12話　同じ存在　作：ヒラーズ

あの配信から三日。
私は一つの案として、親に連絡できるように追放世界の通信できるアンテナの作成に入っていた。

「コレが完成すれば、少なくとも時間制限を緩和できるはずだ」
『成程、確かに完成すれば支援物資の投下にも支障は出さないでしょう』

千里の道も一歩からだ。先ずは状況の把握、金銭面、地盤を固める、人脈の取得、衣食住の確保、この5つはすでにクリアした。次は通信手段の改善だ。

これをやった後には、ソルの改良だ。いくらアプリを送ってもらったとはいえ、あのボディでは些か問題も出てくるだろう。

「よし、初級段階だが「異次元アンテナ」が出来た。これで少しは通信も安定するだろう。いくら強力な時空磁場の嵐とはいえ、通信機能はすり抜けることができるからな…」
『どちらへ設置なさるつもりですか？』

まぁ、怪しまれないようにするには、一般家庭の住宅と同じ置き方になるだろう。屋根の上、ベランダの外側と様々だが、私は屋根の上に置くことにした。
この「異次元アンテナ」は追放世界に通信するための重要な設備であり、コレが無ければ、ソルが受信するメッセージ内容は短くなってしまう。
此奴の耐久性はそこそこ高く、建物を吹っ飛ばすほどの火力を持つ爆弾以外ではビクともしない。勿論、追放世界に通信するだけではない。この世界のTVを見る時にも十分役に立つ。つまり、このアンテナはカモフラージュも兼ねているのだ。

「ひとまず、今日はこのくらいにしておこう。通信手段の改善は素材が揃えば何とでもなる」
『賢明な判断かと』

一仕事終えた私は自分で淹れたカフェオレを飲む。
うむ、美味しいな。

この1日は有意義に過ごせそうだ。
……そう考えていたんだが。

『どうやらお客様です』
「……新聞代は払ったのだが。そもそもここに来るのかすら不明だ」

玄関の機械に触れ、カメラを確認する。
そこには遊音と見知らぬ少女が映っていた。

「面倒事を持ってきたな…」
『むしろ好都合なのでは？』

＊

「すごい広いなぁ、ココノエちゃんの家」
「そうだろう。だが、それを言うためにここに来たわけではないのだろう？用件を聞こうか」
「何か仕事人みたいな口調！カッコいい！」

どうやら4日後、コラボ企画があり、その一環としてリトルシグマと別の有名なデュエル配信事務所「アルターエゴ」がコラボするという内容だ。
アルターエゴとは別の国の者の言葉で言うと「新しい人間」という意味だが、コラボしていいのか分からんな。

「して、その隣にいる方は、その事務所のものか？」
「うん、同じデュエル配信事務所「アルターエゴ」のメンバーで、ココノエちゃんと同じく科学者だよ」

……今なんて言った？科学者だと？

「今はあまりしゃべらないけど、ココノエちゃんとは仲良くできそうな気がして……」

本来、科学者同士は仲が悪いものなのだが……

「今日は挨拶に来ただけ。私は「峰釜茜」。同じ科学者同士、よろしく」
「ああ、よろしく頼む」

（此奴から感じる気配はなんだ？まるで追放世界の住人ならではの気配だ…まさかだが、…いや、確定するのは早い）

＊

「何とか帰って行ったな」
『そのようですね。どうやら、九重さんも感じましたか？』
「……信じたくはないが、あの峰釜茜という少女。私と同じ、追放世界の住人という可能性が出たな」
『しかし、まだ確定の証拠がありません』
「わかっている。後は二人きりになる機会を作れば良いだけだ」

私にとっては嫌な気配が漂う配信になりそうだ。