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HOME > 遊戯王SS一覧 > 13話 アルターエゴ

13話 アルターエゴ 作:ヒラーズ

約束の日が来た。
私は親にメッセージを送り、特異点である遊音の面倒事を片付けるべく、Dホイールに跨る。

『やけに冷静ですね』
「当然だ。相手は未知数。いくらコラボの経歴があるとはいえ、あの茜という科学者は恐らく、私と同じ類だ」

事務所へ向かうための高速へ乗り上げ、速度を上げる。

『それと、返信用の新着メッセージが2件届いております』
「聞き流す。続けてくれ」

内容は簡易的なものでもあり、やや絶望的な内容でもあった。
時空磁場の嵐を取り除く機械を作っても、消える気配はなく、より高い出力を上げても効果が薄いとのことだった。そのことで父や母は私に謝罪の一言がよせられていた。それを私は聞き流し、冷静に答える。

「……あなた方は無力ではない。元はと言えば、私があのような実験を行ったのが間違いだ。計算を組まず、どこかへゲートを作るという愚かな案を採用した時点で失敗は目に見えていた。だが、失敗したくないという感情がこの状況を引き起こしたのだ。……だから悪いのは私だ」

そう考えるしかない。止めない親が悪いという概念は私の中では存在していない。科学者に成るというのは、それ相応の責任が課せられる。
確かに誰かの責任にすれば気持ちが軽くなるだろう。だがそれは、責任から逃げてるようなものだ。私のプライドが……それを許さん。

『しかし、意外な情報も拾えました』
「ああ……これで茜が同じ存在だというのが確信したという事だ」

父たちのメッセージによると、私が迷い込んだ世界「別次元地球γ‐621」は、追放世界のどの国も手を付けられておらず、各国から様々な人員が投入され、この世界の監視と偵察が行われているらしい。
だが、これを私のいた国「レクス公国」が気付かないはずが無く、この世界にも手を伸ばしていたのだが、他勢力の抵抗が激しく、手放す羽目になっただとか…。

「まさか、ある意味で敵地のど真ん中に飛ばされるとは、思わなかったな」
『全くです。早く我々の方で嵐を消してしまえば、帰還のチャンスが得られます』
「そのためにも、特異点が持ってくる面倒事を片付けなくてはな」



「皆さん、こんにちは!ユウネだよ~!」

〈うぽつ!〉
〈ユウネちゃーん!〉
〈お、ココノエも来てんじゃん!〉
〈アルターエゴとコラボすると聞いて!〉

「そうそう!今日はアルターエゴの方々とコラボ配信を行うよ!皆よろしくね!」

〈編集は任せろ!バリバリ~!〉
〈ココノエちゃんのデュエルが見れると聞いて!〉
〈アルターエゴの「茜科学チャンネル」の登録者だけど、ここも見ますよ〉
〈おう、見てけ見てけ~!〉

随分と盛り上がりようである。
どうやらアルターエゴは相当名声が高い事務所のようだな。

「あ、アルターエゴの人たちが来た!」

自己紹介をしているうちに二人の少女がやってくる。
一人は茜だ。私服に白衣を着た私と同じ服装だった。
しかし隣にいる少女は肌が褐色で、金髪。喋る言葉が片言日本語のふざけた態度を持つ奴だった。

「ハロー!視聴者サン!アルターエゴの「エリス」デース!」

〈キャー!エリスちゃーん!〉
〈そう言えば、此奴の推しはエリスも含まれてるんだった〉
〈推しが沢山いるのはいい事だ〉
〈草〉

「今日はワタシ達のコラボ相手は「リトルシグマ」デース!」

〈茜ちゃんも来てるから、安心だな〉
〈今日はどんな科学を見せてくれるんですか!?〉
〈wktk〉

凄いな。視聴数がとんでもないぞ……

「さて、ココノエちゃん!エリスちゃんはこう見えて世界大会の上位の内4位に君臨してる人だよ!」
「ほう、それほどの有名人がコラボ企画に参加してくれるとは、いい時代になったものだ」

私が最優先で警戒してるのはエリスではない。茜ただ一人だ。

「ではでは皆サン!リトルシグマのニューフェイスのココノエちゃんとデュエルをしたいと思ってマース!」
「待って、彼女は私が相手する」

それを聞いてエリスは「それは残念デース……」としょぼくれる
どうやら彼女のブレーキ役も担っているらしい。大変だな……お前も。

「どうも、リトルシグマの新顔、ココノエさん」
「ああ。よろしく頼むぞ」
(さて、どうやって正体を探るか……こんな人前で暴露はできない。何とか二人になるチャンスを作らねばならない)

先ずはデュエルで実力を探ろう。

お互いにディスクを構える。

「LPは8000、先攻ドローは無し、いい?」
「いいぞ。私もそうしたいところだった」
「じゃあ次、先攻後攻ダイスロールを行う」
「今振る」

ココノエ:3
茜:5

「先攻は貰う」
「ふむ……」

〈ココノエ、意外とダイス運悪い?〉
〈科学者同士の戦いは燃えるねぇ〉
〈一体どんな科学(デュエル)が始まるんだ……!?〉

「私の科学で、あなたの布陣を破る」
「見せてもらおうか、お前の科学論文(実力)を」

「「デュエル!」」

だが、この時の私は知らなかった。
この勝負が、意外な展開を遂げることに……
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