第１話　PROCESS－目覚めの過程　作：提馬風

新たなルールが世界中で施行され、
デュエルは新たな舞台へと進んだ。

ここは軽多市、決闘者の多く住む町。
この町でも、新ルールによって新たな戦いが始まろうとしていた。

――しかし、本当にそれだけだろうか？

「世界中」を本当に語れるのは、ほんの一握りの存在だけだ。
例えば――、この町に現れた違和たちのように。

我らであれ。
さあ、目を覚ませ。


「目ぇ覚ませっつってんだろ遊陽！！」

遊陽「いったあ！」

？？？「ったく……、またゲーセンで寝やがって。せめて学校くらい来たらどうだ？」

遊陽「やだね、そんな退屈なトコ。ヒロがデュエルしに来ればいいんだよ」

ヒロは遊陽のクラスメイト、そして幼馴染である。
いつも女の子らしからぬ深緑のパーカーのフードで顔を隠しながら
アーケードにかじりつく遊陽を、ヒロは今日も説得しに来た。

ヒロ「バカ言え！ 俺はサボリなんかしねぇからな。
　　　そもそも、1日中ゲームしててそんな面白いか？」

遊陽「デュエルアーケードの素晴らしさをご存知ない？ それはいけないね。
　　　まずなんといっても、いつでも世界中の決闘者とデュエルができる！
　　　でもってカードはいつものデッキをスキャンするだけだから、余計なお金もかからない！」

ヒロ「いや、1プレイ200円だろ。パックが1つ買えるぞ」

遊陽「うん、1パック排出されるからね」

ヒロ「へえ……。
　　　それにしたって1日中やる金はいったいどこから来るんだ？」

遊陽「それもご心配なく。勝てばデュエルポイントが貯まるから、それを使ってプレイもできるんだよ。
　　　私は高ランクを維持してるからポイントも多く貯まるし、ほとんどタダでプレイできるってわけ」

ヒロ「なるほど……」


ヒロ「じゃねえよ！ それにしたって学校くらい来やがれ！」

遊陽「まったく、決闘者に育った以上はデュエルと生涯を添い遂げようとは思わんのかね？」

ヒロ「ああ言えばこう言う……。
　　　よーし分かった、表に出ろ。デュエルで分からせてやる」

遊陽「えー、ならアーケード使おうよぉ」

ヒロ「ソリッドビジョンがなきゃデュエルじゃねーやい」

遊陽「うぅ……外には出たくないなぁ」

ヒロ「だったらなおさら来やがれ、外嫌いを克服しろ」

遊陽「はいはい……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

ガッ
ドテーン！

遊陽「いったあ！？」

ヒロ「何やってんだ遊陽、何にもないトコでコケて……」ﾊｧ

遊陽「いや、今何かに引っかかっ……ん？」ﾋﾟﾗ

遊陽（枠が透明なモンスターカード。見たことないカードだ）

遊陽（大いなる記憶の樹……、レベル7、植物族・プロセス・効果……
プロセスモンスター？）

遊陽（まさか、こんなカードにつまづくわけないもんなぁ。でもどこから来たんだろう？）

遊陽（それにしてもこの樹、奇妙だけどきれいだな。
枯れて白くなってるけど、ところどころ鮮やかな紫をしている）

遊陽（デッキに入れておこうっと、エラー吐いたら抜けばいいよね）ｽｯ



そうして、ゲームセンターの外へと出てきた2人。

ヒロ「さて、お前が学校来ないせいで、お前とデュエルすんのも随分久しぶりだな」

遊陽「ルールも変わったしね。大丈夫？ ちゃんと回せる？」

ヒロ「お前に心配される筋合いはないね。んじゃ、早速！」

「「デュエル！！」」

HIRO LP4000
YUHI LP4000

遊陽（あっ、このカードが……）

ヒロ「先行は俺が頂く。俺は手札から魔法カード『増援』を発動！
　　　俺はデッキから『早すぎた尖兵』を手札に加えるぜ」

早すぎた尖兵　レベル2　光
戦士族／効果
このカード名の効果はデュエル中１度しか使用できない。①：自分の先行１ターン目に発動できる。このターン、自分はバトルフェイズを行うことができる。この効果を発動したターン、このカード以外のモンスターは攻撃できない。
攻撃力 800　守備力 800

ヒロ「手札から『切り込み隊長』を召喚！」

切り込み隊長「ハッ！」☆2 ATK1200

ヒロ「切り込み隊長の効果発動！ 手札から、早すぎた尖兵を特殊召喚する！」

『切り込み隊長』が剣を掲げると、小さな剣と盾を構えた小柄な兵士が現れた。

早すぎた尖兵「ハァッ！」☆2 ATK800

ヒロ「さらに手札から『戦士の封札剣』を早すぎた尖兵に装備する！
　　　戦士の封札剣を装備したモンスターの攻撃力は700ポイントだけアップする！」

早すぎた尖兵「セイッ！」ATK1500

戦士の封札剣　装備魔法


ヒロ「さらに早すぎた尖兵の効果発動！ こいつは先行１ターン目から攻撃できる！
　　　バトルだ、早すぎた尖兵でダイレクトアタック！」

遊陽「先行１ターン目から！？ きゃっ！」LP2500

ヒロ「さらに、装備モンスターがダイレクトアタックで相手にダメージを与えたことで、戦士の封札剣の効果も発動！
　　　このカードを墓地へ送り、相手の手札をランダムに１枚除外する！」

『早すぎた尖兵』の投げた剣が、遊陽の手札に突き刺さって飛んでいく。

ザシュッ！

遊陽「ああっ！？」

早すぎた尖兵 ATK800

ヒロ「俺はカードを１枚セットして、ターンエンドだ！」

遊陽「私のターン！ ドロー！」

遊陽「私は『翻弄するエルフの剣士』を召喚！」

翻弄するエルフの剣士「ハァ！」 ☆4 ATK1400

遊陽「そしてそのままバトル！ 翻弄するエルフの剣士で切り込み隊長を攻撃！」

翻弄するエルフの剣士 ATK1400 → 切り込み隊長 ATK1200

ヒロ「チッ……だがまあ仕方ないな」LP3800

遊陽「私はカードを２枚伏せてターンエンド！」

ヒロ「エンドフェイズ、リバースカード・オープン！
　　　トラップ発動、『トゥルース・リインフォース』！！」

遊陽「トゥルース・リインフォース！？」

ヒロ「このトラップはデッキからレベル2以下の戦士族モンスターを
　　　特殊召喚する代わりに、そのターンの戦闘を放棄するカード。
　　　だがお前のターンに発動すればそのリスクはなくなる！
　　　現れろ、『カイザー・サクリファイス』！！」

カイザー・サクリファイス「ウオォァ！」 ☆2 DEF100

HIRO LP3400 手札1
YUHI LP2500 手札3

ヒロ「さあ行くぜ、俺のターン！」ﾋﾞｯ

ヒロ「俺は、早すぎた尖兵とカイザー・サクリファイスをリリースする！」

遊陽「……っ！」

ヒロ「永遠の伝説となる戦士よ、その決して消えぬ魂をもって敵兵を殲滅せよ！
　　　アドバンス召喚！ レベル8、『不滅の軍神』！」

不滅の軍神「グオォォ！」☆8 ATK3000

現れたのはボロボロの迷彩服を身にまとった兵士。
全身泥まみれで、両腕に銃を抱えている。
片脚には爆弾が括りつけられていた。

不滅の軍神　レベル8　光
戦士族／効果
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合に発動できる。このカードを破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。②：このカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する。その後、相手フィールドのカードを１枚選んで破壊する。
攻撃力 3000　守備力 2500

ヒロ「リリースされたカイザー・サクリファイスは俺の手札に戻る。」

ヒロ「さらに、手札から『補給部隊』を発動！
　　　そして不滅の軍神の効果で自身を破壊し、補給部隊の効果でデッキから１枚ドローする！」

ヒロ「俺はこれでターンエンド！
　　　エンドフェイズ時、不滅の軍神はその効果で復活し、さらに相手フィールドのカードを１枚破壊する！
　　　俺が破壊するのは、翻弄するエルフの剣士！」

不滅の軍神「デアッ！」ATK3000

ドカァァン！

翻弄するエルフの剣士「グアアッ！」

遊陽「私のモンスターが破壊されたことで、トラップカード、『エルフ・テレパシー』を発動！
　　　破壊されたモンスターよりレベルの高いエルフをデッキから特殊召喚する！」

エルフ・テレパシー　通常罠
①：自分フィールドのモンスターが破壊された場合に発動できる。そのモンスターよりレベルの高い「エルフ」モンスター１体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、表示形式を変更できない。

遊陽「私が特殊召喚するのは、『エルフ・ソーサラー』！」

エルフ・ソーサラー「ハァッ！」☆7 ATK2500

緑を基調とした、魔法使いらしい服装のモンスター。
枝を加工したような杖を持っていて、
身体のところどころには蔦を連想させるような紋が描かれている。

エルフ・ソーサラー　レベル7　光
魔法使い族／効果
このカード名の効果はデュエル中に１度しか使用できない。①：墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の通常魔法カード１枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
攻撃力 2500　守備力 1800

ヒロ「俺は……これでターンエンド」

遊陽「私のターン！」ﾋﾞｯ

遊陽「私は『一時休戦』を発動。
　　　さらにカードを１枚セットして、ターンエンド……！」

ヒロ「メインフェイズ終了前、不滅の軍神の効果発動！ 不滅の軍神を破壊する！
　　　そして補給部隊の効果でドローだ！」

ヒロ「さらにエンドフェイズ、不滅の軍神の軍神が復活し、このターンにセットされたカードを破壊する！」

遊陽「そうはさせない！ 永続トラップ、『エルフの守護術』発動！
　　　魔法使い族のエルフがフィールドに存在する場合、私のフィールドのエルフ以外の代わりにこのカードにカウンターを置く！」

『不滅の軍神』が仕掛けた爆弾の爆発は、『エルフ・ソーサラー』の杖が放った光に吸収される。

エルフの守護術　永続罠
①：自分フィールドに魔法使い族の「エルフ」モンスターが存在し、自分フィールドの「エルフ」モンスター以外のカードが破壊される場合、代わりにこのカードに守護術カウンターを１つ置く。②：このカードに守護術カウンターが２つ置かれた時にこのカードは破壊される。

HIRO LP3800 手札3
YUHI LP2500 手札3

ヒロ「受けに回ってばっかじゃ勝てないぜ？
　　　アーケードデュエルってのはこんなにレベルの低いもんなのか？」

遊陽「うう……っ」

ヒロ「だがそのガードもさっさとぶち壊してやる！
　　　俺のターン、ドロー！」

ヒロ「不滅の軍神の効果を使うには、俺はモンスターを場に出せない。
　　　よってそのままバトル！ 不滅の軍神でエルフ・ソーサラーを攻撃！」

遊陽「この瞬間、デッキから『ダンディライオン』を墓地へ送り、
　　　永続トラップ『杜の化身-アイヴィ・ガードナー』を発動！
　　　これで不滅の軍神は攻撃できない！」

杜の化身-アイヴィ・ガードナー　永続罠
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：デッキから植物族モンスター１体を墓地へ送り、相手フィールドの攻撃表示モンスター１体を対象としてこのカードを発動できる。このカードは発動後、通常モンスター（植物族・地・星２・攻０／守2000）となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。このカードがフィールドに存在する限り、その相手モンスターは攻撃できない。②：このカードがフィールドから墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「杜の化身」魔法・罠カード１枚を自分フィールドにセットする。

蔦でできた障壁が、『不滅の軍神』を捕らえようとその蔦を一気に伸ばす。

ヒロ「それは通さない！不滅の軍神の効果で自身を破壊し、その効果を回避させてもらう！」

遊陽「そしてダンディライオンの効果で綿毛トークンが特殊召喚され、
　　　さらにアイヴィ・ガードナーを特殊召喚！」

綿毛トークン ☆1 DEF0
綿毛トークン ☆1 DEF0
アイヴィ・ガードナー「グォォ……」☆2 DEF2000

ヒロ「エンドフェイズへ移行し、墓地から不滅の軍神を蘇生させ、エルフ・ソーサラーを破壊する！
　　　これでエルフの守護術も適用不能となった！」

ドカァァン！

エルフ・ソーサラー「キャアァァッ！」

遊陽「エルフ・ソーサラー……！！」


――目を覚ませ。
我らへと昇華せよ。

P R O C E S S


遊陽（昇華……！）

カッ

ヒロ「……！？
　　　除外されたカードが光りだした！？」

遊陽「破壊されたレベル7のエルフ・ソーサラーの魂が昇華する！」

デュエルディスクの墓地から、青白く輝く『エルフ・ソーサラー』が舞い戻る。
その姿はやがて小さな球となった。

遊陽「我らの世界の聲に耳を澄ませ。その大いなる樹は、果てしない記憶の語り手となる！
　　　プロセス召喚！ 現れろ、レベル7！ 『大いなる記憶の樹』！！」

青白いそれから、枝や根が広がる。幹となる部分がどんどんと膨張する。
根は地の深くまで伸びてゆき、枝は葉の1枚も付けずに格子構造を構成する。
やがて遊陽の前には、形容しがたい色の、美しくも禍々しい樹が出現した。

大いなる記憶の樹「……」☆7 DEF2500

ヒロ「プロセス、召喚……！？」

遊陽「さあ、ここからが私の『再生のデュエル』！ この戦況を覆してみせる！！」