死霊の森の少女　sideシャムリュート　作：クロノスギア2

マギカゲート　～死霊の森～

ここは伝説のモンスターたちが跋扈する危険地帯。その危険地帯にあるひときわ凶悪な場所、あらゆるモンスター・冒険者・旅人を死へといざなう魔の森。

そんな森を鼻歌まじりに突き進む少女が一人。明るい茶髪にリボン飾り、胸元の玉虫色のカギを揺らしながらスキップしつつ楽し気に歩いていた。

「～♪」

そんな彼女の前に豊かな髭を蓄えた鎧武者がゆらりと少女の道をふさぐ。そのほかにも腹部に大きな穴をあけた男、小さな顔色が悪い少女の霊など大小さまざまな霊が行く手を阻み・・・。

「あ、みんなおはよ～」
「おはよー、お姉ちゃん」

元気な挨拶を交わす。

「お姉ちゃん、あっちで食べられるキノコ見つけたよ」
「そっちには薬草を見つけたぞ」
「向こうには確か新しい鳥が巣を作っていた。卵をとるなら早めにな」
「うん、みんなありがと～」

彼女の名はシャムリュート・ドゴールド。山賊王バンドラム・ドゴールドの娘であり、人目を避けるように生活している。ここにいる死霊たちとともに生活を楽しんでいた。

「さて、今日も一日元気に過ごしますか！」

・・・。

「お頭～、本当にここにあるんですかい～？」
「あったりまえだ！この首領・ザルーグの感がここだって言ってんだ！」
「けどよ～・・・」

首領・ザルーグと呼ばれた男とその者に引きつられた面々、彼らは黒蠍盗掘団。ありとあらゆるお宝を狙う野党どもだが・・・。

「ひいい～・・・お頭～！？」
「こ、こええよ・・・・お頭！」
「ええい黙って歩けお前ら！」

クリフやチックはあたりにビビりながら、ミーネは大男のゴーグを盾に進んでいる。

「ちっ・・・こうなったら俺一人でも・・・」→唐突に現れる少女の霊

『い　や　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　！？』

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい！まだ俺たち何もしてません！！」
「助けてお頭！お頭！」
「あーー！あー！お前たちは俺が守るぅぅ！！？」
「あれ？マメちゃん誰かいたの？」

『へ？』

ひょっこりと顔を出すシャム、互いに顔を見合わせる盗掘団。

・・・。

「いや～すいませんね～、助けてくれちゃって！」
「いえいえ、こんなところに迷い込むなんて不幸ですね」
「ええ～本当に運のない、あははは～」

（お頭！こんなガキがあのカギを持ってるなんて幸運だねえ！今のうちに奪っちまいましょうよ）
（待て待て、ここで奪ったら近くの幽霊どもに襲われちまうだろう。夜になったらこっそりと奪っちまうんだよ）
（さすがお頭！）

「どうかしましたか？」
「いえ、何も～」

このまま盗掘団とシャムたちはシャムの家まで連れられ行った。途中、シャムの身の上話や互いのことを話し合う。シャムには親が今おらずたった一人で暮らしていること、ここの死霊たちが家族ということ。

「うう・・・・なんて泣ける話だ・・・」
「お、お頭・・・」
「マジ泣き・・・」
「けど悲しくありません、みんながいてくれますから」
「いい子じゃねえか・・・くうう！！」

この首領・ザルーグ。かなり涙もろかった。

・・・。

深夜、幽霊たちも彼女の眠りを妨げないようにと館には近づかない。そんな音一つしない空間に５人の人間がこそこそと動き回る。目指す先はシャムの寝室、そこにあるであろう玉虫色のカギを目指し。

玉虫色のカギ。このカギは父が残した形見だがその実態は不明だが、山賊王バンドラム・ドゴールドの秘宝であり、世界を変える代物・・・らしい。彼女はその力の危険性に危惧しこのような森に隠れるように住んでいた。

（これさえ奪えば俺たちの人生バラ色！）
（早速お願いしやすぜお頭！）
（・・・）

ザルーグの脳裏にはシャムの屈託のない笑顔。その笑顔が彼の手が止まる。

（お頭？）
（俺にはできねえ・・・こんな・・・こんな・・・！）

「むにゃむにゃ・・・」

（おれは・・・この俺は・・・こんな子供の大切なものを奪おうとするなんて・・・できねえ！）

「あのお・・・」

（お、お頭・・・男ッス！）
（ああ、すげえ男だ！）
（俺たちのお頭は格が違った！）

「あのお！」
「！？」
「そ、そこで何をしているんですか！？」
「ふ、気づかれたのなら仕方がない！そのカギ！俺たちが戴く！」

（結局奪うんだ！？）（さすがお頭！）

「俺たちは！」　『黒蠍盗掘団！！』ビシ！
「よってそのカギをかけて俺たちとデュエルだ！」
「こ、このカギ！？だ、だめですこれだけは！」
「ええい、俺の覚悟が鈍らんうちに構えろ！行くぞ野郎ども！」

ザルーグの掛け声とともに団員たちはザルーグの持つディスクに吸い込まれデッキに収まる。

「なら私が勝ったらこのまま帰っていただきます！」
「行くぞお嬢ちゃん！」

『デュエル！』

SYAMU VS ZARUGU
LP4000　　LP4000