３話　♯６「果たさせないために」　作：tres

（何とか、挽回しないと！）

最悪は避けたが、状況は依然厳しいままだ。

「ドロー」ドローカード《炸裂装甲》

「スタンバイ、メイン」

「《デス・ウォンバット》召喚。《ゴブリン突撃部隊》に攻撃します」
攻撃宣言　瑞希ＬＰ２３００ー５００＝１８００

「罠発動」
罠発動　北林ＬＰ３５００ー５００＝３０００
罠発動《ドレインシールド》
北林ＬＰ３０００＋１６００＝４６００

「…カードセット。エンドです」



北林手札０枚　ＬＰ４６００
モンスター　３枚　　セット１枚　　《ゴブリン突撃部隊》表守　　《ランス・リンドブルム》表攻
魔法罠　セット１枚

瑞希手札０枚　ＬＰ１８００
モンスター　１枚　　《デス・ウォンバット》
魔法罠　セット１枚　　《炸裂装甲》



「ドロー、スタンバイ、メイン」

北林は見張りへと視線を移す。

（炸裂装甲か。ちょっと遅かったな）

「人喰い虫、反転召喚。《デス・ウォンバット》を破壊」
《人喰い虫》効果
《デス・ウォンバット》破壊
《人喰い虫》裏守→表攻

「そんな…うそ」

「本当」

瑞希は負けを確信し、うなだれる。

「《ゴブリン突撃部隊》を攻撃表示」
《ゴブリン突撃部隊》表守→表攻

「《ゴブリン突撃部隊》で攻撃」
攻撃宣言　北林ＬＰ４６００ー５００＝４１００

「…罠発動しないのか？」

動かない瑞希を見て北林はにやけながら問う。

「ま、ついてなかったな」
《ゴブリン突撃部隊》直接攻撃
瑞希ＬＰ１８００ー２３００＝０

北林はカードを回収する。

「さあ、約束は守ってもらおうか」

北林含めた男子生徒たちは負けたショックで目元に涙を溜めた瑞希を下衆な笑みを浮かべながら見つめる。

（私…こんな奴らに、負けるなんて…）



しかしただ一人、赤石は表情を変えずガラス越しの見張りがいなくなっていることに気付く。

（…案外ついてるかもな）

赤石はこれで終わりそうにないことを予感した。

なお、その予感は数秒後的中することになる。



ーーー



「瑞希、よく戦ったね」

彼女は瑞希を抱きしめる。

「れーりちゃん…！ぐすっ、ひっく」

彼女のねぎらいに瑞希は涙が溢れ出した。



男子生徒たちはその光景を冷めた目で見る。

「なあ、邪魔するなら出て行ってくれねえか？今からその子との約束を果たす予定なんだからさ。それとも混ざるかあ？」

「おお！それいいねえ」

「俺、あのメガネっ娘結構好み」

（ひっ、この人たち怖い…）

綾芽は邪な視線を向けられゾクッと恐怖感を覚える。



「瑞希、綾芽。あとはわたしにまかせて」

彼女は抱きしめる手を離し、興奮する男子生徒たちへと目を向ける。

「わたしと勝負しませんか？」

「ああ？」

「わたしが勝ったらさっきの勝負は無効にしてください」

「おいおい、勝手に入ってきて何言ってんだ？俺たちに何の得も無えじゃねえか」

北林は呆れながら返事をする。

「わたしが負けたら瑞希の変わりにわたしが約束を果たします」

「れ、れーりちゃん！？」

瑞希は驚いて彼女の顔を見て、

「…は！本気か！？」

「マジ！？鈴瀬とかマジ！？」

「やべえ、マジやべえぞ！」

男子生徒たちは一様に興奮状態になる。



「受けてくれますか？」

彼女はそんな周囲の反応を気にせずに申し入れた。

「んーそれじゃ受けれんなあ？」

が、拒否される。

「おい北林！何でだよ！？」

疑問に思う男子生徒をよそに北林はにやけながら、

「変わりじゃなくてお前も約束を果たすというなら受けてやる」

受諾の条件を提示した。

「…わかりました。その条件で受けてくれますか？」

「それなら受けてやろう！」

北林は彼女の申し込みを快諾した。



北林は瑞希の時と同じようにルール説明をする。もちろん使うカードも同じだ。

その間、瑞希はどこか落ち着かない様子で彼女に話しかけようとしたが、彼女に「大丈夫、安心して」と言われ不安ながらも彼女に託すことにした。

綾芽も緊張した面持ちで彼女と同じようにルールを覚えようとしていた。



デッキもあるべきところにセットされ、あとは先攻後攻を決めるだけの段階だ。

瑞希と綾芽はどこか不安げな顔で彼女の斜め後ろに立っている。

「中根よりは物覚えは良さそうだな」

「わかりやすい説明をしていただいたので」

（気に食わねえな。こいつも中根と同じで自信だけはあるってかあ？）

じゃんけんの結果、今回も先攻は北林。

（まあ、数分も経たねえうちに思い知るだろうよ。勝負に挑んだことが間違いだったってな！）

瑞希の負けを取り返すデュエルが始まった。