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第10話 向き合う覚悟 作:コンドル
「人間の成長は『過去を乗り越えること』だと思ってるんだよ」
神妙な表情で、暮森は綾羽に向かってそう告げる。
「どんなに目を背けようが、見て見ぬふりしようが、過去は突然背中から殴りかかってくる...乗り越えるには『向き合う』しかないんだ。…君はそれをしたのかな?」
「過去と、向き合う...」
綾羽は嫌なものでも見たようにそっぽを向く。遊駆と出会ったことにより、これまでの衝動的で愚かな行為を続けてきた自分は消えた。遊駆と出会ったことで、過去の自分を乗り越えた。
そのはずなのに...綾羽は首肯せず、目を逸らした。
「そんなことは...ないです」
「…そう」
「自分と向き合う覚悟がないんだね。なら...このデュエルで向き合わせてあげる」
「…そんなものっ」
「そんなもの...何だい?」
「いいえ、始めましょう」
デュエル!
綾羽 LP4000
暮森 LP4000
「まずは舞台を整えようか。『デスピアの道化 アルベル』を召喚!」手札5→4
デスピアの道化 アルベル ☆4
効果/闇属性/天使族
ATK1800/DEF0
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「烙印」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードが墓地に存在する状態で、自分フィールドの表側表示の融合モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。このカードを特殊召喚し、対象のモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
「効果でデッキから『烙印』カード1枚を手札に。…よし、始めようか」
暮森が1枚のカードを発動すると、調理室だった場所は紫を基調とした禍々しい雰囲気を醸し出す舞台へと変貌を遂げた。
綾羽は戸惑いの表情を浮かべながら周囲を見渡す。左には沢山の観客席があり、真っ黒い人影のようなものが席を埋め尽くしている。どうやら観客のようだ。右にはハリボテの木や人間が描かれた舞台道具がある。
「驚いたかな?ここは『烙印劇城デスピア』。いい場所だろう?」
烙印劇城デスピア
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・フィールドから、レベル8以上の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
②:融合モンスター以外の自分フィールドの表側表示の天使族モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合、自分の墓地のレベル8以上の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
「さて、わたしは『烙印劇城デスピア』の効果を発動!手札・フィールドから融合素材を墓地へ送り、融合モンスターを特殊召喚する!わたしは手札の『悲劇のデスピアン』とフィールドの『デスピアの道化 アルベル』を融合素材にして、融合召喚!」手札4→3
暮森の言葉を合図にどこからともなくファンファーレが鳴り響き、それに呼応するように劇場の真ん中に巨大な穴が開く。穴にアルベルと悲劇のデスピアンが吸い込まれるように消えていくと、劇場全体が不吉な輝きを放ち、真ん中から巨大なシルエットが映し出される。
感情奔らせ研がれた刃、鮮血求めて敵を穿つ!融合召喚!『デスピアン・クエリティス』!
デスピアン・クエリティス 融合☆8
効果/光属性/悪魔族
ATK2500/DEF2500
「デスピア」モンスター+光・闇属性モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分・相手のメインフェイズに発動できる。レベル8以上の融合モンスターを除く、フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで0になる。
②:表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。デッキから「デスピア」モンスターか「アルバスの落胤」1体を選び、手札に加えるか特殊召喚する。
闇のように暗い色をした鎧に鮮血のような色の槍を携えた騎士が現れると、客席から喝采の拍手が鳴り響く。それに応えるように、クエリティスは不気味な音を鳴らし槍を素早く一回転させ、先端を綾羽の顔面に向けた。
「わたしはカードを1枚伏せてターンエンド。さて、この子を突破できるかな?」手札3→2
暮森 LP4000
モンスター1体
魔法・罠1枚
手札2枚
綾羽 LP4000
モンスター0体
魔法・罠0枚
手札5枚
「私のターン、ドロー!」手札5→6
(この手札なら勝てる。伏せが何だろうと問題ないわ。向こうの『デスピアン・クエリティス』がいる限り薔薇の花嫁は破壊されない。その高い攻撃力を晒したのが運の尽きよ)
「さぁ来たまえ!君のモンスターで倒しに来たまえよ!」
暮森は両手を広げて綾羽を煽る。その態度に苛立ったのか、少し乱暴にカードをディスクにセットした。
「言われなくても!手札から『青薔薇の花嫁 スィーニョ』を召喚!効果で手札の『白薔薇の花嫁 ビャロ』を特殊召喚!」手札6→5→4
青薔薇の花嫁 スィーニョ ATK200/DEF200
効果/光属性/植物族
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:相手モンスターゾーンにこのカード以上の攻撃力を持つモンスターが存在する場合、このカードは戦闘・効果では破壊されず、戦闘で発生する戦闘ダメージはお互いが受ける。
②:自分メインフェイズに発動できる。手札から「薔薇の花嫁」モンスター1体を特殊召喚する。その後、相手モンスターの攻撃力は特殊召喚したモンスターのレベル×100アップする。
白薔薇の花嫁 ビャロ ATK1000/DEF1000 ☆3
効果/光属性/植物族
このカード名の②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手モンスターゾーンにこのカード以上の攻撃力を持つモンスターが存在する場合、このカードは戦闘・効果では破壊されず、戦闘で発生する戦闘ダメージはお互いが受ける。
②:このカードの攻撃力を0にして発動できる。手札・デッキから「白の薔薇花嫁 ビャロ」を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したカードはこのターン、表示形式を変更できない。
「そしてビャロのレベル分、デスピアン・クエリティスの攻撃力を上げます」
デスピアン・クエリティスATK2500→2800
「バトルフェイズ!行きなさいスィーニョ!」
暮森 LP4000→1400
綾羽 LP4000→1400
「そして、ビャロで『デスピアン・クエリティス』を攻撃!」
この攻撃が通ればお互いに1800のダメージを受けて引き分けになる。ビャロが突撃する中、綾羽は勝利を確信して手札にあるカードを切った。
「手札から速攻魔法『ご隠居の猛毒薬』を発動!」手札4→3
ご隠居の猛毒薬 速攻魔法
①:以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分は1200LP回復する。
●相手に800ダメージを与える。
「効果により私のLPを回復するかあなたにダメージを与える効果を選択します。私は回復する効果を使用!」
綾羽 LP1400→2600
LPが上回ったことにより、続くビャロの攻撃でも綾羽のLPは800残ることになる。
「これが私の意志!この勝利は過去を乗り越えた証明です!」
そう高らかに勝利を宣言する綾羽。しかし暮森は、この状況に絶望することなく、平然とした表情でセットカードをタッチした。
「罠カード『無限泡影』発動」
無限泡影
自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。
①:相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
セットされていたこのカードを発動した場合、
さらにこのターン中、このカードと同じ縦列の他の魔法・罠カードの効果は無効化される。
デスピアン・クエリティスへ突進していたビャロへ突然青白い閃光が直撃して一瞬たじろぐが、攻撃は止まらない。手のひらほどの大きさの体を浮かせクエリティスに突進する。しかしその攻撃はクエリティスが持つ槍に受け止められてしまう。
そのまま槍の先端部分に乗せたビャロを空中に放り投げ、腹部を思いきり貫いた。
「なっ...っ!」LP2600→800
ダメージを受けた衝撃波の強さに、綾羽の体がのけ反る。体勢を立て直すが、自信が「過去を乗り越えたことの証明」と言って放った攻撃が不発に終わった悔しさから歯を軋ませていた。
「君の証明とはこんなに下らないものなのかい?」
「く、下らない⁉」
「確かにその手札だと勝てると思っても無理はない。だが、勝利を確信し伏せの警戒を怠るのはいただけないね」
指摘を受けた綾羽は、反射的に反論しそうになるが、それをぐっと堪える。確かに伏せカードに意識を向けなかったのはミスだ。だが、もしも、そんな「たられば」な言い訳が脳内にあふれ出す。
しかしそんな事をしても無意味なことは綾羽自身がよく理解している。それでも言いそうになるのは、綾羽が忌み嫌う過去の自分、すなわち「幼稚な自分」が心に現れているからだ。
過去の自分ならすぐに怒り癇癪を起していただろう。だが、今は違う。そうだ、今は違う。自分にそう必死に言い聞かせて、冷静さを取り戻した。
「…ですが、まだ終わってません!『薔薇の花嫁の争奪戦』を発動!」手札3→2
薔薇の花嫁の争奪戦
このカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「薔薇の花嫁」モンスター1体をリリースして発動できる。手札・デッキからリリースしたモンスターと元々のカード名が異なる「薔薇の花嫁」モンスター1体を特殊召喚する。その後、相手はリリースされたモンスターのレベル×300ダメージを受ける。
「この効果でスィーニョをリリースし。デッキから『橙薔薇の花嫁 オランジェヴォ』を特殊召喚!そして、スィーニョのレベル×300の900ダメージを食らいなさい!」
暮森 LP1400→500
「ターンエンド!」
暮森 LP500
モンスター1体
魔法・罠0枚
手札2枚
綾羽 LP800
モンスター2体
魔法・罠0枚
手札2枚
「わたしのターン、ドロー」手札2→3
幼稚な、過去の自分の幻影をかき消すように大きく首を振り、新たなカードを発動した綾羽はLPが逆転し安心したのか、穏やかな表情を取り戻し、ターンエンドを宣言する。対する暮森はLPが劣勢であることに焦りもせず、反対に冷めた表情をしていた。まるで退屈な劇を見ている時のような表情だ。
「君はわたしを倒して先に進もうとしていることは分かった。でも、あえて言わせてもらう。今のままじゃ絶対に無理だ!」
「…どういう事ですか」
「君はやはり乗り越えられていない。向き合うどころか、過去そのものを否定しているように見える。昔とは違うと言っているけど、実際は逆だ。君は過去に捕らわれている」
暮森の言葉を聞いた瞬間、綾羽は辛そうに目を伏せてそっぽを向いた。その様は、まるで聞くことを拒絶するようだった
「そんなことないです!そんなこと...」
「…なるほど、どうやら、否定されるのが嫌らしいね。なら、嫌でも現実を見せてあげよう!」
暮森の胸元が妖しく輝き、心臓の部分から一枚のカードが姿を現す。その光景を見て綾羽は思い出した。
LPを下回ると現れる特殊なモンスター。その召喚条件を満たしてしまったことに。
「手札の『喜劇のデスピアン』を裏側表示で除外し、現れろ!」
獲物を狙いて影を往き、闇から闇へ舞台移動!
形影の魂魔 ペリュトナ!
魂魔「ペリュトナ」は野太い雄たけびを上げ、背中についた巨大な黒い翼を羽ばたかせて空中で静止する。
鹿のような頭部にはやはり鹿のような鋭い角が2本生えており、刀のように鋭くとがっている。
目元には「オペラ座の怪人」のような白い仮面が装着されており、どこか得体のしれない不気味さを醸しだしている。
形影の魂魔 ペリュトナ ATK100/DEF2000 ☆10
効果/闇属性/サイキック族
このカード名の③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。このカードは自身の効果でしか特殊召喚できない。
①:自分のLPが相手より少ない場合、手札のモンスター1体を相手に見せてから裏側表示で除外することで、このカードをデッキから特殊召喚できる。この効果の発動と特殊召喚は無効化されない。
②:このカードがフィールドから離れた時に発動する。このカードをデッキの1番下に戻す。
③:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同名カードとして扱う。その後、対象のモンスターを裏側表示で除外する。
④:このカードが攻撃表示で存在する場合、自分バトルフェイズ開始時に発動できる。バトルフェイズ終了時まで、相手フィールドの全てのモンスターの効果は無効化される。
「ペリュトナの効果発動!『シャドウ・プレイ』!」
ペリュトナが上空からスィーニョに狙いをさだめ降下すると、ビャロの「影」を頭部の角で貫いた。
ビャロは最初キョトンとした顔をしていたが、ふと体を見ると、段々と体が黒く染まってきていることに気づく。そして完全に黒くなるとフィールドから消滅した。
「ペリュトナは君のモンスター1体の影を奪う。奪われたモンスターはこの世から消滅し、その名前はこの子の物となるのさ」
「カード名のコピー...でもまだ私にはスィーニョが残ってます。この子を倒せるわけが...」
「いいや無駄だね。バトルフェイズ!」
バトルフェイズを宣言した瞬間、ペリュトナの翼が大きく展開し、綾羽のフィールドは闇に包まれた。
「バトルフェイズ開始時、君のモンスターの効果は全て無効化される」
「そ、そんな...」
「行け、クエリティス!『薔薇の花嫁 スィーニョ』に攻撃!『ファイナルカーテン』!」
「…ッ」LP800→0
デュエルが終了し、周囲は元の世界に戻る。そこにいるのは大きく伸びをしている暮森と、うなだれている綾羽だけだ。夕焼けが2人を朱く染めている。
暮森はスカートの中のポケットから小さなチラシを取り出し、綾羽に向ける。
「恋愛部の部室の場所と連絡先が書いてある。気が向いたら恋愛部にきたまえ。君なら歓迎するよ」
「…っ!」
「あっ、ちょっと!…しかたない、か」
暮森は逃げるように走り出した綾羽を止めようとするが、あまりの速さに諦め、手にあるチラシをかたずけて一息つく。
「見ず知らずの人に色々言われるのは嫌だったかな。でも文句は校長に言ってくれよ。わたしも頼まれたんだから...」
暮森は体をドアの影に溶け込ませ、そのまま影から影へと移動すると、調理室から姿を消した。
一方綾羽は、森の中に着いていた。どうしてここに来たのかは綾羽にもわからない。ただ走っていたらここに来ていたのだ。
「クソッ!」
綾羽は泣きじゃくりながら、目の前に生えている木を殴る。木はミシミシと鈍い音を立てて地面に倒れ、その音で綾羽は自分が何をしたのか理解した。
過去に捕らわれているという暮森の指摘は合っている。それは綾羽も心では認めていたが、認めたくないのもまた、事実だった。「そんなものは分かっている」と、そう言いたかった。
綾羽は自分の手を恨めしそうに睨みつける。自らの理想とは最も程遠い怪力を放ち、過去に縛り続ける手を。
だがどれだけ怒っても無意味であることも、綾羽は過去の経験から理解していた。
「ああああああ!!!!!」
ただ、やり場のない怒りだけがあった。その怒りを吐き出すために、綾羽は泣きながら、金切り声で叫び続けた。
第10話 終
次回予告
ランバとの戦いに向け、デッキの最終調整が完了した。あとは時が来るのを待つだけだが、そんな時にマナサがやってくる。また俺に指示を送りに来たのか...?
次回、遊戯王エターナルタイム第11話「アナンシャのディスク」
デュ、デュエルディスクが腕に吸い込まれていく...!
神妙な表情で、暮森は綾羽に向かってそう告げる。
「どんなに目を背けようが、見て見ぬふりしようが、過去は突然背中から殴りかかってくる...乗り越えるには『向き合う』しかないんだ。…君はそれをしたのかな?」
「過去と、向き合う...」
綾羽は嫌なものでも見たようにそっぽを向く。遊駆と出会ったことにより、これまでの衝動的で愚かな行為を続けてきた自分は消えた。遊駆と出会ったことで、過去の自分を乗り越えた。
そのはずなのに...綾羽は首肯せず、目を逸らした。
「そんなことは...ないです」
「…そう」
「自分と向き合う覚悟がないんだね。なら...このデュエルで向き合わせてあげる」
「…そんなものっ」
「そんなもの...何だい?」
「いいえ、始めましょう」
デュエル!
綾羽 LP4000
暮森 LP4000
「まずは舞台を整えようか。『デスピアの道化 アルベル』を召喚!」手札5→4
デスピアの道化 アルベル ☆4
効果/闇属性/天使族
ATK1800/DEF0
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「烙印」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードが墓地に存在する状態で、自分フィールドの表側表示の融合モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。このカードを特殊召喚し、対象のモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
「効果でデッキから『烙印』カード1枚を手札に。…よし、始めようか」
暮森が1枚のカードを発動すると、調理室だった場所は紫を基調とした禍々しい雰囲気を醸し出す舞台へと変貌を遂げた。
綾羽は戸惑いの表情を浮かべながら周囲を見渡す。左には沢山の観客席があり、真っ黒い人影のようなものが席を埋め尽くしている。どうやら観客のようだ。右にはハリボテの木や人間が描かれた舞台道具がある。
「驚いたかな?ここは『烙印劇城デスピア』。いい場所だろう?」
烙印劇城デスピア
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・フィールドから、レベル8以上の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
②:融合モンスター以外の自分フィールドの表側表示の天使族モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合、自分の墓地のレベル8以上の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
「さて、わたしは『烙印劇城デスピア』の効果を発動!手札・フィールドから融合素材を墓地へ送り、融合モンスターを特殊召喚する!わたしは手札の『悲劇のデスピアン』とフィールドの『デスピアの道化 アルベル』を融合素材にして、融合召喚!」手札4→3
暮森の言葉を合図にどこからともなくファンファーレが鳴り響き、それに呼応するように劇場の真ん中に巨大な穴が開く。穴にアルベルと悲劇のデスピアンが吸い込まれるように消えていくと、劇場全体が不吉な輝きを放ち、真ん中から巨大なシルエットが映し出される。
感情奔らせ研がれた刃、鮮血求めて敵を穿つ!融合召喚!『デスピアン・クエリティス』!
デスピアン・クエリティス 融合☆8
効果/光属性/悪魔族
ATK2500/DEF2500
「デスピア」モンスター+光・闇属性モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分・相手のメインフェイズに発動できる。レベル8以上の融合モンスターを除く、フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで0になる。
②:表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。デッキから「デスピア」モンスターか「アルバスの落胤」1体を選び、手札に加えるか特殊召喚する。
闇のように暗い色をした鎧に鮮血のような色の槍を携えた騎士が現れると、客席から喝采の拍手が鳴り響く。それに応えるように、クエリティスは不気味な音を鳴らし槍を素早く一回転させ、先端を綾羽の顔面に向けた。
「わたしはカードを1枚伏せてターンエンド。さて、この子を突破できるかな?」手札3→2
暮森 LP4000
モンスター1体
魔法・罠1枚
手札2枚
綾羽 LP4000
モンスター0体
魔法・罠0枚
手札5枚
「私のターン、ドロー!」手札5→6
(この手札なら勝てる。伏せが何だろうと問題ないわ。向こうの『デスピアン・クエリティス』がいる限り薔薇の花嫁は破壊されない。その高い攻撃力を晒したのが運の尽きよ)
「さぁ来たまえ!君のモンスターで倒しに来たまえよ!」
暮森は両手を広げて綾羽を煽る。その態度に苛立ったのか、少し乱暴にカードをディスクにセットした。
「言われなくても!手札から『青薔薇の花嫁 スィーニョ』を召喚!効果で手札の『白薔薇の花嫁 ビャロ』を特殊召喚!」手札6→5→4
青薔薇の花嫁 スィーニョ ATK200/DEF200
効果/光属性/植物族
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:相手モンスターゾーンにこのカード以上の攻撃力を持つモンスターが存在する場合、このカードは戦闘・効果では破壊されず、戦闘で発生する戦闘ダメージはお互いが受ける。
②:自分メインフェイズに発動できる。手札から「薔薇の花嫁」モンスター1体を特殊召喚する。その後、相手モンスターの攻撃力は特殊召喚したモンスターのレベル×100アップする。
白薔薇の花嫁 ビャロ ATK1000/DEF1000 ☆3
効果/光属性/植物族
このカード名の②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手モンスターゾーンにこのカード以上の攻撃力を持つモンスターが存在する場合、このカードは戦闘・効果では破壊されず、戦闘で発生する戦闘ダメージはお互いが受ける。
②:このカードの攻撃力を0にして発動できる。手札・デッキから「白の薔薇花嫁 ビャロ」を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したカードはこのターン、表示形式を変更できない。
「そしてビャロのレベル分、デスピアン・クエリティスの攻撃力を上げます」
デスピアン・クエリティスATK2500→2800
「バトルフェイズ!行きなさいスィーニョ!」
暮森 LP4000→1400
綾羽 LP4000→1400
「そして、ビャロで『デスピアン・クエリティス』を攻撃!」
この攻撃が通ればお互いに1800のダメージを受けて引き分けになる。ビャロが突撃する中、綾羽は勝利を確信して手札にあるカードを切った。
「手札から速攻魔法『ご隠居の猛毒薬』を発動!」手札4→3
ご隠居の猛毒薬 速攻魔法
①:以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分は1200LP回復する。
●相手に800ダメージを与える。
「効果により私のLPを回復するかあなたにダメージを与える効果を選択します。私は回復する効果を使用!」
綾羽 LP1400→2600
LPが上回ったことにより、続くビャロの攻撃でも綾羽のLPは800残ることになる。
「これが私の意志!この勝利は過去を乗り越えた証明です!」
そう高らかに勝利を宣言する綾羽。しかし暮森は、この状況に絶望することなく、平然とした表情でセットカードをタッチした。
「罠カード『無限泡影』発動」
無限泡影
自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。
①:相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
セットされていたこのカードを発動した場合、
さらにこのターン中、このカードと同じ縦列の他の魔法・罠カードの効果は無効化される。
デスピアン・クエリティスへ突進していたビャロへ突然青白い閃光が直撃して一瞬たじろぐが、攻撃は止まらない。手のひらほどの大きさの体を浮かせクエリティスに突進する。しかしその攻撃はクエリティスが持つ槍に受け止められてしまう。
そのまま槍の先端部分に乗せたビャロを空中に放り投げ、腹部を思いきり貫いた。
「なっ...っ!」LP2600→800
ダメージを受けた衝撃波の強さに、綾羽の体がのけ反る。体勢を立て直すが、自信が「過去を乗り越えたことの証明」と言って放った攻撃が不発に終わった悔しさから歯を軋ませていた。
「君の証明とはこんなに下らないものなのかい?」
「く、下らない⁉」
「確かにその手札だと勝てると思っても無理はない。だが、勝利を確信し伏せの警戒を怠るのはいただけないね」
指摘を受けた綾羽は、反射的に反論しそうになるが、それをぐっと堪える。確かに伏せカードに意識を向けなかったのはミスだ。だが、もしも、そんな「たられば」な言い訳が脳内にあふれ出す。
しかしそんな事をしても無意味なことは綾羽自身がよく理解している。それでも言いそうになるのは、綾羽が忌み嫌う過去の自分、すなわち「幼稚な自分」が心に現れているからだ。
過去の自分ならすぐに怒り癇癪を起していただろう。だが、今は違う。そうだ、今は違う。自分にそう必死に言い聞かせて、冷静さを取り戻した。
「…ですが、まだ終わってません!『薔薇の花嫁の争奪戦』を発動!」手札3→2
薔薇の花嫁の争奪戦
このカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「薔薇の花嫁」モンスター1体をリリースして発動できる。手札・デッキからリリースしたモンスターと元々のカード名が異なる「薔薇の花嫁」モンスター1体を特殊召喚する。その後、相手はリリースされたモンスターのレベル×300ダメージを受ける。
「この効果でスィーニョをリリースし。デッキから『橙薔薇の花嫁 オランジェヴォ』を特殊召喚!そして、スィーニョのレベル×300の900ダメージを食らいなさい!」
暮森 LP1400→500
「ターンエンド!」
暮森 LP500
モンスター1体
魔法・罠0枚
手札2枚
綾羽 LP800
モンスター2体
魔法・罠0枚
手札2枚
「わたしのターン、ドロー」手札2→3
幼稚な、過去の自分の幻影をかき消すように大きく首を振り、新たなカードを発動した綾羽はLPが逆転し安心したのか、穏やかな表情を取り戻し、ターンエンドを宣言する。対する暮森はLPが劣勢であることに焦りもせず、反対に冷めた表情をしていた。まるで退屈な劇を見ている時のような表情だ。
「君はわたしを倒して先に進もうとしていることは分かった。でも、あえて言わせてもらう。今のままじゃ絶対に無理だ!」
「…どういう事ですか」
「君はやはり乗り越えられていない。向き合うどころか、過去そのものを否定しているように見える。昔とは違うと言っているけど、実際は逆だ。君は過去に捕らわれている」
暮森の言葉を聞いた瞬間、綾羽は辛そうに目を伏せてそっぽを向いた。その様は、まるで聞くことを拒絶するようだった
「そんなことないです!そんなこと...」
「…なるほど、どうやら、否定されるのが嫌らしいね。なら、嫌でも現実を見せてあげよう!」
暮森の胸元が妖しく輝き、心臓の部分から一枚のカードが姿を現す。その光景を見て綾羽は思い出した。
LPを下回ると現れる特殊なモンスター。その召喚条件を満たしてしまったことに。
「手札の『喜劇のデスピアン』を裏側表示で除外し、現れろ!」
獲物を狙いて影を往き、闇から闇へ舞台移動!
形影の魂魔 ペリュトナ!
魂魔「ペリュトナ」は野太い雄たけびを上げ、背中についた巨大な黒い翼を羽ばたかせて空中で静止する。
鹿のような頭部にはやはり鹿のような鋭い角が2本生えており、刀のように鋭くとがっている。
目元には「オペラ座の怪人」のような白い仮面が装着されており、どこか得体のしれない不気味さを醸しだしている。
形影の魂魔 ペリュトナ ATK100/DEF2000 ☆10
効果/闇属性/サイキック族
このカード名の③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。このカードは自身の効果でしか特殊召喚できない。
①:自分のLPが相手より少ない場合、手札のモンスター1体を相手に見せてから裏側表示で除外することで、このカードをデッキから特殊召喚できる。この効果の発動と特殊召喚は無効化されない。
②:このカードがフィールドから離れた時に発動する。このカードをデッキの1番下に戻す。
③:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同名カードとして扱う。その後、対象のモンスターを裏側表示で除外する。
④:このカードが攻撃表示で存在する場合、自分バトルフェイズ開始時に発動できる。バトルフェイズ終了時まで、相手フィールドの全てのモンスターの効果は無効化される。
「ペリュトナの効果発動!『シャドウ・プレイ』!」
ペリュトナが上空からスィーニョに狙いをさだめ降下すると、ビャロの「影」を頭部の角で貫いた。
ビャロは最初キョトンとした顔をしていたが、ふと体を見ると、段々と体が黒く染まってきていることに気づく。そして完全に黒くなるとフィールドから消滅した。
「ペリュトナは君のモンスター1体の影を奪う。奪われたモンスターはこの世から消滅し、その名前はこの子の物となるのさ」
「カード名のコピー...でもまだ私にはスィーニョが残ってます。この子を倒せるわけが...」
「いいや無駄だね。バトルフェイズ!」
バトルフェイズを宣言した瞬間、ペリュトナの翼が大きく展開し、綾羽のフィールドは闇に包まれた。
「バトルフェイズ開始時、君のモンスターの効果は全て無効化される」
「そ、そんな...」
「行け、クエリティス!『薔薇の花嫁 スィーニョ』に攻撃!『ファイナルカーテン』!」
「…ッ」LP800→0
デュエルが終了し、周囲は元の世界に戻る。そこにいるのは大きく伸びをしている暮森と、うなだれている綾羽だけだ。夕焼けが2人を朱く染めている。
暮森はスカートの中のポケットから小さなチラシを取り出し、綾羽に向ける。
「恋愛部の部室の場所と連絡先が書いてある。気が向いたら恋愛部にきたまえ。君なら歓迎するよ」
「…っ!」
「あっ、ちょっと!…しかたない、か」
暮森は逃げるように走り出した綾羽を止めようとするが、あまりの速さに諦め、手にあるチラシをかたずけて一息つく。
「見ず知らずの人に色々言われるのは嫌だったかな。でも文句は校長に言ってくれよ。わたしも頼まれたんだから...」
暮森は体をドアの影に溶け込ませ、そのまま影から影へと移動すると、調理室から姿を消した。
一方綾羽は、森の中に着いていた。どうしてここに来たのかは綾羽にもわからない。ただ走っていたらここに来ていたのだ。
「クソッ!」
綾羽は泣きじゃくりながら、目の前に生えている木を殴る。木はミシミシと鈍い音を立てて地面に倒れ、その音で綾羽は自分が何をしたのか理解した。
過去に捕らわれているという暮森の指摘は合っている。それは綾羽も心では認めていたが、認めたくないのもまた、事実だった。「そんなものは分かっている」と、そう言いたかった。
綾羽は自分の手を恨めしそうに睨みつける。自らの理想とは最も程遠い怪力を放ち、過去に縛り続ける手を。
だがどれだけ怒っても無意味であることも、綾羽は過去の経験から理解していた。
「ああああああ!!!!!」
ただ、やり場のない怒りだけがあった。その怒りを吐き出すために、綾羽は泣きながら、金切り声で叫び続けた。
第10話 終
次回予告
ランバとの戦いに向け、デッキの最終調整が完了した。あとは時が来るのを待つだけだが、そんな時にマナサがやってくる。また俺に指示を送りに来たのか...?
次回、遊戯王エターナルタイム第11話「アナンシャのディスク」
デュ、デュエルディスクが腕に吸い込まれていく...!
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これから向き合って成長するのですな。 (2025-12-09 23:55)
役者味ある風貌な暮森が扱うはデスピア。彼女の披露する《デスピアン・クエリティス》に対して、薔薇の花嫁モンスター達お得意のダメージの共通化により、一気にライフを削る綾羽。共にライフの尽きるダメージ量を猛毒薬で自分だけ回復する事で、勝利まで一気に近づきましたが、伏せられた無限泡影により、ダメージの共有が無力化されることに。
最終的に、暮森操る魂魔ペリュトナの登場により、暮森の勝利にて幕引き。
異能しかり、自らの抱える問題点は、そう簡単に取り除けないからこそ忌々しいものですよね。表に出さず封印してしまいたいですが、暮森の言うようにそれを自分の個性として発揮できるほどに扱えるようになれば、これほどない成長にはなるでしょうね。もっとも、綾羽が苦しんでいる様にそう簡単にいかないのが難儀なところです……。
異能を由来としたカードが生み出されるという設定が非常に好みでございますます!暮森の魂魔の名前とその効果の性質からも、彼女の乗り越えたであろう過去の暗さがほんのり垣間見えてしまいますね……。 (2025-12-10 02:53)
他にもエフェクト・ヴェーラーのような効果を無効化するカードはどの時代でも厄介ですね。特に切り札級のカードに撃たれたら目も当てられないことも...。
綾羽が目を逸らしていた自分と向き合うことはまだできません。これから少しずつ、成長させていきます。 (2025-12-10 18:05)
薔薇の花嫁の効果を過信した結果の敗北になりました。油断せず展開していれば、結果は違ったのかもしれませんね。
綾羽にとっての理想は童話のプリンセスのような可憐な存在なのですが、実際は可憐とは程遠い力と性格を持って生まれているので、そのギャップに現在まで苦しんでいます。そんな少女が「今の自分を受け入れろ」と言われても無理なんですよね...。
魂魔の設定を気に入っていただきありがとうございます!No.のような世界で自分しか持っていないカード要素を取り入れたくて作りましたが、好評でよかったです。
暮森のシャクティマは「影に体を溶け込ませて移動する」というもの。この力が彼女に悪影響を与えていたのは本編でも仄めかしていました。この辺りはキャラ紹介コーナーを作った際に解説したいと思います。 (2025-12-10 18:29)