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HOME > 遊戯王SS一覧 > 1話 路地裏の天使

1話 路地裏の天使 作:19

背の高いビルや一般住宅が立ち並ぶパズルシティ。かなり大きな街で、遠くにあるとされるネオドミノシティという場所とほぼ同じくらいとされている。

 ヤマト「空から見るより結構大きいんだなぁ」

キョロキョロと辺りを見回しながら街中を散策していると脳裏におぞましい闇の気配を感じた。それは天使だけが察知できる悪魔の力で、ヤマトは緊張する。

 ヤマト「この気配…悪魔か!?」

突然の気配に驚きながらも気配のする方に走り出す。ゼル曰く、悪魔がデュエルで邪悪なるカードを使った場合にその気配が察知できるのだという。

気配の感じる方へ走って行き着いたのは薄暗い路地裏だった。そこそこの広さがあり、汚れた壁にはスプレーでの落書きが残り続けている。

 ヤマト「ここか…」

息をのんで足を踏み入れる。奥へ奥へと進むと、男性の怯える声が聞こえてきた。
 男性「か、返してくれよ…!俺のカード!」
 フードの男「ハッ、嫌だね。コイツを持って帰らないと俺が痛い目みるんだ。あばよ」

倒れ込む男性が去ろうとするフードを被った男の足を掴み悲願する。

 男性「返してくれ!返してくれよ!大事なカードなんだ!」
 フードの男「ち!うるせぇな!」

フードの男は掴んでいる腕を無理矢理引き離し男性の腹を思いっきり蹴りつけた。

 ヤマト「止めろぉ!」

とっさにフードの男を突き飛ばし、男性を介抱する。

 ヤマト「大丈夫ですか?!」
 フードの男「痛ってぇ…てめぇ何しやがんだ!」
 男性「うぅ…俺のカードが…」
 ヤマト(こんな酷いことをするなんて…まさか、コイツが悪魔か?兎に角、カードを取り戻そう…!)
 フードの男「この野郎…。そのデッキホルダー。お前もデュエリストみたいだな…なら、お前からもレアカードを頂くとするか!」

男はそういうとデュエルディスクを装着し、デッキホルダーからカードの束をディスクにセットする。

 ヤマト「わかった!ただし、僕が勝ったらそのカードは返してもらう!」

ヤマトも強気にディスクを装備し、デッキをセットする。

ヤマト・男「デュエル!!」

男 LP8000
手札 5 デッキ35

ヤマト LP8000
手札5 デッキ35

 男「先攻は俺がもらう!…俺は手札から、『悪夢の拷問部屋』を発動!このカードが発動されている限り、お前が効果を受ける度に追加で300ポイントのダメージだ!」
 ヤマト「でも、僕のライフは8000もある。そんな小さなダメージじゃ、どう頑張ったって精々900くらいしか与えられないじゃないか」
 男「何言ってるんだ?一枚だけだと思うなよ?もう一枚の『悪夢の拷問部屋』を発動!これでお前が受けるダメージは600になるぜ!」
 ヤマト(それでもライフはまだ全然ある。この手札なら、なんとかなりそうだ…)

ヤマトは手札のモンスター4体と魔法カード1枚を確認する。すべてゼル神からもらったものであり、地上には無いカードばかりだ。
しかし、ヤマトが遊戯王を知っているとはいえ、基本的なルールや自分のカードの効果くらいで、地上でどんなカードが使われているのかまでは知っていない。
そんなヤマトに対し、男は一枚の魔法カードを発動した。

 男「俺は手札から『デス・メテオ』を発動!相手のライフが3000以上ある場合、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
 ヤマト「何!?うぐぅぁ!」

ヤマト LP8000 → LP7000

 男「さらに、二枚の『悪夢の拷問部屋』の効果によって、合計600ポイントのダメージを受けてもらおう」
 ヤマト「くぅぅ!」

ヤマト LP7000 → LP6400

 男「俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ」

男 手札1
  場
悪夢の拷問部屋×2
セット魔法・罠×2

 ヤマト「僕のターン、ドロー!」

手札を確認する。ドローしたカードはモンスターカードで、今の状況を打破するには丁度いいカード。

 ヤマト「手札から『メドロウ・ケイロン』を召喚!」

上半身は人間で下半身は馬。神話に登場するケイローンに似たレベル4モンスターが召喚された。

メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700

 ヤマト「ケイロンには三つの効果があり、1ターンに一度、手札の「メドロウ」モンスターを墓地へ送ることでその内の一つを発動できる」

手札から「メドロウ・ノーム」というレベル3のメドロウモンスターを墓地へ送る。

 ヤマト「僕はその内の一つである。ライフを1000回復する効果を発動!これで『デス・メテオ』の分のダメージは補う」
 男「させるか!俺は永続罠『シモッチによる副作用』を発動!このカードがある限り、お前がライフを回復する効果はダメージを受ける効果になるぜ!」
 ヤマト「なんだって!?」

ケイロンが手を掲げると、手先から神聖な光が放たれる。本来であればその光がライフを回復させる筈であるが、逆にヤマトに大きな傷を負わせることとなった。

 ヤマト「ぐっ!」

ヤマト LP6400 → LP5400

 男「さらに、『悪夢の拷問部屋』の効果によって追加の600ポイントダメージ!」

ヤマト LP5400 → LP4800
 
 男「自分のカードでダメージを受けるなんでザマぁないな!」
 ヤマト「まだだ…!ケイロンで攻撃!」

ケイロンが男に向かって駆け出す。拳を振り上げ殴りかかろうとしたとき、男はニヤリと笑ってもう最後の伏せカードを発動する。

 男「リバースカードオープン!罠カード『魔法の筒』!相手モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

ケイロンの拳は二つの筒のうち一つに入り込み、もう一つの筒から放たれた光線がヤマトを吹き飛ばした。

 ヤマト「うああぁ!」
 男「しかも、『悪夢の拷問部屋』により、さらに追加ダメージ!」

ヤマト LP4800 → LP3100 → LP2500

倒れ込むヤマトを見て男は腹を抱え、指をさして笑っていた。そんな彼に屈せずヤマトも立ち上がる。

 男「早くサレンダーしろよー。俺だって暇じゃないんだからさぁ!早くレアカードゲットしないといけないんだよ」
 ヤマト「うぅ…カードを2枚伏せて…ターンエンド…!」

ヤマト 手札2
  場
メドロウ・ケイロン 攻撃力1700
セット魔法罠カード×2

 男「俺のターン、ドロー!」

引いたカードを確認し、ため息をつく。どうやら当たりカードではなかったらしい。

 男「ちっ…こんなハズレカードかよ…まぁいいや。俺は『プロミネンス・ドラゴン』を召喚!」

プロミネンス・ドラゴン ☆4 攻撃力1500

男の場に炎を纏ったドラゴンが姿を現し、ヤマトに威嚇する。そして男がターンエンドの宣言をするとともに、口から火球を放ってきた。

 男「このモンスターが表側で存在する限り、俺のターンのエンドフェイズごとにお前に500ポイントのダメージを与える。拷問部屋と組わせて1100ポイントのダメージだ!」
 ヤマト「あぐぅ…!」

ヤマト LP2500 → LP1400

男 手札1
  場
プロミネンス・ドラゴン 攻撃力1500
悪夢の拷問部屋×2
シモッチによる副作用


 ヤマト「これが…俺の最後のチャンス…!ドローォ!」

渾身の力でカードを引く、それを確認した途端、頭の中に様々な戦術が流れ込んだ。そしてその内の一つの道が光だし、その先には「勝利」の文字が見える。

 ヤマト「僕は手札から『天聖の呼び声』を発動!手札に存在する『メドロウ』モンスター1体をデッキに戻す。その後、戻したモンスターよりレベルの低いそのモンスターとカード名の異なる『メドロウ』モンスター1体をデッキから特殊召喚する!」

ヤマトは手札の『メドロウ・グリフォニス』を戻し、デッキからモンスターを選択して特殊召喚する。

 ヤマト「来てくれ、『メドロウ・ドリアー』を守備表示で特殊召喚!」

メドロウ・ドリアー ☆2 守備力1100

植物のツタを体に纏った美しい女性が微笑みながら召喚される。すかさずヤマトはドリアーの効果を発動させた。

 ヤマト「『メドロウ・ドリアー』が召喚・特殊召喚に成功した場合、僕はデッキトップのカード3枚を確認できる。その中にドリアー以外のレベル5以下の『メドロウ』モンスターがいれば、そのモンスターを特殊召喚できる!」

意を決して3枚を確認する。魔法カード…魔法カード…モンスターカード!

 ヤマト「確認したカードの中には、『メドロウ・グリフォニス』が存在した、よってグリフォニスを攻撃表示で特殊召喚!」

メドロウ・グリフォニス ☆5 攻撃力1600

美女の次は、ガッシリとした体格の大鷲が召喚される。ただの大鷲ではなく、体が虎のように大きな大鷲だ。威厳のある顔付きで、対峙するプロミネンス・ドラゴンを睨みつけている。

 ヤマト「ドリアーはチューナーモンスター…!『メドロウ・グリフォニス』に『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」

グリフォニスが舞い上がると同時に、ドリアーも続けて空へ飛ぶ。二人の体がそれぞれのレベル分の☆に変わり、縦一列になって新たな姿に生まれ変わる。

 ヤマト「聖戦士が翼を広げ、剣を振るう!大いなる光!舞い踊れ!『Hメドロウ・ヴァルキス』!」

Hメドロウ・ヴァルキス ☆7 攻撃力1900

白銀の翼を生やした美しい女騎士が剣と盾をもって舞い降りた。その神々しさに男も驚き後退する。

 ヤマト「『メドロウ・ドリアー』がシンクロ素材にされた場合、自分はライフを1000ポイント回復する…」
 男「1000ポイント…?じゃあよ…お前の負けじゃねぇかぁ!アッハハハ!馬鹿かコイツよぉ!『悪夢の拷問部屋』との合計ダメージ、1600ポイントを受けてくたばりな!」

拷問部屋から600ポイントのダメージと、ヴァルキスの剣の輝きから放たれる1000ポイントのダメージに変換されてしまった癒しの光。二つの光線がヤマトを襲った。

 男「ふん…シンクロ召喚しておきながらその程度…。って、何!?」

ヤマト LP1400 → LP600

 男「なんでライフが残ってるんだよ!おかしいだろ!?」

動揺する男は慌ててディスクの不備や細工を指摘する。しかし、ヤマトはダメージを受けた体で体勢を立て直す。

 ヤマト「『メドロウ・グリフォニス』が召喚・特殊召喚したターンの間、僕が受ける戦闘・効果ダメージは半分になる…。つまり、1600ポイントの合計ダメージは半分の800…」
 男「ちぃ!なんて卑怯な効果だよ…!だがよ。このターンでお前が決められなかったら…俺がドローするであろうバーンカードの効果でお前は負ける…!」
 ヤマト「だから…このターンで決めるしかないんだ!手札から『メドロウ・イグニス』を召喚!」

メドロウ・イグニス ☆3 攻撃力1500

炎の精霊であるイグニス。プロミネンス・ドラゴンと同じように炎を纏いながら、ヤマトの場に並んでいるケイロン、ヴァルキス一緒にヤマトを守るように立ち並ぶ。

 ヤマト「『メドロウ・グリフォニス』には他にも効果がある。このモンスターをS素材としたモンスターは、相手モンスターと戦闘を行う場合に相手モンスターの攻撃力または守備力を1000ポイントダウンさせる効果がある!」
 男「それでも!俺のライフを削りきれないだろ!」
 ヤマト「『メドロウ・イグニス』の効果発動!イグニス以外の自分の『メドロウ』モンスターが攻撃する場合、相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる!」
 男「『プロミネンス・ドラゴン』の攻撃力は1500…二体のモンスターの効果が合わさって0になる…!?」
 ヤマト「行くぞォ!『メドロウ・ヴァルキス』で『プロミネンス・ドラゴン』に攻撃!」

ヴァルキスは翼を広げて空高く舞いあがる。空中でクルリと一回転し、剣を振りかざして攻撃力が0になったプロミネンス・ドラゴンに切り掛かる。
 
 男(今ここで『プロミネンス・ドラゴン』が破壊されても受けるダメージは1900!他のモンスターの攻撃力を合計しても5100!大丈夫だ。かならず次のターンでバーンカードを…!)
 ヤマト「『Hメドロウ・ヴァルキス』の効果発動!このモンスターが相手モンスターを攻撃するダメージステップ時、相手モンスターの攻撃力が変化していれば、その数値分このモンスターの攻撃力をアップする!シャイン・アップ!」

Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900→3400

 男「何!?つまり戦闘ダメージの合計は6600…!!だがそれでもライフは削りきれない…!」
 ヤマト「確かに、このままじゃお前のライフは1400残る。でも、まだ手はある!絶対にこのターン中に決着をつける!」

『ヴァルキス』が『プロミネンス・ドラゴン』を切り裂くと、爆風が発生し、それに合わせて男のライフも大幅に削れていく。

 男「うぐぅぅ!」

男 LP8000 → 4600

 ヤマト「まだまだ!ケイロンとイグニスでダイレクトアタック!」
 男「うああぁ!」

男 LP4600 → 1400

 ヤマト「まだだ、リバースカードオープン!罠カード『天聖分離』!自分フィールドの「メドロウ」シンクロモンスターをEXデッキに戻すことで、素材にしたモンスター1体を墓地から特殊召喚する!」
 男「そんな…コイツ、この状況から、俺に勝つなんて…!」
 ヤマト「『Hメドロウ・ヴァルキス』を戻し、墓地から『メドロウ・グリフォニス』を特殊召喚!」

メドロウ・グリフォニス ☆5 攻撃力1600

フィールドに舞い戻った翼の生えた雄々しい生物は鷹のように甲高い声を上げて雄叫びを上げる。ヤマトの指示通り、グリフォニスは男へのダイレクトアタックを決めた。

 男「あ…うぁ…うぐぁぁぁ!」

男 LP1400 → 0

 勝者:ヤマト
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