11話：鉄の支配者　作：ヒラーズ

シンクロ召喚して現れたのは、鉄の鎧を着た謎の天使族。
右手で錫杖を持ち、左腕に盾を装着している。
「先攻は攻撃できない。カードを2枚伏せてターンエンド」

始芽　LP8000
手札2
場
鉄の支配者クラビート　ATK1000　☆9
伏せカード　2枚

場に存在するのは①と③の効果が表示されていない謎の闇属性の天使族。
迂闊に行動できないと海理は思いつつ、手札を確認する。
今のところクラビートをどかすカードはない。次は魔奈のターンだが、まるで自分のターンのように策を練り始める。
「俺様のターン！」
魔奈
手札5→6

「手札から悪王アフリマを捨てて、『闇黒世界－シャドウ・ディストピア－』を手札に加えて発動する！」

闇黒世界－シャドウ・ディストピア－
フィールド魔法
(1)：フィールドの表側表示モンスターは闇属性になる。
(2)：１ターンに１度、自分がカードの効果を発動するために自分フィールドのモンスターをリリースする場合、自分フィールドのモンスター１体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター１体をリリースできる。
(3)：自分・相手のエンドフェイズに発動する。このターンにこのカードが表側表示で存在する状態でリリースされたモンスターの数まで、ターンプレイヤーのフィールドに「シャドウトークン」（悪魔族・闇・星３・攻／守１０００）を可能な限り守備表示で特殊召喚する。

場に存在するモンスターを全て闇属性に変更するフィールド魔法。
魔奈のデッキはどうやら闇黒の呪縛を改造したものなのだろうか。
「さらに悪魔嬢リリスを召喚し、効果でリリース。デッキから3枚の通常罠を3枚相手に見せ、相手はその中の1枚を選ぶ。選んだカードは俺様の魔法・罠ゾーンにセットされ、残りのカードはデッキに戻す！そしてリリースをチェーンに闇黒の魔王ディアボロスを特殊召喚！！さぁ選べ！俺様が見せるカードはこれだ！！」

『奇跡の残照』
『闇の閃光』
『激流葬』

闇黒の魔王ディアボロス
☆8/闇属性/ドラゴン族／効果　ATK3000／DEF2000
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はこのカードをリリースできず、効果の対象にもできない。
(3)：自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースして発動できる。相手は手札を１枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す。

「では『奇跡の残照』を伏せて貰おう」
リリースチェーンで行える変わったデッキ、魔奈のデッキは相当恐ろしく見え、メンバーたちはそれを見守る。
「すごい…」「さすがマナっち、デッキが回る回る…」

「カードを1枚伏せてターンエンド、エンドフェイズ時に俺様の場にシャドウ・トークンが1体だけ守備表示で特殊召喚される」
魔奈　LP8000
手札2
場
闇黒の魔王ディアボロス　ATK3000　☆8
シャドウ・トークン　DEF1000　☆3
フィールド魔法『闇黒世界－シャドウ・ディストピア－』
伏せカード　2枚

「私のターン！」
海理
手札5→6

ドローしたカードを確認し、考える。
序盤のターンとあれどあんなに強力なモンスターを出されれば焦るも当然、友の助けがあるとはいえ、何もせず逃すわけにはいかない。
海理は次の自分のターンに賭け、行動する。
「手札から『トレード・イン』を発動、手札のレベル8モンスターを捨てて2枚引きます。さらに『復活の福音』を発動。墓地からドラゴン族モンスター1体を蘇生、現れよ…白眼の聖龍！」
白眼の聖龍　ATK3000　☆8

「何だ…？オーダーカードか？随分と弱そうだが…？」
「言ってくれますね…『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動！手札1枚をコストにデッキから攻撃力3000以上、守備力が2500以下のドラゴン族モンスターを2体まで手札に加えます。さらに手札から白眼の子竜を通常召喚し、効果でリリース。手札から白眼の聖龍を特殊召喚！効果では破壊されませんが、壁にします！」
2体の白眼が揃い、いつでもエクシーズ召喚できる準備が整った。
「魔法カード『復活の祭壇』を発動します！デッキトップからカードを2枚除外し、墓地の『トレード・イン』を回収します」
あの時、白紙のカードが1枚の魔法カードに変わったカード。
鉄道事件の時に賊精霊界で白紙となっていたカードは不思議な力で魔法カードのに変わった。そのカードの1枚である。

「そして『トレード・イン』を発動、手札のレベル8モンスター1体を捨てて2枚ドローします。カードを2枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時に私の場にシャドウ・トークン1体が守備表示で特殊召喚されます」
海理　LP8000
手札1
場
白眼の聖龍　ATK3000　☆8
白眼の聖龍　ATK3000　☆8
シャドウ・トークン　DEF1000　☆3
伏せカード　2枚

「僕のターン」
始芽
手札2→3

「ではクラビートの効果発動。1ターンに1度、ライフを1000払う事で、相手モンスター1体の攻撃力を得るよ。対象は白眼の聖龍だ。このカードの効果の対象にされたモンスターの攻撃力はこのターンのみ半分になるよ。ただし効果は無効にならないけどね」
始芽　LP8000→7000
鉄の支配者クラビート　ATK1000→4000
白眼の聖龍　ATK3000→1500

「…！」
白眼の力がクラビートに吸収され、打点が下がる。
それを糧にクラビートの攻撃力が4000になり、大きな脅威となった。
「バトルだ！クラビートでディアボロスを攻撃！ルーラー・ドグマ！！」
闇黒の魔王が錫杖から放たれる魔法で黒焦げにされ、無に還る。
破壊された衝撃で魔奈のライフも若干ながら削られる。
魔奈　LP8000→7000

「くっ…だが、たかが1000ライフくらいくれてやる！」
「その言葉…どこまで続くのかな？クラビートの最後の効果を発動！このカードが相手モンスターを破壊した時、相手に破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与え、もう1度だけ続けて攻撃できる。対象は海理ちゃん、君だ」
「私！？」
クラビートの錫杖から光線が放たれ、海理のライフがごっそりと削られる。
海理　LP8000→5000

「…！？」
光線が海理の右肩を貫通し、穴が開く。
不老不死でなければ痛いだけでは済まない。
ただ威力が強力すぎたのか、貫通した穴から少しずつ血液があふれ出す。
「…！！？」
――――さすが精霊カードだ、殺意が高いぞ。
――――だがこのままでは危険だ…。
（大丈夫…です…バーン効果は分かってました…）

「海理！！」
実態を持つダメージが体全体に負担をかけ、体勢を崩す。
しかし海理は痛みに耐え、立ち上がる。
「…続けて下さい」
「おや、我慢強い子だね。じゃあ海理ちゃんのトークンに攻撃してターンエンドかな」
「俺様のターン！」
魔奈
手札2→3

（クソッ…！どうする！？相手は精霊、しかも効果は強力…壁はない。このままでは俺様達が不利だ…！姉上なら…これをどうやって攻略する…！？）
魔奈のデッキに壊獣といった除去カードはない。
トークンは残ってるものの、モンスターがあまり出せない状況。
効果の対象にはされないディアボロスでも攻撃対象にはされる。
奇跡の残照は使えるが、相手が何をしてくるか分からない以上迂闊に発動できない。
自分のやった行いを悔やみ、考える。
（負ければ作戦は失敗…これでは姉上も…メンバーも救えん…！一体どうしろ言うのだ…！）

――――ようやく、私の出番か…全く、呼ぶのが遅すぎるぞ。
「…！」

突然にして魔奈の脳内に謎の声が響いた。