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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第26話:銀河竜を駆る少女

第26話:銀河竜を駆る少女 作:光芒










―――“銀河の瞳を持つ竜は星の力を宿した竜皇の力をその身に纏い、天界を守護する覇王として新生する。我が内に秘められし力、我が内に眠る精霊よ。蒼き光の竜となって降臨せよ!!”―――









―――《覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン》―――









 冥界より蘇った光の覇王星竜は、まるでサファイアの如く蒼く美しい鱗を剣のように逆立てては氷が割れるかのような美しい咆哮を上げる。遊大ことドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンが紅き闇の力で対峙する者に恐怖感を抱かせるのに対し、このドラグリステル・フォトン・ドラゴンは蒼き光の力による神々しさで相手の戦意を奪わんとするものであった。

「覇王星竜……ドラグリステル・フォトン・ドラゴン……」

 見たこともないカードであるが、デュエルディスクが認識するということはちゃんとしたモンスターなのだろう。ただ、遊季都はそのモンスターの効果の子細を知ることができなかった。
 ただわかるのはレベル8の光属性・幻竜族のモンスターであり、攻守のステータスは共に3000のペンデュラムモンスターであるということだけ。それだけしかわからないこともまたこのモンスターの神秘さを際立たせていた。

「精霊を出しました。これを前にして赤崎さん、あなたは正気でこのデュエルに臨むことはできますか?」
「……っ」
「まあ、それは私にとってはあまり関係のない話ですわね。私はライフ2000を支払い、魔法カード《銀河天翔》を発動します」

《銀河天翔(ギャラクシー・トランサー)》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は「フォトン」モンスター及び「ギャラクシー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
(1):2000LPを払い、自分の墓地の「フォトン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターと同じレベルを持つデッキの「ギャラクシー」モンスター1体と対象の墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は2000になり、効果は無効化される。

梓 LP7000→LP5000

「私は墓地のフォトンモンスター、フォトン・アドバンサーを特殊召喚します。そしてフォトン・アドバンサーと同じレベルのギャラクシーモンスターをデッキから守備表示で特殊召喚。私が特殊召喚するのはレベル4の《銀河の魔導師》です」

《銀河の魔導師(ギャラクシー・ウィザード)》
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻0/守1800
(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。このカードのレベルをターン終了時まで4つ上げる。
(2):このカードをリリースして発動できる。デッキから「銀河の魔導師」以外の「ギャラクシー」カード1枚を手札に加える。

「しかし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、攻撃力は2000になります」

フォトン・アドバンサー ATK1000→ATK2000 効果無効
銀河の魔導師 ATK0→ATK2000 効果無効

「レベル4のモンスターが2体……」
「私はフォトン・アドバンサーと銀河の魔導師でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!“光子の世界を舞い踊る竜よ。輝く翼の力を以て、光の道を切り拓け!” 現れなさい《輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン》!」

《輝光竜(きこうりゅう)フォトン・ブラスト・ドラゴン》
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/ドラゴン族/攻1800/守2500
レベル4モンスター×2
(1):このカードがX召喚に成功した場合に発動できる。手札から「フォトン」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):X召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの攻撃力2000以上のモンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(3):相手ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分の墓地のモンスター及び除外されている自分のモンスターの中から「銀河眼の光子竜」1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

「X召喚に成功したフォトン・ブラスト・ドラゴンの効果を発動します。手札の銀河眼の光子竜を特殊召喚します。X召喚されたフォトン・ブラスト・ドラゴンが存在する限り、私のフィールドの攻撃力2000以上のモンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されません。私はカードを2枚セットしてターンエンドですわ」


遊季都 LP4300 手札1枚
デッキ:32 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:6 Pゾーン:青/赤 除外:0 EXデッキ:13(0)
梓(ドラグリステル・フォトン・ドラゴン)LP7000 手札2枚
デッキ:32 モンスター:3(覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン、銀河眼の光子竜、輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ORU:2)魔法・罠:2 墓地:8 Pゾーン:青/赤 除外:0 EXデッキ:12(0)


「あ、あれだけモンスターを召喚したのにまだ3枚も手札が残ってるぞぉ……」
「流石だな、俺と一緒にいた時より遥かにレベルアップしている。もしかしたら俺より強いかもな」
「風峰プロ……どうしてそこまで」
「実を言うとな。俺と遊月、美羽の三人はあいつの、梓に宿っている精霊の世界に行ったことがあるんだ。それも一度じゃなくな」


☆TURN03(遊季都)

「精霊の力……凄いと思います。でも、僕は負けないし諦めたくない! 僕のターン、ドロー!!」

 目の前に立ちはだかる光のドラゴンたちはいずれも圧倒的な力を持っている。しかし、恐れはしても諦めることはしない。ここで諦めるような人間に大切なものがどうして救えようか。

「僕は手札から魔法カード、焔獄の天生を発動します! 墓地のブラストハンマー、ボンバー、アーミーの3枚をデッキに戻してシャッフル。そして2枚ドローします!」

 破壊されることで真価を発揮する焔獄モンスターはその性質上墓地に溜まりやすい。そのため墓地の焔獄モンスターを再利用するという点ではこのカードは遊季都にとっては願ってもないタイミングで手札に来てくれたと言っていいだろう。
しかし、相手が何を希い、何を求めるか。それをデュエルを通して見抜くことができるデュエリストこそ、本当に強いデュエリストと言えるのだ。

「あなたにとってそのカードはまさに天の助けというわけですね。ではそのカードの発動にチェーンしてドラグリステル・フォトン・ドラゴンの3つ目の効果を発動します!!」


《覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン》
ペンデュラム・効果モンスター(オリジナルカード)
星8/光属性/幻竜族/攻3000/守3000
【Pスケール:青9/赤9】
(1):Pゾーンのこのカードを破壊して発動できる。ゲームから除外されている「フォトン」または「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を選んで自分フィールドに特殊召喚する。「覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン」のP効果は1ターンに1度までしか発動できない。
【モンスター効果】
「覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン」は自分フィールドに1体までしか存在できず、「覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン」の効果はそれぞれ1ターンに1度までしか発動できない。
このカードはルール上「ギャラクシーアイズ」モンスターとしても扱う。このカードは通常召喚できず、自分フィールドに存在する「銀河眼の光子竜」1体と自分フィールドに存在する光属性・ドラゴン族のモンスター1体をリリースした場合にのみ、手札・墓地・EXデッキから特殊召喚できる。
(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで相手モンスターに攻撃できる。
(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップにその相手モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターとこのカードをゲームから除外し、相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果で除外したモンスターはバトルフェイズ終了時にフィールドに戻る。
(3):魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した場合に発動できる。自分フィールド・墓地の「フォトン」または「ギャラクシー」カード1枚をゲームから除外し、その発動を無効にする。この効果の発動に対して、相手はカードの効果を発動することはできず、このターン、相手はこの効果で無効にしたカードと同じ種類のカードを発動することができない。
(4):このカードが相手によって破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。


「魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、フィールド・墓地のフォトンまたはギャラクシーモンスター1体をゲームから除外し、その発動を無効にします。相手はこの効果にチェーンしてカードの効果を発動することができず、このターン、相手はこの効果で発動を無効にされたカードと同じ種類のカードを発動することができません」
「そ、そんな……」

チェーン2(梓):覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン
チェーン1(遊季都):焔獄の天生

「チェーン2のドラグリステル・フォトン・ドラゴンの効果。墓地のタイタニック・ギャラクシーをゲームから除外し、焔獄の天生の発動を無効にします。そして赤崎さん、あなたはこのターン魔法カードを発動することができません」
「チェーン1の焔獄の天生は無効になります……」

 ドラグリステル・フォトン・ドラゴンは単純な決定力ではドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンに及ばないだろう。しかし、効果による制圧力であればこちらの方が勝ると言っていい。しかも1ターンに1度までしか発動できないとはいえ、一度無効にされた種類のカードと同じ種類のカードを発動できなくなるというのはこの窮した状況ではダメ押しと言ってもいいものだった。

「起死回生のドローソースを無効にされた以上、赤崎さんを待つのは敗北だけです。さて、最後のターンをどう過ごされるおつもりでしょうか?」
「僕の負け……ふふっ、なーんてね。僕は墓地の罠カード、焔獄の咆哮の効果を発動します!」

 対峙したばかりであるが、ドラグリステル・フォトン・ドラゴンの効果の全容が判明するや否や、遊季都はその抜け穴に気が付いた。ドラグリステル・フォトン・ドラゴンのパーミッション効果は1ターンに1度までしか発動できないが、一度無効にしたカードと同じ種類のカードの発動を不可能にする。しかし、逆を返せば、その効果で無効にされなかったカードの効果は問題なく発動できるということでもあった。

「墓地のこのカードを除外して、僕は墓地の焔獄カード1枚を手札に戻します! 戻すのは焔獄竜-フレアスターです! そしてフレアスターを召喚! 効果で墓地の焔獄竜-ボンバーを特殊召喚します!」

 ボンバーのレベルは3。フレアスターと合わせてレベル7のSモンスターのS召喚が可能になる。最もフレアスターをS素材に使用する場合、ドラゴン族のSモンスターにしか使用できないのだが。

「僕はレベル3の焔獄竜-ボマーに、レベル4のチューナーモンスター、焔獄竜-フレアスターをチューニング! “赤き輝き放つ翼を翻し、紅蓮の刃で敵を焼き尽くせ!” シンクロ召喚! 飛翔せよ!《焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット》!」

 炎の嵐と共に現れたのは《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を彷彿とさせる炎のように赤い輝きを持つ宝石の翼を持ったドラゴンであった。

《焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット》
シンクロ・効果モンスター(オリジナルカード)
炎属性チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手がフィールドのモンスターの効果を発動した場合に発動できる。その効果の発動を無効にし、そのモンスターを破壊する。その後、この効果で破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージをダメージを相手に与える。
(2):このカードがこのカードの攻撃力よりも高い攻撃力を持つ相手モンスターに攻撃する場合、そのダメージステップの間、このカードの攻撃力をその相手のモンスターの攻撃力の半分の数値だけアップする。

「ルビーウィング・スカーレットはこのカードよりも高い攻撃力を持つモンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間、このカードの攻撃力をその相手モンスターの攻撃力の半分の数値だけアップさせます!」
「なんですって!?」
「そして相手フィールドのモンスターが効果を発動した場合、その発動を無効にして破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分の数値のダメージを相手ライフに与えます! ドラグリステル・フォトン・ドラゴンを効果で除外しようとしても無駄です! バトル! 焔獄竜-ルビーウィング・スカーレットで覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴンを攻撃!!」

焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット ATK2500 VS 覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン ATK3000

「ダメージステップにルビーウィング・スカーレットの効果を発動します! ルビーウィング・スカーレットの攻撃力を覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴンの攻撃力の半分……1500アップさせます!」

焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット ATK2500→ATK4000

(覇王星竜の攻撃力を上回った! これで……!!」
「まさか、精霊が敗れるとは……このようなことが……」





―――なーんちゃって。





「えっ!?」

焔獄竜-ルビーウィング・スカーレット ATK4000→ATK3400 効果無効

「ルビーウィング・スカーレットの攻撃力が……」
「残念でしたわね。ルビーウィング・スカーレットを対象に速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動しました」

《禁じられた聖杯》
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が400アップし、効果は無効化される。

「これでルビーウィング・スカーレットの効果は無効になり、攻撃力のアップは400に留まりました。そしてこちらの効果を発動してもルビーウィング・スカーレットで無効にすることはできません。覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴンの効果を発動します! このカードとルビーウィング・スカーレットをゲームから除外し、ルビーウィング・スカーレットの攻撃力分のダメージを与えます!!」

 次元の狭間に消えるドラグリステル・フォトン・ドラゴンとルビーウィング・スカーレット。行き場を失ったルビーウィング・スカーレットの力が暴走して遊季都へと逆流した。

遊季都 LP4300→LP900

「うわあっ!! でも、バトルフェイズが終わればルビーウィング・スカーレットは帰って……」
「来ませんわ。速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動」

《異次元からの埋葬》
速攻魔法
(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで対象として発動できる。そのモンスターを墓地に戻す。

「私は除外されているルビーウィング・スカーレットを墓地へ戻します」
「っ……!?」
「風峰プロ、この場合はどうなるんだぁ?」
「除外されているルビーウィング・スカーレットは墓地へ行ってしまった場合帰ってくることはできない。まさに生き埋めだな」
「……僕はバトルフェイズを終了します」

 バトルフェイズが終わったことで梓のフィールドにはドラグリステル・フォトン・ドラゴンが帰還する。しかし、遊路の言った通り、異次元からの埋葬で墓地へ戻されたルビーウィング・スカーレットは帰ってこない。遊季都の乾坤一擲の攻撃は逆に相手を利するだけに終わってしまった。

「僕はターン……エンドです」
「ターン終了時にフォトン・ブラスト・ドラゴンの効果を発動します。相手ターンにオーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地の銀河眼の光子竜1体を特殊召喚しますわ」


遊季都 LP4300 手札1枚
デッキ:31 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:7 Pゾーン:青/赤 除外:1 EXデッキ:12(0)
梓(ドラグリステル・フォトン・ドラゴン)LP7000 手札2枚
デッキ:32 モンスター:4(覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン、銀河眼の光子竜×2、輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ORU:1)魔法・罠:0 墓地:9 Pゾーン:青/赤 除外:1 EXデッキ:12(0)


☆TURN04(梓)

「私のターン、ドローですわ。万策尽きた、といった様子ですわね。ですが、気落ちすることはありませんわ。あなたが弱いのではなく、私が強いのですから。バトル。覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴンでダイレクトアタック。”覇王星断・銀河竜閃”!」

覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン ATK3000

遊季都 LP900→LP0











「負けた……これじゃあ僕は……」

 梓もといドラグリステル・フォトン・ドラゴンとのデュエルに敗れた遊季都は、その場に崩れ落ちる。ラズベリーを助けたければ実力を示せ―――そう言われていたのにも関わらず、終わってみればボンバーの効果でライフを1000削ったのみ。これでは自分の本当の実力を発揮できたとは口が裂けても言えなかった。

「赤崎君……」

 駆け寄ろうとした盛雄を遊路は何も言わずに制止する。確かにデュエルの結果は振るわなかったかもしれないが、遊路はこのデュエルから感じ取っていたものがあったのだ。

「あ、あれ……私は一体……」

 正気に戻った梓は何が起きたのか覚えていないのか、周囲をキョロキョロと見回す。すると、そんな彼女を誰かが後ろから抱きしめた。優しくも暖かい感触に心臓がドクン、と高く跳ね上がる梓。
 彼女が恐る恐る振り返ると、そこには一人の美しい少女が立っていた。癖のついた長く美しい黒髪に、宝石のように美しい瞳。雪のように白い肌はまるでおとぎ話からそのまま出てきたかのような美貌に同性であるにも関わらず梓は体温が上がるのを感じた。

「あ、あなたは……」
「ありがとう、身体を貸してくれて。きっとあなたは素晴らしいデュエリストになれる。だから、頑張ってね」
「そ、そんな……ありがとうございましゅ……」

 にっこりと微笑んだ少女の顔を見た梓は思わず赤面する。遊大が性別問わず人々を魅了するように、この少女もまた彼と同じように多くの人間を虜にする美しさを持っていた。林檎のようなに顔が真っ赤になった梓に小さく手を振ると、その少女はその場に座り込んでいる遊季都の下へと歩み寄る。少女は俯いている遊季都をしばらく何も言わず見つめていたが、小さくため息をつくと、そっと手を差し伸べた。

「立てるかしら?」
「……」

 遊季都は何も言わずその手を取った。しかし、すぐには立ち上がろうとしなかった。

「あの、僕はやっぱり力不足みたいです。こんな僕じゃ遊大さんを正気に戻すこともラズベリーを助けることも……」
「……確かにデュエルの結果は負け。それは変えようのない事実ね」
「だから……僕に構わず、行ってください。あなたならきっと」

 そう言いかけた遊季都の口の前に少女は左手の人差し指を翳した。その時初めて遊季都は少女の顔を見た。年齢は自分より数歳年上であろうか、同学年の女子生徒にないものを持つ少女を見て、遊季都の頬もまた梓同様に林檎のように赤く染まる。

「話は最後まで聞きなさい。赤崎 遊季都くん……私と共に戦ってくれないかしら。彼を、高海 遊大を助けるために」
「えっ……」
「さっきも言ったでしょう。あなたは決して弱くなんかないって。それにデュエルの時に私がこんなことを聞いたのを覚えているかしら?」

 少女が聞いた“こんなこと”と言うのは、遊季都の【焔獄】デッキについてだった。既存のカードを元にして作られたカードの多い焔獄はこの世界で遊季都のみが持つオーダーカードである。オーダーカードを持つということはそれだけ高い実力を秘めている証拠でもあり、オーダーカードを持っているからというだけで傲慢な態度を取る者も決して少なくはない。しかし、遊季都はこの焔獄デッキを次のように評していた。



―――このデッキは僕とラズベリーたちの絆の証でもあるんです―――



「あなたはそのデッキを大事にし、そのデッキを絆の証としていた。あなたのその気持ちが嘘偽りでないことがわかったから。私と共に戦ってほしいの」
「あの……えっと……」
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私は精霊としての名前は覇王星竜ドラグリステル・フォトン・ドラゴン。人間だった時の、というか今もそうなんだけど……人間としての名前は―――










―――天都 遊希(あまつ ゆうき)よ。











●次回予告
大空 礼
「天都先輩にその実力とカードを思う心を認められた遊季都君。強大な力を持つに至った高海君を助け、彼を操る悪魔・ジョロキアを倒すための作戦を練ろうとしていた矢先、彼らの居場所を突き止めた高海くんとジョロキアが迫りつつあった。たくさんの負の心を取り込んだドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンの力は大きく増している。やはり、遊希さんの思い描いていた作戦しか……」

次回 「決戦・1」

大空 礼
「勝てるのはデュエルで悪魔を使役するものだけ。だからこそ、遊季都君。あなたにかかっているわ!」




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ギガプラント
ドラグリステル・フォトンが強い…流石前主人公。
なーんてねに対するなーんちゃってにちょっとしたお茶目を感じます。可愛い。
意識が戻った梓ちゃんの反応が中々に新鮮ですね。 (2019-03-05 16:14)
光芒
ギガプラントさん
伊達に前主人公、今作ヒロインは務めていませんね。ドラグリステル・フォトン・ドラゴンは打点こそ低めですが、面倒な効果と復活力の高さで結構生命力が高いです。

>なーんてねに対するなーんちゃってにちょっとしたお茶目を感じます。可愛い。
遊希はクールなようで結構こういう意趣返しが好きだったりします。ギャップが激しいですね、自分で考えておいてなんですが。

>意識が戻った梓ちゃんの反応が中々に新鮮ですね。
同性すらも魅了する美しさということで。美少女同士のキマシは最高だと思います(無関係
(2019-03-06 23:31)

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