4月24日──友達　作：コンドル

空音友子は男子寮とは違う個室でできたて女子寮で独り今まであった出来事を回想する。
小さい頃から彼女の周りでコミュニケーション手段の一つとしてデュエルモンスターズが存在していた。小学校、中学校とクラスが変わる度に周りはデュエル、デュエル、デュエル。友子もデュエルモンスターズをやっていた。しかし、友子にデュエルをしようと言う者は誰もいなかった。
友子からも話し掛けようとするも上手く話し掛けられずに段々独りになっていく。
今日もダメだった。明日こそはと思うも失敗。上手く話し掛けられない自分に嫌気が差していた。
だが友子はデュエルを辞めようとは１度も思わなかった。デュエルが大好きな故に彼女は闘う相手がいなくても、決して辞めようと思う事は無かった。
夜になりパジャマに着替えベッドに入る前に友子は日課である友子のデッキに向かって独り寂しく
「ごめんね」と呟く。そんな生活が何年も続いていた時、第一志望のデュエルアカデミアから合格通知が届いた。アカデミアの入学試験では筆記試験は勿論、デュエルの腕も審査される。プロ同然の実力を持った試験官とデュエルし、勝ち負け関係無くデュエルの内容が重視される試験。
緊張でデュエルに負けてしまい内容も最悪だと合格を絶望視していた友子にとってアカデミア合格は予想外のものだった。

(ここなら色んな人とデュエルできるし、デッキの皆も、大喜びしてる...よね。･･･友達も...出来るかな...？)

喜びとそんな淡い期待を胸に抱きながら、友子はデュエルアカデミアに入学した。






入学式を終えた友子は教室に入り、少し勇気を出して前の席に座った瞬間、教室の空気に友子は押し潰されそうになった。
周りの緊張感が肌を伝わり汗が顔を伝う。やはり後ろの席にしようかと思った時、ドアが開き次々と生徒が入って自分の周りを覆う。
最早逃げ場は無かった。
完全にスタートダッシュに失敗した。そして学校生活が始まっても友子はデッキに語りかける。
涙をこらえ、独り寂しく、「ごめんね」と言う生活を...。


４月２２日
この生活が３年続くと完全に諦めかけた時、隣の席にいる鶴咲輪廻に声をかけられた。
友子が何年も待ち焦がれていたデュエルの誘い。
だが、友子は逃げた。人と話さない生活が長く続いたせいで話し掛けられパニックになってしまったのだ。
輪廻が去っていくのを見て申し訳ない表情をした友子。もう話し掛けてこないだろう。と心の中で思い悲しい顔で輪廻を見る。
しかし、信じられない事が起こった。４月２３日、再び輪廻が友子に話し掛けデュエルを申し込んできたのだ。誘ってきた理由を聞き、輪廻が答え、ついにデュエルをする事になったのだった。
回想を終えてパジャマ姿の友子は
輪廻の事を考え始める。輪廻は本当に私とデュエルしたいという理由だけで話し掛けてきたのか？何か別の理由があるのでは無いか？暫く考え、そんな筈はない。と否定する。
(あの人...嘘つかなさそうだし...私にも話し掛けてくれたし、多分、優しい人...だよね...。信じてみよう...かな...。)
そしてその小さい手でデッキを掴み「明日は頑張ろうね」とデッキに呟き、友子の切り札であるカードにも「頑張ろうね。」と呟いた。

４月２４日

「よっしゃ！じゃあ始めようぜ！」
ついに４月２４日がやって来た。
緊張で足が震える。輪廻にも震えが気付かれてしまい恥ずかしさのあまり赤面し俯くが、輪廻が「分かるよ」と友子に向かって言う。
「やっぱ緊張するよなー、初めてやる相手とデュエルするのは。」
「えっ？」
「俺も今の友子みたいに初めてする相手とは滅茶苦茶緊張してドキドキするんだよ。けどな...。」
「･･･」
「段々と、緊張とかよりもどんなデュエルになるかって楽しみに変わるんだ。だから、このデュエル、全力で楽しもうぜ！友子！」
「は、はい...！」
少し緊張がほぐれたのか、足が震えなくなった。それを見て輪廻も自分の足の震えが無くなり安心し、ついに二人のデュエルが始まる。
　　　　
　　　　デュエル！！

「俺の先攻！俺は手札から『切り込み隊長』を召喚！」

「･･･」　LV3　ATK1200　DEF400

「切り込み隊長が召喚に成功した時、俺は手札からレベル4以下のモンスター１体を特殊召喚する！さぁ行くぜ相棒！『幻装騎士(げんそうきし)ブレイブ』を特殊召喚！」

金髪と水色の眼と黄金の鎧を纏った青年が召喚される。

「ハァァッ！」　LV2　ATK1000　DEF500

「ブレイブの効果発動！１ターンに１度、手札から『幻装獣』(げんそうじゅう)と名の付くモンスター１体を特殊召喚できる！俺は手札から『幻装獣エアレー』を特殊召喚するぜ！」

ブレイブが指を鳴らすとメインモンスターゾーンにゲートが開き、その中からエアレーが現れる。
白金の鎧を着ているがエアレー本体は黄色い光を纏ったような見た目だ。
エアレーは出現するとブレイブに頭を撫でられ嬉しそうな反応をした。

「･･･」　LV2　ATK800　DEF700

「じゃあまずは！」

未知なる未来の扉を開け！
召喚条件は『幻装騎士ブレイブ』と幻装獣モンスター１体！俺は２体のモンスターで幻装合着！

ブレイブが鎧をパージし、エアレーが装着している白金の鎧がエアレーのもとを離れブレイブに装着され、エアレー本体とブレイブの黄金の鎧は光の粒子となってリンクマーカーにセットされる。

幻装召喚！『幻装騎士エアレー』！

エアレーの白金の鎧と伸縮自在の角を装備したブレイブがエクストラモンスターゾーンの左側に出現した。

「タァァッ！」　LINK2　ATK1800
リンクマーカー　左下　右下

「決まったぁ！」
「幻装召喚...？」
初めて聴く召喚方法に首をかしげる友子。慌てて輪廻が説明する。
「名前はそうなってるけど、実際は只のリンク召喚だから大丈夫だ。気にしなくて良いぜ。･･･さて、『幻装騎士エアレー』はフィールドに存在する限り『幻装騎士ブレイブ』としても扱う効果がある。･･･俺はリンク素材となった『幻装獣エアレー』の効果発動！このカードが『幻装騎士ブレイブ』と名の付くモンスターと共にリンク素材になった時、エアレーをリンク素材にしたリンクモンスターのリンク先に特殊召喚する！来い！エアレー！」

エアレーがブレイブの左下のリンクマーカーに出現する。

「･･･」LV2　ATK800　DEF700
ブレイブのリンク先に切り込み隊長と幻装獣エアレーの２体がいる事を確認し輪廻が次に移る。

「俺は手札の『幻装獣バジリスク』の効果発動！エアレーを破壊し、バジリスクをエアレーがいたモンスターゾーンに特殊召喚する！」

真っ白な光を纏った鶏、の様な蛇がエアレーを破壊し、エアレーがいた場所へ召喚されると、バジリスクはエアレーを破壊した事に満足そうな反応をした。

「エアレーは復活した後破壊されるとゲームから除外される。ありがとな、エアレー。」

「･･･」　LV6　ATK2000　DEF1900

「そして！」

再び未来の扉を開け！
召喚条件は『幻装騎士ブレイブ』と名の付くリンクモンスターと幻装獣モンスター１体以上！

再びブレイブの鎧がパージし、同時にバジリスクの白の鎧がバジリスクの元を離れバジリスク本体とエアレーの鎧が半分に分かれリンクマーカーにセットされていく。
ブレイブはゲートに入りバジリスクの鎧から発せられる白い光を浴びながらバジリスクの鎧を装着する。

幻装召喚！『幻装騎士バジリスク』！

「タァァッ！」LINK3
ATK2200　リンクマーカー　左　下　右

「カード1枚セット！俺はこれでターンエンドだ！さぁ、どっからでもかかってきな！友子！」

輪廻　LP4000　手札0　場　モンスター２体　伏1

友子　LP400　手札5　場　無

開始１ターンから輪廻は自身の『幻装』デッキを全力使用。早速手札が0枚になってしまうが、輪廻は特に気にしていない様子。あっという間にリンク3のモンスターをリンク、幻装召喚し、更に切り込み隊長の効果で切り込み隊長以外の戦士族モンスターは攻撃できない状況が完成し、やって来た友子のターン。

「･･･私の、ターン...。」
先生以外と久し振りにするデュエル。緊張がまだあるが、自身のデッキを信じ勇気を出してカードをドローし手札に加えると、友子の表情が少し困惑し始める。

困惑した友子の顔を見て輪廻が心配そうに話し掛ける。
「どうした？具合悪いのか？」
焦り始めかけた瞬間ハッと友子が我に帰り「大丈夫です」と返答する。

(無い･･･。)
「わ、私は、『空牙団の闘士ブラーヴォ』を召喚...！」

「シャッ！」LV4　ATK1900　DEF200

「私は、ブラーヴォの効果、発動...！手札から、ブラーヴォ以外の空牙団モンスター１体を特殊召喚する、です...！私は、『空牙団の豪傑ダイナ』を特殊召喚します...！」

「ウォォォッ！」LV6　ATK2500　DEF1400

「いきなり手札から攻撃力2500！？」
「ダ、ダイナの効果発動...にチェーンしてブラーヴォの効果発動...です...。ブラーヴォは自身がフィールドに既に存在する状態で私のフィールドに空牙団が特殊召喚された場合、フィールド全ての空牙団モンスターの攻撃力と守備力はターン終了時まで500アップする、です...。」

ブラーヴォが雄叫びを上げるとダイナも雄叫びを上げ攻守が上昇する。

「･･･」　ATK1900→2400　DEF 200→700

「ウォォォッ！」　ATK2500→3000　DEF1400→1900

「おいおいマジかよ...。」
「･･･更にダイナの効果で、ダイナが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドの空牙団モンスターの種類の数だけ輪廻さんの墓地のカードを除外します...。私のフィールドには二種類の空牙団モンスター。２枚除外します...。えっと...じゃあ...『幻装騎士ブレイブ』と『幻装獣バジリスク』を除外します...。」

ダイナの力強い咆哮によって墓地にいるブレイブとバジリスクが除外される。

「バ、バトルです...！私は、ブラーヴォで切り込み隊長を攻撃、です...！」

ブラーヴォの攻撃で切り込み隊長が切り裂かれ消滅した。

「ッ！」　輪廻LP4000→2800

「ダイナでバジリスクを攻撃...！」

ダイナの巨大な拳がバジリスクに向かってくる！
「バジリスクの効果発動！自分フィールドにこのモンスターしか存在しない場合、このカードが相手に攻撃対称にされた時、このターン攻撃してきた相手モンスターの攻撃力を0にする事でバトルフェイズを終了させる！」
右腕に装着されたバジリスクの頭部を模した武器が毒液を吐きダイナの攻撃を無力化する。

「･･･私は、これでターンエンド...です。この時ブラーヴォの効果が切れて攻守が元に戻ります...。」

「･･･」ATK2400→1900　DEF700→200
「･･･」ATK0→2500

輪廻　LP2800　手札0　場モンスター１　伏1

友子　LP4000　手札4　場モンスター２

「俺のターン、ドローッ!」
(今ドローしたカードは幻装騎士ブレイブ。だが、今召喚してもダイナかブラーヴォに倒されるだけだ。幻装騎士は他の幻装獣の存在があって初めて真価を発揮できる。このターン、凌ぐしかないが、さっきダイナの効果で１体目のブレイブとバジリスクが除外されちまったからな...。･･･いや、待てよ？まだ墓地にはアイツがいる！)

「俺は２体目の『幻装騎士ブレイブ』を召喚！そして第2の効果発動！このカードを墓地へ送り、自分の墓地にいる『幻装騎士』と名の付くモンスター１体を攻撃力を半分にして特殊召喚する！墓地から甦れ！『 幻装騎士エアレー』！」

ブレイブが光となり墓地にいるエアレーの鎧と合体、モンスターゾーンに光を纏いながら復活する。

「タァッ！」　LINK2　ATK1800→900　リンクマーカー　左下　右下

フィールドにエアレーが復活すると場を確認し次の手を考え始める。
(今このカードを使う訳にはいかねぇな...。)
「バトルだ！俺は『幻装騎士バジリスク』で『空牙団の闘士ブラーヴォ』を攻撃！」
「･･･ダイナの効果によってダイナ以外の空牙団モンスターは攻撃できません...！」
「何だと！？」
バジリスクの攻撃力は2200。対するダイナは2500。僅かに足りない攻撃力を見ても輪廻は笑顔を崩さない。
「成程、バジリスクじゃダイナに勝てないってか。･･･だが、バジリスクには他の幻装獣には無いスゲェ効果があるんだぜ。何だと思う？友子？」
「･･･？」
「それはな...バジリスクでダイナを攻撃！更にバジリスクの効果発動！このカードは自分よりも攻撃力が高いモンスターと戦闘を行う場合フィールドに存在する限り１度だけダメージ計算を行わずにその相手モンスターを破壊する！『バジリスク･ショック！』喰らえっ！」
バジリスクが真正面から体格がまるで違うダイナに向かって突っ込む。ダイナが拳で殴ろうとするもバジリスクがダイナの拳が振り上げられた瞬間に跳躍、脚の鎧を斧状に変化させダイナの脳天に直撃、ダイナが白目になり倒れ込む。

「･･･俺はこれでターンエンドだ。」

輪廻　LP2800　手札0　場モンスター２体　伏1

友子　LP4000　手札4　場モンスター１体

「わ、私のターン、ドロー...。」
(･･･！)
「･･･私は手札から『空牙団の参謀シール』を召喚します。」

「･･･」　LV4　ATK1600　DEF1000

「･･･私はブラーヴォの効果で手札からブラーヴォ以外の空牙団モンスター１体を特殊召喚します...。私は『空牙団の撃手ドンパ』を特殊召喚します...です。」

「セイッ!」　LV2　ATK500　DEF1000

「･･･ブラーヴォの効果でこのターン終了時まで空牙団モンスターの攻守は500アップします。」

「･･･」ATK1900→2400　DEF200→700
「･･･」ATK1600→2100　DEF 1000→1500
「･･･」ATK500→1000　DEF1000→1500

「･･･そしてシールの効果でこのカード以外の空牙団モンスターが特殊召喚された場合、私の墓地の空牙団モンスター１体を手札に加えます...。私はダイナを手札に加えます...。そしてシールの効果でダイナを特殊召喚します...。」
「ッ!厄介な墓地カード除外効果は切り込み隊長だけだから良いとしても、またダイナが復活しちまった...。」
「･･･私は更にドンパの効果でこのカード以外の空牙団モンスターが特殊召喚された場合、フィールドの表側表示のカード1枚を破壊します...。私は『幻装騎士バジリスク』を破壊します。」

ドンパの放った矢がバジリスクの心臓に命中し、バジリスクが消滅した。

「･･･甘いぜ友子！バジリスクは破壊された時、相手モンスター１体を対象にしてそのモンスターを破壊する効果があるッ！またダイナを破壊だッ！」

消滅する最後の瞬間、バジリスクがダイナに向かって毒液を浴びせ、ダイナも共に消滅する。
「･･･ダイナ･･･バトルです！ブラーヴォでエアレーを攻撃します...！」
「エアレーの攻撃力は復活時に半分の900になっちまってるから...。」

ブラーヴォの攻撃がエアレーに命中。だが、エアレーの槍が一本折れただけで他はなんともない。

「･･･すげぇ衝撃だぜこりゃ...。だがエアレーの槍は２本ある！1本折れたが、後1本とその後の攻撃、つまり、エアレーは戦闘では２回は破壊されない！さぁ、来いよ！」
輪廻LP2800→1300

「シ、シールでエアレーを攻撃します。」
「･･･ッ！」輪廻LP1300→100
エアレーの槍が無くなり素手に戦法を切り替える。
(勝った...！)
「･･･ドンパでエアレーを攻撃します...！」
「いや、まだだ！エアレーの最後の効果発動！このカードが3度目の攻撃をされた時、このカードの攻撃力は1000アップする！」

素手となったエアレーをドンパが笑いながら狙撃するが飛んできた矢を棒立ちのまま受け止めドンパが驚いている間にエアレーが瞬間移動したかのようなスピードで走りドンパとの距離を詰めドンパにアッパーを決める！

「ドンパ！」友子LP4000→3100

「な、なんとか耐えたぜ...。」
「･･･私はこれでターンエンドです。」

輪廻　LP100　手札0　モンスター１体　伏1

友子　LP3900　手札3　モンスター2体

ここまでデュエルが進み友子は「楽しい」という感情を身体中で感じていた。
(こんなに楽しいの...久し振り...。輪廻さんとのデュエル...本当に楽しいな...。)
しかし友子には一つだけ残念に思うものがあった。輪廻のライフは最早風前の灯火。ほぼ勝利を確信していたが、寂しそうに友子は自分のデッキを見つめる。
(･･･勝つんだったら...ラファールと一緒に勝ちたかったな...。)
空牙団の英雄ラファール。友子の空牙団デッキの切り札を、友子はまだ召喚できていなかった。ただそれだけが、友子にとって少しだけ残念な事...。
(･･･ううん、せっかくデュエルしてもらってるんだから、残念がってられない...よね。)
気を取り直してデュエルに集中する。
遂にやって来た輪廻のターン。
カードをドローする前に輪廻が友子の方に笑顔を向ける。

「友子、俺今、すっげぇこのデュエル楽しいよ！友子はどう思う！？」
「えっ...た、楽しい...です...。」
「だよな！だって友子の手札からバンバン仲間呼んで来るんだ！俺の相棒と闘って、闘って、ついに俺は大ピンチだ！今俺のフィールドには相棒と1枚の伏せカードだけ！そっちはモンスターが３体もいる！どれも強ぇし、格好いい！友子！お前やっぱ強ぇ！お前みたいな奴とデュエルできて良かった！けど最後に勝つのは、この鶴咲輪廻だ！」
「け、けどライフは残り100ですよ...？」
「分かってらぁ！だから燃える！俺の全てを燃やして友子！俺はお前に勝つ！俺のターン！ドローッ！」
ドローする瞬間、輪廻の眼に映る光景は全てスローモーションとなった。
ドローしたカードを確認し、ニヤリと笑う。
「俺は手札から魔法カード『極大幻装』を発動ッ！」
「極大幻装...？」
「俺の場に『幻装騎士ブレイブ』が存在する時、ゲームから除外されている俺の幻装騎士及び幻装獣モンスターを最大５体までデッキに戻し、戻した分俺はデッキからカードをドローする！俺がデッキに戻すのは、幻装獣エアレー、バジリスク、そして幻装騎士バジリスクだ！よって３枚ドローッッ！」

再びドローしカードを確認。輪廻が待ち望んだ瞬間がやって来た。

「･･･第１の切り札が俺の相棒である幻装騎士ブレイブなら、今から出すモンスターは俺の第２の切り札だ。行くぜ、『幻装獣フェニックス』を召喚！」

メインモンスターゾーンに真っ赤に燃える火の玉が浮かびその火の玉がペキペキと音を立て割れ始めると、中から焔を纏った鳥が出現する。
「･･･」　LV4　ATK600　DEF200

「さぁ行くぜ！更に俺は手札から魔法カード『幻装卵』を発動！幻装騎士ブレイブが自分フィールドに存在する時、俺のフィールドに幻装獣トークンを１体特殊召喚する！そして属性を指定！俺は炎属性を指定する！これでこのターン幻装獣トークンは炎属性だ！」

卵がフワフワと浮いてブレイブが見守る。
「そして！」
未知なる未来の扉を開け！
召喚条件は『幻装騎士ブレイブ』と炎属性の幻装獣モンスター２体以上！

ブレイブがエアレーの鎧をパージ、フェニックスの紅蓮の鎧を装着し、腰についた双剣を抜き一回転し周りの炎を切り裂く。

不死鳥の鎧纏いし勇気ある騎士よ放つ焔で闇夜を照らせ！
幻装召喚！
『幻装騎士フェニックス』！

「ハァァッ！」　LINK4　ATK2500
リンクマーカー　上　左下　下　右下

「･･･！」
「幻装獣フェニックスの効果発動！このカードはリンク素材として墓地に送られた時、このカードをリンク素材としてリンク召喚したモンスターのリンク先に特殊召喚する！」

再び火の玉からフェニックスが出現する。
「そして最後に魔法カード『夢幻決闘』を発動！友子！デッキ、エクストラデッキから一番攻撃力の高いモンスターを選んでくれ！」
「えっ...？いいんですか？」
「あぁ勿論！」
友子のデッキで最も攻撃力が高いモンスターは...。
「わ、私は、『空牙団の英雄ラファール』をデッキから特殊召喚します...！」

「･･･！」　LV8　ATK2800　DEF2200

「ラファール...！」
ラファールは友子の方を向かずに黙ってフェニックスに剣を向ける。
フェニックスもそれに応えるように剣をラファールに向ける。

「･･･ハッ！空牙団の皆の効果を発動します...！」
「悪いけど、『夢幻決闘』の効果で特殊召喚したモンスター以外のモンスターの効果は発動できない」
「･･･けど、ラファールの効果発動です...！ラファールが特殊召喚に成功した場合、ラファール以外の空牙団モンスターの種類の数だけデッキの上からカードをめくりその中から1枚選び手札に加えます。今私のフィールドにはブラーヴォ、シールの2体。2枚めくります」

めくられたカードは『空牙団の剣士ビート』、『空牙団の英雄ラファール』の2体のモンスターカード。友子は少し迷いラファールを手札に加えた。

「･･･なんか、ラファールが来てから随分元気になったな。さっきまでは自信無さげな表情してたのに。」
「そ、そうですか...？」
「ああ。けどもう大丈夫そうだな。そのラファールは友子にとって大切なカードなんだろ？」
「･･･はい。この子は私の切り札で、フィニッシャーもこの子にしようって、思ってたんですけど...。」
「･･･手札にいなかった」
「はい...。勝ったって思った時もラファールがいないからなんだかちょっと寂しくて...。」
「･･･」
「･･･私、この学校来てから先生以外とデュエルした事なくて、だから輪廻さんがデュエルを誘ってくれた時は本当に嬉しかったんですけど...私、どうしたら良いか分からなくなっちゃって...それで、逃げて...そんな私に愛想を尽かしたのかなって思って...。」
「･･･そんな事ないさ。」
「･･･？」
「なんとなくだけど、そいつもさっきの友子みたいに緊張してたんじゃないか？だから出るタイミングを逃した...とか。」
「･･･ラファール...。」
ラファールは何も話さない。
「･･･大丈夫だよ。ラファール。緊張するけど、楽しもう。デュエル。」
その言葉を聞いて安心したのかどうかは分からないが、ラファールの表情が少し和らいだように見えた。

「･･･良し、じゃあ続けるぜ！」
「･･･はい...！」
「夢幻決闘の効果によりフェニックスとラファールは必ずバトルしなければならない。このバトルで負けた者は破壊したモンスターの攻撃力分ダメージを受ける！さぁ行くぜ！バトルフェイズだ！俺は幻装騎士フェニックスで空牙団の英雄ラファールに攻撃！」

『フェニックスラッシュ･ヒートエンド』！

『空･牙･斬』！

２体が激突し衝撃波が走る。
二人が見守るなか、フェニックスの剣が押し負けそうになる。
「やっぱエースモンスター同士の対決は燃えるよなぁっ！リバースカードオープン！『極幻夢装』！」
「･･･！」
「リンクモンスターのリンク先にモンスターが存在する場合、１体を選択しそのモンスターの攻撃力を自分のリンクモンスターにプラスする！フェニックスの力を更に纏えッ！相棒ッ！」

「ウォォッ！」　ATK2500→3100
「･･･！」
更に鎧が真っ赤に輝く！フェニックスの剣が炎を纏いラファールを倒し双剣を納めるとフェニックスの後ろで爆発が起こった！

「･･･私の、負け...。」友子LP3100→2800→0





デュエル終了後、友子はデッキを見つめる。
「ありがとう」と、デッキに向かってそう言った。
「･･･友子！楽しかったぜ！またやろう！」
「いいんですか？また、デュエルしてもらっても...？」
「何言ってんだよ？俺達もう友達だろ？」
「と、友達...！？」
「あぁ。デュエルすれば皆友達。俺の親父がよく言ってた言葉なんだ。だから、もう俺と友子はデュエルで繋がった友達だ！」
「･･･はい！」



輪廻が寮に帰ると遊駆が既に戻っており、何かを書いている。
「何書いてんだ？」
覗き込むように見ようとするも、遊駆がすぐさま隠す。
「･･･ただの、日記帳だ。」
「そっか･･･まぁいいや。」
その後輪廻は今日あった事を話す。その日は普段の何倍も話をした。また新しい友達が出来た。輪廻が嬉しそうに笑顔を見せる。
(また友子とデュエルできたら良いな...)

そう思いながら輪廻は、明日という日はどうなるんだろう？と考える。
一方女子寮に戻った友子は赤面しながらベッドに突撃した。
足をじたばたさせ落ち着かせる。
(･･･友達。)
(･･･やっと、一人出来た。...輪廻さん...か。)
(またデュエルできたら良いなぁ...。)


翌日
朝食を摂ろうと遊駆と輪廻が下に降りると、巧が席を確保していた。
いや、よく見るとあと二人いる。
「おはよう遊駆君に輪廻君。席確保しといたよ。」
「おはようございます遊駆さん。」
小込綾羽と
「あっ、友子。」
「おはよう...ございます。」
空音友子だった。
「･･･んじゃ食うか。」
「･･･」
「あ、そうだ。友子。」
輪廻の眼は期待に満ちている。
「食べ終わったらまたデュエルしようぜ！」
「･･･はい！」
元気一杯に鶴咲輪廻と空音友子はデュエルスペースでデュエルをする。心から楽しいという表情をしている友子の姿を見て輪廻も嬉しい表情を見せる。きっと今の友子の表情は何よりも輝いているだろう──。