わらず、それがデュエルによるものならば静観の構え。ダイキの言葉には決闘者としての矜持が見える。
ユーイもリュウカもその言葉に納得し、そのデュエルの成り行きを見守ることにした。
レイヤとシクスを取り囲むオーディエンスのボルテージはそうしている間にも高まっている。
なにせ新入生にとっては入学後初のデュエルだ。しかもそれが首席入学者と七星候の御曹司の対戦となれば、そのデュエルへの期待は大きい。
その様子を眺めながら、シクスが口を開いた。
「まさかこんなに大事になるとはね。自然と人々の注目を集めてしまうのは高貴なる家柄に生まれた運命(さだめ)かな」
まるでミュージカルでも演じているかのような大仰な身振り。
対するレイヤはそれを無表情のままぼんやりと見ている。
「キミに・・・決闘を挑まれる・・・理由がない・・・」
小さな声ではあるが、それを問うレイヤ。
さもありなんとシクスは頷く。
「『納得』だよ、早乙女レイヤ」
「『納・・・得』?」
「キミが首席合格であることに異議を唱えるつもりはないさ。アカデミアの判断基準ではそうだったのだろう。それにいちいち文句をつけるほど、ボクは矮小な人間ではない」
集まった観衆に聞こえるようシクスは声を張る。
「だけどね、それがそのままキミの実力だとは思えないんだよ。アカデミアの判断基準はあくまで人間の裁量だからね。キミは平民だろう?このままでは貴族であるボク達を差し置いて首席を取ったことに疑問を抱く者も少なくないはず。だからキミには是非ボク達を『納得』させるだけの力を示してもらいたいのさ。『納得』するってのは大事だからね。そこでキミにその機会を設けさせてもらったのさ。ボクとデュエルで闘う機会をね」
シクスの演説の間もレイヤは聞こえているのかいないのか全く表情を変えない。
しかしのそのそと懐からデッキを取り出しデュエルディスクに装填した。
「・・・それは、このデュエルを受けるという意思表示かな?」
シクスの確認に、レイヤはこくりと頷く。
「良いね。どちらが本当のNo.1ルーキーか決めるとし・・・ん?」
意気揚々とデュエルディスクを構えようとしたシクスの動きが止まる。レイヤの視線が自分ではない誰かを捉えていることに気付いたからだ。
それを追うと、そこにはユーイ達がいた。
シクスは一瞬表情を歪めたが、すぐに取り繕う。
「これはこれは、まぐれで合格を決めたと噂の平民・武藤ユーイくんじゃあないか!」
親しげながら明らかに嘲りを含んだ物言いにリュウア達がむっとする。
入学試験の時も似たような状況があったが、その時もリュウア達は不快感をあらわにしていた。『杖の国』には行ったことがないが、そこにはこの手の差別意識はないのだろうか。
「『オシリスレッド』か・・・。ドロップアウト寸前のキミにはお似合いのチームだね」
ユーイの制服を見て鼻を鳴らすシクスに、辛抱のないリュウアが食ってかかろうとする。
しかしユーイはそれを制す。
「よせ、リュウア。彼の言ってることは間違いじゃあない。もう一度クローディア先生と闘えと言われたって、今の俺じゃあ逆立ちしたって百回に一回も勝てやしないだろう。あれは本当にまぐれで勝利を拾っただけさ」
それは謙遜ではなく本心だ。
ユーイとクローディアとの実力の差は比べるのもおこがましいほどだろう。あの一勝はまさに奇跡の一勝だったのだ。
もっとも決闘者によっては「デュエルに偶然はない」と主張する者もいるようだが。
「フン、まぁいいさ。このデュエルで本当のNo.1ルーキーはこのボクであることを証明してあげるよ。キミはボクの華々しいデビュー戦をそこで歯噛みしながら観ているがいい!」
「なんなんだ、あいつ!すげームカつくジャン!」
ユーイ達など取るに足らないとばかりにシクスは彼らと関わるのを見限り、その態度にリュウアはますます頭から蒸気を上げる。
「こうなりゃオイラはあっちのイケメンにいちゃんを応援するジャン!」
本当にリュウアはリュウカと正反対の性格だ。直情的というか短絡的というか。
しかしシクスの力は一度デュエルしているユーイには分かっている。性格は確かに悪いがシクスの魔力量は新入生の中でも屈指だろう。
対するレイヤの実力は未知数だが、首席合格はまさか伊達ではあるまい。
(面白いデュエルになりそうだ!)
ユーイは実力者同士のデュエルにわくわくしていた。
レイヤは表情を変えることなく、そんなユーイを見つめていた。
「そうだ!ただデュエルだけしてもつまらない。何か賭けようじゃないか」
シクスがそんなことを言い出す。
レイヤは興味なさげに聞き流しているようだ。
「例えば・・・ボクが勝ったら、1年間キミがボクの下僕になる・・・とかね」
「いいよ・・・」
レイヤはそんなシクスの申し出を即答で了承した。
意外な反応に目を丸くする。
「じゃあ・・・私が勝ったら・・・キミは1年間・・・貴族としての特権を行使できない・・・というのは・・・どう?もちろん・・・別邸も使えないから・・・寮に入ってもらう・・・」
レイヤはそんなことを提案する。
これまでの印象的には無害な奴かと思っていたが、なかなかどうして強かで嫌らしい申し出だ。リュウアに至っては「あいつ、なかなかやるジャン!」と称賛しているくらいだ。
シクスは歯をぎりりと噛む。
「このボクが・・・他の平民と一緒に寮で生活する・・・だと・・・!」
それは貴族としてのプライドが高いシクスにとって耐え難い屈辱だろう。
1年間下僕となる、というシクスの申し出に充分見合う交換条件だ。
「・・・良いだろう、その話、乗ってやるよ!」
シクスがデュエルディスクを掲げる。
レイヤもそれに応じた。
「「デュエル!!」」
シクスとレイヤがそれぞれデッキから初手を引き抜く。
シクスはその手札を見てほくそ笑む。
抜群に良い手札というわけではないが、あと1ピース揃えば強力なモンスターを呼ぶことができる。
「先攻はもらう!ボクは《シャドウナイトデーモン》を召喚ッ!」
機先を制したシクスが手札からモンスターを召喚する。
シャドウナイトデーモン(星4/ATK2000)
現れたのは金色の鎧を着た騎士のような悪魔だ。《シャドウナイトデーモン》は悪魔族にしては珍しい風属性。風のように素早い剣技を操り、高い攻撃力を誇る。
「《シャドウナイトデーモン》の攻撃力は下級モンスターとしては最高クラス。だがその攻撃力を維持するにはスタンバイフェイズ毎にライフコストが必要になる。しかし―――」
《シャドウナイトデーモン》の維持コストは自分のスタンバイフェイズ毎に900ポイントと決して安い値ではない。普通ならばそう簡単にはデッキに組み込めないモンスターだ。
しかしシクスのデッキにはそれを可能にするカードが用意されていた。
「フィールド魔法《万魔殿(パンディモニウム)―悪魔の巣窟―》を発動ッ!」
シクスがカードを発動すると、それまでただの中庭だった辺りの景色が一変する。
巨大生物の骨でできたような柱や床が出現し、まるで魔王の玉座とでもいうような雰囲気になる。
「《万魔殿―悪魔の巣窟―》は【デーモン】達の居城ッ!この中では【デーモン】モンスター達のライフコストは支払わなくてよくなるッ!まさに地獄の一丁目だッ!」
シクスの言葉通り、フィールドが《万魔殿》へと変わったことにより《シャドウナイトデーモン》の放つ威圧感が増したような気がする。
シクスの操る【デーモン】達にとっては、まさにホームグラウンドというわけだ。
「カードを1枚伏せて、ボクのターンは終了だッ!」
これでシクスのフィールドは、攻撃力2000の《シャドウナイトデーモン》、そのライフコストをなくすフィールド魔法《万魔殿》、そして伏せカードが1枚という構成となった。
確かに攻撃力2000という数値は、単独ならばほとんどの下級モンスターに打ち勝てる強さではある。しかし展開としてはスタンダード過ぎて少々味気ないものだ。シクスはまだその真価を見せてはいないということだろう。
「私のターン・・・ドロー・・・」
レイヤがカードをドローする。
それを手札に加えるのをシクスはじっと見つめていた。
(『早乙女』などという家名は聞いたことがない。どこの馬の骨かも分からぬ下民のくせにどうやって首席を取ったか知らないが、このデュエルでその化けの皮をひっぺがしてくれる・・・!)
先ほどは、アカデミアの判断に異議などないと言っていたシクスだったが、その実はらわたが煮えくるくらいの怒りを秘めていた。
(今年度、ボク以上の家柄を持つ受験生はいなかった!ならば、なぜ首席合格者がボクじゃあない!?ましてやこんな下民風情がこのボクを差し置いて首席になるなど、断じて認められるかッ!!)
シクスはその怒りを心中に秘めきれず、声を張り上げる。
「さぁ、キミのターンだよ!早乙女レイヤ!首席合格とやらの力、見せてくれないかッ!?」
挑発するシクスを見て、レイヤは初めて薄く笑う。
「・・・良かろう」
(・・・なんだ?)
シクスのうなじを何かがざわりと走った。
(雰囲気が・・・変わった?)
これまで闘志らしきものはおろか、やる気さえあるのかないのかはっきりとは分からなかったレイヤから、突如静かなる闘気が溢れ出す。
レイヤ自身の見た目にそう大きな変化はない。笑みも口元がそういう形に歪んでいるだけ。しかし彼が纏う雰囲気は確かに一変していた。
まるで遥かな高みから見下ろされているかのような重圧。見た目はシクスとそう変わらない歳の青年なのに、老練な達人を前にしているかのような圧倒的な存在感を感じる。
「こ、虚仮脅しだ・・・ッ!こんなものッ!」
すくみそうになる自分を鼓舞するかのようにシクスが言葉を荒げる。動揺しているのは一目瞭然だ。
レイヤはシクスに構うことなく手札からカードを発動する。
「私もフィールド魔法を発動させてもらう」
そう言ってレイヤがカードを発動すると、《万魔殿》と化していたフィールドがさらに変化する。
赤く妖しい光を放つ魔法陣が地面に浮かび上がった。
「こ、これは・・・!?」
「フィールド魔法《暴走魔法陣》。このカードが発動した時、私はデッキから《召喚師アレイスター》を手札に加えることができる」
レイヤはデッキからモンスターを選ぶと、すぐにそのカードをデュエルディスクにセットする。
「そしてその《召喚師アレイスター》を召喚。さらに《召喚師アレイスター》が召喚に成功した時、デッキから魔法カード《召喚魔術》を手札に加える」
レイヤのフィールドに杖と魔導書らしき本を手にした白フードの青年が姿を現した。
召喚師アレイスター(星4/ATK1000)
《召喚師アレイスター》が魔導書をハラハラと捲り、その中からカードを1枚取り出すとレイヤへと渡す。おそらくそれが《召喚魔術》という魔法カードなのだろう。
「そしてフィールドに《召喚師アレイスター》が存在していることで、私は手札から《召喚隷獣ウンディナ》を特殊召喚する」
《召喚師アレイスター》の隣に、宙に浮く水の球が現れた。それはやがて形を変え、女の子の姿となる。
召喚隷獣ウンディナ(星2/ATK800)
【召喚隷獣】は《召喚師アレイスター》の操る使い魔のような存在である。よってフィールドに《召喚師アレイスター》が存在する時、手札から特殊召喚することができる共通効果を持っている。
その中で水属性を司るのが《召喚隷獣ウンディナ》のようだ。
続け様にモンスターを召喚することに成功したレイヤにシクスは憎々しげな視線を向ける。
「と、突然ペラペラと喋り出したかと思えば、貧弱なモンスターを次々と・・・。そんなモンスター共でボクの《シャドウナイトデーモン》を倒せるとでも――――」
「キミは武藤ユーイとクローディア・デ・メディチのデュエルを見たのか?」
「――――は?」
自分の言葉を遮って不意に投げ掛けられたその問いに、シクスは口を開けたまま呆ける。
しかしレイヤはそんなことはお構い無しだ。
「武藤ユーイのリンク召喚を見たのかと訊いている」
レイヤが何を聞きたいのかは分からないが、『リンク召喚』―――その言葉にシクスは口を閉じぎりりと奥歯を軋ませる。
再び忌々しい記憶が甦ってきた。
観衆の輪の中にいるユーイをぎろりと睨むが、当のユーイは訝るだけ。
「・・・確かにその二人のデュエルは見た。その・・・リンク召喚とやらもね。しかしそれが何だと言うんだ!?」
正確には、ただ見ただけではなくその威力も一度味わっている。『リンク召喚』という言葉の響きだけで胸糞が悪くなるほど、しっかりと胸に刻まれている。
だがレイヤはそんなことは露知らず、またも薄く笑んだ。
「そうか。ならばキミに見比べてもらうことにしよう。武藤ユーイのリンク召喚と『私のリンク召喚』、どちらがより優れているのかをッ!」
レイヤは相手の反応を待つことなく、手を掲げる。
「開け!正しき道を照らすサーキット!!」
レイヤの掲げた手が輝き、上空にリンク召喚のゲートが出現した。
「「なにッ!?」」
シクスと、そして観戦していたユーイの声が揃う。
上空に出現したゲートは確かにユーイが操るものと同じものに見える。
ただ違うのは、ほんのり色付いている矢印の位置と数。レイヤの出したゲートには左下と右下の二つの矢印が薄く光を発していた。
「アローヘッドを確認した。召喚条件は、種族と属性の異なるモンスター2体。私は《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》をリンクマーカーにセットする」
レイヤの言葉に応じて、フィールドの《召喚師アレイスター》と《召喚隷獣ウンディナ》がそれぞれ黒と青の粒子となって指定された矢印へと吸い込まれていく。
「サーキットコンバイン!現れろ、リンク2《暴走召喚師アレイスター》!!」
ゲートから飛び出してきたのは、異形の姿と化した《召喚師アレイスター》だった。
頭からは二本の角が生え、左腕は悪魔か獣のそれに変わっている。背中には元々持っていた杖が刺さっており、以前の理知的な雰囲気は消え禍々しい赤いオーラを纏っている。
「こ、これは・・・」
まさかの事態にシクスが愕然とする。いつかの悪夢が再び目の前で繰り広げられたのだ。しかも今度は使い手を変えて。
「リンク召喚を使えるのは・・・武藤ユーイだけではないということだ」
早乙女レイヤは無感情の瞳を妖しく光らせた。
― ― ― ― ― ― ―
使用カード
《シャドウナイトデーモン》
効果モンスター
星4/風属性/悪魔族/攻2000/守1600
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に 900ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが相手プレイヤーに与えるダメージは半分になる。
《万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-》
フィールド魔法
「デーモン」という名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。 戦闘以外で「デーモン」という名のついたモンスターカードが破壊されて墓地へ送られた時、 そのカードのレベル未満の「デーモン」という名のついたモンスターカードを デッキから1枚選択して手札に加える事ができる。
《暴走魔法陣》
フィールド魔法
「暴走魔法陣」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「召喚師アレイスター」1体を手札に加える事ができる。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
《召喚師アレイスター》
効果モンスター(制限カード)
星4/闇属性/魔法使い族/攻1000/守1800
(1):このカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで1000アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが召喚・リバースした場合に発動できる。 デッキから「召喚魔術」1枚を手札に加える。
《召喚隷獣ウンディナ》
効果モンスター(オリジナル)
星2/水属性/水族/攻 800/守 400
(1):このカードはフィールドに「召喚師アレイスター」が存在する時、手札から特殊召喚できる。
(2):このカードがフィールド・墓地から除外された場合に発動できる。自分フィールドの融合モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
No.1ルーキーを決めると豪語するシクスだが、まさかレイヤがリンク召喚を使うとはッ!!
予想を上回るレイヤの力に攻め込まれるシクスだったが、しかし七星候としての意地がシクスの強力モンスターを呼び込む!!
次回、遊戯王戦記第18話「七星候」!!
三沢先輩の解説フェイズ!! (2018-03-14 13:32)
クールなレイヤのガチ感に驚いてます。旧式チェスデーモンに最新の召喚獣は辛そう。
リンク使いはユーイだけではありませんでしたが、その違いは何なのか?楽しみです。 (2018-03-14 14:35)
遅れましたがSS紹介スレへの掲載ありがとうございました!
確かに【デーモン】VS【召喚獣】は分が悪そうですよね。もちろんガチなら相手にならないかもしれません。でもこの世界では現実のOCGほど自由にデッキは作れない設定なので、どうなるか分かりませんよ(笑)シクスくんなので、まぁアレですけど・・・
(2018-03-14 17:57)