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10話 動き出す強敵 作:19
大牙「…」
大きな廃墟。天上からは月明かりが無数に差し込むが、穴が小さすぎてボロボロの部屋全体を照らすには足りていない。そんな部屋で大きな椅子にふんぞり返っている大牙の元に、一人の美女が来た。
美女「大牙様。報告があります」
大牙「なんだ」
古びた扉はギギィと音を起ててその古さを音で伝える。美女の腕にはデュエルディスクが付けられており、デュエリストであると分かる。
美しい黒髪を肩の下まで伸ばし、赤い瞳が背を向ける大牙を写す。整った顔立ちはまるでモデルのようであり、綺麗に着こなしているドレスような服がより一層美しさを醸し出している。
美女「単独で天使の元へ向かったイズですが…どうやら負けてしまったようです」
大牙「そんな事だろうと思っていた。あの屑が…。たった一人で挑むからそうなる」
緑色の瓶に入った酒をドポドポとグラスにつぎ込み、一気飲みをする。その度数は60を超えているようだ。
大牙「ふぅ…。それで、お前はどうするんだ?リリヤ…」
リリヤ「もちろん。私は今から天使討伐に向かうつもりです。しかし…」
大牙「一人じゃ不安か」
リリヤ「はい…」
大牙「そうだな…じゃあ、FTを二人連れていけ。誰を連れて行ってもかまわん」
そう言った大牙は一枚のメモ用紙を指で弾いてリリヤに投げ渡す。フワフワと飛んだ紙は、狙った通りリリヤの手前に飛来した。
つかみ取って確認した紙には、FT達それぞれの居場所がかかれてあり、どうやらそこへ言って協力してもらえ。ということらしい。
リリヤ「ありがとうございます。必ずや…あの天使を…」
頭を下げて一礼するリリヤに、大牙はさらにもう一枚のカードを投げ渡した。
大牙「ついでにコイツも持って行け」
リリヤ「このカードは…」
大牙「悪魔のカード…。アイツらはそう呼んでるらしいな。俺には関係ないがな…」
その時、頭の中で悪魔が言う。
悪魔「関係ない?よく言うぜ。アンタが持ってるカードなんて、全部悪魔のカードじゃねぇか。奪ったレアカードも何もかも全部悪魔のカードにしちまう…俺達より性質が悪いぜ…!」
大牙「黙ってろ」
その一言で悪魔はバツが悪そうに煙のように姿を消す。
リリヤ「え?今、何か仰いましたか?」
大牙「なんでもない。それより…ちゃんと倒してこいよ…?」
大牙が強く睨みつけると、リリヤはフッと微笑んでもう一度一礼をして去っていった。
リリヤくらいだ。大牙の眼孔に怯まないのは…。大牙も彼女の前では睨むことをあまりしない。意味がないと分かっているからだ。
大牙「残るFTは7人…。誰から死ぬかな…」
酒瓶のラベルを眺める大牙はそうつぶやき、今度はグラスに注がずそのままラッパ飲みで全てを飲み干す。それを壁に投げつけて叩き壊すと、部屋を後にした。
・・・。
ヤマト「うーん…」
ヤマト…目を覚ませ…ヤマト……。
ヤマト「…こ、ここは…?…!」
薄らと目を開けると、辺り一面真っ白な世界。一瞬どこなのか考えたが、すぐに思い出した。
ヤマト「天界…」
ゼル「目が覚めたか。ヤマトよ…」
後ろには巨大な神、ゼルが玉座に座っている。慌てて跪き、敬意を表す。
ヤマト「お久しぶりでございます!ゼル様!」
ゼル「地上の悪魔達は一体どうなっている…?」
ヤマト「はい。今だに本物の悪魔のカード所持者は見つかっておりません。しかし、本物の持ち主に触発されて悪魔の瘴気を纏ったカードなら何度か退けました」
その報告を聞いてゼルはウームと長い髭を撫でながら考える。
ゼル「悪魔の力が、最近増加しつつある…。気をつけよ。ワシからは、それだけじゃ…精進するのじゃぞ…」
ヤマト「はい!」
元気に答えたヤマトにゼルも安心する。そこで目は覚めた。
ヤマト「(…あれ?夢、だったのかな…?)」
気がつけばアオヒサの家のベッドで寝ていた。ふと後ろに気配を感じ寝返りをうつと。
クレア「スゥー…スゥー…」
ヤマト「!?」
すぐ目の前、10センチも離れていない距離でクレアが寝息を立てていた。
ヤマト「(え、なんで…。昨日何かあったっけ…?)」
ベッドは三つある。足りなかったからということは無いだろうし…どうしてだろう。
ヤマト「(それにしても…クレアを見てると、なんだか心の奥が熱くなってくる…なんなんだろう。この感じ)」
自然と顔を近付け、マジマジと彼女を顔を覗き込む…。すると彼女が起きてしまった。
クレア「んん…。あれ、ヤマト…?ふぁ、おはよ~…」
眠そうな眼をパチパチしながら大きな欠伸をする。起き上がった彼女を見て、ビックリする。
上着が、薄着一枚だけ…。
ヤマト「(に、人間ってこんな破廉恥な恰好もできるのか…)」
驚きと共に感性の違いを再確認するヤマトは、オズオズと寝間着から私服に着替える。
クレア「…どうしたの?」
ヤマト「い、いや。なんでもないよ…」
天界では過激な服装をするものはいない。欲に厳しいからだ。あまり派手に露出が多い服装だと、他の天使達から堕天使呼ばわりされ、最悪本当に天界を追放されかねない。それを昔から教え込まれていたために、他人がすぐそばに居るというのにあんな恰好をするクレアが信じれなかった。
クレア「ゴメンね~、昨日夜中までデッキ調整してて…自分のベッドが一番遠いから、ついここで寝ちゃってた…てへへ…」
そんな理由…。つくづく人間と天使は違うんだと考えさせられる。
ヤマト「…やっぱり違うなぁ」
クレア「?」
首をかしげるクレアだったが、丁度アオヒサが朝食の完成を知らせてきた。食べようと彼女に言ってリビングに向かう。
アオヒサ「今日はシチューだぜ。沢山あるからいっぱい食べなっ」
いい匂いと共に湯気をユラユラと立たせる鍋の中に、クリーム色のシチューが入っている。
ヤマト「ほんと、いい匂い…」
天界では地上で食べるようなものは殆ど食べない。天界には果物しかないからだ。その果物でさえ、地上のものより美味しくはない。
ただし、食べ続ければ、男なら体は強靭になり、女なら美しく、若さを保つことができるという…。
クレア「何よそれ…羨ましい…。ねぇヤマト。天界から果物って…もってこれる?♥」
甘えたような声で手を合わせお願いしてくるが、首を横に振る。
ヤマト「天界の物を口にできるのは天使と神様だけなんだ。人間が食べても吐き出しちゃうし、悪魔が食べれば消滅する」
アオヒサ「悪魔には毒ってことなのか…。でも、強靭な体か…。羨ましい」
アオヒサは自分の腕に力を入れ、筋肉を膨らませる。筋力に自信があるわけではないが、そこそこ膨れ上がる。
クレア「むぅ…長く美貌を保つのも、難しいわよね」
自信満々にワザとらしく言うクレア。アオヒサはオーバーな表現でギャグだと気付いているが、ヤマトは全く気付いていない。
ヤマト「…美貌?クレアが…?」
クレア「~~~!!なぁによ。まるで私が綺麗じゃないみたいじゃないっ」
女性の美しさの有無を知らないヤマトに顔を真っ赤にして怒るが、ヤマトはなぜ怒られているのかが分かっていないようだった。
・・・。
街に出た三人はいつも通りカードリーパーおよび大牙を探す。
クレア「…ねぇ、アオヒサ」
アオヒサ「ん~?」
暇そうな声で答えるアオヒサにクレアは質問する。前を行くヤマトは悪魔のカードの気配を追ってキョロキョロと視線を動かし続ける。
クレア「アオヒサって、大牙とデュエルしたことあるんでしょ?その時、大牙のアジトとかって覚えてないの?」
アオヒサ「うーん…覚えてない…ってか、なんか記憶が曖昧なんだよな。アイツとデュエルするのに必死すぎて、それ以外のことを殆ど忘れちゃってる…ような?」
首を傾げ考え込むアオヒサ。クレアもふーんと軽く返答する。
ヤマト「…いたっ」
クレア・アオヒサ「!?」
ヤマトが足を止める。真っ直ぐに見据えた先。こちらをジッと見つめる三人組が居た。
一人は女性。美しい黒髪に赤い瞳、軽めのドレス衣装を着こなし、腕にデュエルディスクを付けている。リリヤだ。
もう一人の男。ジーパンに黒のワイシャツを着ている。オーバーオールの髪は金髪で、目つきがとても悪い。
最後の一人の男。メガネをかけ、知的な雰囲気を漂わせているが、他の二人と並ぶことで只者ではない感じを醸し出している。
ヤマト「アイツらだ…アイツら、全員が悪魔のカードを…!」
道行く人々は、向かい合う3人組から放たれる戦意を感じることなく通り過ぎていく。6人の時間だけが止まったようにジッと立ち止まっている。
リリヤ「…フフフ」
怪しく微笑んだリリヤは踵を返して去っていく。他の二人はそれぞれ左右に歩いていく。ちょうどT字になるように別れていった。
アオヒサ「なんだぁ?1対1がお望みってか…?」
クレア「罠かもしれないわ…。でも、あの女は私が闘う」
何時になくやる気なクレアはカードをセットし、シャッフルさせる。
クレア「アイツは…私が闘わなきゃいけない気がするの。ヤマト、アオヒサ…他の二人を頼んだわよ」
アオヒサ「おう!任せとけ!あの澄ましたいけ好かねぇメガネ野郎は俺が追う。ヤマト、ゴロツキみたいな方は頼んだぜ!」
ヤマト「うん!二人とも、気を付けてね!」
三人は拳を合わせ、それぞれの敵を追う。あの意味深な眼差し。敵じゃないわけがあるだろうか。
クレアは着ているスカート付きの黒いベアトップをひらめかせながら女性を追う。
クレア「(アイツ…ずっと私を見てた…。いいわ。受けて立とうじゃない…!)」
クレアが後を追って数分。まだ移動するのかとイラつき始めた頃。女性はある広場に入っていった。
クレア「(あそこは、確か)」
クレアが覚えている限りでは、あそこは墓地のハズ。
リリヤ「よく来てくれたわね…私の楽園に…♪」
クレア「楽園?随分趣味の悪い楽園ね。摘んだ花束は亡者にでも捧げるのかしら?」
リリヤ「あながち間違ってはないわ…」
微笑むリリヤはクルリとクレアの方を向いてディスクを構える。赤と黒のカラーが特徴的なデュエルディスクは彼女にとても似合っていた。
リリヤ「自己紹介がまだだったわね。私は、リリヤ…。リリヤ・デットリートよ。以後お見知りおきを…お嬢ちゃん」
クレア「私はクレア。それだけ言えばいいでしょ。オバサン…!」
強気に出たクレアは小さく睨んで威嚇する。
クレア・リリヤ「デュエル!」
大きな廃墟。天上からは月明かりが無数に差し込むが、穴が小さすぎてボロボロの部屋全体を照らすには足りていない。そんな部屋で大きな椅子にふんぞり返っている大牙の元に、一人の美女が来た。
美女「大牙様。報告があります」
大牙「なんだ」
古びた扉はギギィと音を起ててその古さを音で伝える。美女の腕にはデュエルディスクが付けられており、デュエリストであると分かる。
美しい黒髪を肩の下まで伸ばし、赤い瞳が背を向ける大牙を写す。整った顔立ちはまるでモデルのようであり、綺麗に着こなしているドレスような服がより一層美しさを醸し出している。
美女「単独で天使の元へ向かったイズですが…どうやら負けてしまったようです」
大牙「そんな事だろうと思っていた。あの屑が…。たった一人で挑むからそうなる」
緑色の瓶に入った酒をドポドポとグラスにつぎ込み、一気飲みをする。その度数は60を超えているようだ。
大牙「ふぅ…。それで、お前はどうするんだ?リリヤ…」
リリヤ「もちろん。私は今から天使討伐に向かうつもりです。しかし…」
大牙「一人じゃ不安か」
リリヤ「はい…」
大牙「そうだな…じゃあ、FTを二人連れていけ。誰を連れて行ってもかまわん」
そう言った大牙は一枚のメモ用紙を指で弾いてリリヤに投げ渡す。フワフワと飛んだ紙は、狙った通りリリヤの手前に飛来した。
つかみ取って確認した紙には、FT達それぞれの居場所がかかれてあり、どうやらそこへ言って協力してもらえ。ということらしい。
リリヤ「ありがとうございます。必ずや…あの天使を…」
頭を下げて一礼するリリヤに、大牙はさらにもう一枚のカードを投げ渡した。
大牙「ついでにコイツも持って行け」
リリヤ「このカードは…」
大牙「悪魔のカード…。アイツらはそう呼んでるらしいな。俺には関係ないがな…」
その時、頭の中で悪魔が言う。
悪魔「関係ない?よく言うぜ。アンタが持ってるカードなんて、全部悪魔のカードじゃねぇか。奪ったレアカードも何もかも全部悪魔のカードにしちまう…俺達より性質が悪いぜ…!」
大牙「黙ってろ」
その一言で悪魔はバツが悪そうに煙のように姿を消す。
リリヤ「え?今、何か仰いましたか?」
大牙「なんでもない。それより…ちゃんと倒してこいよ…?」
大牙が強く睨みつけると、リリヤはフッと微笑んでもう一度一礼をして去っていった。
リリヤくらいだ。大牙の眼孔に怯まないのは…。大牙も彼女の前では睨むことをあまりしない。意味がないと分かっているからだ。
大牙「残るFTは7人…。誰から死ぬかな…」
酒瓶のラベルを眺める大牙はそうつぶやき、今度はグラスに注がずそのままラッパ飲みで全てを飲み干す。それを壁に投げつけて叩き壊すと、部屋を後にした。
・・・。
ヤマト「うーん…」
ヤマト…目を覚ませ…ヤマト……。
ヤマト「…こ、ここは…?…!」
薄らと目を開けると、辺り一面真っ白な世界。一瞬どこなのか考えたが、すぐに思い出した。
ヤマト「天界…」
ゼル「目が覚めたか。ヤマトよ…」
後ろには巨大な神、ゼルが玉座に座っている。慌てて跪き、敬意を表す。
ヤマト「お久しぶりでございます!ゼル様!」
ゼル「地上の悪魔達は一体どうなっている…?」
ヤマト「はい。今だに本物の悪魔のカード所持者は見つかっておりません。しかし、本物の持ち主に触発されて悪魔の瘴気を纏ったカードなら何度か退けました」
その報告を聞いてゼルはウームと長い髭を撫でながら考える。
ゼル「悪魔の力が、最近増加しつつある…。気をつけよ。ワシからは、それだけじゃ…精進するのじゃぞ…」
ヤマト「はい!」
元気に答えたヤマトにゼルも安心する。そこで目は覚めた。
ヤマト「(…あれ?夢、だったのかな…?)」
気がつけばアオヒサの家のベッドで寝ていた。ふと後ろに気配を感じ寝返りをうつと。
クレア「スゥー…スゥー…」
ヤマト「!?」
すぐ目の前、10センチも離れていない距離でクレアが寝息を立てていた。
ヤマト「(え、なんで…。昨日何かあったっけ…?)」
ベッドは三つある。足りなかったからということは無いだろうし…どうしてだろう。
ヤマト「(それにしても…クレアを見てると、なんだか心の奥が熱くなってくる…なんなんだろう。この感じ)」
自然と顔を近付け、マジマジと彼女を顔を覗き込む…。すると彼女が起きてしまった。
クレア「んん…。あれ、ヤマト…?ふぁ、おはよ~…」
眠そうな眼をパチパチしながら大きな欠伸をする。起き上がった彼女を見て、ビックリする。
上着が、薄着一枚だけ…。
ヤマト「(に、人間ってこんな破廉恥な恰好もできるのか…)」
驚きと共に感性の違いを再確認するヤマトは、オズオズと寝間着から私服に着替える。
クレア「…どうしたの?」
ヤマト「い、いや。なんでもないよ…」
天界では過激な服装をするものはいない。欲に厳しいからだ。あまり派手に露出が多い服装だと、他の天使達から堕天使呼ばわりされ、最悪本当に天界を追放されかねない。それを昔から教え込まれていたために、他人がすぐそばに居るというのにあんな恰好をするクレアが信じれなかった。
クレア「ゴメンね~、昨日夜中までデッキ調整してて…自分のベッドが一番遠いから、ついここで寝ちゃってた…てへへ…」
そんな理由…。つくづく人間と天使は違うんだと考えさせられる。
ヤマト「…やっぱり違うなぁ」
クレア「?」
首をかしげるクレアだったが、丁度アオヒサが朝食の完成を知らせてきた。食べようと彼女に言ってリビングに向かう。
アオヒサ「今日はシチューだぜ。沢山あるからいっぱい食べなっ」
いい匂いと共に湯気をユラユラと立たせる鍋の中に、クリーム色のシチューが入っている。
ヤマト「ほんと、いい匂い…」
天界では地上で食べるようなものは殆ど食べない。天界には果物しかないからだ。その果物でさえ、地上のものより美味しくはない。
ただし、食べ続ければ、男なら体は強靭になり、女なら美しく、若さを保つことができるという…。
クレア「何よそれ…羨ましい…。ねぇヤマト。天界から果物って…もってこれる?♥」
甘えたような声で手を合わせお願いしてくるが、首を横に振る。
ヤマト「天界の物を口にできるのは天使と神様だけなんだ。人間が食べても吐き出しちゃうし、悪魔が食べれば消滅する」
アオヒサ「悪魔には毒ってことなのか…。でも、強靭な体か…。羨ましい」
アオヒサは自分の腕に力を入れ、筋肉を膨らませる。筋力に自信があるわけではないが、そこそこ膨れ上がる。
クレア「むぅ…長く美貌を保つのも、難しいわよね」
自信満々にワザとらしく言うクレア。アオヒサはオーバーな表現でギャグだと気付いているが、ヤマトは全く気付いていない。
ヤマト「…美貌?クレアが…?」
クレア「~~~!!なぁによ。まるで私が綺麗じゃないみたいじゃないっ」
女性の美しさの有無を知らないヤマトに顔を真っ赤にして怒るが、ヤマトはなぜ怒られているのかが分かっていないようだった。
・・・。
街に出た三人はいつも通りカードリーパーおよび大牙を探す。
クレア「…ねぇ、アオヒサ」
アオヒサ「ん~?」
暇そうな声で答えるアオヒサにクレアは質問する。前を行くヤマトは悪魔のカードの気配を追ってキョロキョロと視線を動かし続ける。
クレア「アオヒサって、大牙とデュエルしたことあるんでしょ?その時、大牙のアジトとかって覚えてないの?」
アオヒサ「うーん…覚えてない…ってか、なんか記憶が曖昧なんだよな。アイツとデュエルするのに必死すぎて、それ以外のことを殆ど忘れちゃってる…ような?」
首を傾げ考え込むアオヒサ。クレアもふーんと軽く返答する。
ヤマト「…いたっ」
クレア・アオヒサ「!?」
ヤマトが足を止める。真っ直ぐに見据えた先。こちらをジッと見つめる三人組が居た。
一人は女性。美しい黒髪に赤い瞳、軽めのドレス衣装を着こなし、腕にデュエルディスクを付けている。リリヤだ。
もう一人の男。ジーパンに黒のワイシャツを着ている。オーバーオールの髪は金髪で、目つきがとても悪い。
最後の一人の男。メガネをかけ、知的な雰囲気を漂わせているが、他の二人と並ぶことで只者ではない感じを醸し出している。
ヤマト「アイツらだ…アイツら、全員が悪魔のカードを…!」
道行く人々は、向かい合う3人組から放たれる戦意を感じることなく通り過ぎていく。6人の時間だけが止まったようにジッと立ち止まっている。
リリヤ「…フフフ」
怪しく微笑んだリリヤは踵を返して去っていく。他の二人はそれぞれ左右に歩いていく。ちょうどT字になるように別れていった。
アオヒサ「なんだぁ?1対1がお望みってか…?」
クレア「罠かもしれないわ…。でも、あの女は私が闘う」
何時になくやる気なクレアはカードをセットし、シャッフルさせる。
クレア「アイツは…私が闘わなきゃいけない気がするの。ヤマト、アオヒサ…他の二人を頼んだわよ」
アオヒサ「おう!任せとけ!あの澄ましたいけ好かねぇメガネ野郎は俺が追う。ヤマト、ゴロツキみたいな方は頼んだぜ!」
ヤマト「うん!二人とも、気を付けてね!」
三人は拳を合わせ、それぞれの敵を追う。あの意味深な眼差し。敵じゃないわけがあるだろうか。
クレアは着ているスカート付きの黒いベアトップをひらめかせながら女性を追う。
クレア「(アイツ…ずっと私を見てた…。いいわ。受けて立とうじゃない…!)」
クレアが後を追って数分。まだ移動するのかとイラつき始めた頃。女性はある広場に入っていった。
クレア「(あそこは、確か)」
クレアが覚えている限りでは、あそこは墓地のハズ。
リリヤ「よく来てくれたわね…私の楽園に…♪」
クレア「楽園?随分趣味の悪い楽園ね。摘んだ花束は亡者にでも捧げるのかしら?」
リリヤ「あながち間違ってはないわ…」
微笑むリリヤはクルリとクレアの方を向いてディスクを構える。赤と黒のカラーが特徴的なデュエルディスクは彼女にとても似合っていた。
リリヤ「自己紹介がまだだったわね。私は、リリヤ…。リリヤ・デットリートよ。以後お見知りおきを…お嬢ちゃん」
クレア「私はクレア。それだけ言えばいいでしょ。オバサン…!」
強気に出たクレアは小さく睨んで威嚇する。
クレア・リリヤ「デュエル!」
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