裏道の旅人　side　紫海電光　作：クロノスギア2

エンターゲート　～とある町の裏道～

ここはエンターゲート。毎日何かしらイベントやショーが催されており、この世界には闇など存在しない。しかし、そんな光も届かない闇も存在する。

ここはそんなイベントが行われている町の一角。

そこにこの物語の主人公が現れる。

紫海電光　彼は当てもなく、ただただ世界を見て回るという目的のため、ふらりとこの街に訪れたのだ。まるでリアルゲートの高層ビル群に似た中央街から外れたこの場所はぼろぼろのビル群を一か所に押し込めたように人一人が通るのがやっとな裏町『ダウンタウン』。人の気配がしない廃ビル、人の悲鳴に似た物音、腐った板の看板、そんな街に降り立った彼の白衣は浮彫のように目立つだろう。

「・・・？」

道を間違えたかと思い来た道を戻ろうとする先に一人の少女が籠をもって立っていた。

「・・・何だ？」
「あ・・・あの・・・」

少女の手にはぼろぼろ花が握られていた。

「これ・・・買ってください・・・」

彼女の姿は花と同じようにぼろぼろであり、籠には山盛りの外で積んできたであろう花、どうやら全く売れていないようだ。

「いくらだ・・・」
「え、えっと・・・1DP・・・」
「違う、その籠ごとでいくらだ？」
「え！？えっと・・・」

少女は慌ててどうしたらいいのか分からずあたりを見渡し、おどおどとし始めた。

「・・・じゃあ一万DPだそう」
「え、そ、そんな、悪いですよ！」
「・・・じゃあ、今日の宿を紹介してくれ。その案内料だ」
「あ、私のお母さんが宿をやってますが・・・」
「じゃあ、宿泊料込みだ」

その言葉を聞いた時、少女の顔がぱあと明るくなる。

「あ、ありがとうございます！こちらです！」

・・・。

「へえ、旅人さんはいろんな所を旅しているんですね」
「ああ、まだ始めたばかりだけどな」

宿に向かう道中、少女と他愛の話をしつつ、歩くこと数分。どうやらついたようだが、お世辞にも宿というにはお粗末だった。そんな宿から男の怒号が聞こえてくる。

「だからよぉ！てめえの夫が残した借金！１０００万DP耳そろえて返せって言ってんだよ！」
「そ、そんな大金私は持っていません！」
「人から金借りといてその言い草は何だあああ！？」
「ひいい！？」

中には頭の悪そうな大男が３人、カウンターに立っている女性に詰め寄っていた。

「おかあ・・！」
「うるさい」

・・・。

「おめえ！覚えてろよ！！」
「こんなことしてわかってんだろうな！」
「兄貴に言いつけてやる！！」

電光は手についた埃を払いぼろぼろの大男を見送った。

「あ、あの・・・ありがとうございます！」
「旅人さん、すごい強いんですね！」
「うっとおしいだけだ。部屋に案内してくれ。」
「はい！」

はあ、とため息をつき電光は部屋で一人一息ついたのだった。

「何やってるんだ俺・・・柄にもないことを・・・」

見ず知らずの少女を助けたり、借金取りをぶちのめしたりと人助けをしている。

まるで昔憧れていた英雄のように

「・・・寝るか」

・・・。

次の日の朝、微睡みの中にいた電光は男の怒号によって目を覚ました。

「昨日の男を出せオンナぁ！」

電光はため息をつき怒号の主のもとに向かった。そこには昨日の三人組とともにガタイのいいスキンヘッドの男が立っていた。

「おめえ、俺の子分をかわいがってくれたようだな！」
「別にかわいくなかったがな」
「てめえ・・・よほど痛い目にあいたいようだな！」

スキンヘットは腕輪をデュエルディスクに変形させ、デッキを生み出し、セットする。この世界のデッキは人間の持つイデアをデュエルディスクによって変化させる。この世界に同じカテゴリを持つ者は一人も存在しない。

「だめです旅人さん！あいつはここいら一帯の荒くれどもをまとめているボスで、デュエルの腕も・・・」
「そんなことは関係ない」

電光もディスクを構え同じようにデッキをセットする。

「覚悟はいいんだろうな！！」
「ああ、いつでもこい」

『デュエル！！』

DENKOU　VS　BOSS
4000LP　　　　4000LP