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6月8日ー1日目終了直前 作:コンドル

予選大会一日目終了のチャイムは17時丁度に鳴る。

現在16時30分。つまり、今日の予選は残り三十分で終了となるのである。
アカデミア生徒たちはそれぞれ自分の部屋に戻ったり、対戦相手を探すために歩き回ったり、知り合いと合流して戦果を報告しあってたりしていた。

アカデミアに設置された白いベンチに昼からずっと座っていた「空音 友子」は、アカデミアの時計が16時30分を指していることに気づき驚愕した。
(もうこんな時間なの...)
悲しいことである。
昼食を摂った後で対戦相手を探そうとしたものの、自分の絶望的なコミュニケーション力の無さと高校一年生にしては低すぎる身長のせいで、相手から認識されずに、一度も対戦が出来ずにいたこと。
そして、今朝実家から段ボールでおくられてきた荷物の中に入っていた新しいカードを加えて強化したデッキの力を試すことが出来ずにいたことも、悲しいことであった。

一度諦めベンチに腰を下ろし誰か話しかけてくれる人を待つという手段を取ってみたものの、現実は甘くない。
結局、自分から対戦を申し込まなければならないのだ。そう考えた友子は立つ。まだ大会は終わっていない。友子は部屋に戻らずに、時間ギリギリまで対戦相手を探す決断をした。


一方遊駆と輪廻はアカデミア本館の階段の踊り場で合流していた。

「これ、億谷の奴がお前にって」
「億谷が俺にか...」

遊駆が億谷からの手紙を受け取り、躊躇せずの中身を確認する。
「ただの手紙だな」
「いや、何を書いているかによるだろう」
そう言って遊駆は手紙の内容に目を通す。

夕食を食べたらすぐに夕日の見える崖に来い。

手紙にはそう書かれているだけで、手紙の裏や端を見ても、他には何の言葉も書かれていなかった。

「ただの手紙だな」
「そうみてーだな」

遊駆はそれをズボンの左ポケットに入れた。遊駆の表情は一切変化を見せなかった。
手紙の内容は大体察しがついていた輪廻は遊駆の顔をじっと見つめる。

(こいつ、あんまり表情変えないよなぁ。笑うことがあってもあんまり大声で口開けて笑ったりしないし、なんかそんなことしてるのあんま想像できねぇや。そういえば、綾羽とは今どうなってるんだ?つか、綾羽のことをどう思ってるんだ?)

一度考え出すと止まらない。特に輪廻が気になっているのは遊駆と綾羽の関係だ。4月から綾羽は輪廻が思うほどのことを何もしてこなかった。側にいただけだった。この数カ月間で大きく進展すると思っていた二人の関係は、お互いに進展も、またその逆も無い、ドローフェイズが始まりカードをドローしてそれ以降何もしてこないような無意味な状態だった。

(綾羽はなんかしおれた花みたいに元気無いし、遊駆は何考えてんのかわからねえし、どうなるんだろうなぁこの二人。なんかいつか大変なことになりそうで怖いぜ…)

そんなことを考えているとは知らずに遊駆は輪廻の名前を呼ぶ。
「輪廻、俺の顔が気になるのか」
「えっ?」
思考していた輪廻は遊駆の声で我に返り、問いかけに対し素っ頓狂な声を出した。
「い、いや、何でもねぇよ。それよりこれからどうするよ?もうあと30分だぜ。俺はまだ対戦相手を探すつもりだけど」
「俺は考えておく」
「そっか、それじゃあ…」

「あの、すみません」

それじゃあな、そう言いかけて手を振ろうとした輪廻の行動を、その言葉が遮った。

「すみません、人を探しているんです。空音友子って女の子なんですけど、知りませんか?」
身長は遊駆と輪廻の2人と比べると低いフードタイプの制服を着た声の主は穏やかな口調で空音友子の名を出す。
遊駆と輪廻は素性を知らない人間がいきなり知り合いの名前を出し、さらにその知り合いを探しているというこの者の言葉に不信感を抱いた。

「友子の知り合いかな?」
「分からない…」

2人は謎の男に背中を向けて耳打ちで会話する。
どう考えても怪しい。人のことをすぐに信じる輪廻だが、流石にこれはいきなり信じるというのは難しい話だった。

「何となく声的に男っぽいけど顔がよくみえねぇからわからねぇぞ。それだけじゃなくていきなり友子の名前出すってのも怪しさのレベル高いぜ。今はレベル2くらいだが、いつレベルアップするかわからねえ」
「知り合いかもしれない」
「あいつ昔から友達いなかったって言ってたんだぞ!友達って線は無い!」

「あの…」

申し訳なさそうに謎の男は二人に声かける。その声で二人は声の方向を向いた。
「いきなりごめんなさい。フード被ってるのは、ちょっと理由があって…あ、でも顔見せなきゃ疑われますよね」
そう言って男はフードに手を向かわせる。
「さっきも小込綾羽って人におんなじこと聞いたんですけど、やっぱりフードのせいか疑われちゃって。今すぐ外しますね」

男はフードを外し、その顔を2人に見せる。

その男の瞳の色はライトグリーンで、優しさや穏やか感じさせる。同じくライトグリーンの髪。その髪形はまるで鶏の羽毛のようだ。
輪廻と遊駆はフードを取った瞬間、この男から隠れていた強者の気配が一気に解き放たれたような気を感じた。
男は微笑み顔で2人の顔を見る。
「僕は渡修太(わたり しゅうた)って言います。クラスは7組です」

渡修太。男はそう名乗った。

実際のところ、名乗って顔を見せただけで信頼に足る人物かどうかなんてわかるはずがない。
しかし、どうも人を欺こうとする人物では無さそうであるということだけは、不思議とわかった。

「遊駆、ちょっと」
「ああ」

まだ疑っているのか、輪廻と遊駆は再び耳打ちで話始める。

省みると、怪しいと思われる点は幾つもあった。コミュニケーションの取り方を間違えたな。と、一人反省する。
そうしているうちに、輪廻と遊駆が渡の方を向いた。
「友子がどこにいるか俺たちも知らねーんだよ」
「そう、ですか。ありがとうございました。なら」
渡はあからさまに落ち込んだ表情と態度になる。
「俺たちも探すよ。そっちはなんか友子に用事があるっぽいからさ。」
その言葉を聞いて、渡の表情は先ほどとは打って変わって明るくなった。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
心からの笑顔を見て、遊駆は頷き、輪廻は軽く笑みを浮かべた。

16時45分

大会終了まで残り15分となった。友子は対戦相手を探していたが終了直前ということもあってか大体の生徒が寮へと戻り始めていた。そのため、16時30分の時と同じように相手は見つからないままであった。

「友子!」
また別の所で相手を探そうかと考えた時、聞き覚えのある声がした。
「輪廻さん」
その声の方を向く。輪廻と遊駆、そして、何者かの姿が見える。
3人は友子の方を走ってきている。友子も輪廻達のいる方へと走って行く。
あと5メートル、4、3、2、1...。

「きゃっ」
あと少しというところで、友子はバランスを崩してしまう。
「危ない!」
叫ぶと渡が駆け出す。間一髪のところで渡の手が友子の手に届き接地を回避する。
「空音さん大丈夫でした!?けがは無いですか!?」
「え?は、はい。大丈夫です…」
「あ~ケガが無くて良かったぁ。あ」

修太はずっと握っていた友子の手を焦りながら離し、友子に顔が見えないように後ろを向く。

「手…握っちゃった」
赤面しながらそう呟く。

(初心かよ)
どの口が言うかと言いたくなるくらいに女性に対して耐性の無い輪廻が心の中で言った。

「あの、その人は?」
暫くして修太の顔が元通りになった頃。友子は当然の疑問を口にした。
「やっぱり覚えてないですかね。渡修太って名前」

ダメ元で名前を言ってみるが、その名前を聞いても、友子の記憶にその名前で該当する人物はいない。ここで輪廻が友子に「ほら」と言う。
「友子の小学校の頃の同級生で、転校生。なんか親の仕事の関係ですぐに転校することが多かったらしいから友子のいた小学校からもすぐに転校しちゃったらしいんだけど、なんか覚えてないか?」
輪廻が友子を見つけるまでに友子との関係性を明らかにするために、遊駆と一緒に、修太へ様々な質問をしていた。その中で得られた情報を組み合わせて友子に伝えたのである。

転校生。友子の小学校の場合はそういった存在は珍しいから覚えていてもいいはずだが、短期間だけと思い出すのは難しい。さらに友子は小学校時代は人と話すこともほとんど無かったために小学校時代の記憶はあまり残っていない。

「すみません。やっぱり思い出せないです...」
心から申し訳なさそうに友子は渡に向かって謝罪する。記憶にない以上、もうどうすることもできないのだ。
「そうですか…。約束も覚えてなのかな」
「え?」
思わず友子は聞き返した。
「いえ、なんでもありません。こちらこそすみませんでした。覚えてるわけないのに聞いちゃって。あ、でも、もしかしたら」

そう言って渡は何かを思いついたように呟く。
「友子さん、小学校の頃デュエルモンスターズが大流行していたの覚えていますか?」
「は、はい」
「なら、僕の事を覚えていなくても、僕のデッキなら覚えているかも!ちょっと待っててくださいね!誰か対戦相手を探してきます!」
渡が駆け出そうとした時、友子が「えっ、でももう時間が…」と渡を止めた。

「大丈夫ですよ!だってあと5分もあるんですよ!一人くらいいますって!じゃあ!」

そう言って足早に渡は駆け出して行った。

すさまじい決断力に驚きながら、残された輪廻達はどうするか話し合っていた。
「とにかく、俺は渡がどんなデュエリストか見たいからあとを追ってみる。友子はどうする?」
「私も行ってみます。もしかしたら、何か思い出せるかもしれないですし…」
「俺は億谷との約束がある」
「分かった。なら別行動だな。ほんじゃあな遊駆、気をつけろよ」

遊駆は頷きその場を去った。
輪廻と友子は渡が進んだ方向へと向かった。

(どこかにいるはずだ。きっと最後の1分まで諦めないデュエリストが…きっと!)

走る。走る。走る。
全ては、小学校の頃にした約束の為に。
その為に、友子に自分の事を思い出して欲しい。その一心で渡は走る。

花畑の近く、そこに人が立っていた。

「やぁ」
「どうも」

出会って、お互いに挨拶をする。相手を見つけた渡の瞳は、獲物を見つけた獣のような、歓喜や闘争心と言った感情が混じった状態になっていた。

「僕は渡修太です。あなたは?」
「俺は半田勝也(はんだ かつや)。こんな時間になってまでこの場所にいるんだ。言いたいことは分かるぜ。で、やるかい?」

話が早くて助かる。渡は真っ先にそう思った。半田は黒い髪のショートヘアで、背は175はある細身のデュエリストだ。声は野太い男の声をしている。渡が半田の姿を見ているうちに半田がデュエルディスクを起動する。それを見て渡もデュエルディスクを起動する。
「えぇ。よろしくお願いします。全力で行きますね!半田さん!」
「ああ」

そして、輪廻と友子が渡のいる場所へ到着する。

「あ、友子さん!見ててくださいね!僕のデッキ、あのころと変わっていないんで!思い出してくれたら…嬉しいです…じゃあ始めましょうか!よろしくお願いします!」

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