37話：風花覚醒…もう1人の呪われた子供　作：ヒラーズ

「《青眼の究極亜竜》？聞いたことないカードッスね」
「当たり前。これはかなりのレアカードで手に入れるのが難しいもの。知らないのは無理もない…」

冷静に説明をするヘイズ、自慢では無い事は理解したものの、効果の説明が入ったとたんに風花の驚愕の表情になった。

青眼の究極亜竜（ブルーアイズオルタナティブアルティメットドラゴン）
☆12/光属性/ドラゴン族／融合／効果　ATK4500／DEF3800
「青眼の白龍」＋「青眼の白龍」＋「青眼の白龍」
(1)：フィールドのこのカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(2)：１ターンに１度、相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。元々のカード名が「青眼の亜白龍」となるモンスターを素材としてこのカードが融合召喚されている場合、この効果の対象を２枚または３枚にできる。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

「何それ…超強いッス…」
「それで済むなら十分、魔法カード『滅びの爆裂疾風弾』…」

滅びの爆裂疾風弾
通常魔法
自分フィールド上に「青眼の白龍」が表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。このカードを発動するターン「青眼の白龍」は攻撃する事ができない。

「え…嘘！？嘘ッスよね！？」
「破壊されても得するそのリンクの効果は『神の宣告』で無効にする…。ライフを半分払い、効果を無効に」
ヘイズ　LP600→300

頼みの綱であったサラキアビスの効果も無効にされ、身動きがとれなくなってしまった風花は大きく絶望し始める。

（マジッスか！？これ直撃不回避じゃないッスか！これは痛いッス！）
「究極亜竜でダイレクトアタック…」
対象にもされず、効果では破壊されないカードの破壊耐性を持つ恐ろしくとも強い攻撃力の前では風花にとってはかなりの痛手として大きくショックが走った。
風花　LP8000→3500

「何て…破壊力ッスか…これは負けたッスか？」
「次のターン。あなたはモンスターを伏せることしかできない。カードを2枚伏せてターンエンド」
「わ…私のターンッス！ディスティニードロー！！」
風花
手札6→7

（『アビスフィアー』は使えない…どうするッス？蘇生カードは来てない。ホントにモンスターを伏せるしかないッス！？）

風花は考える。手札を見るが、逆転できるカードが見当たらない。汗があふれ出る。その時、仲間に言われた言葉を思い出す。

――――別にお前が負けても気にすることはない――――

――――何かあってもサレンダーは恥じることじゃないぜ？――――

後押しの言葉、無理な戦いを望まない仲間の思いやりの声。
風花はデッキの上に手を置こうとすると…。

――――やめるの？
「…！」
突如、頭の中から声が響き、頭を抱える。

――――我が身大事に諦めるの？

――――このままでは本当に負けちゃうよ？

――――あの“言葉”は…間違いだったの？

その声と同時にあの時、自分が言った事がフラッシュバックして蘇った。
――――分かったッス！私、全力で頑張るッス！――――

（違うッス！あれは間違いではないッス！！）

――――そう…ならば契約よ。

――――我は汝、汝は我。我は精霊界から追放された賊精霊なり…。

――――プライドを捨てず、立ち上がりなさい。

言葉と同時に痛みが走り、拳を強く握る。
そこから血が溢れ、耐えている事が他の観客から見て分かった。

――――あなたがそこにいることであらゆる難局を打ち破る。

――――可能性へと開花しなさい！


「……」
「どうしたの？終わりなら終わりでエンドしたらどう？」
痛みが治まったのか、風花は体勢を立て直し、手札を見る。
その時、手札の2枚のカードが変わっていた。

「じゃあ最後の足掻きでこれをやって良いッスか？」
「…？何か持ってるの？」

「手札から儀式魔法『海星神降臨』発動ッス！」

海星神降臨（かいせいしんこうりん）／Original Card
儀式魔法
「海星神ドラゴラス」の降臨に必要。
デッキ・手札・フィールドからレベルの合計が１０以上になるようにモンスターを墓地に送り、手札から「海星神ドラゴラス」を儀式召喚する。

「儀式魔法…！」
「デッキより、メガロ、ポセイドラを生け贄に…！

――――“煉獄たる古の海に封印されし、外なる海の神よ――――

――――幾多の刻を越え、我が身に宿りし多くの可能性を――――

――――勝敗の天秤に掲げ、勝利をもたらせ！！”――――

――――儀式召喚！！――――

――――《海星神ドラゴラス》！！――――


海星神ドラゴラス／Original Card
☆10/水属性/ドラゴン族／儀式／効果　ATK0／DEF0
「海星神降臨」により降臨。
①：このカードが存在する限り、相手はこのカードにしか攻撃できない。またこのカードは相手の効果を受けず、リリースできない。
②：このカードが戦闘で破壊された時、自分が受ける戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。その後、墓地からこのカードを特殊召喚する。
③：１ターンに１度、墓地に存在する水属性モンスター１体を除外して発動できる。相手は必ずバトルフェイズを行わなくてはならない。

風花の前に現れたのは巨大な竜。神と名乗るドラゴンで、名は怪獣っぽい何かのモンスター。
ヘイズを見つめ、次第には咆吼を上げる。

――――私は、汝の可能性の海に眠る賊精霊、ドラゴラスなり。

――――汝との契約により、召喚された。

「行くッスよ！これでアンタは終わりッス！ターンエンド！」
そうしたとたん、風花の周りに黒い炎が燃え上がる。
その姿を見た海理と陸也は驚愕した。

「まさか…俺と姉さん以外にも呪われた子供が…！」
「風花さん…私達と同族だったんですね…」

「なるほど、これは予想外でした…ドロー」

「…攻撃です、この試練は合格と言っておきましょう」
青眼の白龍が攻撃するも、破壊されたと同時にヘイズがダメージを受け、デュエルが終わる。

ヘイズ　LP300→0


WINS！
風花

Lose
ヘイズ





♢





「やった…やったッス！！勝ったッス！！」
風花は勝利を喜びジャンプする。そしてフィールドから降り、海理達の所に行く。
「勝ったッスよ！」
その事で海理と陸也は優しく微笑み、褒める。
「お疲れ様でした。よく戦い抜きましたね！」
「これでまた優勝に一歩前進したな。すごいぞ風花」
「えへへ…ありがとうッス！」
それにつられ水樹と魔奈、巴も言った。

「新しい賊霊使いの誕生だな！」
「かっこよかったぜ、風花！」
「やれば出来るじゃない！」
次第にうれし涙がこぼれ、少し浮かれる。
だがすぐに冷静を取り戻し、話し合う。

「次は誰が…」
「私が出るわ」
巴は手を上げ、立つ。
陸也は「気をつけろよ」と声をかけ、手を振る。
それに答え、巴はにこりと笑みを浮かべた。

「大丈夫よ、無理な戦いはしないわ」
そう言ってデュエルフィールドに向かっていった。

（風花が呪われた子供…なら私は…）