TURN 37 出会―星の降る宇宙で―下　作：Dann

　セキュリティビルの近くにあったファミリーレストラン。
　そこで雀夜達、遊星達は食事を取る事にした。
　雀夜は財布と相談しながら、狩は黙々と、悠美は同席のメンバーに女子が居ない事に対する悪態をブツブツ言いながら、遊星とクロウは申し訳なさそうに、ジャックはむしろ堂々と、それぞれが様々な表情でメニューを眺めていた。

　「……そう言えば、お前がマーカー付きになった理由ってなんだ？」

　雀夜に唐突にクロウがそんな事を聞いてきた。

　「ああ、これな。カード窃盗……の冤罪」
　「そうか……悪かったな、嫌な事思い出させて」

　答えた雀夜の表情から、あまり聞いて欲しくない事を聞いてしまったと悟ったクロウは詫びた。

　「俺からも質問いいか？」
　「ん？　ああ……」

　雀夜もまた、遊星に尋ねた。

　「この前の地上絵とかの事件なんだが……あのコンドルの地上絵の上で何やってたんだ？」
　「貴様！　見ていたのか！？」

　食いつく様にジャックが身を乗り出してきた。

　「地上絵のコースに上がっていった所だけだがな……」

　雀夜の胸倉を掴みそうになったジャックの腕を掴んだ狩が代わりに答えた。

　「ぬぅ……で？　どうしてお前達は地縛神に吸収されなかったのだ？」

　落ち着きを取り戻したジャックが座り、改めて問いかけた。

　「多分……これじゃないか？」

　そう言いながら雀夜は右手甲の“疾風”の証を見せた。

　「それは……っ！」

　急に遊星、ジャック、クロウの右腕が光りだす。それに呼応するかのように雀夜、狩、悠美の証も発光し始めた。

　「“ダークシグナー”の時と同じだ……もしかして、遊星達って……フィニー」
　『お前の考えてる通り、“シグナー”だろうな』

　雀夜の声で姿を隠していたフィニーが姿を現し、雀夜の肩に止まった。

　『どうせ飽き飽きのリアクションが来るだろうから先に話すぜ。俺はコイツのエースモンスターの《ヴァリアブル・フェニックス》の精霊だ』
　「なるほど。精霊なら“シグナー”の事を知ってるかもしれない……で、彼らは？」
　『OK、説明しよう』

　遊星の質問を受け、フィニーがまた長ったらしい説明を始めた。

　「“ＩＤ”……か。俺達“シグナー”の他にもそんな存在がいたとはな……」
　「……まぁ、注文出そうか。もう決まってるだろ」

　フィニーの説明を聞き驚いている遊星達に狩が言いながらワイヤレスチャイムを鳴らした。
　すると直ぐにウェイトレスが伝票を持って駆けつけた。

　「はい、ご注文はお決まりですか？」
　「あら可愛い」

　悠美がそんな事を言ったが全員無視した。

　「ハンバーグ＆ビーフ焼肉、ライスとブルーアイズマウンテンだ」
　「ぶふっ！」

　ジャックの注文を聞いた雀夜が思わず水を噴出した。
　それを見たジャックは、特に気にせずメニューを閉じた。

　「むぅ……豚肉の生姜焼き和膳」
　「じゃあ……自家製トマトソースのスパゲティ」
　「……焼き餃子とライス」

　やや落ち込み気味で雀夜は注文を言った。

　「トマトと温泉卵のリゾットで……」
　「そうねえ……オリジナルビーフカレーのＬ」

　「ご注文を繰り返します。ハンバーグ＆ビーフ焼肉が御1つ、ライスが御2つ……」

　ウェイトレスが繰り返した注文に間違いは無かったが、そこに悠美が口を挟んだ。

　「あ、追加注文」
　「はい、何でしょう？」
　「スマイル♪」

　「「……」」

　雀夜達の席にしばしの沈黙が訪れた。

　「……では、しばらくお待ちください」

　ウェイトレスはあえて無視し、その場から去っていった。

　「あれ～？」
　「頼むから自重してくれ……」

　キョトンとした表情の悠美に雀夜が呆れながらツッコんだ。