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HOME > 遊戯王SS一覧 > 8話 決死と少年

8話 決死と少年 作:19

アオヒサ LP5600 手札0
  場
ハント・カリスリヴ ☆9 攻撃力2900
魔 ワンスワールド ●×4


イズ LP 5700 手札3
  場
セット魔法罠カード×1

 イズ「俺のターン、ドロー! …このカードは……」

イズの手札に来たのは、『戯曲魔神・ドラマドーラ』のカード。昔、イットとコンビを組んですぐの頃、仲間だと認めた印に一枚くれたものだ。イズとイット。二人で一枚ずつ常に持ち歩いていた…。
 イズ「イット…!手札から魔法カード『嘲笑の挑発』発動!相手はデッキからカードを2枚ドローする。次の相手ターンのスタンバイフェイズ終了時、相手の手札が2枚以上ある場合、相手に2000ポイントのダメージを与える!」
 アオヒサ「ちっ!確実に2000ダメージを与えてくる気か…!」
 イズ「そして、ライフを2000ポイント払うことで…『戯曲魔神・ドラマドーラ』を召喚っ!」

イズ LP5700 → 3700

戯曲魔神・ドラマドーラ ☆4 攻撃力1700

 アオヒサ「ついに来やがったな…!だが、その手は通用しないぜ!手札に存在する『超太古の化石骨』のモンスター効果発動!このモンスターを手札から捨てることで、お互いのフィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する!『戯曲魔神・ドラマドーラ』と『ハント・カリスリヴ』を守備表示に!」

ハント・カリスリヴ 攻撃表示 → 守備表示 守備力2900
戯曲魔神・ドラマドーラ 攻撃表示 → 守備表示 守備力1300

 イズ「く!カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

イズ LP3700 手札0
  場
戯曲魔神・ドラマドーラ ☆4 守備力1300
セット魔法罠カード×2


 アオヒサ「(手札を1枚までは減らせなかったか…) 俺のターン、ドロー!…メインフェイズだ」
 イズ「『嘲笑の挑発』の発動条件は逃れられなかったようだな…2000ポイントのダメージを受けてもらうぞ!」

イズのデュエルディスクから発せられるダメージの光線。稲妻のような光がアオヒサのライフを大きく削った。

 アオヒサ「う、うあああぁぁ!」

アオヒサ LP5600 → 3600

 イズ「まだだ!リバースカードオープン!罠カード『パンドラ・ブレイク』発動!相手が効果ダメージを受けた時、俺のライフを1000ポイント払うことで、お前に2000ポイントのダメージだ!」
 アオヒサ「うぐあああ!」
 イズ「ぐ!ううう!」

イズ LP3700 → 2700
アオヒサ LP 3600 → 1600

イズはなんとか堪えるが、ダメージとなって体に走る激痛はアオヒサを這いつくばらせるには充分だった。

 アオヒサ「くぅ…!負けられないんだ。あの二人が、ボロボロになってまで勝ったんだ…俺が、俺がこんなところで負けてどうするんだよ!」

拳を握って地面を殴る。そして気合でゆっくりと立ちあがり、固い意思を持ってデュエルを続行する。

 アオヒサ「俺は、『ハント・カリスリヴ』を攻撃表示にする。そしてバトルだ!『ハント・カリスリヴ』で『戯曲魔神・ドラマドーラ』を攻撃!《ディープ・ハンティング》!!」
 イズ「馬鹿め!ドラマドーラの効果を忘れたのか!」
 アオヒサ「馬鹿はそっちだ!俺がなんのためにコイツを出したと思ってる!『ハント・カリスリヴ』の効果により、このモンスターが攻撃する場合、相手フィールド上に存在するカードの効果は無効になる!ドラマドーラの効果も無効化だ!」
 イズ「ううぅ!」

イズ LP2700 → 1500

 アオヒサ「まだだ!手札から速攻魔法『超太古の惨劇』を発動!俺のライフを半分払い、『ワンスワールド』を破壊する!」
 イズ「自らフィールド魔法を破壊だと…!そのフィールド魔法が無ければお前のモンスターは場に留まれない筈じゃ…」

アオヒサ LP1600 → 800

 アオヒサ「そうだ。だから…コイツは最後の手段なんだよ。『超太古の惨劇』の効果で破壊した『ワンスワールド』に乗っているハントカウンターの数×500ポイントのダメージを相手に与える…。これで、終わりだぁ!」

ワンスワールドがガラスを割ったように消え去り、元の路地裏に戻る。4つのカウンターの玉がカリスリヴに入り込み、大爆発を引き起こす。その爆風でイズは反対の壁に吹き飛ばされた。

 イズ「っ!あああぁぁぁ!」

イズ LP1500 → 0


 アオヒサ 勝利!


 アオヒサ「はぁ…はぁ…。やった。勝った…ぜ…!」

なんとか死闘に勝利したアオヒサだったが、緊張が解れたことで疲労が溢れ、仰向けに倒れ込んだ。

 アオヒサ「しばらく…休みたいなぁ…」

見えた空はとても青く、ヤマトとのデュエルで負けた時のような清々しさを与えてくる。そんなアオヒサを一人の少女が見つけた。

 クレア「…あ!アオヒサ!こんな所に!…コイツは」

倒れいるアオヒサの元にクレアが走り寄る。

 アオヒサ「あぁ、コイツならさっきデュエルで負かしたよ。どうしたんだ?心配して来てくれたの?」
 クレア「でも…もう一人いた筈じゃ…」
 アオヒサ「…死んじまったんだってよ。大牙にやられたって…。それで、コイツは自分が死なない為にデュエルを挑んできたんだ」
 クレア「そう…ヤマトも待ってるわ。ほら」

手を差し伸べたクレアは優しく微笑み、アオヒサを起き上がらせる。彼女の笑みにアオヒサもついデレた表情になる。

 アオヒサ「…へへへ」
 クレア「何よ、ちょっと気持ち悪いわよ?さっきのデュエルで頭でも打った?」
 アオヒサ「あ~打ったかもしれないな~。クレアちゃんに手当してほしいな~」
 クレア「はぁ…わかったわ。帰ったらしてあげる」
 アオヒサ「マジで?っしゃぁ!」
 クレア「…元気じゃない」



その頃、大通りで二人を待っていたヤマトは不穏な気配を感じていた。

 ヤマト「…昨日と同じだ…悪魔のカードの気配…」

前にデュエルしたFTの二人と似たような邪悪な気、禍々しく感じる異質な気配。

 ヤマト「…あっちか!」

精神を集中させ、悪魔のカードの気配を辿る。…クレアが向かった方向とは反対の公園。そこから反応を感じた。

 ヤマト「ここから…でも、悪魔のカードを持っているような人なんて…」

広い公園。周りを木々が覆い、入り口の役割を果たしているその公園には数人の子供達が遊んでいる。

 ヤマト「…まさか…!」

子供の一人に目をやる。10歳くらいの男の子だ。その子の腕にはディスクが付けられており、デュエリストであると認識できる。

 ヤマト「あの子が、悪魔のカードを」

意を決してその子の元へ行く。一人ぼっちで砂場で山を作っているその子の前に屈み、問いかけた。

 少年「?」
 ヤマト「君は…持ってちゃいけないカードを持ってるね…?」

その言葉に驚いた少年は、砂の山を蹴飛ばすように逃げてしまった。

 ヤマト「! 待って!」

すぐに追いかけるが、少年は素早く木々の間を通り抜ける。

 ヤマト「く…思ったより早い…!待ってって!」

しばらく追いかけていたが見失ってしまう。木々の間の吹き抜けた広い場所に立つと、どこからか声が聞こえた。

 少年「お兄ちゃんも、あのカードを狙ってるの…?」

振り返ると少年が木陰から姿を現す。水色の半袖にクリーム色の半ズボンと、まさに子供そのものだが、悪魔のカードの所持者。油断してはいけない。

 ヤマト「君が持ってるのは悪魔のカードなんだ。それは人を傷つける大変な物なんだよ。だから、手放すんだ」
 少年「いやだ…」
 ヤマト「?」
 少年「僕は…、これさえあれば最強なんだ。大牙の兄ちゃんも言ってたんだ」
 ヤマト「だ、大牙だって!?」
 少年「そうだよ。大牙の兄ちゃんは優しくて強いんだ。弱い僕にたくさん強いレアカードくれるし…大牙の兄ちゃんから貰った大事なカードなんだ、手放せないよ!」
 ヤマト「…そんなに言うなら。デュエルで決めよう」

ヤマトがディスクを構えデッキをセットすると、少年は驚いた表情を見せた。

 少年「え…?」

デッキが自動的にシャッフルされ、デッキトップの5枚がドローしやすいように少しだけ手前に押される。

 ヤマト「君は最強のデュエリストなんだろ?だったら…その強さを、僕に見せてみろ!」
 少年「や、やだよ…。負けっちゃら怖いし…」
 ヤマト「君は、そんなに臆病な奴なのか!? 人からカードを貰って、その人が、自分が上げたカードが弱いカードな扱いをされて、嬉しいと思うのかい!?」
 少年「…!」

少年の表情が変わる。デュエリストの目だ。心情は「逃げたい」から「勝ちたい」に変わったようだ。

 少年「…わかったよ。デュエルするよ。その代り、僕が勝ったら、お兄ちゃんのレアカードは全部貰うよ!」
 ヤマト「それでもいい。危険な悪魔のカード…それを君みたいな子の手元に置いておく事はできない」

 ヤマト・少年「デュエル!!!」

ヤマト LP8000 手札5
少年 LP8000 手札5

 少年「僕のターンだ!手札から『ジェットメン』を召喚!」

ジェットメン ☆3 攻撃力1200

戦闘機に意地悪そうな顔とグローブを付けた手が生えたコミカルなモンスターが召喚される。

 少年「カードを1枚伏せてターンエンドだ。そして、エンドフェイズ時に『ジェットメン』の効果発動!相手プレイヤーに600ポイントのダメージを与える!」
 ヤマト「ぐぅ!」

ヤマト LP8000 → 7400

ジェットメンから2発のミサイルが発射され、ヤマトの足元で爆発する。悪魔のカードからの攻撃では無いためあまりダメージは無いが、それでも痛いことに変わりはない。


少年 LP8000 手札3
  場
ジェットメン ☆3 攻撃力1200
セット魔法罠カード×1


 ヤマト「僕のターン、ドロー! …手札から『メドロウ・サイクロス』を召喚!」

メドロウ・サイクロス ☆4 攻撃力1900

一つ目のメドロウモンスターが召喚される。高い攻撃を持ち、ヤマトのコンボへの布石の一体でもある。

 ヤマト「さらに手札から、魔法カード『天声の呼び声』を発動。手札の『メドロウ』モンスター1体をデッキに戻すことで、戻したモンスター以外で、そのモンスターよりレベルの低い『メドロウ』モンスター1体を特殊召喚する!『メドロウ・グリフォニス』をデッキに戻し、『メドロウ・ケイロン』を特殊召喚!」

メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700

レベル5のモンスターを戻して特殊召喚されたのは、ケンタウロスのような姿をしたレベル4の『メドロウ・ケイロン』。このモンスターには三つの効果があり、手札の『メドロウ』モンスター1枚をコストに効果を発動できる。

 ヤマト「『天声の呼び声』の効果によって、特殊召喚したモンスターのレベル×200ポイントライフを回復する。1000ポイント回復だ」

ヤマト LP7400 → 8400

 ヤマト「『メドロウ・ケイロン』の効果発動!手札の『メドロウ』モンスター1体を墓地へ送ることで、自分は1000ポイントライフを回復する。『メドロウ・マーメイド』を墓地へ送る」

ヤマト LP8400 → 9400

どんどんライフを回復し、どう来るか分からない相手からの戦術に気を付ける。先ほどのバーンダメージを見て、効果ダメージを警戒していた。

 ヤマト「バトルだ!『メドロウ・サイクロス』で『ジェットメン』を攻撃!」
 少年「『ジェットメン』は戦闘じゃ破壊されない! くぅ!」

ジェットメンを殴りつけられ、その余波が少年にまで伝わる。

少年 LP8000 → 7300

 ヤマト「なら、そのまま攻撃するまでだ!『メドロウ・ケイロン』で攻撃!」
 少年「うぅぅ!」

少年 LP7300 → 6800

 ヤマト「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

ヤマト LP9400 手札1
  場
メドロウ・サイクロス ☆4 攻撃力1900
メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700


 ヤマト「(かならず…あの子から悪魔のカードを引き離してみせる…!)」
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