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コンビネーションアタック! 作:プレミメイカー

「撃退……可能なんですね!」

「えぇ、彼らのうち一体にでも深手を負わせることが出来れば可能だと思いますわ。
バスター様、彼らのいずれかに先ほどの斬撃を打ち込むのです。」

「破壊剣一閃を……」

ドガァッ!
「!!」

「倒れた木が切り崩されていく……。」
クリムゾン・エイプが手にした鉈によって次々隠れ蓑が剥がされていく。
「説明している時間はございませんわ!この子は私にお任せを!」
姫芽宮はリトルを抱えると、周囲の苔を操り、その身を隠しながら素早く退避した。

「はい!」
とは言ったものの、
バスターが飛び出してすぐ、クリムゾン・エイプは闇の中に姿を隠してしまった。
これでは、一撃を決めるどころか、手の出しようがない。
「止まっちゃ、駄目。」
レイナはバスターを突き飛ばしながら駆けていく。
「うわッ!何す……」

ドスゥッ!

バスターのいた位置に巨大な矢が突き刺さる。あんなものが直撃でもしようものなら、頭であれば木っ端微塵に吹き飛び、腹であれば処置のしようが無いほど大きな空洞ができるだろう。
「……く」
起き上がると頭上には、一本一本がまるで生きているかのように不気味になびく金色の鬣。
急ぎ回避行動。直撃は避けたものの振り下ろされた鉈の剣圧により、バスターは大きく吹き飛ばされた。
即座に受身を取り、もといた場所へ向き直るも既に敵の姿はない。
どこへ隠れた?と考える暇もなく、有機物とは思えぬほど重く、硬く、無慈悲な塊がバスターの背後から振り下ろされる。

「!?」

ドゴオォン……
棍棒の一撃は苔が覆う湿った土を吹き飛ばし、大きなクレーターを作った。


「どうやら、彼ら、あなたが一番攻撃力が高いことに気づいているようね。明らかに狙われてる。」

「……れ、レイナさん!」
お姫様だっこ。いや、コレでは男姫様か。
間一髪、レイナがバスターを窮地から抱えだしていた。

「え、あのっ、ありがッ……どふぅ!」
バスターは彼女の腕から放り出され大木に顔面を打ちつける。
「痛ぁ……いきなり投げることはっ……」

ダンッ!

レイナは木に片手をつき、バスターに顔を近づける。鼻が触れ合いそうなほどに。
「ここは死角だけど、油断は出来ない。手短に言うわ。
バスター、あなたなら、どっちをやる?」

「ど、え?」

「……どっちが倒しやすいと思う?」

「グリーンバブーンかと……。パワーはありますが、大振りな分……」

「同意権よ。ターゲットの確認は大事だから。」

しかし、敵もそのことは理解しているようだった。グリーンバブーンは完全な打ち逃げであり、矢、斬撃で体勢を崩された後、最も反撃しづらいタイミングで現れる。
バスターは、前2撃を回避しながら全力を叩き込む準備をしなければならない。

「私に考えがあるの。」





「……少し、キツイですね。」

「文句言わないで、私の方が動きづらいの。……いくわよ。」

「はい!」
レイナを先頭に2人は一斉に木陰から飛び出す。


《まず、木陰から一緒に飛び出したら、なるべく開けた場所で、お互いの背中を預けるの。
そうすれば、死角を狙って牽制に矢が飛んでくるわ。多分、弓矢を使うイエローバブーンが司令塔のような役割を果たしているはず。矢の一撃があいつらの攻撃開始の合図。》

ドヒュゥッ

暗闇から風を切る音……矢だ。
「それを……避ける!」

《避けたら二手に分かれる。そうすれば次のクリムゾン・エイプがバスターを狙はずよ。》

「来た……!」
同じパターン。正面から鉈が振り下ろされる。

《少し大きな動作でかわして。わざと隙を作るの。
そうすれば、グリーンバブーン(本命)の登場よ。》

作戦通り。背後からバブーンが棍棒を振り上げ姿を現す。

《けど、振り向きざまでは十分な威力は得られない。》

《だから、》

「残念。あなたたちが本当に狙うべき相手は……後ろよ。」
振り向いてバブーンに不敵な笑みを見せたのは、バスター、の鎧を借りたレイナ!

「うおおぉぉっ!」

《剣以外の装備を入れ替えて、あいつらの目と鼻を騙す!》

「破壊剣……一・閃!!!」
渾身の一撃がグリーンバブーン背中を袈裟に切り裂く!

「ぐ、がおおぉぉ……ッ!」
バブーンは振り上げた棍棒を手放し、その場に膝から崩れ落ちていく。

「……やった、か?」

「グオオォォーッ!」
クリムゾン・エイプが鉈を振り上げ大地が割れんばかりの力で踏み込み、猛突進してきた。

くっ、やはり一体だけでは……
鉈を避け、剣を構えるも2撃目は来なかった。クリムゾン・エイプは負傷したグリーンバブーンを担ぎ、森の中へ姿を消した。

「逃げたわね。」
構えていた剣を肩に掛け、レイナは「ほっ」と息をつく。

「さすがですわ、お二人共。彼らは互いの連携を得意とするモンスター、その分仲間の危険にも敏感。1体が戦闘不能になれば、その命を救うため救助と撤退を選択する……」
苔の蓑を解き、サクヤたちが姿を現す。
『おにいちゃんたち、すごーい!』

『うむ、見事なコンビネーションだったぞ、二人とも!
……しかし、装備を入れ替えたということは、バスター、まさかレイナちゃんの着替ぇっ、』

グギュッ

「絞め殺すわよ?」
『ごえッ、ずびばぜんずぇじどぁ……』

「さあ、森の番人たちも追い払ったことですし、先へ進みましょう。
もう少しで仙樹様の元に着くはずですわ。
ストール、出ていらっしゃ~い!」

ボコッ、地面の中からストールがもぞもぞと這い上がってきた。
そして、頭の傘に火を灯し、バスターたちの方を一瞥してから、森の奥へと歩き出す。



 ―とある暗く深い谷の底―

轟々と吹き荒ぶ風が塵を巻き上げ、無数の蛇のようにうねり絡まりあい、鋭く巨大な旋風となっていく。草木は根下ろすことを許されず、蟻の這う暇すらないその風を束ねるように、中心では1匹の小型の竜が静かに眠る。

かの竜の名は、【ライトニング】

森を薙ぎ、空を穿つ力の秘めた災禍の種である。
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