８話　♯７「１回戦　２」　作：tres

「ドロー、スタンバイ、メイン」ドローカード《ブリザード・ドラゴン》

（残りＬＰ１００、《破壊輪》は発動できない…でも）

「《大嵐》を発動します」

「うむ」

《大嵐》効果→セットカード《ディメンション・ウォール》《鎖付きブーメラン》破壊

（《ディメンション・ウォール》…！危なかった）

「カードをセット」

「《ブリザード・ドラゴン》を召喚します」

「《ブリザード・ドラゴン》の効果を発動、対象は《アレキサンドライドラゴン》です」

「バトルフェイズ、《ブリザード・ドラゴン》で《ミラージュ・ドラゴン》に攻撃」

「受けよう」

《ミラージュ・ドラゴン》戦闘破壊
柴岡ＬＰ３０００－２００＝２８００

「ターンエンドです」



彼女手札０枚
ＬＰ１００
◇　裏　◇
◇　あ　◇
あ＝《ブリザード・ドラゴン》攻撃表示

彼女→柴岡

ア＝《アレキサンドライドラゴン》攻撃表示
◇　ア　◇
◇　◇　◇
ＬＰ２８００
柴岡手札１枚



「ドロー！スタンバイ！メイン！」

（ふむ、《アレキサンドライドラゴン》が凍ったか）

「ならば彼奴を呼び出そう！《簡易融合》発動！」

《簡易融合》効果→柴岡ＬＰ２８００－１０００＝１８００

「ＥＸデッキから現れよ！《重装機甲 パンツァードラゴン》！守備表示！」

特殊召喚《重装機甲 パンツァードラゴン》表側守備

（《簡易融合》からってことは…）

《重装機甲 パンツァードラゴン》は破壊され墓地へ送られた場合、フィールドのカード１枚を破壊する効果を持つ。それは《簡易融合》の自壊効果でも発動される。

つまりタイムラグがあるものの、《簡易融合》が間接的に除去効果を持つカードとなる。

「モンスターセット！戦闘が駄目なら効果で破壊するまでよ！」

「ターンエンド！この瞬間《簡易融合》の効果により《重装機甲 パンツァードラゴン》が破壊され効果発動！《ブリザード・ドラゴン》を破壊してもらおう！」

「はい」

《重装機甲 パンツァードラゴン》破壊
《重装機甲 パンツァードラゴン》効果→《ブリザード・ドラゴン》破壊



彼女手札０枚
ＬＰ１００
◇　裏　◇
◇　◇　◇

柴岡→彼女

ア＝《アレキサンドライドラゴン》攻撃表示
◇　ア　裏
◇　◇　◇
ＬＰ１８００
柴岡手札０枚



（手札は無し…このドローにかかってる）

「ドロー…」

彼女はドローしたカードを見る。



ドローカード《簡易融合》

（…）

《簡易融合》は発動コストに１０００ＬＰが必要である。すなわち…

「スタンバイ、メイン」

「カードをセット」

彼女のセットカード２枚の両方ともが発動できないという絶望的な状況である。どちらもブラフにしかならない。ただ存在しているだけ。

「ターンエンドです」

それでも彼女は感情を出さない。デュエルが完全に決着するまでは。



彼女手札０枚
ＬＰ１００
◇　裏　裏
◇　◇　◇

彼女→柴岡

ア＝《アレキサンドライドラゴン》攻撃表示
◇　ア　裏
◇　◇　◇
ＬＰ１８００
柴岡手札０枚




（これは決まったカ…？）

ヘズはこのターンでの決着を予期する。

「ドロー！スタンバイ！メイン！」

「さあフィニッシュと行くか！反転召喚！」

裏側守備《魔装機関車 デコイチ》反転召喚
《魔装機関車 デコイチ》効果→１ドロー

「バトル！その２枚のセットカード、恐るるに足らず！」

（とはいえ、ここは万全を期しておこうか。《アレキサンドライドラゴン》で攻撃して、もし《ディメンション・ウォール》が発動されてしまったら目も当てられないからな！）

「《魔装機関車 デコイチ》でダイレクトアタック！」

柴岡の攻撃宣言後、彼女は数秒間を置いて、

「…はい」

攻撃を受け入れた。

彼女ＬＰ１００－１４００＝－１３００



「まずは拙者の１勝でゲスな！」

１回戦は柴岡の勝利で決まった。これで彼女は後が無くなる。しかし彼女は依然として冷静なままだ。



１回戦終了後、紫はお互いのメインデッキのカード１０枚を自分に渡すよう指示する。

それを受け柴岡はメインデッキのスリーブからカードを抜き取り１０枚分紫に渡した。彼女も同じくメインデッキを紫に渡す。

紫はお互いから受け取ったカードを確認すると、５分休憩の後、２回戦を開始することを告げる。そして１回戦開始前と同様に仕切りパネル置き、タイマーを設定した。

「少々厠へ行ってくるぞ」

タイマー起動直後、柴岡は半ば急くようにトイレへと消えた。



デュエルを観戦していた従業員たちは浮かない顔のまま彼女を心配そうに見つめる。中には同情し、憐れむ者もいた。

（やっぱりこうなったか…さすがのレイリちゃんでも元プロには敵わないか）

樋口も自身が懸念していた展開になり、厳しい表情を浮かべる。

誰も言葉を交わさない。ただ静かな時が流れていく。

「…アタシは今審判だから、言えることは限られてるけどさ」

そんな空気を、静寂を紫が穏やかに破る。

「勝負は最後までわかんねーよ」

「ああ、その通りだナ」

紫の言葉にヘズは同意する。ヘズの表情はというと従業員たちと同じどころか、含みのある笑みを浮かべていた。

（ヘズが気になるな…何か見つけた？）

紫は１回戦の流れを通して思い返す。

（…いや、アタシの見た限り何もおかしなところは無かった。行動や言動はともかく…見落としてただけか？）

記憶を探るものの、これといった場面は見つからなかったようだ。

（ま、たとえイカサマをしてたとしてもレーリが指摘しない限り審判は静観するしかないんだけど）



（あの様子じゃユカリは気付いてないようだナ）

（この席からだと良く見えてたヨ。なるほど、そのために店員を遠ざけたのカ）

（次はヤツが無力な分、鈴瀬さんが勝つだろウ。だが、３回戦…）

（再びヤツに力が宿ル。さあ、どうすル？）



「ふむ、時間か」

柴岡がトイレから戻り、程なくしてタイマーが５分経過を告げる。

１回戦と同じく紫は仕切りパネルを外し、お互いのデッキをシャッフルするように指示する。

彼女も今回は落とすことなく無事シャッフルできたようだ。先攻は１回戦の敗者となった彼女。

「それでは２回戦、デュエルスタート！」