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010:儀式パワーインセクトデッキ!! 作:天2
010:儀式パワーインセクトデッキ!!
ユーイがディスクを構えたのを見て、瓜生はにやりと笑った。
「ようやく闘る気になったか」
瓜生はにやにやと笑んだまま。
その表情には見覚えがある。自分が負けるなどとは微塵も考えていない顔だ。
「デュエルを始める前にはっきりさせておきたい。俺が勝ったら、ハヤトを自由にしてもらうぜ」
「良いだろう。だがその代わりオレが勝てば、テメェもオレの奴隷の仲間入りだ。もちろんそっちの嬢ちゃんもな」
箸を向けられたドールをチラリと見る。
彼女は鼻息荒く両腕を胸で組んで仁王立ち。
「ぬしらが自身の未来を掛けて闘うというに、儂だけ蚊帳の外というわけにいくまい」
よほど立腹しているのか、ギンと強い目でユーイを見返す。その瞳は、ユーイに『思い知らせてやれ』と指図している。
ユーイは『もちろん、そのつもりだ』と想いを込めて頷き返した。
「決まりだな。ククク、後悔してももう遅いぜ」
ユーイと瓜生は十数メートルほど離れて対峙する。
お互いディスクを掲げ合い、闘志を高めていく。
「一瞬で終わらせてやるぜ!」
瓜生の嗜虐的な叫びが合図となった。
ーーー デュエル!! ーーー
ユーイと瓜生が同時に初手の5枚をデッキから引き抜く。
ユーイ LP4000
瓜生 LP4000
「先攻は譲ってやるよ」
瓜生が手札を確認する前にそう言った。
ユーイは無言ながら、それを了承する。
先攻はユーイ。
5枚の手札を確認する。悪くない手札だ。これなら早々にあのモンスターを喚べる。
「俺は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動する!」
†
《ワン・フォー・ワン》
通常魔法(制限カード)
(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。
†
「手札の《ドットスケーパー》を墓地に送り、デッキからレベル1のサイバース族モンスター《ドングルドングリ》を特殊召喚!」
ユーイのフィールドに、光に包まれるようにしてドングリにUSBコネクタがくっついたような小さなモンスターが現れる。
†
《ドングルドングリ》
効果モンスター
星1/闇属性/サイバース族/攻 0/守 0
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分フィールドに「ドングルトークン」(サイバース族・闇・星1・攻/守0)1体を特殊召喚する。
†
「《ドングルドングリ》のモンスター効果! このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドに《ドングルトークン》を特殊召喚できる!」
《ドングルドングリ》からUSBコネクタ部分が独立し、その隣のモンスターゾーンに1個のモンスターとして浮かぶ。
ドングルトークン:ATK0
「更に、墓地に送られた《ドットスケーパー》の効果! このカードを特殊召喚する!」
†
《ドットスケーパー》
効果モンスター
星1/地属性/サイバース族/攻 0/守2100
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、それぞれデュエル中に1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。
(2):このカードが除外された場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。
†
《ドングルドングリ》の隣に、更に別のモンスターが特殊召喚される。
《ドットスケーパー》は、小さな立方体が集まって体を形成したようなモンスターだ。
《ドングルドングリ》
《ドングルトークン》
《ドットスケーパー》
これでユーイのフィールドに、レベル1のモンスターが3体並んだ。
「ス、スゴイんだな! レベル1とは言え、一瞬でモンスターを3体も並べるなんて!」
ハヤトが声を上げる。
このデュエルはハヤトを奴隷の立場から解放するための戦いだ。謂わばハヤト自身が戦えないため、その代役としてユーイが戦いに臨んでいると言える。
しかしこれはハヤトにとっても大きな賭けだった。
ハヤトとユーイはほんの数十分前に出会ったばかりの間柄だ。実のところお互いについて深く知り合っているわけではない。デュエルの実力も全くの未知数。そんな相手に、ハヤトは自分の人生を左右する大勝負を託しているのだ。普通ならとても正気の沙汰ではなく、不安がないわけもない。
だからこそ、モンスターを一気に並べたユーイの展開力にハヤトの不安は和らぎ、安堵の歓声を上げさせたのだ。
しかしそれでも瓜生の余裕ある態度は変わらない。
「そんな貧弱なモンスターを並べたところで、何だってんだ。レベル1の底辺モンスターをいくら並べられても、怖くもなんともないぜ」
瓜生の言う通り、ユーイが喚び出した3体のモンスターはいずれもレベル1で攻撃力も全て0だ。頭数はいても、戦力としては皆無だろう。
だがユーイにとって、いま重要なのは戦力ではなく他ならぬ頭数だった。
そしてユーイは手をかざす。
ユーイの展開はまだ終わってはいないのだ。
「現れろ! 未来を導くサーキット!!」
ユーイの手から光が走り、中空にゲートを描き出す。
「な、なんだ!?」
驚いたのはハヤトだけではなかった。
今度は瓜生達も困惑に眉を寄せ、口を半開く。
「召喚条件は『レベル1モンスター1体』! 俺はレベル1の《ドングルトークン》をリンクマーカーにセット!!」
フィールドの《ドングルトークン》が黒い矢となり、ゲート下方向の矢印へと吸い込まれる。
「リンク召喚!! 現れろッ! リンク1《リンクリボー》!!」
ゲートが明滅し、現れ出たのは丸い体躯にぱちくりとした大きな目をした愛らしいリンクモンスターだった。
†
《リンクリボー》
リンク・効果モンスター
リンク1/闇属性/サイバース族/攻 300
【リンクマーカー:下】
レベル1モンスター1体
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをリリースして発動できる。その相手モンスターの攻撃力はターン終了時まで0になる。
(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル1モンスター1体をリリースして発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
†
丸い体はツルッとしていて黒光りする質感。まるで足の生えたおたまじゃくしのようだ。
特徴的なのは尻尾で、リンクマーカーのような矢印が付いている。
「リンク召喚だとォ……?」
例によって瓜生もリンク召喚を見るのは初めてといった風だ。訝しげに眉間にシワを寄せている。
初見なのはハヤトも同様らしく、こちらは口をあんぐりと開けて言葉もない。
「まだまだッ! 続けて現れろ! 未来を導くサーキット!!」
ユーイは止まらず、再びサーキットを展開する。
《リンクリボー》のリンク召喚はまだ中継点に過ぎない。このリンク召喚こそが、ユーイの本命だった。
「アローヘッド確認! 召喚条件は『闇属性モンスターを含む効果モンスター2体以上』! 俺はフィールドの《リンクリボー》・《ドングルドングリ》・《ドットスケーパー》の3体をリンクマーカーにセット!!」
このリンクモンスターを喚び出すには、そのリンク素材は効果モンスターでなければならない。トークンである《ドングルトークン》は通常モンスターとして扱われるため、そのままではリンク素材にはできない。そのため一度リンク召喚を行い、効果モンスターである《リンクリボー》を中継する必要があったのだ。
指定された3体の効果モンスターが、3本の矢と化してリンクマーカーへと吸い込まれた。
今度は上・右下・左下の3ヶ所のマーカーが点灯する。
そしてユーイは喚び出した。彼のエースモンスターを。
「リンク召喚!! 現れろ! リンク3《ダークコード・トーカー》!!」
黒い気と鎧に身を包み、絡まる蛇の如き大剣を担ぐ闇の剣士。
ダークコード・トーカー:ATK2300
EXモンスターゾーンに見参した《ダークコード・トーカー》は、対戦相手である瓜生をその威風で威圧する。
「くっ……あの雑魚モンスター共がこれ程のモンスターに化けるかよ」
「《ダークコード・トーカー》の真価はまだこんなもんじゃないぜ。俺にはまだ召喚権が残っている」
《ダークコード・トーカー》のリンク素材に使ったのは、全て特殊召喚したモンスターばかり。ユーイはこのターンまだ通常召喚の権利を行使していない。
ユーイは手札から更にモンスターを選び、メインモンスターゾーンに召喚する。
「《ランチャー・コマンダー》を《ダークコード・トーカー》のリンク先に通常召喚!」
現れたのは、バズーカやロケットランチャー等の重火器を装備したロボットのようなサイバースモンスター。
†
《ランチャー・コマンダー》
効果モンスター
星4/地属性/サイバース族/攻1700/守1200
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分フィールドのサイバース族モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。
(2):1ターンに1度、自分フィールドのサイバース族モンスター1体をリリースし、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを破壊する。
†
「この瞬間、《ダークコード・トーカー》のモンスター効果が発動する! 《ダークコード・トーカー》のリンク先にサイバースモンスターが召喚されたことで、墓地から空いているリンク先に闇属性モンスター1体を特殊召喚できる! 蘇れ、《リンクリボー》!!」
《ダークコード・トーカー》のリンク素材として一度は墓地に送られた《リンクリボー》が、今度はメインモンスターゾーンに現れる。
「これで《ダークコード・トーカー》のリンク先のモンスターは2体! 《ダークコード・トーカー》のモンスター効果により、その攻撃力がアップする! “パワー・インテグレーション”!!」
ダークコード・トーカー
ATK2300→3300
「更に《ランチャー・コマンダー》のモンスター効果! このカードがモンスターゾーンにいる限り、他のサイバース族モンスターの攻撃力・守備力は300アップする!」
ダークコード・トーカー
ATK3300→3600
リンクリボー
ATK300→600
「攻撃力3600……か」
自身と《ランチャー・コマンダー》の効果を受けた《ダークコード・トーカー》の攻撃力は、並みの最上級モンスターならば軽く凌駕する数値へと高まっている。
更に《リンクリボー》には、相手モンスターの攻撃に反応してその攻撃力を0にする効果がある。
これらを並べたことで、最早戦闘に於いては鉄壁とも言える布陣が出来上がった。
その布陣を見やって、ドールが「フム」と息をつく。
「初っぱなから《ダークコード・トーカー》を出して行くか。ユーイも大分ご立腹ということかの。……さて」
と、チラリと対戦相手へと視線を移す。
傍らのハヤトは未知の戦法の連続に、頭から煙を出しそうなくらい困惑している。それに比べ瓜生は、困惑こそしてはいるがまだかなり余裕がありそうだ。
その余裕具合に、ドールは眼を細める。
「むぅ……。これは何かあると思うておいた方が良さそうじゃぞ、ユーイ」
余裕があるということは、相手の戦術が許容範囲内ということだ。
リンク召喚のについては驚いていたようだったが、攻撃力3600の《ダークコード・トーカー》+《リンクリボー》の布陣を受けて尚の余裕には、何か理由があるはずだ。
ドールの言葉が届いたのか届かなかったのか、ユーイは更に手札から1枚をディスクに挿入した。
「カードを1枚伏せ、俺はこれでターンエンドだ」
ユーイ:LP4000/手札1
●モンスター
ダークコード・トーカー:ATK3600
ランチャー・コマンダー:ATK1700
リンクリボー:ATK600
●魔法・罠
伏せカード1枚
瓜生:LP4000/手札5
●モンスター
なし
●魔法・罠
なし
「オレのターン!」
瓜生にターンが移り、デッキからカードをドローする。
だが瓜生はすぐにはプレイに移らず、口を開いた。
「リンク召喚ねェ……。大方シティで開発された新しい召喚法ってとこか。それがテメェの『力』ってわけだな」
瓜生の視線の先には、黒い気を纏い静かな迫力を醸している《ダークコード・トーカー》の姿。
だがその様子は《ダークコード・トーカー》に臆しているという風ではない。むしろドローカードを確認してほくそ笑んでいる。
「サテライトじゃまだ知られてねェ力を引っ提げて来て、ここで無双できるなんて思ってたんならとんだ勘違いだぜ。力ってのは、新しければ良いってもんじゃねェ。力の良し悪しに重要なのは、『如何に苛烈か』ってとこだ。それを見せてやる」
瓜生は今ドローしたばかりのカードをディスクに叩きつける。
「オレは手札から《ダイオウギシキムシ》を召喚!」
瓜生のフィールドに現れたのは、大型犬ほどの体長はあるダンゴムシのようなモンスター。
†
《ダイオウギシキムシ》
効果モンスター(オリジナル)
星4/地属性/昆虫族/攻1400/守1400
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札の昆虫族モンスター1体を破壊し墓地へ送る。その後、デッキから昆虫族儀式モンスター1体とそのカードにカード名が記されている儀式魔法カード1枚を手札に加える。
†
「《ダイオウギシキムシ》のモンスター効果発動! オレは手札の昆虫モンスター《アリジバク》を破壊し、デッキから昆虫族儀式モンスターとその儀式魔法カードを手札に加えるぜ!」
瓜生は手札のモンスターカードを墓地に送り、デッキから2枚の新カードを手札に加えた。
しかし、瓜生のこのプレイはただのサーチだけではなかった。
「破壊され墓地に送られた《アリジバク》の効果発動! 《アリジバク》は戦闘・効果で破壊され墓地に送られた場合、相手に1000ダメージを与えるぜ!」
†
《アリジバク》
リバース・効果モンスター
星3/地属性/昆虫族/攻1500/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合に発動する。お互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。相手に1000ダメージを与える。
†
瓜生のフィールドに流砂の渦が発生する。それはまるで砂漠で獲物を捕らえる蟻地獄のようだ。
「くっ……!」
その蟻地獄から閃光が放たれ、ユーイを襲う。ユーイにそれを防ぐ手段はない。
「ぐああッ!!」
閃光の直撃を受けて、ユーイの顔が歪む。
実際に身体が傷付くわけではないが、精神へのダメージは痛みを体感させる。まるで皮膚が焼かれるようなヒリヒリする痛みが、じわりとユーイの心を蝕む。
ユーイ:LP4000→3000
「サーチと同時にユーイにダメージを……! 流石にやるんだな……!」
ハヤトが感嘆を漏らす通り、瓜生はこのプレイだけでカードアドバンテージと効果ダメージを同時に稼いだことになる。
今のプレイだけで、彼のデュエルセンスの高さが分かるというものだ。
だが瓜生の攻めはまだ終わりではない。
むしろここからが彼の儀式パワーインセクトデッキの真骨頂と言えた。
「そしてオレはたったいま手札に加えた儀式魔法《パワーインセクトの凶誕》を発動!」
†
《パワーインセクトの凶誕》
儀式魔法(オリジナル)
レベル8以上の昆虫族儀式モンスターの降臨に必要。
(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地から昆虫族モンスター除外し、手札からレベル8以上の昆虫族儀式モンスター1体を儀式召喚する。
†
それはたった今《ダイオウギシキムシ》の効果でサーチされたばかりの儀式魔法カード。
それはレベル8以上の昆虫族儀式モンスターならばどんなモンスターでも儀式召喚できる汎用性の高さと、リリースの代わりに墓地の昆虫族モンスターを除外できる省エネ性を兼ね備えたカードだった。
しかし瓜生はあえて手札のモンスターをリリースする。
「オレは手札のレベル8昆虫モンスター《デビルドーザー》をリリースする!」
†
《デビルドーザー》
効果モンスター
星8/地属性/昆虫族/攻2800/守2600
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の昆虫族モンスター2体を ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。
†
《デビルドーザー》は巨大なムカデのようなモンスターだ。身体を持ち上げ立ち上がった姿は、見上げる程の大きさとなる。
その《デビルドーザー》が燃え上がり、8つの青い炎に姿を変える。それらが円状に連なり、魔法陣を形成した。
「見ろ、これがオレの最強モンスターだ! 儀式召喚!! 降臨せよ! レベル8《エビルドーザー》!!」
魔法陣から現れ出たのは、《デビルドーザー》によく似たムカデのモンスターだった。
ピンク色だった体色は青色になり、体表に刺々しさが増し、更に凶悪な容貌へと変わっている。
†
《エビルドーザー》
儀式・効果モンスター(オリジナル)
星8/地属性/昆虫族/攻2800/守2600
「パワーインセクトの凶誕」により降臨。
(1):このカードがレベル8の昆虫族モンスターのみをリリースして儀式召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地に送られた場合に、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊し、相手にそのモンスターの攻撃力の半分の値のダメージを与える。
†
「そしてこの瞬間、《エビルドーザー》の凶悪なモンスター効果が発動する! 《エビルドーザー》は、レベル8の昆虫族モンスターのみをリリースして儀式召喚された場合、相手フィールドの全ての表側表示モンスターを破壊できるのだ!」
「なにッ!?」
この凶悪極まりない破壊能力の発動こそが、瓜生の狙いだったのだ。
全体破壊。それは言うまでもなく最強のモンスター破壊効果である。どれほど攻撃力・守備力に優れていようとも、この効果の前には塵と同じ。防げなければ、即致命的になりかねない危険な能力だった。
しかしユーイのフィールドの3体のモンスターにこれを防ぐ手立てはない。
「殲滅しろッ!《エビルドーザー》!!」
《エビルドーザー》が仰け反るようにして力を溜め、勢いをつけて口から破壊エネルギーを一気に放出する。
その力の奔流はユーイのモンスターを根こそぎ飲み込み、凄まじい威力の爆発を生んだ。
「ユーイッーーー!!」
それは思わずハヤトが心配の叫びを上げてしまうほどに圧倒的な破壊力だった。
爆煙がもうもうと辺りを覆い、視界は灰色一色。
その中で、瓜生だけが確かに笑っていた。
「だから言ったろ? 力ってのは、より『苛烈』な方が良いってな」
ユーイがディスクを構えたのを見て、瓜生はにやりと笑った。
「ようやく闘る気になったか」
瓜生はにやにやと笑んだまま。
その表情には見覚えがある。自分が負けるなどとは微塵も考えていない顔だ。
「デュエルを始める前にはっきりさせておきたい。俺が勝ったら、ハヤトを自由にしてもらうぜ」
「良いだろう。だがその代わりオレが勝てば、テメェもオレの奴隷の仲間入りだ。もちろんそっちの嬢ちゃんもな」
箸を向けられたドールをチラリと見る。
彼女は鼻息荒く両腕を胸で組んで仁王立ち。
「ぬしらが自身の未来を掛けて闘うというに、儂だけ蚊帳の外というわけにいくまい」
よほど立腹しているのか、ギンと強い目でユーイを見返す。その瞳は、ユーイに『思い知らせてやれ』と指図している。
ユーイは『もちろん、そのつもりだ』と想いを込めて頷き返した。
「決まりだな。ククク、後悔してももう遅いぜ」
ユーイと瓜生は十数メートルほど離れて対峙する。
お互いディスクを掲げ合い、闘志を高めていく。
「一瞬で終わらせてやるぜ!」
瓜生の嗜虐的な叫びが合図となった。
ーーー デュエル!! ーーー
ユーイと瓜生が同時に初手の5枚をデッキから引き抜く。
ユーイ LP4000
瓜生 LP4000
「先攻は譲ってやるよ」
瓜生が手札を確認する前にそう言った。
ユーイは無言ながら、それを了承する。
先攻はユーイ。
5枚の手札を確認する。悪くない手札だ。これなら早々にあのモンスターを喚べる。
「俺は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動する!」
†
《ワン・フォー・ワン》
通常魔法(制限カード)
(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。
†
「手札の《ドットスケーパー》を墓地に送り、デッキからレベル1のサイバース族モンスター《ドングルドングリ》を特殊召喚!」
ユーイのフィールドに、光に包まれるようにしてドングリにUSBコネクタがくっついたような小さなモンスターが現れる。
†
《ドングルドングリ》
効果モンスター
星1/闇属性/サイバース族/攻 0/守 0
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分フィールドに「ドングルトークン」(サイバース族・闇・星1・攻/守0)1体を特殊召喚する。
†
「《ドングルドングリ》のモンスター効果! このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドに《ドングルトークン》を特殊召喚できる!」
《ドングルドングリ》からUSBコネクタ部分が独立し、その隣のモンスターゾーンに1個のモンスターとして浮かぶ。
ドングルトークン:ATK0
「更に、墓地に送られた《ドットスケーパー》の効果! このカードを特殊召喚する!」
†
《ドットスケーパー》
効果モンスター
星1/地属性/サイバース族/攻 0/守2100
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、それぞれデュエル中に1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。
(2):このカードが除外された場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。
†
《ドングルドングリ》の隣に、更に別のモンスターが特殊召喚される。
《ドットスケーパー》は、小さな立方体が集まって体を形成したようなモンスターだ。
《ドングルドングリ》
《ドングルトークン》
《ドットスケーパー》
これでユーイのフィールドに、レベル1のモンスターが3体並んだ。
「ス、スゴイんだな! レベル1とは言え、一瞬でモンスターを3体も並べるなんて!」
ハヤトが声を上げる。
このデュエルはハヤトを奴隷の立場から解放するための戦いだ。謂わばハヤト自身が戦えないため、その代役としてユーイが戦いに臨んでいると言える。
しかしこれはハヤトにとっても大きな賭けだった。
ハヤトとユーイはほんの数十分前に出会ったばかりの間柄だ。実のところお互いについて深く知り合っているわけではない。デュエルの実力も全くの未知数。そんな相手に、ハヤトは自分の人生を左右する大勝負を託しているのだ。普通ならとても正気の沙汰ではなく、不安がないわけもない。
だからこそ、モンスターを一気に並べたユーイの展開力にハヤトの不安は和らぎ、安堵の歓声を上げさせたのだ。
しかしそれでも瓜生の余裕ある態度は変わらない。
「そんな貧弱なモンスターを並べたところで、何だってんだ。レベル1の底辺モンスターをいくら並べられても、怖くもなんともないぜ」
瓜生の言う通り、ユーイが喚び出した3体のモンスターはいずれもレベル1で攻撃力も全て0だ。頭数はいても、戦力としては皆無だろう。
だがユーイにとって、いま重要なのは戦力ではなく他ならぬ頭数だった。
そしてユーイは手をかざす。
ユーイの展開はまだ終わってはいないのだ。
「現れろ! 未来を導くサーキット!!」
ユーイの手から光が走り、中空にゲートを描き出す。
「な、なんだ!?」
驚いたのはハヤトだけではなかった。
今度は瓜生達も困惑に眉を寄せ、口を半開く。
「召喚条件は『レベル1モンスター1体』! 俺はレベル1の《ドングルトークン》をリンクマーカーにセット!!」
フィールドの《ドングルトークン》が黒い矢となり、ゲート下方向の矢印へと吸い込まれる。
「リンク召喚!! 現れろッ! リンク1《リンクリボー》!!」
ゲートが明滅し、現れ出たのは丸い体躯にぱちくりとした大きな目をした愛らしいリンクモンスターだった。
†
《リンクリボー》
リンク・効果モンスター
リンク1/闇属性/サイバース族/攻 300
【リンクマーカー:下】
レベル1モンスター1体
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをリリースして発動できる。その相手モンスターの攻撃力はターン終了時まで0になる。
(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル1モンスター1体をリリースして発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
†
丸い体はツルッとしていて黒光りする質感。まるで足の生えたおたまじゃくしのようだ。
特徴的なのは尻尾で、リンクマーカーのような矢印が付いている。
「リンク召喚だとォ……?」
例によって瓜生もリンク召喚を見るのは初めてといった風だ。訝しげに眉間にシワを寄せている。
初見なのはハヤトも同様らしく、こちらは口をあんぐりと開けて言葉もない。
「まだまだッ! 続けて現れろ! 未来を導くサーキット!!」
ユーイは止まらず、再びサーキットを展開する。
《リンクリボー》のリンク召喚はまだ中継点に過ぎない。このリンク召喚こそが、ユーイの本命だった。
「アローヘッド確認! 召喚条件は『闇属性モンスターを含む効果モンスター2体以上』! 俺はフィールドの《リンクリボー》・《ドングルドングリ》・《ドットスケーパー》の3体をリンクマーカーにセット!!」
このリンクモンスターを喚び出すには、そのリンク素材は効果モンスターでなければならない。トークンである《ドングルトークン》は通常モンスターとして扱われるため、そのままではリンク素材にはできない。そのため一度リンク召喚を行い、効果モンスターである《リンクリボー》を中継する必要があったのだ。
指定された3体の効果モンスターが、3本の矢と化してリンクマーカーへと吸い込まれた。
今度は上・右下・左下の3ヶ所のマーカーが点灯する。
そしてユーイは喚び出した。彼のエースモンスターを。
「リンク召喚!! 現れろ! リンク3《ダークコード・トーカー》!!」
黒い気と鎧に身を包み、絡まる蛇の如き大剣を担ぐ闇の剣士。
ダークコード・トーカー:ATK2300
EXモンスターゾーンに見参した《ダークコード・トーカー》は、対戦相手である瓜生をその威風で威圧する。
「くっ……あの雑魚モンスター共がこれ程のモンスターに化けるかよ」
「《ダークコード・トーカー》の真価はまだこんなもんじゃないぜ。俺にはまだ召喚権が残っている」
《ダークコード・トーカー》のリンク素材に使ったのは、全て特殊召喚したモンスターばかり。ユーイはこのターンまだ通常召喚の権利を行使していない。
ユーイは手札から更にモンスターを選び、メインモンスターゾーンに召喚する。
「《ランチャー・コマンダー》を《ダークコード・トーカー》のリンク先に通常召喚!」
現れたのは、バズーカやロケットランチャー等の重火器を装備したロボットのようなサイバースモンスター。
†
《ランチャー・コマンダー》
効果モンスター
星4/地属性/サイバース族/攻1700/守1200
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分フィールドのサイバース族モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。
(2):1ターンに1度、自分フィールドのサイバース族モンスター1体をリリースし、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを破壊する。
†
「この瞬間、《ダークコード・トーカー》のモンスター効果が発動する! 《ダークコード・トーカー》のリンク先にサイバースモンスターが召喚されたことで、墓地から空いているリンク先に闇属性モンスター1体を特殊召喚できる! 蘇れ、《リンクリボー》!!」
《ダークコード・トーカー》のリンク素材として一度は墓地に送られた《リンクリボー》が、今度はメインモンスターゾーンに現れる。
「これで《ダークコード・トーカー》のリンク先のモンスターは2体! 《ダークコード・トーカー》のモンスター効果により、その攻撃力がアップする! “パワー・インテグレーション”!!」
ダークコード・トーカー
ATK2300→3300
「更に《ランチャー・コマンダー》のモンスター効果! このカードがモンスターゾーンにいる限り、他のサイバース族モンスターの攻撃力・守備力は300アップする!」
ダークコード・トーカー
ATK3300→3600
リンクリボー
ATK300→600
「攻撃力3600……か」
自身と《ランチャー・コマンダー》の効果を受けた《ダークコード・トーカー》の攻撃力は、並みの最上級モンスターならば軽く凌駕する数値へと高まっている。
更に《リンクリボー》には、相手モンスターの攻撃に反応してその攻撃力を0にする効果がある。
これらを並べたことで、最早戦闘に於いては鉄壁とも言える布陣が出来上がった。
その布陣を見やって、ドールが「フム」と息をつく。
「初っぱなから《ダークコード・トーカー》を出して行くか。ユーイも大分ご立腹ということかの。……さて」
と、チラリと対戦相手へと視線を移す。
傍らのハヤトは未知の戦法の連続に、頭から煙を出しそうなくらい困惑している。それに比べ瓜生は、困惑こそしてはいるがまだかなり余裕がありそうだ。
その余裕具合に、ドールは眼を細める。
「むぅ……。これは何かあると思うておいた方が良さそうじゃぞ、ユーイ」
余裕があるということは、相手の戦術が許容範囲内ということだ。
リンク召喚のについては驚いていたようだったが、攻撃力3600の《ダークコード・トーカー》+《リンクリボー》の布陣を受けて尚の余裕には、何か理由があるはずだ。
ドールの言葉が届いたのか届かなかったのか、ユーイは更に手札から1枚をディスクに挿入した。
「カードを1枚伏せ、俺はこれでターンエンドだ」
ユーイ:LP4000/手札1
●モンスター
ダークコード・トーカー:ATK3600
ランチャー・コマンダー:ATK1700
リンクリボー:ATK600
●魔法・罠
伏せカード1枚
瓜生:LP4000/手札5
●モンスター
なし
●魔法・罠
なし
「オレのターン!」
瓜生にターンが移り、デッキからカードをドローする。
だが瓜生はすぐにはプレイに移らず、口を開いた。
「リンク召喚ねェ……。大方シティで開発された新しい召喚法ってとこか。それがテメェの『力』ってわけだな」
瓜生の視線の先には、黒い気を纏い静かな迫力を醸している《ダークコード・トーカー》の姿。
だがその様子は《ダークコード・トーカー》に臆しているという風ではない。むしろドローカードを確認してほくそ笑んでいる。
「サテライトじゃまだ知られてねェ力を引っ提げて来て、ここで無双できるなんて思ってたんならとんだ勘違いだぜ。力ってのは、新しければ良いってもんじゃねェ。力の良し悪しに重要なのは、『如何に苛烈か』ってとこだ。それを見せてやる」
瓜生は今ドローしたばかりのカードをディスクに叩きつける。
「オレは手札から《ダイオウギシキムシ》を召喚!」
瓜生のフィールドに現れたのは、大型犬ほどの体長はあるダンゴムシのようなモンスター。
†
《ダイオウギシキムシ》
効果モンスター(オリジナル)
星4/地属性/昆虫族/攻1400/守1400
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札の昆虫族モンスター1体を破壊し墓地へ送る。その後、デッキから昆虫族儀式モンスター1体とそのカードにカード名が記されている儀式魔法カード1枚を手札に加える。
†
「《ダイオウギシキムシ》のモンスター効果発動! オレは手札の昆虫モンスター《アリジバク》を破壊し、デッキから昆虫族儀式モンスターとその儀式魔法カードを手札に加えるぜ!」
瓜生は手札のモンスターカードを墓地に送り、デッキから2枚の新カードを手札に加えた。
しかし、瓜生のこのプレイはただのサーチだけではなかった。
「破壊され墓地に送られた《アリジバク》の効果発動! 《アリジバク》は戦闘・効果で破壊され墓地に送られた場合、相手に1000ダメージを与えるぜ!」
†
《アリジバク》
リバース・効果モンスター
星3/地属性/昆虫族/攻1500/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合に発動する。お互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。相手に1000ダメージを与える。
†
瓜生のフィールドに流砂の渦が発生する。それはまるで砂漠で獲物を捕らえる蟻地獄のようだ。
「くっ……!」
その蟻地獄から閃光が放たれ、ユーイを襲う。ユーイにそれを防ぐ手段はない。
「ぐああッ!!」
閃光の直撃を受けて、ユーイの顔が歪む。
実際に身体が傷付くわけではないが、精神へのダメージは痛みを体感させる。まるで皮膚が焼かれるようなヒリヒリする痛みが、じわりとユーイの心を蝕む。
ユーイ:LP4000→3000
「サーチと同時にユーイにダメージを……! 流石にやるんだな……!」
ハヤトが感嘆を漏らす通り、瓜生はこのプレイだけでカードアドバンテージと効果ダメージを同時に稼いだことになる。
今のプレイだけで、彼のデュエルセンスの高さが分かるというものだ。
だが瓜生の攻めはまだ終わりではない。
むしろここからが彼の儀式パワーインセクトデッキの真骨頂と言えた。
「そしてオレはたったいま手札に加えた儀式魔法《パワーインセクトの凶誕》を発動!」
†
《パワーインセクトの凶誕》
儀式魔法(オリジナル)
レベル8以上の昆虫族儀式モンスターの降臨に必要。
(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地から昆虫族モンスター除外し、手札からレベル8以上の昆虫族儀式モンスター1体を儀式召喚する。
†
それはたった今《ダイオウギシキムシ》の効果でサーチされたばかりの儀式魔法カード。
それはレベル8以上の昆虫族儀式モンスターならばどんなモンスターでも儀式召喚できる汎用性の高さと、リリースの代わりに墓地の昆虫族モンスターを除外できる省エネ性を兼ね備えたカードだった。
しかし瓜生はあえて手札のモンスターをリリースする。
「オレは手札のレベル8昆虫モンスター《デビルドーザー》をリリースする!」
†
《デビルドーザー》
効果モンスター
星8/地属性/昆虫族/攻2800/守2600
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の昆虫族モンスター2体を ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。
†
《デビルドーザー》は巨大なムカデのようなモンスターだ。身体を持ち上げ立ち上がった姿は、見上げる程の大きさとなる。
その《デビルドーザー》が燃え上がり、8つの青い炎に姿を変える。それらが円状に連なり、魔法陣を形成した。
「見ろ、これがオレの最強モンスターだ! 儀式召喚!! 降臨せよ! レベル8《エビルドーザー》!!」
魔法陣から現れ出たのは、《デビルドーザー》によく似たムカデのモンスターだった。
ピンク色だった体色は青色になり、体表に刺々しさが増し、更に凶悪な容貌へと変わっている。
†
《エビルドーザー》
儀式・効果モンスター(オリジナル)
星8/地属性/昆虫族/攻2800/守2600
「パワーインセクトの凶誕」により降臨。
(1):このカードがレベル8の昆虫族モンスターのみをリリースして儀式召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。
(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地に送られた場合に、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊し、相手にそのモンスターの攻撃力の半分の値のダメージを与える。
†
「そしてこの瞬間、《エビルドーザー》の凶悪なモンスター効果が発動する! 《エビルドーザー》は、レベル8の昆虫族モンスターのみをリリースして儀式召喚された場合、相手フィールドの全ての表側表示モンスターを破壊できるのだ!」
「なにッ!?」
この凶悪極まりない破壊能力の発動こそが、瓜生の狙いだったのだ。
全体破壊。それは言うまでもなく最強のモンスター破壊効果である。どれほど攻撃力・守備力に優れていようとも、この効果の前には塵と同じ。防げなければ、即致命的になりかねない危険な能力だった。
しかしユーイのフィールドの3体のモンスターにこれを防ぐ手立てはない。
「殲滅しろッ!《エビルドーザー》!!」
《エビルドーザー》が仰け反るようにして力を溜め、勢いをつけて口から破壊エネルギーを一気に放出する。
その力の奔流はユーイのモンスターを根こそぎ飲み込み、凄まじい威力の爆発を生んだ。
「ユーイッーーー!!」
それは思わずハヤトが心配の叫びを上げてしまうほどに圧倒的な破壊力だった。
爆煙がもうもうと辺りを覆い、視界は灰色一色。
その中で、瓜生だけが確かに笑っていた。
「だから言ったろ? 力ってのは、より『苛烈』な方が良いってな」
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