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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第八話・龍吾の逆鱗!万丈目VS黒崎龍吾

第八話・龍吾の逆鱗!万丈目VS黒崎龍吾 作:鈴木颯手

龍吾がオベリスクブルーに昇格してから特にこれと言った事は起きなかった。強いて上げるならオベリスクブルーの中でもかなりの実力を持つ万丈目準と言う奴が突っかかって来るようになったことと一部のオシリスレッドの生徒から恨みの目を向けられるようになったぐらいである。

十代と翔、三沢と良太も前と変わらずに接してくれているため特に気にはならなかった。

しかし、その態度が癪にさわったのかある日の放課後龍吾ははんば強引にオベリスクブルー専用のデュエルアリーナに連れて来られていた。そしてデュエルアリーナにはデュエルディスクを装着した万丈目が既に待っていた。

「遅かったな黒崎龍吾。俺が特別にオベリスクブルーの習わしを貴様に教えてやる!さあ!デュエルディスクを付け上がってこい!」

龍吾の意志を無視するように叫ぶ万丈目の姿は何処か焦っているようにも見えた。龍吾は知らなかったが万丈目は実技テストで十代に負けて以来クロノス教諭の信頼を失いつつありその地位が危なくなってきていたのである。そこで、高等部から入って来た人物の中で圧倒的実力を持つ龍吾に目を付け彼を倒す事で自分の地位を安定させようとしていたのである。

「…別に、貴様からの挑戦を受ける理由がない」

「何だと!?一年最強である俺に逆らうのか!?」

「…ああ。その通りだ」

「っ!貴様ぁ!」

龍吾の素っ気ない言葉に万丈目は顔を真っ赤にして激怒する。その結果龍吾の逆鱗に触れてしまう。

「…は、どうやら思いのほか腰抜けだったようだな。それとも貴様のデッキがしょぼくて自信がないのかな?」

「…何だと?」

「全く、貴様の様な奴が何故アカデミアに入れたのか不思議だな。どうせ貴様のカードだって偽物のインチキカードに決まっている!」

万丈目の言う事は全て出鱈目な事であったが龍吾の逆鱗に触れるには十分すぎる言葉であった。

「…いいだろう」

「っ!?」

「そのデュエル、受けてやる」

殺気のような濃厚な圧力を受けた万丈目は一瞬で体温が急激に下がったような錯覚に襲われたが首を振り気のせいだと言い聞かせるとデュエルリングに立った龍吾の方を向く。

「行くぞ!」

「「デュエル!」」

「先行は俺が貰う!ドロー!」

先行を取ったのは龍吾。何時もとは違い何倍もの迫力があった。

黒崎龍吾
手札5枚→6枚

「…俺は手札から魔王龍ザガンの効果発動!このカードを墓地に送る事で相手の場に悪魔龍トークンを二体特殊召喚する」

魔王トークン
ATK2400 DEF2400

「更に永続魔法トークン運用禁止令を発動!このカードが場に出ている限りお互いの場に出ているトークンは生贄にする事も出来ず攻撃も出来なくなる」

「何だと!?」

これで万丈目の場に出されたトークンはただの壁と成り下がった。それどころか万丈目の場を圧迫する物になってしまう。

「更に俺は死者転生を発動!手札を一枚捨てる事で墓地からモンスター一体を手札に加える。俺は闇の鼓動を墓地に送り魔王龍ザガンを手札に戻す。そして闇の鼓動の効果によりデッキから闇属性ドラゴン族モンスター一体を手札に加える。そしてもう一度魔王龍ザガンの効果発動!お前の場に魔王トークンを二体追加で特殊召喚する!」

そして万丈目の場には生贄にする事も攻撃に使う事も出来ないトークンが四体並べられた。

「そして闇の鼓動の効果で手札に加えた悪魔龍デスドラグーンの効果発動!このカードを墓地に送り相手の場に悪魔龍トークンを特殊召喚する!」

そして万丈目の場にはトークンが五つ並べられた。このトークンを何とかしない限り新たにモンスターを呼び出す事も出来ず攻撃する事も出来ない。

「俺は闇の大魔術師・バスクを攻撃表示で召喚する!そしてカードを一枚伏せてターンエンド」

闇の大魔術師・バスク
ATK1500 DEF1000

「そしてエンドフェイズに闇の大魔術師・バスクの効果で手札を墓地に送り一枚ドローする。そして墓地の魔王龍ザガンの効果発動!場のモンスター一体に付き300のダメージを受けてもらう!」

万丈目LP4000→3700

「くっ!そんな奴にまだそんな効果があったとは…。俺のターン、ドロー!」

万丈目
手札5枚→6枚

「…俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

場がトークンで圧迫されている万丈目はほぼ何もできずに悔しい表情を作りながら自分の番の終了を宣言した。

「そして魔王龍ザガンの効果により300のダメージを受けてもらう!」

「何!?そいつの効果はお互いのエンドフェイズに発動するのか!?」

万丈目LP3700→3400

予想以上に押されていることに万丈目はいらだちを隠せなくなってきているがだからと言ってできる事などほぼないと言っていい状況で万丈目は手を握り締めるのであった。

黒崎龍吾LP4000 手札1枚
モンスター
闇の大魔術師・バスク
魔法、罠
セット
トークン運用禁止令

万丈目LP3400 手札5枚
モンスター
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
悪魔龍トークン
魔法、罠
セット

場を見る限り万丈目が優勢であるがトークン運用禁止令の効果により生贄にも攻撃にも使うことが出来ず場を圧迫する置物と化していた。それが五体も存在する事で万丈目はモンスターを召喚する事は出来なかった。

「俺のターン、ドロー!」

黒崎龍吾
手札1枚→2枚

「…俺はカードを一枚伏せてターンエンド。そして闇の大魔術師・バスクの効果で一枚墓地に送り一枚ドローする!そして魔王龍ザガンの効果で300のダメージを受けてもらう!」

「ちぃ!」

万丈目LP3400→3100

少しずつ削られていく自分のライフに焦りを感じながら万丈目の番がやってきた。

「俺のターン、ドロー!」

万丈目
手札5枚→6枚

「…俺はターンエンド、だ」

そして万丈目は何も出来ずにターンの終了を宣言。そして魔王龍ザガンの効果でダメージを受けていく。

万丈目LP3100→2800

黒崎龍吾LP4000 手札1枚
モンスター
闇の大魔術師・バスク
魔法、罠
セット
セット
トークン運用禁止令

万丈目LP2800 手札6枚
モンスター
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
悪魔龍トークン
魔法、罠
セット

ここまで一回の戦闘は行われていないにも関わらず万丈目はライフを三分の一失っていた。しかし、現状ではどうすることも出来ず万丈目は焦りと苛立ちを募らせていくのであった。

「そんな、万丈目さんが押されているなんて…」

「しかも自分で行動したのはセットカードを置いただけ…」

万丈目の取り巻きが唖然として呟いているが龍吾は気にせず自分の番に入る。

「俺のターン、ドロー!」

黒崎龍吾
手札1枚→2枚

「…俺は何もしないでターンエンド。そして闇の大魔術師・バスクの効果で墓地に一枚送り一枚ドローする。更に魔王龍ザガンの効果で300のダメージを受けてもらう」

万丈目LP2800→2500

龍吾は流れるように自分の番を終了させるが既に龍吾の行いは作業と化していた。それが分かっている万丈目はどんどんいらだちを募らせるが結局それしか出来なかった。

「おのれぇ!俺を馬鹿にしやがって…ドロー!」

万丈目
手札6枚→7枚

「…!」

万丈目は自分が引いたカードを見ると一瞬驚き歪んだ笑みを浮かべた。

「くっくっく!どうやら貴様の命運も次で終わりのようだな。俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

しかし、瞬間に魔王龍ザガンの効果でダメージが入るが万丈目はなんともないようにただ笑みを浮かべていた。

万丈目LP2500→2200

黒崎龍吾LP4000 手札2枚
モンスター
闇の大魔術師・バスク
魔法、罠
トークン運用禁止令
セット
セット

万丈目LP2200 手札6枚
モンスター
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
魔王トークン
悪魔龍トークン
魔法、罠
セットセット

龍吾は万丈目が伏せたカードがトークン運用禁止令を破壊できるカードと予想を立てて自分の番に入る。

「俺のターン、ドロー!」

「この瞬間リバースカードオープン!砂塵の大竜巻がお前のカードを飲み込むぞ!」

伏せられていたのは相手の魔法、罠一枚を破壊できる罠カード。これによってトークン運用禁止令は竜巻に飲み込まれて消失した。トークン運用禁止令から解放されトークンは生贄にも攻撃にも使えるようになった。

「フハハハハハ!!!これで次の俺のターンに貴様が揃えてくれたこのトークンで一斉攻撃を仕掛けてやる!最後の自分のターンを精々楽しむのだな」

「…ああ、そうするとしよう。ドロー!」

黒崎龍吾
手札2枚→3枚

「俺は手札のデス・ヘル・ラグーンの効果発動!このカードの攻守を0にする事で特殊召喚する!そしてこのカードを生贄にダークアイズ・カオスドラゴンを召喚する!」

ダークアイズ・カオスドラゴン
ATK3000 DEF2500

「ふん、今更そんなカードを出して何が出来ると言うのだ!?大人しく俺に敗北されろ!」

「俺はリバースカードオープン!破壊輪!ダークアイズ・カオスドラゴンを指定!」

「な!?」

「これで最後だ!万丈目!貴様に相応しい“何も出来ずに踊らされて無様に負けた”と言う不名誉をくれてやる。破壊輪!起動!」

ダークアイズ・カオスドラゴンの首につけられた破壊輪が一瞬光ると途端に爆発しお互いのプレイヤーは爆風を受けるが万丈目は耐え切れずに吹き飛ばされた。

「うわぁぁぁぁあぁぁっ!!!」

黒崎龍吾LP4000→1000
万丈目LP2200→-800

結局最後の最後まで万丈目は思うようにプレイする事が出来ずに敗北した。万丈目はその事を理解し怒りと屈辱で顔を歪めまるで別人の様であった。

「…くそっ!黒崎龍吾ぉ!この俺様に勝ったからと言っていい気になるなよぉ!」

万丈目はそれだけ言うとデュエルアリーナを出ていった。取り巻き達もそれを慌てて追いかけていく。侮辱された分を返せたと判断した龍吾は心を落ち着かせるために息を吐く。

「…あの万丈目君を相手に圧勝だったわね」

「…ん?」

ふと静かなデュエルアリーナに知っている声が聞こえたため龍吾は後ろを向いた。そこには天上院明日香の姿があった。

「結局万丈目君はほとんど何も出来なかった。唯一出来たのは砂塵の大竜巻で魔法を破壊する事だけ…」

「…何が言いたい?」

龍吾が不審な目を向けると明日香は肩をすくめた。

「いいえ、ただアカデミアでも上位に入る実力をもつ万丈目君に何もさせずに勝ったのが凄かっただけよ。これでも関心しているのよ?」

「…そうか。なら俺は部屋に戻らせてもらう」

龍吾は明日香との話を切り上げてデュエルアリーナを後にした。一人残された明日香は一言呟いた。

「龍吾君、貴方は一体何者なの…?」
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