TURN 30 勝利―余韻は空腹―　作：Dann

　決闘を終えた狩はまた窓の外を見た。

　「……いつの間にかシャチは消えて……アレは……ガ○ャピンか？」
　「ガ、ガ○ャピン……？」

　狩の呟きに葵が動揺し、狩の視線の先を見る。

　「ああ……巨人の地上絵ね」
　「あれで巨人なのか……俺から見てもガ○ャピンだな」

　葵が指摘し、雀夜もまた狩に同調する。

　「ふむ……ガ○ャピンねぇ……」

　ほぼ空気と化していた黒句が地上絵を見て唸る。
　その後に視界に引っかかっていた真とラッシュの決闘に目を向けた。

　真【LP：250】
　ラッシュ【LP：300】

　「ぐぅ……まさか召喚と同時に《スキル・ドレイン》を破壊されるとは……」
　「よっしゃ、《ビートル》で《バルバトス》を攻撃だ！」
　【ATK/2500 vs ATK/1900】

　「“アバランチ・スラッシュ”！」
　「ぐぅ！」

　【LP：0】

　勝者―小野寺　真

　「う～、勝った勝ったぁ」
　「ぬぅ、デッキの調整したいが……カードが不足してる下とかだとなぁ……」

　真が勝利の余韻に浸っている横でラッシュが周りの環境を嘆いている。
　そこでふと黒句が話題を持ち出した。

　「……お前らが今使ってるデッキを手に入れた経緯を聞きてぇな」
　「ああ、そうだな……」

　黒句の考えにラッシュも賛同する。

　雀夜談。
　「さあ……どこだかわからん所から届いたカードだし……。こいつを知るために最初に作ったデッキが2群に行っちまったが……」

　葵談。
　「私のはお母さんが作ったカードで作ったデッキよ。ちょっと癖があるけど」

　狩談。
　「俺のは……親父が作ったデッキだ……。変に小細工しないでさっさとパワーで押すってのが俺に合ってる」

　真談。
　「単に家にあったデッキで作っただけだが……？」
　「そんなのでよく動くな……ってかお前の家にどんだけカードあるんだよ……」

　真の話に雀夜がツッコんだ。

　「なら今度お前の家に行ってもいいか？　カードを補充したいんだが」
　「残念だったなラッシュ。俺の家は“ゼロ・リバース”の影響で今は瓦礫の山だ」

　ゼロ・リバース――17年程前に起こった大災害の通称。元は一つだったシティとサテライトが引き離されたきっかけの自然災害……と言われているが、どうにも自然災害とは思えないと言う人が結構いる。

　「で、俺はその山から片っ端からカード掻き集めてデッキ作ってるんだよ」
　「なるほどな」

　黒句・ラッシュ談。
　「「カードは拾った」」

　「なるほど、皆それぞれか……しかし……」

　「どうしたの？」

　不意に言葉を止めた雀夜に葵が声を掛けた。

　「……腹減ったな……」

　「「…………」」

　雀夜達に新たな決闘の相手が現れる。

　ぐぅ～……

　腹の虫である。

　「…………よし、飯作るか。何がいい？」
　「「お任せで」」

　雀夜の質問に対し、全員がそう答えた。
　昼食を作るため、雀夜と狩とラッシュが立ち上がりキッチンへと歩いて行くのを真達は見送った。

　「ん？　葵は料理しないのか？」

　真が葵に疑問を投げかける。
　葵は赤面しながら答えた。

　「私……料理できないもん……」