第７３話 とある勇者と龍のお話①　作：ハカラメ

更新再開！ （あと少しの間、不定期更新が続くかもです）
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・・・

~天界の間にて~



「...ふぅ」
私は、読み終えた本を、そっと本棚に戻した。

今、私が読み終えたのは、とある伝説を基にした『絵本』...
そう、１人の勇者と、１人の龍のお話...

メイはこの絵本が大好きで、小さい頃は読んで読んでと何度も私にねだってきた。
そして枕元で、メイが眠りにつくまでこの絵本を読み続けたものだ。


この絵本の『作者』は、その光景を見て満足そうに微笑んでいた...





「ホー」

回想に浸る私の意識を、１羽の鳥の鳴き声が呼び戻した。
声のする方を見ると、窓枠の縁にフクロウがとまっている。
メイの召喚獣だ。メイはホーちゃんと呼んで可愛がっている。

足には、いつものように手紙が括り付けられている。
もう何度となく読まずに突き返している、愛娘からの手紙だ。

私はそっとホーちゃんの頭をなでた。


「・・・ごめんなさいね。私には、その手紙を受け取る資格はないわ」
「だから、もうここには来なくてもいいのよ」


ホーちゃんは、分かったのか分からないのか、首を１８０度回転させると、「ホー」と鳴いた。
そして、大きく翼を広げると、一気に地上へ向かって羽ばたいていった。




私は、メイに会わせる顔がない...
「あの人」がいなければ、私は・・・


もうライトロード達の元へ戻ることもないだろう。
いつかそんな日が来るかもしれないと思って、この前聖域を訪れた時にケルビムには色々と資料を渡してきた。
今思えば、あれは何か予感めいたものがあったのだろうと思う。


私がいなくても、ライトロード達は大丈夫だ。

いや、私がいては駄目なんだ。私がいたら...









～～～







ここは天界の間。
天空に浮かぶ、「私たち」の家。

外からは結界で見えない。
たどり着く手段は、地上から伸びる『見えない』螺旋階段を上る事。
私の身のことを考えて「あの人」が作ってくれた家...



そんな螺旋階段を、誰かが上って来る音がする。



メイ・・・ではないだろう。あの子はまだこの階段の事は知らないはずだ。
「あの人」は、さっきここを発ったばかりだ。あの人のことだ、すぐには帰ってこないだろう。

「・・・一体誰かしら？」

コンコン、と扉をノックする音がした。
私は恐る恐る、その扉を開く。


ｶﾞﾁｬｯ


「あっ...」
驚きのあまり、思わず声が漏れた。
そこに立っていたのは...






「ケルビム...」

「お久しぶりです、ミネルバ様...」



私がライトロードの中で最も信頼している天使の姿が、そこにはあった...






第７４話に続く