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3話 協力者と太古の力 作:19
デュエルは終わり、二人は喫茶店で一息ついていた。紅茶を味わいながら、クレアは言う。
クレア「…アナタ。本当に空から来たの?」
ヤマト「うん。さっきから言ってるじゃんか。もう6回目だよ…?」
クレア「目的は…」
ヤマト「だから、悪魔を倒すため。カードで調査しろって言われて」
クレア「悪魔…」
悪魔という単語を出す度に、クレアは真剣な顔をする。何か心当たりがあるのだろうか…。
ヤマト「…もしかして、何か知ってるの?悪魔について」
クレア「えぇ、悪魔っていうより。悪魔みたいな奴らなら知ってるわ」
そう言われて、ヤマトも話しを食い入るように耳にする。
クレア「アナタがさっき路地裏でデュエルしてたの「カードリーパー」って奴らよ。デュエルで相手を負かして、レアカードを奪う…」
ヤマト「ソイツらが悪魔なの?」
クレア「カードリーパーのボス…。古賀(こが)大牙(だいが)よ。アイツの強さは人間の比じゃない。それこそ、悪魔みたいな力…」
ヤマト「大牙…。そんな人がいるんだ。でも、いくらそんな人がいても、セキュリティにすぐに捕まっちゃうんじゃ?」
クレア「彼は逃げないわ。4か月前、セキュリティの精鋭部隊が彼のアジトに突入したの。50人がかりよ。でも、全員負けちゃったわ…」
カップを置いて一息つく。その後聞いたことだが、その中にクレアの父も居たらしく、例外なく大牙とのデュエルで敗北し、病院送りにされていた。
ヤマト「でも、たかがカードゲームで怪我なんて…」
クレア「アナタがカードリーパーとデュエルした時、『痛い』って感覚はなかったの?」
ヤマト「そういえば…たしかに、永続魔法の効果でのダメージがビリビリきてたような…」
クレア「大牙は相手に与えるダメージを実際のダメージにできるって噂がある。だから誰も彼とデュエルをしたがからない…誰も彼を止められないの」
ヤマト「そんなに強い人が…。それにダメージが実体化なんて。危険すぎる」
クレアは一通り話し終えて言った。
クレア「だから…、アナタには大牙を倒すために協力してほしいのよ。悪魔のカードだか何だか知らないけど、そんなカード持ってそうな危険な奴なんてアイツくらいでしょ?」
ヤマト「うん。わかったよ。絶対にその大牙とかいう奴を倒そう!」
二人は会って間もないというのに意気投合し、まるで昔からの知り合いのような信頼感を感じていた。しばらくの休憩を終え、クレアはヤマトをとある場所に連れて行く。
クレア「いくらアナタに可能性があって、私が腕を磨いたとしても大牙に勝てる保証はないわ。もっと多くの仲間が必要よ」
ヤマト「仲間?クレアの友達でも呼ぶの?」
クレア「私に友達なんていないわ。いっつも一人…」
ハッキリそういい切った彼女の後姿はどこか物寂しげな表情をしていた。ついて行くだけのヤマトだったが、彼女に横に並ぶ。
ヤマト「だったら、僕が友達だっ」
クレア「ふふ、本当に変な人…。いや、変な天使」
満面の笑みで笑いかけると彼女も笑ってくれた。
しばらく進むと一つの大きな建物の前にたどり着いた。最上階辺りから大きくなっていて、他のビルとは違った異質なその建造物の中に案内される。
クレア「たしか、ここに打倒大牙を考えてる人がいるって噂を聞いたの。きっと力になってくれるわ」
曰く、大牙に単身デュエルを挑んで敗北した人物がここの建物の最上階に住んでいるとのこと。話では、大牙をもっとも追い詰めた人物とか…。
エレベータで最上階へ行き、掃除が行き届いた広い廊下を進んでいくと、一つのドアの前に到着した。どうやらここがその人物の部屋らしい。
コンコン…。クレアがドアをノックする。すると、ドアが自動的にゆっくりと開き始めた。どうやら「入ってもいい」ということみたいだ。
クレア「いきましょう」
ヤマト「うん…」
室内は綺麗に掃除されていた。入ってすぐ廊下が真っ直ぐのび、その奥にリビングがあるようだ。二人は自然と気を引きしめ、奥にいるであろう人物が待つ場所へ歩く。
?「いらっしゃい。待ってたよクレアちゃん」
赤い短髪と優しい顔をした男性がいた。デニムシャツに長ズボンをはいていて、自分達と同い年くらいだろうか。
クレア「ちゃんって…ふつうにクレアでいいですよ」
?「そして、そっちの君は…」
ヤマト「遊咲ヤマトです。貴方は…」
アオヒサ「アオヒサだ。よろしくな」
手を差し伸べてきたアオヒサと握手をかわし、ヤマトとクレア、アオヒサは向かい合って話を始めた。
アオヒサ「大牙討伐だっけ…?若いのに、よくやろうと思ったねぇ…」
クレア「若いって、私はもう16よ。もう一人前だって」
アオヒサ「俺は17だ。そっちの君は?」
ヤマト「210歳です」
アオヒサ「はは、冗談が好きなんだな。予想すると、きっとクレアちゃんと同い年だね」
笑いながらコーヒーをグイっと飲むアオヒサに、クレアは証拠を見せる。
クレア「本当よ。この子天使なの。見せてあげたら」
ヤマトが翼を広げると、飲み込もうとしていたコーヒーを噴出された。
アオヒサ「…え?嘘…」
クレア「本当よ♪」
その後、ヤマトはアオヒサにも自分の役目や目的などを説明した。終始信じられないといった表情をする彼も、クレアから「本当だ」と何度もいわれ信じつつある。
アオヒサ「ふーん…それで、一番怪しい大牙を…。なるほどねぇ」
クレア「アナタ、前に大牙とデュエルしたことあるんでしょ?どんなデッキだったの?ロック?バーン?ビート?」
食いついてくるクレアをヤマトが押さえて話しを続けさせた。
アオヒサ「なんだろうな…ビートと、バーンかな…わからない。ただ、その時は気が気じゃなかったんだ」
クレア「どういうこと?」
アオヒサ「アイツと対峙した時、ものすごいプレッシャーと恐怖に襲われて、気付いた時は病院のベッドの上だよ…」
情けなかったと言わんばかりにため息をつくアオヒサにヤマトは尋ねた。
ヤマト「アオヒサさんは、なんで大牙の元に…?」
アオヒサ「兄のカード形見のカードが…アイツの部下に盗まれてね。取り返しにいったんだ。なんとか奪った奴は倒してカードだけは取り返したんだけど、アイツが来て…」
クレア「負けちゃった…」
アオヒサ「君たちもいずれ分かる。アイツはデュエルしちゃいけない奴だ。言っても聞いてはくれないだろうけど、アイツを倒しに行くのは止めた方がいい」
弱気に話すアオヒサだったが、百も承知だとクレアは言う。僕だって、ゼル様からの命があるし、何よりそんな危険な人物を野放しにはできない。
ヤマト「それでも、倒さなきゃいけないんです。そんな危険な奴を…でないと、もっと被害が大きなってしまうから」
クレア「そうね。つまり…アナタは今回の大牙討伐には参加できない…わね?」
クレアの問いかけに、アオヒサは少し悩んでいた。しかし、答えはすぐに出る。
アオヒサ「…いや。俺も手伝おう。ただし、アイツとのデュエルは君たちでやってくれ。俺は周りにいるだろう奴らを纏めて相手する」
ヤマト「大丈夫なんですか?そんな奴だし、カードリーパーの数ってかなりいるんじゃ」
アオヒサ「ああ。確かにかなりの人数が大牙を護衛しているだろう。ただ、俺だってデュエリストだし…なにより大会でも腕の立つデュエリストって言われてるんだ。多少は力になれると思う」
クレア「決まったわね。アオヒサ。協力ありがとうね」
アオヒサ「いやなに。若い君たちが危険な目にあってるのに、話を聞いた自分が黙ってみてるだけっていうのが腑に落ちなかっただけだよ」
アオヒサは優しく答えてくれた。その後、アオヒサは二人を屋上へと案内した。風が強く、青空を流れる雲も速く移動しているように見える。今頃神様達が自分の行動を監視しているのだろう。
アオヒサ「一応君たちの実力をためさせてもらってもいいかな…?もしこれで俺に負けるようならさっきの話は取り消し。全力で君たちを止めるよ」
クレア「どっちとデュエルするの?」
アオヒサ「そうだな…ヤマト。君とデュエルだ。天使の力を見せてもらうよ」
ヤマト「分かった。じゃあ…行くよ!」
アオヒサ・ヤマト「「デュエル!」」
アオヒサ LP8000 手札5
ヤマト LP8000 手札5
アオヒサ「まずは俺のターン。手札から、フィールド魔法『ワンスワールド』を発動。これからこのデュエルは、超古代の海底でのデュエルとなる」
雲一つない青空が突如、薄暗い海底へと早変わりした。地面はコンクリートではなくゴツゴツした岩盤になり、所々から小さな気泡がポワポワと浮上している。
上からは光の筋が幾つも差し込み、デュエルする二人を照らしている。
アオヒサ「俺が使うモンスター達は、このフィールド魔法が発動されていなければ破壊されてしまう。だが…このフィールド内では敵無しだ!『ハント・パンデリオン』を召喚!
ハント・パンデリオン ☆7 攻撃力2100 → 攻撃力2500
古代生物「パンブデルリオン」その物の姿をしたモンスターが召喚される。無数にある脚をワシャワシャと動かし、アオヒサの周りを遊泳している。
ヤマト「レベル7モンスターをリリース無しで召喚!?それも攻撃力が上がってるなんて…!」
アオヒサ「俺が使う『ハント』モンスター達はリリース無しで召喚することができる。さらに、『ワンスワールド』の発動下では攻撃力が400ポイントアップする!」
クレア「何あのモンスター…うぅ、気持ち悪い。デュエルしなくてよかったかも」
両腕を擦りながら背筋を走る寒気に耐えるクレアを余所に二人のデュエルは続く。
アオヒサ「『ワンスワールド』の効果により、俺が『ハント』モンスターを召喚する度にこのカードにハントカウンターを一つ置く。そしてこのままターンエンドだ」
アオヒサ LP8000 手札3
場
ハント・パンデリオン ☆7 攻撃力2500
魔 ワンスワールド ●×1
ヤマト「僕のターン、ドロー!」
引いたカードを確認し、最良の戦術を考える。何十通りとあるプレイングの中から一つを選んで実行した。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』を召喚!そして効果発動、デッキトップ3枚を確認し、その中に存在するレベル5以下の『メドロウ』モンスター1体を選択して特殊召喚する!」
メドロウ・ドリアー ☆2 攻撃力300
モンスター、罠カード、モンスター…。どちらもレベル5モンスターじゃない。ヴァルキスを出すのは無理のようだ。しかし、シンクロ召喚ができないわけじゃない。
ヤマト「確認した中には『メドロウ・ケイロン』が存在した。よって『メドロウ・ケイロン』を特殊召喚」
メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700
ケンタウロスのような姿をしたケイロンが特殊召喚される。
ヤマト「『メドロウ・ケイロン』には三つの効果があり1ターンに一度手札1枚を捨てることで、いずれかの効果を発動できる。手札の『メドロウ・ノーム』を墓地へ送り、一つ目の効果を発動!ライフを1000ポイント回復する!」
ヤマト LP8000 → 9000
ヤマト「それだけじゃない。レベル4『メドロウ・ケイロン』にレベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」
4+2=6 二体のモンスターは☆になり、一列に並ぶ。それを光が覆った時、全く別のモンスターへと姿を変えた。
ヤマト「不死身の闘志が、聖天の光を受けて舞い上がる。シンクロ召喚!舞い戻れ!『Hメドロウ・フェニクス』!」
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力2200
炎を纏った不死鳥が甲高い声を上げながらヤマトのフィールドにシンクロ召喚される。攻撃力はアオヒサのモンスターには及ばない。しかし、ヤマトにはそれを突破できる自信があった。
クレア「あのモンスター…なるほど、あの時のコンボね」
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』がシンクロ素材とされたことで、自分は1000ポイントライフを回復する。そしてバトルだ!『Hメドロウ・フェニクス』で、『ハント・パンデリオン』を攻撃!」
アオヒサ「自滅特効…!」
ヤマト LP900 → 1万 → 9700
ヤマト「ぐぅ…!ここで、破壊された『Hメドロウ・フェニクス』の効果発動!墓地のフェニクスを蘇生する、ループリバース!」
火の粉となって散り散りになった破片が大きく燃え上がり、不死鳥の復活を祝福する。
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力2200 → 3000
ヤマト「フェニクスが蘇った時、攻撃力を800ポイントアップする。もう一度攻撃だ!」
アオヒサ LP8000 → 7500
アオヒサ「く…攻撃力を一気に上げてきたか…。でも、俺もここで破壊された『ハント・パンデリオン』の効果を使わせてもらう。発動されている『ワンスワールド』にハントカウンターを一つ置くぞ」
ヤマト「カードを1枚伏せてターンエンド」
ヤマト LP8700 手札4
場
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力3000
セット魔法罠カード×1
アオヒサ「ドロー!…攻撃力3000か。中々高いが…、まだまだ俺の方が上だな。永続罠『ハント・オブ・アドバンス』を発動。このカードが発動されている限り、俺の『ハント』モンスターはハントカウンター1個につき100ポイント攻撃力をアップさせる」
現在乗っているカウンターは2つ。攻撃力がアップしたとしてもたったの200。フェニクスを倒せるモンスターはそうそう出せるとは思えなかった。しかし、アオヒサはそんな考えを打ち消すようなカードを発動した。
アオヒサ「手札から魔法カード『カンブリアバースト』を発動!俺の場にモンスターが存在しない場合、手札に存在する『ハント』モンスター3体を通常召喚扱いで俺の場に召喚する!」
ヤマト「ハントモンスターを…一気に3体も!?」
クレア「何よその卑怯な効果は…」
アオヒサ「俺は手札に存在する『ハント・フルディア』1体と『ハント・オットイア』2体を召喚!
ハント・フルディア ☆7 攻撃力1900 → 2300 → 2700
ハント・オットイア ☆6 守備力2300 ×2
二体の古代生物が岩盤を突き破って出現した。フルディア、オットイア共にその名の通りの姿をしているモンスター達は、先ほどのパンデリオンのようにアオヒサの周りをゆったりと遊泳している。
アオヒサ「『ワンスワールド』は、『ハント』モンスターが通常召喚される度にハントカウンターを乗せる効果がある。つまり、カウンターを3つ置かせてもらう!」
ヤマト「これで乗っているカウンターの数は5つ…でもそのモンスター達の攻撃力じゃ、フルディアの攻撃力が上がっても2700。復活して攻撃力の上がっている『Hメドロウ・フェニクス』には及ばない」
アオヒサ「何もこれだけで終わりじゃない…。まぁ『カンブリアバースト』を発動したターン、俺はシンクロもエクシーズもできないってデメリットがあるんだけどな。2体の『ハント・オットイア』の効果発動!相手フィールド上に存在するモンスターの数だけ、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を400ポイントダウンさせる!この効果はバトルフェイズ中も発動可能だ」
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力3000 → 2500
ヤマト「オットイアは二体。1体ずつ発動するとして、一体目でフェニクスの攻撃力を下げる…。」
アオヒサ「その通り。俺がエクシーズもシンクロも捨て、この戦術を選んだのは他にもある…。オットイアの効果は相手ターンでも発動可能。つまり、そっちがいくら自爆特攻をしかけようともステータスを下げられてしまえばただの無駄死に。再生する意味がなくなるのさ」
ヤマト「く…なんとかしないと…」
アオヒサ「バトル!『ハント・フルディア』で『Hメドロウ・フェニクス』を攻撃!」
黒かった目を真っ赤に光らせ、捕食者としての急速な泳ぎを見せたフルディアはフェニクスを襲った。弾丸のようにフェニクスの体を突き破り破壊。飛び散った火の粉がヤマトにだmr-字を
ヤマト LP9700 → 9500
折角回復したライフがジワジワと削られていく。確かにアオヒサの場を泳ぐ3体のモンスターのコンボを突破するのは今の状況じゃ不可能だ。しかしだからといって諦めるわけじゃない。
ヤマト「うぅ…。場を空けるわけにはいかない!戦闘破壊された『Hメドロウ・フェニクス』の効果発動!墓地から特殊召喚し、攻撃力を800ポイントアップさせる!ループリバース!」
バラバラにされた火の粉が水中にも関わらず激しく燃え盛り、元の不死鳥の姿に舞い戻る。残りのモンスターは守備表示。追撃はしてこれない。
アオヒサ「俺はこのままターンエンド。さぁ、どうする?」
アオヒサ LP7500 手札0
場
ハント・フルディア ☆7 攻撃力2700
ハント・オットイア ☆6 守備力2300 ×2
罠 ハント・オブ・アドバンス
魔 ワンスワールド ●×5
ヤマト「僕のターン、ドロー!…よし、手札から『天聖の呼び声』を発動!手札の『メドロウ』モンスター1体をデッキに戻し、戻したモンスター以外のレベル4以下の『メドロウ』モンスター1体をデッキから特殊召喚する!『メドロウ・ガードイル』を特殊召喚!」
メドロウ・ガードイル 34 攻撃力0
ゴツゴツと痩せ細り、翼を生やした青く小柄なモンスターが召喚される。
ヤマト「『メドロウ・ガードイル』の効果発動!このモンスターを守備表示にすることで、相手モンスター1体を守備表示にする!『ハント・フルディア』を守備表示に!」
メドロウ・ガードイル 守備力1900
ハント・フルディア 守備力0
ガードイルが腕を胸の前でクロスさせ石像になる。それに呼応するようにフルディアの動きがピタリと止まり、無いに等しい守備力を晒した。
ヤマト「『ワンスワールド』と『ハント・オブ・アドバンス』で上がるのは攻撃力のみ、守備表示にしてしまえばどんなに上げたって無力化できる!『メドロウ・ディーネ』を召喚!」
水色の肌をした少女が召喚された。水の精霊であるウンディーネのモンスターの効果を発動する。
ヤマト「このモンスターが召喚に成功した時、墓地に存在するレベル4以下の『メドロウ』モンスター1体を特殊召喚する。『メドロウ・ドリアー』を特殊召喚!」
シンクロ召喚に使用された木の精霊が蘇る。そして、このモンスターには召喚時に発動する効果があった。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』が召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキトップのカード3枚を確認できる。その中に『メドロウ・ドリアー』以外のレベル5以下『メドロウ』モンスターが存在すれば、そのモンスターを特殊召喚する!」
デッキトップを意を決して確認する。モンスター、魔法、モンスター! 2体いるうちの1体を選び、場に特殊召喚した。
ヤマト「確認した中には『メドロウ・サイクロス』が存在した。『メドロウ・サイクロス』を特殊召喚!」
メドロウ・サイクロス ☆4 攻撃力1900
一つ目の鬼のようなモンスターが召喚される。神話などに登場する「サイクロプス」のモンスターだ。筋骨隆々で大きく、高い攻撃力をもって対峙するハントモンスター達を威圧する。
アオヒサ「サイクロプスだな…。って、天使がそんな魔物みたいなカード使ってていいのか?」
ヤマト「すべてモンスターが悪って訳じゃないよ。サイクロプスだって、全員が全員悪者じゃない。鍛冶師として立派に仕事をする奴だっているんだ」
アオヒサ「そうなのか。なら、ソイツの力を見せてみろ…!」
ヤマト「言われなくても…!『メドロウ・サイクロス』の効果発動!1ターンに一度、このモンスターの攻撃力を0にできる。そして、この効果を発動したターンの間に自分が『メドロウ』シンクロモンスターを特殊召喚した場合、一度だけそのモンスターの攻撃力を下げた数値分アップする。」
アオヒサ「なるほど…。フェニクスで攻撃し、返り討ちにあったとしても復活、そしてサイクロスの効果で攻撃力をアップさせて突破するという作戦だな…?」
ヤマト「それも考えた。でも、サイクロスの効果はこのターンの終わりまでしか適用されない。このターンでその3体を倒さな限り、この状況を打破するのは無理だ。だからこうする!レベル1『メドロウ・マーメイド』とレベル4『メドロウ・サイクロス』にレベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」
1+4+2=7 1ターンで揃えた3体のモンスターが☆に変わり、一列になって光に飲み込まれる。
ヤマト「聖戦士が翼を広げ、剣を振るう!大いなる光!舞い踊れ!『Hメドロウ・ヴァルキス』!」
Hメドロウ・ヴァルキス ☆7 攻撃力1900
天界の天使が舞い降りた。輝く剣と盾を持ち、白銀の翼を広げた美女がヤマトを守るようにフィールドに舞い降りる。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』が『メドロウ』シンクロモンスターの素材とされたことにより、自分はライフを1000ポイント回復する!さらに、『メドロウ・サイクロス』の効果により、ヴァルキスの攻撃力を1900ポイントアップ!」
ヤマト LP9500 → 10500
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900 → 3800
アオヒサ「攻撃力…3900!?なんて数値だ」
クレア(確かに凄い攻撃力…。まっ、私のエクスカリバーにはまだ届かないんだけど…♪)
余裕と言わんばかりにすまし顔のクレアを余所にヤマトは続ける。
ヤマト「『Hメドロウ・ヴァルキス』が相手モンスターと戦闘を行う時、相手のモンスターの攻撃力か守備力が元々の数値と違っていれば、その数値だけヴァルキスの攻撃力をアップする。『ワンスワールド』と『ハント・オブ・アドバンス』の二重アップにより、『ハント』モンスターの攻撃力は900ポイント変わっている。その分だけヴァルキスの攻撃力をアップする!」
アオヒサ「つまり攻撃力4700か…。随分恐ろしいコンボをする天使様だな」
ヤマト「僕は悪魔のカードを葬らなきゃいけない。それを使ってる人を助ける為にも、それに苦しめられる人を助けるためにも…だから、ここで負けてちゃ意味がないんだ…!バトル!『Hメドロウ・フェニクス』で『ハント・オットイア』を攻撃!」
オットイアは守備表示、戦闘ダメージこそ通らないものの、この壁を崩すには只々攻撃するしかない。
アオヒサ「そう簡単に突破されちゃこっちが困るんだ。2体の『ハント・オットイア』の効果発動!1ターンに一度、相手モンスターの攻撃力を400ポイントダウンさせる!合計で800ポイントダウンし、守備力2300のオットイアには届かなくなった!」
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力3000 → 2600 → 2200
ヤマト LP10500 → 10400
ヤマト「破壊できなかった…でも、まだヴァルキスの攻撃が残ってる!行け、『Hメドロウ・ヴァルキス』!『ハント・フルディア』に攻撃!そして攻撃時の効果発動!シャイン・アップ!」
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力3800 → 4700
ダメージは通らなかったが、破壊された時の爆風がアオヒサを吹き飛ばそうとする。なんとか踏ん張って耐えたアオヒサのモンスターは破壊され、折角の戦術が崩れてしまった。
アオヒサ「くぅ…。だが、『ハント・フルディア』が破壊されたことによって『ワンスワールド』にハントカウンターを1つ置かせてもらうぜ」
ヤマト「僕はこれでターンエンド。ヴァルキスとサイクロスの効果はここまでだから、ヴァルキスの攻撃力は元に戻る」
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力4700 → 1900
ヤマト LP10400 手札2
場
メドロウ・ガードイル 守備力1900
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力2200
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900
セット魔法罠カード×1
ヤマト「(なんでだろう…状況はかなり優勢になった筈。相手の手札は0枚。なのに、なんでこんなに不安なんだ…。まるで、次にアオヒサが引くカードに勝運を全て持っていかれるような感覚…)」
アオヒサ「ヤバくなってきたな…。でも、こんな良いデュエルは久しぶりだ。負けたくないね!ドロー!」
気合の入ったドロー。引いたカードを確認したアオヒサは勝利を確信した。
アオヒサ「『ハント』モンスターはリリース無しで召喚できる。俺は確かにそう言った。でもそれは…《このモンスターを除いて》だ!」
アオヒサの場に存在した2体の『ハント・オットイア』が、地面から突然現れた大きな影に《食われた》。
アオヒサ「2体の『ハント・オットイア』をリリース!現れよ。超太古の頂点の捕食者…!『ハント・カリスリヴ』!」
ハント・カリスリヴ ☆9 攻撃力2900 → 3300 → 3800
「アノマロカリス」。カンブリア紀に生息したと言われる食物連鎖の頂点だった危険な生物。そのモンスターが今、アオヒサによって場に現れた。3mはあろう巨体と大きなキバ。その姿を見たヴァルキスとフェニクスも咄嗟に身構えた。
アオヒサ「『ワンスワールド』の効果によって、『ハント』モンスターの召喚時、このカードにハントカウンターを一つ置く。カウンターの数が6個になったことで、アップする数値も上がる…!」
ハント・カリスリヴ 攻撃力3900
ヤマト「攻撃力…3900!?」
アオヒサ「さっきのお前のモンスターと同じ攻撃力。驚くことはないだろ?」
不敵な笑みがヤマトの勝機を奪い去ろうとしていた…。
クレア「…アナタ。本当に空から来たの?」
ヤマト「うん。さっきから言ってるじゃんか。もう6回目だよ…?」
クレア「目的は…」
ヤマト「だから、悪魔を倒すため。カードで調査しろって言われて」
クレア「悪魔…」
悪魔という単語を出す度に、クレアは真剣な顔をする。何か心当たりがあるのだろうか…。
ヤマト「…もしかして、何か知ってるの?悪魔について」
クレア「えぇ、悪魔っていうより。悪魔みたいな奴らなら知ってるわ」
そう言われて、ヤマトも話しを食い入るように耳にする。
クレア「アナタがさっき路地裏でデュエルしてたの「カードリーパー」って奴らよ。デュエルで相手を負かして、レアカードを奪う…」
ヤマト「ソイツらが悪魔なの?」
クレア「カードリーパーのボス…。古賀(こが)大牙(だいが)よ。アイツの強さは人間の比じゃない。それこそ、悪魔みたいな力…」
ヤマト「大牙…。そんな人がいるんだ。でも、いくらそんな人がいても、セキュリティにすぐに捕まっちゃうんじゃ?」
クレア「彼は逃げないわ。4か月前、セキュリティの精鋭部隊が彼のアジトに突入したの。50人がかりよ。でも、全員負けちゃったわ…」
カップを置いて一息つく。その後聞いたことだが、その中にクレアの父も居たらしく、例外なく大牙とのデュエルで敗北し、病院送りにされていた。
ヤマト「でも、たかがカードゲームで怪我なんて…」
クレア「アナタがカードリーパーとデュエルした時、『痛い』って感覚はなかったの?」
ヤマト「そういえば…たしかに、永続魔法の効果でのダメージがビリビリきてたような…」
クレア「大牙は相手に与えるダメージを実際のダメージにできるって噂がある。だから誰も彼とデュエルをしたがからない…誰も彼を止められないの」
ヤマト「そんなに強い人が…。それにダメージが実体化なんて。危険すぎる」
クレアは一通り話し終えて言った。
クレア「だから…、アナタには大牙を倒すために協力してほしいのよ。悪魔のカードだか何だか知らないけど、そんなカード持ってそうな危険な奴なんてアイツくらいでしょ?」
ヤマト「うん。わかったよ。絶対にその大牙とかいう奴を倒そう!」
二人は会って間もないというのに意気投合し、まるで昔からの知り合いのような信頼感を感じていた。しばらくの休憩を終え、クレアはヤマトをとある場所に連れて行く。
クレア「いくらアナタに可能性があって、私が腕を磨いたとしても大牙に勝てる保証はないわ。もっと多くの仲間が必要よ」
ヤマト「仲間?クレアの友達でも呼ぶの?」
クレア「私に友達なんていないわ。いっつも一人…」
ハッキリそういい切った彼女の後姿はどこか物寂しげな表情をしていた。ついて行くだけのヤマトだったが、彼女に横に並ぶ。
ヤマト「だったら、僕が友達だっ」
クレア「ふふ、本当に変な人…。いや、変な天使」
満面の笑みで笑いかけると彼女も笑ってくれた。
しばらく進むと一つの大きな建物の前にたどり着いた。最上階辺りから大きくなっていて、他のビルとは違った異質なその建造物の中に案内される。
クレア「たしか、ここに打倒大牙を考えてる人がいるって噂を聞いたの。きっと力になってくれるわ」
曰く、大牙に単身デュエルを挑んで敗北した人物がここの建物の最上階に住んでいるとのこと。話では、大牙をもっとも追い詰めた人物とか…。
エレベータで最上階へ行き、掃除が行き届いた広い廊下を進んでいくと、一つのドアの前に到着した。どうやらここがその人物の部屋らしい。
コンコン…。クレアがドアをノックする。すると、ドアが自動的にゆっくりと開き始めた。どうやら「入ってもいい」ということみたいだ。
クレア「いきましょう」
ヤマト「うん…」
室内は綺麗に掃除されていた。入ってすぐ廊下が真っ直ぐのび、その奥にリビングがあるようだ。二人は自然と気を引きしめ、奥にいるであろう人物が待つ場所へ歩く。
?「いらっしゃい。待ってたよクレアちゃん」
赤い短髪と優しい顔をした男性がいた。デニムシャツに長ズボンをはいていて、自分達と同い年くらいだろうか。
クレア「ちゃんって…ふつうにクレアでいいですよ」
?「そして、そっちの君は…」
ヤマト「遊咲ヤマトです。貴方は…」
アオヒサ「アオヒサだ。よろしくな」
手を差し伸べてきたアオヒサと握手をかわし、ヤマトとクレア、アオヒサは向かい合って話を始めた。
アオヒサ「大牙討伐だっけ…?若いのに、よくやろうと思ったねぇ…」
クレア「若いって、私はもう16よ。もう一人前だって」
アオヒサ「俺は17だ。そっちの君は?」
ヤマト「210歳です」
アオヒサ「はは、冗談が好きなんだな。予想すると、きっとクレアちゃんと同い年だね」
笑いながらコーヒーをグイっと飲むアオヒサに、クレアは証拠を見せる。
クレア「本当よ。この子天使なの。見せてあげたら」
ヤマトが翼を広げると、飲み込もうとしていたコーヒーを噴出された。
アオヒサ「…え?嘘…」
クレア「本当よ♪」
その後、ヤマトはアオヒサにも自分の役目や目的などを説明した。終始信じられないといった表情をする彼も、クレアから「本当だ」と何度もいわれ信じつつある。
アオヒサ「ふーん…それで、一番怪しい大牙を…。なるほどねぇ」
クレア「アナタ、前に大牙とデュエルしたことあるんでしょ?どんなデッキだったの?ロック?バーン?ビート?」
食いついてくるクレアをヤマトが押さえて話しを続けさせた。
アオヒサ「なんだろうな…ビートと、バーンかな…わからない。ただ、その時は気が気じゃなかったんだ」
クレア「どういうこと?」
アオヒサ「アイツと対峙した時、ものすごいプレッシャーと恐怖に襲われて、気付いた時は病院のベッドの上だよ…」
情けなかったと言わんばかりにため息をつくアオヒサにヤマトは尋ねた。
ヤマト「アオヒサさんは、なんで大牙の元に…?」
アオヒサ「兄のカード形見のカードが…アイツの部下に盗まれてね。取り返しにいったんだ。なんとか奪った奴は倒してカードだけは取り返したんだけど、アイツが来て…」
クレア「負けちゃった…」
アオヒサ「君たちもいずれ分かる。アイツはデュエルしちゃいけない奴だ。言っても聞いてはくれないだろうけど、アイツを倒しに行くのは止めた方がいい」
弱気に話すアオヒサだったが、百も承知だとクレアは言う。僕だって、ゼル様からの命があるし、何よりそんな危険な人物を野放しにはできない。
ヤマト「それでも、倒さなきゃいけないんです。そんな危険な奴を…でないと、もっと被害が大きなってしまうから」
クレア「そうね。つまり…アナタは今回の大牙討伐には参加できない…わね?」
クレアの問いかけに、アオヒサは少し悩んでいた。しかし、答えはすぐに出る。
アオヒサ「…いや。俺も手伝おう。ただし、アイツとのデュエルは君たちでやってくれ。俺は周りにいるだろう奴らを纏めて相手する」
ヤマト「大丈夫なんですか?そんな奴だし、カードリーパーの数ってかなりいるんじゃ」
アオヒサ「ああ。確かにかなりの人数が大牙を護衛しているだろう。ただ、俺だってデュエリストだし…なにより大会でも腕の立つデュエリストって言われてるんだ。多少は力になれると思う」
クレア「決まったわね。アオヒサ。協力ありがとうね」
アオヒサ「いやなに。若い君たちが危険な目にあってるのに、話を聞いた自分が黙ってみてるだけっていうのが腑に落ちなかっただけだよ」
アオヒサは優しく答えてくれた。その後、アオヒサは二人を屋上へと案内した。風が強く、青空を流れる雲も速く移動しているように見える。今頃神様達が自分の行動を監視しているのだろう。
アオヒサ「一応君たちの実力をためさせてもらってもいいかな…?もしこれで俺に負けるようならさっきの話は取り消し。全力で君たちを止めるよ」
クレア「どっちとデュエルするの?」
アオヒサ「そうだな…ヤマト。君とデュエルだ。天使の力を見せてもらうよ」
ヤマト「分かった。じゃあ…行くよ!」
アオヒサ・ヤマト「「デュエル!」」
アオヒサ LP8000 手札5
ヤマト LP8000 手札5
アオヒサ「まずは俺のターン。手札から、フィールド魔法『ワンスワールド』を発動。これからこのデュエルは、超古代の海底でのデュエルとなる」
雲一つない青空が突如、薄暗い海底へと早変わりした。地面はコンクリートではなくゴツゴツした岩盤になり、所々から小さな気泡がポワポワと浮上している。
上からは光の筋が幾つも差し込み、デュエルする二人を照らしている。
アオヒサ「俺が使うモンスター達は、このフィールド魔法が発動されていなければ破壊されてしまう。だが…このフィールド内では敵無しだ!『ハント・パンデリオン』を召喚!
ハント・パンデリオン ☆7 攻撃力2100 → 攻撃力2500
古代生物「パンブデルリオン」その物の姿をしたモンスターが召喚される。無数にある脚をワシャワシャと動かし、アオヒサの周りを遊泳している。
ヤマト「レベル7モンスターをリリース無しで召喚!?それも攻撃力が上がってるなんて…!」
アオヒサ「俺が使う『ハント』モンスター達はリリース無しで召喚することができる。さらに、『ワンスワールド』の発動下では攻撃力が400ポイントアップする!」
クレア「何あのモンスター…うぅ、気持ち悪い。デュエルしなくてよかったかも」
両腕を擦りながら背筋を走る寒気に耐えるクレアを余所に二人のデュエルは続く。
アオヒサ「『ワンスワールド』の効果により、俺が『ハント』モンスターを召喚する度にこのカードにハントカウンターを一つ置く。そしてこのままターンエンドだ」
アオヒサ LP8000 手札3
場
ハント・パンデリオン ☆7 攻撃力2500
魔 ワンスワールド ●×1
ヤマト「僕のターン、ドロー!」
引いたカードを確認し、最良の戦術を考える。何十通りとあるプレイングの中から一つを選んで実行した。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』を召喚!そして効果発動、デッキトップ3枚を確認し、その中に存在するレベル5以下の『メドロウ』モンスター1体を選択して特殊召喚する!」
メドロウ・ドリアー ☆2 攻撃力300
モンスター、罠カード、モンスター…。どちらもレベル5モンスターじゃない。ヴァルキスを出すのは無理のようだ。しかし、シンクロ召喚ができないわけじゃない。
ヤマト「確認した中には『メドロウ・ケイロン』が存在した。よって『メドロウ・ケイロン』を特殊召喚」
メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700
ケンタウロスのような姿をしたケイロンが特殊召喚される。
ヤマト「『メドロウ・ケイロン』には三つの効果があり1ターンに一度手札1枚を捨てることで、いずれかの効果を発動できる。手札の『メドロウ・ノーム』を墓地へ送り、一つ目の効果を発動!ライフを1000ポイント回復する!」
ヤマト LP8000 → 9000
ヤマト「それだけじゃない。レベル4『メドロウ・ケイロン』にレベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」
4+2=6 二体のモンスターは☆になり、一列に並ぶ。それを光が覆った時、全く別のモンスターへと姿を変えた。
ヤマト「不死身の闘志が、聖天の光を受けて舞い上がる。シンクロ召喚!舞い戻れ!『Hメドロウ・フェニクス』!」
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力2200
炎を纏った不死鳥が甲高い声を上げながらヤマトのフィールドにシンクロ召喚される。攻撃力はアオヒサのモンスターには及ばない。しかし、ヤマトにはそれを突破できる自信があった。
クレア「あのモンスター…なるほど、あの時のコンボね」
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』がシンクロ素材とされたことで、自分は1000ポイントライフを回復する。そしてバトルだ!『Hメドロウ・フェニクス』で、『ハント・パンデリオン』を攻撃!」
アオヒサ「自滅特効…!」
ヤマト LP900 → 1万 → 9700
ヤマト「ぐぅ…!ここで、破壊された『Hメドロウ・フェニクス』の効果発動!墓地のフェニクスを蘇生する、ループリバース!」
火の粉となって散り散りになった破片が大きく燃え上がり、不死鳥の復活を祝福する。
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力2200 → 3000
ヤマト「フェニクスが蘇った時、攻撃力を800ポイントアップする。もう一度攻撃だ!」
アオヒサ LP8000 → 7500
アオヒサ「く…攻撃力を一気に上げてきたか…。でも、俺もここで破壊された『ハント・パンデリオン』の効果を使わせてもらう。発動されている『ワンスワールド』にハントカウンターを一つ置くぞ」
ヤマト「カードを1枚伏せてターンエンド」
ヤマト LP8700 手札4
場
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力3000
セット魔法罠カード×1
アオヒサ「ドロー!…攻撃力3000か。中々高いが…、まだまだ俺の方が上だな。永続罠『ハント・オブ・アドバンス』を発動。このカードが発動されている限り、俺の『ハント』モンスターはハントカウンター1個につき100ポイント攻撃力をアップさせる」
現在乗っているカウンターは2つ。攻撃力がアップしたとしてもたったの200。フェニクスを倒せるモンスターはそうそう出せるとは思えなかった。しかし、アオヒサはそんな考えを打ち消すようなカードを発動した。
アオヒサ「手札から魔法カード『カンブリアバースト』を発動!俺の場にモンスターが存在しない場合、手札に存在する『ハント』モンスター3体を通常召喚扱いで俺の場に召喚する!」
ヤマト「ハントモンスターを…一気に3体も!?」
クレア「何よその卑怯な効果は…」
アオヒサ「俺は手札に存在する『ハント・フルディア』1体と『ハント・オットイア』2体を召喚!
ハント・フルディア ☆7 攻撃力1900 → 2300 → 2700
ハント・オットイア ☆6 守備力2300 ×2
二体の古代生物が岩盤を突き破って出現した。フルディア、オットイア共にその名の通りの姿をしているモンスター達は、先ほどのパンデリオンのようにアオヒサの周りをゆったりと遊泳している。
アオヒサ「『ワンスワールド』は、『ハント』モンスターが通常召喚される度にハントカウンターを乗せる効果がある。つまり、カウンターを3つ置かせてもらう!」
ヤマト「これで乗っているカウンターの数は5つ…でもそのモンスター達の攻撃力じゃ、フルディアの攻撃力が上がっても2700。復活して攻撃力の上がっている『Hメドロウ・フェニクス』には及ばない」
アオヒサ「何もこれだけで終わりじゃない…。まぁ『カンブリアバースト』を発動したターン、俺はシンクロもエクシーズもできないってデメリットがあるんだけどな。2体の『ハント・オットイア』の効果発動!相手フィールド上に存在するモンスターの数だけ、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を400ポイントダウンさせる!この効果はバトルフェイズ中も発動可能だ」
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力3000 → 2500
ヤマト「オットイアは二体。1体ずつ発動するとして、一体目でフェニクスの攻撃力を下げる…。」
アオヒサ「その通り。俺がエクシーズもシンクロも捨て、この戦術を選んだのは他にもある…。オットイアの効果は相手ターンでも発動可能。つまり、そっちがいくら自爆特攻をしかけようともステータスを下げられてしまえばただの無駄死に。再生する意味がなくなるのさ」
ヤマト「く…なんとかしないと…」
アオヒサ「バトル!『ハント・フルディア』で『Hメドロウ・フェニクス』を攻撃!」
黒かった目を真っ赤に光らせ、捕食者としての急速な泳ぎを見せたフルディアはフェニクスを襲った。弾丸のようにフェニクスの体を突き破り破壊。飛び散った火の粉がヤマトにだmr-字を
ヤマト LP9700 → 9500
折角回復したライフがジワジワと削られていく。確かにアオヒサの場を泳ぐ3体のモンスターのコンボを突破するのは今の状況じゃ不可能だ。しかしだからといって諦めるわけじゃない。
ヤマト「うぅ…。場を空けるわけにはいかない!戦闘破壊された『Hメドロウ・フェニクス』の効果発動!墓地から特殊召喚し、攻撃力を800ポイントアップさせる!ループリバース!」
バラバラにされた火の粉が水中にも関わらず激しく燃え盛り、元の不死鳥の姿に舞い戻る。残りのモンスターは守備表示。追撃はしてこれない。
アオヒサ「俺はこのままターンエンド。さぁ、どうする?」
アオヒサ LP7500 手札0
場
ハント・フルディア ☆7 攻撃力2700
ハント・オットイア ☆6 守備力2300 ×2
罠 ハント・オブ・アドバンス
魔 ワンスワールド ●×5
ヤマト「僕のターン、ドロー!…よし、手札から『天聖の呼び声』を発動!手札の『メドロウ』モンスター1体をデッキに戻し、戻したモンスター以外のレベル4以下の『メドロウ』モンスター1体をデッキから特殊召喚する!『メドロウ・ガードイル』を特殊召喚!」
メドロウ・ガードイル 34 攻撃力0
ゴツゴツと痩せ細り、翼を生やした青く小柄なモンスターが召喚される。
ヤマト「『メドロウ・ガードイル』の効果発動!このモンスターを守備表示にすることで、相手モンスター1体を守備表示にする!『ハント・フルディア』を守備表示に!」
メドロウ・ガードイル 守備力1900
ハント・フルディア 守備力0
ガードイルが腕を胸の前でクロスさせ石像になる。それに呼応するようにフルディアの動きがピタリと止まり、無いに等しい守備力を晒した。
ヤマト「『ワンスワールド』と『ハント・オブ・アドバンス』で上がるのは攻撃力のみ、守備表示にしてしまえばどんなに上げたって無力化できる!『メドロウ・ディーネ』を召喚!」
水色の肌をした少女が召喚された。水の精霊であるウンディーネのモンスターの効果を発動する。
ヤマト「このモンスターが召喚に成功した時、墓地に存在するレベル4以下の『メドロウ』モンスター1体を特殊召喚する。『メドロウ・ドリアー』を特殊召喚!」
シンクロ召喚に使用された木の精霊が蘇る。そして、このモンスターには召喚時に発動する効果があった。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』が召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキトップのカード3枚を確認できる。その中に『メドロウ・ドリアー』以外のレベル5以下『メドロウ』モンスターが存在すれば、そのモンスターを特殊召喚する!」
デッキトップを意を決して確認する。モンスター、魔法、モンスター! 2体いるうちの1体を選び、場に特殊召喚した。
ヤマト「確認した中には『メドロウ・サイクロス』が存在した。『メドロウ・サイクロス』を特殊召喚!」
メドロウ・サイクロス ☆4 攻撃力1900
一つ目の鬼のようなモンスターが召喚される。神話などに登場する「サイクロプス」のモンスターだ。筋骨隆々で大きく、高い攻撃力をもって対峙するハントモンスター達を威圧する。
アオヒサ「サイクロプスだな…。って、天使がそんな魔物みたいなカード使ってていいのか?」
ヤマト「すべてモンスターが悪って訳じゃないよ。サイクロプスだって、全員が全員悪者じゃない。鍛冶師として立派に仕事をする奴だっているんだ」
アオヒサ「そうなのか。なら、ソイツの力を見せてみろ…!」
ヤマト「言われなくても…!『メドロウ・サイクロス』の効果発動!1ターンに一度、このモンスターの攻撃力を0にできる。そして、この効果を発動したターンの間に自分が『メドロウ』シンクロモンスターを特殊召喚した場合、一度だけそのモンスターの攻撃力を下げた数値分アップする。」
アオヒサ「なるほど…。フェニクスで攻撃し、返り討ちにあったとしても復活、そしてサイクロスの効果で攻撃力をアップさせて突破するという作戦だな…?」
ヤマト「それも考えた。でも、サイクロスの効果はこのターンの終わりまでしか適用されない。このターンでその3体を倒さな限り、この状況を打破するのは無理だ。だからこうする!レベル1『メドロウ・マーメイド』とレベル4『メドロウ・サイクロス』にレベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」
1+4+2=7 1ターンで揃えた3体のモンスターが☆に変わり、一列になって光に飲み込まれる。
ヤマト「聖戦士が翼を広げ、剣を振るう!大いなる光!舞い踊れ!『Hメドロウ・ヴァルキス』!」
Hメドロウ・ヴァルキス ☆7 攻撃力1900
天界の天使が舞い降りた。輝く剣と盾を持ち、白銀の翼を広げた美女がヤマトを守るようにフィールドに舞い降りる。
ヤマト「『メドロウ・ドリアー』が『メドロウ』シンクロモンスターの素材とされたことにより、自分はライフを1000ポイント回復する!さらに、『メドロウ・サイクロス』の効果により、ヴァルキスの攻撃力を1900ポイントアップ!」
ヤマト LP9500 → 10500
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900 → 3800
アオヒサ「攻撃力…3900!?なんて数値だ」
クレア(確かに凄い攻撃力…。まっ、私のエクスカリバーにはまだ届かないんだけど…♪)
余裕と言わんばかりにすまし顔のクレアを余所にヤマトは続ける。
ヤマト「『Hメドロウ・ヴァルキス』が相手モンスターと戦闘を行う時、相手のモンスターの攻撃力か守備力が元々の数値と違っていれば、その数値だけヴァルキスの攻撃力をアップする。『ワンスワールド』と『ハント・オブ・アドバンス』の二重アップにより、『ハント』モンスターの攻撃力は900ポイント変わっている。その分だけヴァルキスの攻撃力をアップする!」
アオヒサ「つまり攻撃力4700か…。随分恐ろしいコンボをする天使様だな」
ヤマト「僕は悪魔のカードを葬らなきゃいけない。それを使ってる人を助ける為にも、それに苦しめられる人を助けるためにも…だから、ここで負けてちゃ意味がないんだ…!バトル!『Hメドロウ・フェニクス』で『ハント・オットイア』を攻撃!」
オットイアは守備表示、戦闘ダメージこそ通らないものの、この壁を崩すには只々攻撃するしかない。
アオヒサ「そう簡単に突破されちゃこっちが困るんだ。2体の『ハント・オットイア』の効果発動!1ターンに一度、相手モンスターの攻撃力を400ポイントダウンさせる!合計で800ポイントダウンし、守備力2300のオットイアには届かなくなった!」
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力3000 → 2600 → 2200
ヤマト LP10500 → 10400
ヤマト「破壊できなかった…でも、まだヴァルキスの攻撃が残ってる!行け、『Hメドロウ・ヴァルキス』!『ハント・フルディア』に攻撃!そして攻撃時の効果発動!シャイン・アップ!」
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力3800 → 4700
ダメージは通らなかったが、破壊された時の爆風がアオヒサを吹き飛ばそうとする。なんとか踏ん張って耐えたアオヒサのモンスターは破壊され、折角の戦術が崩れてしまった。
アオヒサ「くぅ…。だが、『ハント・フルディア』が破壊されたことによって『ワンスワールド』にハントカウンターを1つ置かせてもらうぜ」
ヤマト「僕はこれでターンエンド。ヴァルキスとサイクロスの効果はここまでだから、ヴァルキスの攻撃力は元に戻る」
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力4700 → 1900
ヤマト LP10400 手札2
場
メドロウ・ガードイル 守備力1900
Hメドロウ・フェニクス 攻撃力2200
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900
セット魔法罠カード×1
ヤマト「(なんでだろう…状況はかなり優勢になった筈。相手の手札は0枚。なのに、なんでこんなに不安なんだ…。まるで、次にアオヒサが引くカードに勝運を全て持っていかれるような感覚…)」
アオヒサ「ヤバくなってきたな…。でも、こんな良いデュエルは久しぶりだ。負けたくないね!ドロー!」
気合の入ったドロー。引いたカードを確認したアオヒサは勝利を確信した。
アオヒサ「『ハント』モンスターはリリース無しで召喚できる。俺は確かにそう言った。でもそれは…《このモンスターを除いて》だ!」
アオヒサの場に存在した2体の『ハント・オットイア』が、地面から突然現れた大きな影に《食われた》。
アオヒサ「2体の『ハント・オットイア』をリリース!現れよ。超太古の頂点の捕食者…!『ハント・カリスリヴ』!」
ハント・カリスリヴ ☆9 攻撃力2900 → 3300 → 3800
「アノマロカリス」。カンブリア紀に生息したと言われる食物連鎖の頂点だった危険な生物。そのモンスターが今、アオヒサによって場に現れた。3mはあろう巨体と大きなキバ。その姿を見たヴァルキスとフェニクスも咄嗟に身構えた。
アオヒサ「『ワンスワールド』の効果によって、『ハント』モンスターの召喚時、このカードにハントカウンターを一つ置く。カウンターの数が6個になったことで、アップする数値も上がる…!」
ハント・カリスリヴ 攻撃力3900
ヤマト「攻撃力…3900!?」
アオヒサ「さっきのお前のモンスターと同じ攻撃力。驚くことはないだろ?」
不敵な笑みがヤマトの勝機を奪い去ろうとしていた…。
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111 | 15話 デュエルフェスティバル! | 857 | 1 | 2015-06-27 | - | |
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