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HOME > 遊戯王SS一覧 > 6:アカデミアーその誇りとその勇気

6:アカデミアーその誇りとその勇気 作:

「次ッ!」

試験官が次の受験生を呼び込んだためユーイは試験官の前へと歩み出た。

ユーイを審査するのは、長めの黒髪をした男だった。非常に攻撃的な眼をしていて表情は険しく、人相はあまり良いとは言えない。
だがその姿にはどこか風格のようなものが漂っている。

(この人もかなり強そうだな)

ユーイにとってはその人格よりも決闘者としての実力の方が気になった。
この入学試験の試験官は基本的に生徒会メンバーが務めているらしい。先ほどの受付の女性といい、生徒会というだけあってアカデミア生の代表らしくそのメンバーは実力者揃いのようだ。

「どうした? さっさとモンスターを召喚しろ」

その試験官がぶっきらぼうに言い放つ。

ユーイはデュエルディスクに装填済みのデッキからカードを1枚抜き出す。都合よくユーイの召喚できる最高レベルのカードだ。
魔力を集中させ、そのモンスターを顕現させる。

現れたのは一昨日のシクスとのデュエルで活躍したモンスターそっくりの美剣士だった。


エルフの剣士(OP1400)


凛々しくも美しく整った顔立ちのエルフの青年剣士。
しかしそのレベルは下級モンスター相当の4。攻撃力もシクスの《戦慄の凶皇―ジェネシス・デーモン》の半分にも充たない1400でしかない。

それを確認して、試験官は眉間のシワを深める。

「・・・貴様、この試験の内容は把握しているな?」

「え、あ、はい」

「ではなんだこのモンスターは?」

「これが俺の召喚できる最高レベルのモンスターですよ」

試験官も当惑しているのだろうが、それはユーイも同じだ。
この魔力検査は自身の持つ最高レベルのモンスターを召喚してみせる試験。だから自分の召喚できる最高レベル4のモンスターを召喚したのだが、何かまずかったのだろうか。

試験官の目尻がぴくぴくと痙攣する。

「貴様、ふざけているのか・・・?」

無論ユーイはふざけてなどいない。大真面目に最高レベルのモンスターを召喚しただけなのだ。
しかし彼の眼にはそうは映らなかったらしい。

「ふざけちゃいません。俺はレベル5以上のモンスターを召喚できないんです」

正直に打ち明けるが、試験官の目はますます鋭くユーイを睨み付ける。

「上級モンスターを召喚できないだと? その程度の魔力しか持たないくせにこのデュエル・アカデミアに入学できると思っているのか? ふん、魔力の素養だけではなく認識も乏しいと見える。このデュエル・アカデミアに貴様のような雑魚の座る椅子などないわ!」

これまで何千何万という数の受験生がこのデュエル・アカデミア入学試験を受けてきたが、上級モンスターを召喚することすらできない者が入学を許されたことなどない。デュエル・アカデミアに入ることができるのは、決闘者として高い水準の実力を持ったエリートのみである。凡人に毛が生えた程度の決闘者でも上級モンスターくらいなら召喚できることを考えれば、それに劣る者を入学させることなどあり得ないのだ。
試験官にもアカデミア生としての誇りがある。明らかに劣る者が軽々しくアカデミアの入学試験を受けるなど、アカデミアの権威に対する侮辱でしかない。その逆鱗に触れても無理からぬことだったのかもしれない。

まして、この試験官―――『万城目 舜(マンジョウメ シュン)』はプライドの塊のような男である。
彼を知る者ならば、彼の激怒は予想に難くないことだった。

しかし、それに水を差すように受験生の中から声が上がる。

「いくらなんでもこんな試験だけで雑魚呼ばわりは早すぎるんジャン?」

列の中からずいと前に出てきたのは、緑色の髪を頭頂部で結った小柄な少年だ。

「なんだ、貴様は?」

口答えしたその少年にシュンの敵意が向く。

「受験番号1834番。名前はリュウア」

その名を聞いてシュンはフンと馬鹿にするように鼻を鳴らした。

「姓も名乗れぬ身の程の分際で、この万城目様に意見する気か?」

「ハッ、これだから頭の固い秤の国の人間は・・・! 俺達は『杖の国』生まれジャン。杖の国じゃ必ず誰もが姓を名乗るわけじゃないジャン。貴族至上社会で魔力量至上主義・・・時代遅れの秤の国らしいジャン!」

シュンの言葉は安い挑発であったが、リュウアと名乗る少年はそれに真っ向から食ってかかる。どうやら余程腹に据えかねているらしい。

秤の国ではほとんどの人に姓がある。姓を持たないのは、本当に最底辺―――奴隷に近い身分の者だけだ。
しかし杖の国では必ずしもそうではないらしい。
この国の常識が必ずしも世界の常識と同じだとは限らない。むしろそれは時代遅れだと笑われているかもしれないのだ。

「貴様ッ・・・!」

シュンから立ち上る怒気が一段と増し、今にもその手がリュウアへと伸びようとした時、

「そこまで、そこまで!」

二人の間に割って入ったのは小柄な人物だった。

彼の名前は『丸藤 翔流(マルフジ カケル)』。彼も生徒会メンバーの一人であり、ダイキやシュンと同じく魔力検査の試験官を務める一人でもある。

カケルは同年代の男子としてはかなり小柄な方だ。髪は水色。耳が隠れるくらいのボブカット。顔立ちも中性的で、遠くからであれば女の子に間違えられることも少なくない。性格も争い事を好まない穏やかなもの。
そういった容姿や性格から、総じてこういった揉め事の仲裁には向いていないと思われがちではある。

しかし、それでも彼はシュンとリュウアの間に割って入った。文字通り体ごとだ。

「なにやってるのさ、万城目君!」

たしなめるようにカケルはシュンを見る。
シュンは気位が高いところはあるが、見境なく相手を侮蔑するような分からないやつじゃあない。そのことはカケルも知っていた。何にイライラしているのか分からないが、いつもの彼らしくない。

「ふん、まぁいい。貴様がどれほどの決闘者か、それは実技試験で知れること。そこで恥をかきたくなければ、今すぐ荷物を纏めて田舎に逃げ帰ることだ」

そう言い捨て、シュンは踵を返した。



去っていくシュンの行く手にダイキが待っていた。

「有望そうな受験生に、敢えて悪役を演じて実技試験での発奮を促した・・・という解釈でいいのかな? 万城目」

通り過ぎようとしたシュンに苦笑まじりに声をかける。

「奇妙な感覚だ・・・」

対するシュンはどこまでも鋭い目付き。

「なに?」

「・・・お前も奴と対峙してみれば分かる。奴の持つ異様な雰囲気がな」

ユーイがデュエルディスクを構えて集中力を高め初めたのを目にした途端、胸の奥がざわめくような感覚に襲われた。それはまるで心の一番柔らかい部分に触れられたように抗い難く、また上位の決闘者から放たれる威圧感とも異なる『奇妙な感覚』としか言い様のないものだった。

ダイキは「へぇ」と目を細める。

(生憎と俺は万城目や天上院君のように見ただけで相手の実力を推し量るようなシックスセンスは持ち合わせちゃいない。しかし・・・)

ダイキはリアリストだ。科学で証明できない感覚的な物言いは好みではない。しかしそれを頭ごなしに否定するほど頭が固いわけでもなかった。

「あの武藤ユーイという男・・・何かあるぞ」

肩越しにシュンはユーイ達を振り返る。
ユーイにカケルがしきりに頭を下げていた。
その様子に不審な感じはない。あの奇妙な感覚も今は感じない。
それでもやはり疑念は消えはしなかった。

「奴が何者で、どれ程の力を秘めているのか。それは実技試験になればはっきりするだろう。奴の相手は俺がする」

言外にダイキにその役目を譲るつもりのないことを言い含め、シュンはそのまま振り向くことなく会場を後にしてしまった。

残されたダイキもユーイの姿を見やる。

(万城目は間違いなく今のアカデミアで五指に入る決闘者だ。それがそう感じたのならば、やはり凡俗の類いではないのだろうな)

ダイキは胸に芽生え始めた興味と好奇心に笑みを浮かべた。






一方、カケルはそんな二人のやり取りなど知るよしもなく、ユーイやリュウアにシュンの不遜な振る舞いを詫びていた。

「本当にごめんね」

先輩であるにも関わらずカケルは真摯に頭を下げる。
その様子にリュウアも手を振る。

「おいらもちょっと言い過ぎたジャン。この国に来てからああいう感じの人、色々いたから」

「俺も気にしちゃいません。魔力的に劣っているのは本当のことですし」

ユーイも気に止めていないことをアピールする。

二人が怒りを収めてくれたことに安心したのか、カケルの表情も緩んだ。

「そう言ってもらえると助かるよ。万城目君も普段はああじゃないんだけどね。何か機嫌が悪かったのかな。彼には後でちゃんと注意しておく。このことが試験の結果に反映されることはないようにするから安心して」

それどころかこちらの懸念を払拭して安心を促す。どうやらこの人は良い人のようだ。

すると、これまでユーイ達を遠巻きにしていた受験生の輪の中から「あの・・・」とおずおず進み出てくる少女がいた。

緑色の髪をツインテールに結った小柄な少女。その容貌はリュウアに酷似している。生意気そうなリュウアに対して、こちらはどこか控えめな印象を与える。

「リュウカ・・・」

やはりリュウアの知り合いのようだ。リュウアは彼女を見てバツの悪そうな顔をする。

リュウカと呼ばれた少女はそんなリュウアを尻目にカケルに歩み寄る。

「あの・・・受験番号1835番のリュウカと言います。お聞きしたいことがあるのですが、宜しいですか?」

「なに?」

「在校生に『十六夜 玲(イザヨイ アキラ)』さんという方はいらっしゃるでしょうか?」

「十六夜さん? 十六夜さんならボクと同じ生徒会のメンバーだよ。ボクの先輩さ」

カケルが答えると、リュウカは安心したように微笑む。
そしてリュウアを振り返り毅然とした目を向けた。

「何してるの、リュウア? あれほど問題は起こさないでって言ったよね?」

詰め寄られリュウアは喉に餅でも詰めたように黙る。

さらにリュウカはユーイにも視線を向けた。

「ウチのリュウアがご迷惑をおかけしてすみません」

深々と頭を下げる。まるで保護者であるかのような態度だ。

「双子?」

ユーイが尋ねると、二人は揃って頷いた。

「申し遅れました。私はリュウカ。こちらは兄のリュウアです。よろしくお願いします」

年の頃はユーイより少し下だろうか。
受験に年齢制限はないため、多分に幼さが残る顔立ちの二人だがここにいておかしいということはない。

「それにしてもすげージャン、アンタ。その魔力量でアカデミアを受験するなんてな。相当デュエルの腕に自信があるってことジャン?」

リュウアが爛々とした目で見上げてくる。

「どうかな。俺は世間知らずだから、他の人と比べて秀でているかどうかはよく分からないな」

謙遜ではなく、ユーイは本心からそう言う。

「なにせ『首飾りの国』の山奥から出てきたばかりなんだ」

ただし記憶喪失の件は黙っておく。そうベラベラと話す話でもないことくらいは分かっている。

「アンタも他国出身なのか。ったく、この国はまだ偏った差別主義で、嫌になっちゃうジャン。アンタもそう思うだろ?」

やはりリュウアはずいぶんとこの国の考え方に異論を持っているらしい。

確かにこの国の魔力量重視主義は貴族の特権社会を維持するために根差された考え方のように感じるところがある。貴族は総じて含有魔力量が多く、その特別性を魔力量重視主義が支えている格好だ。それにより魔力量の少ない者は謂れのない差別を受け易く虐げられているように感じる。

「誤解しないでもらいたいんだけど、この国もそんな人達ばかりじゃあないんだよ。特にこのアカデミアではあくまで評価の基準は魔力量じゃあなく、デュエルの強さなんだから」

カケルが弁明するように言う。

「確かに強力なモンスターを召喚するためには相応の魔力を必要とする。だけど強力なモンスターを召喚することだけがデュエルの勝敗を決めるわけじゃあない。現に上級モンスターを一切使わず、他のギミックで勝利を目指すデッキだってあるわけだしね」

カケルはこの『秤の国』出身なのだろう。
このアカデミアで他国出身の生徒と交流する機会の多い彼らにとっては、このリュウアの感じ方もまた偏見として受け止められてしまうのかもしれない。

「カケルの言う通りだ。要は魔力が多かろうが少なかろうが、デュエルに勝てさえすればいいのさ。重要なのは、君がその少ない魔力をどう使うかなんだよ」

そんな四人にダイキが歩み寄ってきた。

「カケル、交代の時間だ。俺達は実技に行けとさ」

どうやら試験官は交代で様々な部所を担当するらしい。実技試験は実際に受験生とデュエルするらしいので、消耗もあるだろうから当然と言えば当然だ。

「君達も魔力検査が終わったなら早く次の筆記試験に進んだ方がいい。この試験では実技が最も重要視される。そこには少しでも余裕を持って挑む方がいいと思うよ」

まだ魔力検査を終えていないリュウアとリュウカを残し、ユーイはダイキとカケルに促されて次の筆記試験会場へと移った。

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実に久しぶりの投稿となりました。
一気に登場人物が増えて賑やかになってきました。
まだまだ先は長そうですが、SS紹介板に載せてもらうのを目標にコツコツ行きます! (2018-01-14 13:20)
ター坊
GX勢だけでなく5Ds勢由来の名前の人もちらほら出てきましたね。ツンツンデレな発破をかける万城目先輩がなんとも言えません。
…そういえば筆記試験といえば学力が問われますが、頭良いのかな? (2018-01-14 13:49)
ター坊さん
由来?なんのことでしょう(笑)
筆記試験はさらっと終わらせるつもりです。次回はいよいよ実技試験です。デュエルパートを書きたくて仕方ないのです。
お楽しみに! (2018-01-14 17:54)
万城目の名前をジュンタからシュンに改めました。あしからずご了承下さい。 (2018-01-19 12:13)

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