54話：暗躍と小さいお友達　作：ヒラーズ

「あー…負けちゃった」
海理がツバメとのライディングデュエルを勝利して数分、近くの公園で休憩を挟んでいた。

「海理さん。強いんだね」
「いえいえ、ツバメさんも十分強かったですよ？それに」
「それに？」
「あなたの燕、ものすごく速かったです」

ツバメは「そうかなぁ？」と言って頬を赤くする。
言われるのは初めてだったのだろうか？
照れているツバメの頭を海理は優しく撫でる。
ツバメは目を細め、にこりと笑う。

その時だった。

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ！

海理のスマートフォンから着信音が流れる。
慌てて取り出し、メールを確認した。

陸也＞
遅いぞ。何をしているか分からないけど
何かあったら連絡してくれ。こっちは客がやたらと来て忙しい。
それと行けないなら連絡してくれと言ったんだが･･･まぁいい。

陸也からメールだった。

「あー･･･」

海理は手早く文字を打ち、返信する。

海理＞
ごめん。今日は行けないかも。
だから頑張って下さい。

「ふう…」
陸也にメールを送った後、海理はベンチに座り、休む。
その隣にツバメが座り、話しかける。

「大変なんだね」
「いえ、そこまでのものではないので安心を」

同情されかけた空気を無理矢理振り払い、空を見上げる。
しかしツバメは溜息を吐く。

「はぁ･･･」
「どうしたんですか？」

海理はツバメの肩を優しく叩き、何があったかを聞く。
その問いにツバメが言いづらそうに答える。

「実はあたしはね。3歳年上のお兄ちゃんがいるの」
「お兄さんが？」
「うん、あたしが8歳の時にいなくなっちゃったんだ」

どうやらツバメは時々いなくなった兄を探して外出しているらしく、周辺を探しては見つからず仕舞いだった。警察に連絡して、捜索依頼を出しても見つからず、この事件は闇に葬られていたのだった。
ツバメの兄は医者のタマゴであり、凄腕のデュエリストでもある。
しかしツバメの兄は突然特異体質に目覚め、ある日を境にツバメの前から消え、行方を眩ました。今ではツバメの兄の存在は妹のツバメ以外忘れ去られているらしい。

「そのお兄さんの名は？」
「白鳥 スズメ。あたしにとっては良いお兄ちゃんなの」

――――行方不明の兄か、これは臭うな。
（ええ、けど目撃情報がないとなれば…）
――――相当太刀の悪い体質を持っているようだな。

海理はスマートフォンで『白き救世者様お願いチャンネル』を開き、悩み事を確認する。
そしてその悩みが掲示板に載っていた。
『行方不明の兄を探して欲しい』

「……」
「海理さん？」

内容を確認する。少ししてチャンネルを閉じる。ツバメの方に向き、話を続けた。

「ツバメさん」
「何？」
「その捜索、私も手伝えませんか？」

意外な言葉にツバメは「は…？」っというような顔になる。
しかしツバメにとって思いがけない助っ人と言えるだろう。

「い…いいの？疑わないの？」
「はい。あなたのような元気な女の子を置いて去る年上はどうかしています。それに、困っている人を見て助けるのは当たり前です」

海理の捜索協力にツバメは喜んだ。
無邪気な子供のように。
そして「ありがとう」と言って抱きつく。

「任せて下さい、必ずツバメさんのお兄さんを見つけます」
「うん！約束だよ！」

その時、海理のデュエルディスクから声が聞こえた。
『契約完了、新カードを送ります』

デュエルディスクから再びカードが3枚現れ、手に取る。
最初のカードはシンクロモンスターカードだった。残りの2枚はチューナーモンスターになっている。そして陸也の時と同じように頭痛が起こる。

我は汝、汝は我。ここに新たな契りを得たり。

契りはすなわち、世界を導く救世の翼なり。

我、『世界』の力の生誕に祝福の風を得たり。

神々への抗いに至るさらなる力とならん。

「･･･」


「何か、喜んだらお腹減ってきちゃった。そろそろ帰るね」
「ええ、また会いましょう」
「うん！」

こうして海理は新たな契約を行いさらなる力を手に入れた。
その後ツバメと分かれ、陸也のいる店に行き、理由を話して寮に戻っていく。
少なくとも強くなっている。あの時、フリィクスが言っていた養いはこれのことを言っていたのだろう。
そうして1日が過ぎていった。



＊




同時刻、クロノヴェイル最下層では仮面をつけた男女3人が会議室らしい場所で話し合いをしていた。女性は右に、一人目の男性は左に座り、二人目の男性が間に座った。恐らく彼がリーダー格だろう。

「計画は順調に進んでいるようだな」
「ネクロの偽天使には驚いたが、それ以外は問題なく進んでいる」
「むしろ、順調すぎて怖いくらいだわ」

仮面をつけた女性は少し仮面をずらし、出された紅茶を飲む。
飲み終えると仮面を戻し、話しに混じる。

「どうやら、あちこちで異変が起きているらしいけど」
「時空を超えてきた小僧の事か？」
「それだけじゃない。特異体質を持つ医者の事でもあるわ」
「放っておけ、どうせあやつ一人では何も出来ん。我々を倒すことなどと阿呆のやることだ」
「では…進めよう









――――支配神復活の計画を――――







ちょっとしたおまけ④
トウマ「ついに俺の暗示が決まったぜぇ！」
陸也「良かったな」
トウマ「ああ！これで俺も賊精霊を持つことが出来るぜ！ありがとよ！」

そんなわけでトウマの暗示が決まりました。
トウマ【愚者】

風花「そして私も決まったッスよ！」
風花【塔】
巴「私はまだね」
雷魔「えっと…わたしはこれです」
雷魔【月】

魔奈「多くの者が決まって俺様は安心したぞ！」
ツバメ「あたしも嬉しい」

ハル「･･･ぼくは？」

ハルの暗示、現在思案中。

ちょっとしたおまけ④　了