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HOME > 遊戯王SS一覧 > 8:アカデミアの魔女

8:アカデミアの魔女 作:

「 デュエル!! 」


ユーイとクローディアは互いに勢いよくデッキから5枚のカードを引き抜き手札とする。

「先攻は譲るノネ」

クローディアの申し出に、ユーイは頷いてそれを受ける。

「俺のターン!」

手札を確認するが、攻撃的なステータスや効果のカードはない。
ユーイはその中から1枚を選びデュエルディスクにセットする。

「俺はモンスターを守備でセットし、ターンエンド」

ユーイの眼前に裏側表示のカードが出現し、このターンは終了。

「ずいぶん慎重なノネ。それとも手が出なかったノネ?」

クローディアがユーイを挑発するようにくすくす笑う。
ユーイはそれには反応を示さない。デュエルは精神の闘いだ、平静を失うことが敗北に繋がることはユーイもよく知っている。

「ワタシのターン、ドローなノネ!」

デッキからカードを引き手札に加える。
そしてすぐにカードをデュエルディスクに乗せる。

「《古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)》召喚!」

クローディアのフィールドに機械の猟犬が召喚された。


古代の機械猟犬(星4/OP1000)


「更に《古代の機械猟犬》のモンスター効果発動!《古代の機械猟犬》は召喚に成功した時、相手に600ダメージを与えるノネ!」

フィールドの《古代の機械猟犬》がガパッとその口を開く。

「挨拶代わりの花火なノネ! 受け取りなサイ! 〝ハウンドフレイム〟!!」

そしてそこから炎の塊をユーイに向けて吐き出した。

「なっ・・・!」

炎弾は守備のセットモンスターを素通りしてユーイを襲う。

「ぐあッ・・・」

炎弾の直撃を受けて火だるまになったユーイが呻く。
このデュエルは模擬戦のため物理的なダメージがあるわけではないが、それでも炎に巻かれれば呼吸が出来ないほどの恐怖が襲う。


ユーイ(LP4000→3400)


ユーイのライフが600ポイント削られると炎は自然に鎮火した。

「くっ・・・犬のくせに火を吐くのかよ・・・」

「どんな姿をしていてもアンティーク・ギアは戦闘破壊兵器なノネ。舐めたら大火傷するノネ」

可憐な少女の姿をしていても『アカデミアの魔女』などと呼ばれて恐れられている彼女が言うと冗談に聞こえない。もっとももしかしたらこちらは戦闘破壊兵器よりも恐ろしいかもしれないが。

だがユーイが受けたダメージはまだ600。この程度なら大したことはない。

しかしクローディアは更に笑みを深くする。

「まだずいぶんと余裕がありそうなノネ。でもワタシの『挨拶』はまだ終わっていないノネ」

「なに?」

クローディアが手札からもう1枚のカードを引き抜き、ユーイに見せる。
そのカードには機械の兵士らしきモンスターのイラストが描かれていた。

「《古代の機械猟犬》のもう一つの効果! 《古代の機械猟犬》は「融合」カードなしに「アンティーク・ギア」融合モンスターを融合召喚することができるノネ!」

「融合召喚ッ!!」

融合召喚は2体以上のモンスターを融合させ新たなモンスターをエクストラデッキから呼び出す召喚法であり、この『秤の国』では最もポピュラーな召喚術である。
本来ならば融合召喚には融合素材となる2体以上のモンスターと「融合」カードの、少なくとも合計3枚のカードを使用しなければならない。しかし《古代の機械猟犬》はその「融合」カードを必要とせず融合召喚を行うことができる。つまり「融合」カードと融合素材を兼ね備えたモンスターなのである。

「ワタシはフィールドの《古代の機械猟犬》と手札の《古代の機械兵士(アンティーク・ギアソルジャー)》を融合!」

クローディアが見せていたモンスターカードは融合素材モンスターだった。
フィールドに銃を持った機械の兵士が現れ、《古代の機械猟犬》と共に渦となって混ざり合う。

「古の魂受け継がれし機械仕掛けの兵士と猟犬よ。今、隊列を組み交じり合い、新たな力とともに生まれ変わるノネ! 融合召喚! 現れるノネ! レベル8! 機械仕掛けの魔神!《古代の機械魔神(アンティーク・ギアデビル)》!」

クローディアの口上と共に、その融合モンスターが姿を現す。


古代の機械魔神(星8/OP1000)


それはデビルの名に相応しい禍々しい姿だった。爬虫類を思わせるフォルムながら、背中には機械の羽根、両腕は全部で六本の砲門を備えたカノンになっている。

(だが、攻撃力は元の《古代の機械猟犬》と同じ1000。ということは何か特別な効果を秘めているのか?)

訝しむユーイを嘲笑うかのようにクローディアは《古代の機械魔神》の力を解放する。

「《古代の機械魔神》のモンスター効果! 《古代の機械魔神》は1ターンに1度、相手に1000ダメージを与えるノネ!」

「なッ・・・!? またバーン!?」

《古代の機械魔神》の六門のカノンが火を吹く。

「うおッ! ちょ、待てよッ!!」

《古代の機械魔神》のバーン効果は先程の炎弾とは訳が違う。完全に爆撃だ。
実際に起こっているわけではないと分かってはいても、次々と巻き起こる爆発にユーイは身をよじる。

六発の爆撃が終わると、ユーイのライフはきっちり1000ポイント削られていた。


ユーイ(LP3400→2400)


「ぐ・・・く・・・ッ」

(まさか1度もバトルを行うことなく1600ものライフを削られるなんて・・・!)

ユーイはクローディアのタクティクスに冷や汗を流す。
少なくとも記憶を失ってからこちらに行ったデュエルでこんな戦術を受けたことはない。

「これが一流決闘者の領域ってわけか・・・」

この世界のデュエルにおいては、初期ライフは基本4000。そのため相手に効果ダメージを与えるカードは非常に強力となる。
レベルの高い決闘者は、例外なくこの類いのカードを自在に操る。故に効果ダメージ対策は決闘者にとってはマストな問題だ。

「感心してる場合なノネ? ワタシにはまだバトルが残っているノネ」

《古代の機械魔神》が両腕のカノンを構え直す。

「セットモンスターを吹き飛ばすノネ!」

そして再び火を吹く六門のカノン。

それに反応してユーイのセットモンスターがリバースした。
現れたのは、茶色い毛むくじゃらの体に短い手足、三つの目を持ったモンスター。


クリッター(星3/DP600)


《古代の機械魔神》の攻撃力は1000。それほど高くはない攻撃力だが、《クリッター》の守備力はそれを下回る600。《古代の機械魔神》の放った砲撃によって《クリッター》は悲鳴を上げる間もなく粉々に吹き飛ばされてしまった。

しかしそれはユーイにとって想定内。

「《クリッター》のモンスター効果発動! 《クリッター》はフィールドから墓地に送られた場合、デッキから攻撃力1500以下のモンスターをサーチする!」

「サーチャーなノネ」

ユーイはデッキからカードを1枚選び出し、それをクローディアにも公開する。

「俺は《クリボー》を手札に加える」

《クリボー》の攻撃力は僅か300。充分に《クリッター》の効果範囲内だ。

「その程度のモンスターでどうするつもりなノネ?」

「まぁ見てなって」

ユーイはニッと笑って見せた。








二人のデュエルを観戦していたのは、無論アスナ達だけではない。この男もまたユーイのデュエルを苦々しい表情で見つめていた。

「《クリボー》だと・・・? まさかまたあの忌々しいモンスターを召喚するつもりなのか・・・ッ!」

シクスは観覧席に設けられている柵を拳でガンッと殴り付ける。

シクスにとって、先日のユーイとのデュエルは苦々しい思い出である。いや、屈辱的と言ってもいいかもしれない。

「だが、いくらあの下民でもまさか『アカデミアの魔女』に勝てるはずがない!」

『アカデミアの魔女』の噂はシクスの耳にも届いている。
それにかつてデュエル・アカデミア受験を報告した際、タイタン家現当主である父からも忠告されたことがあった。曰く「『アカデミアの魔女』には決して逆らうな」と。

(父上がそう仰ったということは、あの金髪女は七星候の力を持ってしても敵わぬ相手ということだ! 体を悪くしひよったあの父が過度に恐れているだけかもしれんが、それでもアカデミアの教師には違いない・・・!)

「せいぜい不様に負けるがいい・・・ッ!!」

そう呟いて笑んだシクスの顔には暗い影が色濃く落ちていた。








「俺のターン! ドロー!」

(《古代の機械魔神》の攻撃力は1000! ここで倒しておかないと、また次のターンで1000バーンを喰らう!)

ユーイの手札に攻撃力1000を超えるカードはない。このドローでそれを引きたいところだったが、おあつらえ向きにドローしたカードはそこそこ攻撃力のあるモンスターだった。

「よしッ! 俺は《極夜の騎士 ガイア》を召喚!」

ユーイのフィールドに白馬に股がる黒騎士が召喚される。


極夜の騎士 ガイア(星4/OP1600)


「行けッ!《ガイア》!《古代の機械魔神》に攻撃ッ!〝黒槍殺(ブラック・シェイバー)〟!!」

《極夜の騎士 ガイア》がその騎馬に地を蹴らせる。

「迎え撃つノネ!《古代の機械魔神》!」

それを近づけさせまいと《古代の機械魔神》もカノンを斉射し応戦する。
次々と巻き起こる爆発を、《極夜の騎士 ガイア》は巧みな馬捌きでかわし《古代の機械魔神》の懐へと飛び込んだ。
こうなれば《極夜の騎士 ガイア》の間合いだ。携えた黒いランスで《古代の機械魔神》の胴を深々と突き刺した。
《古代の機械魔神》は断末魔もなく爆散する。


クローディア(LP4000→3400)


「よしッ」

ユーイが拳を握る。
確かにこのバトルはユーイの勝ちだった。

しかし爆煙の向こうからクローディアの不敵な笑い声が聞こえてくる。

「フフフフ・・・」

ユーイが眉を寄せると、それを察したかのように言葉が続く。

「自分のモンスターがやられて、何を笑っているのかと思っているノネ? さっき貴方が《クリボー》を手札に加えた時と同じなノネ。こうも狙い通りに事が進むと、思わず笑いが込み上げるノネ!」

「なに?」

ユーイが更に眉を寄せると同時に、フィールドを覆っていた爆煙が一気に晴れた。

「《古代の機械魔神》が戦闘で破壊され墓地に送られたことにより、ワタシはワタシのデッキ最強のモンスターを特殊召喚するノネ!」

フィールドが割れたかのように見えた。
そこから何か巨大なものが這い出てくる。

「《古代の機械魔神》は戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから「アンティーク・ギア」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できるノネ! そしてワタシがこの効果で呼び出すのは――――」

それは4、5メートルはあろうかという巨体の人型。全身古びて錆び付いてはいるが、隻眼の瞳は赤く輝きその光を失ってはいない。
その巨大な姿から感じられるのは、圧倒的な『パワー』そのものだ。

「―――来なサイ! レベル8!《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)―アルティメット・パウンド》!!」

究極の力を秘めた機械の巨人が、クローディアのフィールドに立った。
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ようやく2戦目のデュエルです。
相手はアカデミア教師であるクローディア。ナノーネ先生同様「アンティーク・ギア」使いです。ナノーネ先生が使ったカードはまだ1度も使っていませんが(笑)
クローディアはこれからも物語に深く関わってくるキャラクターですので、好きになっていただけたら嬉しいですね。

さて、次回は『雷刃』というお話になりそうです。次回もお楽しみに~! (2018-01-24 14:46)
ター坊
ロジェや融合次元アカデミア成分が強いようですね。執拗なバーン、やっぱり融合は悪だ(ARC-V感)
そしてシクスの小物感がいい味出し始めました。 (2018-01-24 16:22)
ロジェ感はあまり意識してなかったですね(笑)
シクスはなにげにのちのち重要人物になるようなならないよーな・・・。 (2018-01-24 16:30)

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