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HOME > 遊戯王SS一覧 > 【DAY5】カゼミネと河清

【DAY5】カゼミネと河清 作:ギガプラント



~あの頃の話~



思えば妙な縁だったと思う。

俺とあの人が出逢ったあの日。
ナンパされている彼女を助けようとして……結局殆ど助けになれなかったあの日。
あの時の再会が無ければ、今とはまるっきり違った人生を歩んでいたに違いない。



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俺「なぁ、俺とまたデュエルしてくれないか?」


不良3人をあっさり退けた後。
彼女が大会で俺を負かしたデュエリストであった事に気づいた俺は、リベンジを果たすべく直ぐにそう伝えた。


彼女は頭に?マークを浮かべるように返した。


彼女「『また』って。私達何処かでデュエルしたことあったかな?」

彼女「あ、でも確かにキミどこかで見た事あるような……えーっとどこだったけ?」

彼女は俺を覚えてはいないらしい。
まぁ無理も無いだろう。大会で一度闘っただけの相手だ。普通は一々顏なんて覚えている訳がない。

彼女「とりあえず名前から聞いてもいいかな?」

俺「あぁ…急にすまないな、俺は三宅蘭次郎。一応出美田(いずみだ)高校のデュエル部だ。」

といっても頼まれたから助っ人をしているだけで、事実上ただの幽霊部員ではあるのだが。

彼女「出美田高校……あぁ~あの時の相手校か!どうりで見覚えがあったわけだね。」

三宅「そんで、こないだの全日本高校デュエル大会予選で……その、アンタに負けてる…。」

自分で負けたことを改めて口にするのはなんというか…屈辱的というか妙に気恥しいものがある。
相手が女の子だからってのもあるかもしれないが。


彼女「成程!つまりリベンジマッチがしたいってことね。そういうことなら大歓迎!」


彼女「それじゃ改めて自己紹介するわね。」


勿論俺は彼女の名前を知っている。

初めて負けたあの日から一日たりとも忘れた事は無い。









彼女の名は………













彼女「私は…」


















~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~







































遊路「風峰未来」





















遊路「俺の姉さんだよ。」


三宅「………!」











遊季都(風峰プロの……お姉さん?)



遊路「俺でも美羽でもない…本物のカゼミネがどうして出てこないのか考えてた。」

遊路「此処に来ないにしろ、俺や警察に連絡するくらいはしてもよさそうなものだしな。」

遊路「巻き込まれたくないのか、気づいてないのか……色々考えられるけど、わざわざこんなリスキーな事をするんだ。カゼミネに無視されるような方法だとは思えない。」

遊路「だからもしかしたらだけど…カゼミネが名乗り出ることができない状態なのかなって、そう思った。」

三宅「名乗りでられない…だと?」

~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


みねこ「良かったよぉ……全然動かないって言ってたから、みねこてっきりもうお化けになっちゃったのかと思っちゃった…。」

遊路「はは、お化けになってたら今頃病室にはいないだろうな。」


~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~

遊路(そう…それはもうこの世に存在しない者。)


遊路「そしたら偶然思い当たったんだよな。そんなカゼミネ……姉さんの事を。」

遊路「停電の一件で犯人があの中にいる可能性に辿り着いたから、ダメ元でルナに調べてもらった。」







遊路「あの中で、昔姉さんと関わりがあった人はいないか?ってな。」






遊路「そして辿り着いた。全日本高校デュエル大会の予選、この場所で姉さんと戦ったお前に!」


遊季都(遊路さんのお姉さんと三宅プロが戦った会場……ここが始まりの場所…。)





三宅「てめぇの推理ショーなんざどうでもいい!!」





三宅「こちとら無駄話に付き合ってやる時間はねえんだよ…!」

三宅「御託はいい!さっさとカゼミネを出しやがれ!!」


遊路「っ…!」

その怒鳴り声に遊路は珍しく不快そうに顔をしかめる。



遊季都(え?三宅プロが知らない事って……もしかして…。)





遊路「それができたら………。」


遊路は言葉を呑む。







遊路「…姉さんは来ない。姉さんに代わってお前を倒すのは…俺だ!!!」

デュエルディスクを構える。

三宅「…ケッ!ガキが粋がってんじゃねえ!!」

三宅も同じようにデュエルディスクを突き出す。

三宅「来ねえならてめぇを縛り付けてでも引きずり出すまでだ!!!」

遊路「俺が勝ったら爆弾を棄てて投降しろ。」

三宅「余裕かましてんじゃねえ!!行くぞ!!」





「「デュエル!!」」






三宅「俺のターン!」

三宅「一気に終わらせてやるよ、自分フィールドにモンスターが存在しない時、このカードは手札から守備表示で特殊召喚できる!現れろ!『メルティスケイル・リザード』!」星5・DEF800

三宅「そして俺はメルティスケイル・リザードをリリース!『メルティスケイル・アリゲーター』をアドバンス召喚!」星5・ATK2300

三宅「アリゲーターの効果!召喚成功時、デッキからメルティスケイルモンスター1体を手札に加える!俺は『メルティスケイル・パンゴリン』を手札に加える!」

三宅「更にメルティスケイルモンスターはアドバンス召喚のリリースに使われた時、墓地から守備表示で特殊召喚できる!蘇れ!『メルティスケイル・リザード』!」星5・DEF800

遊季都(前と同じ…一気にレベル5が2体に…!)

三宅「俺はレベル5のメルティスケイル・リザードとメルティスケイル・アリゲーターでオーバーレイ!」



血に飢えた醜き魔竜よ!その身朽ち果てても尚、死せる大地を蹂躙せよ!


エクシーズ召喚!


這い出ろ!『メルティスケイル・ドラゴンゾンビ』!ランク5・ATK2500


三宅「メルティスケイル・ドラゴンゾンビの効果!オーバーレイユニットを1つ使う事で、デッキからメルティスケイルモンスター1体を特殊召喚する!」

三宅「『メルティスケイル・ローチ』を特殊召喚!」星4・DEF1000

三宅「そして俺はカードを3枚セット!ターンエンド!」


ラズベリー「3枚も…!?」

遊季都(冷静さを欠いてるように見えたけど……やっぱりプロデュエリスト…。)


三宅「俺はてめぇなんかどうだっていいんだ……カゼミネを、アイツを倒さなきゃ終われねえ!!」

三宅「アイツが俺に気づかねえ訳が無ぇんだ!!今もどっかから見てんじゃねえのか?そんなに俺が怖くなったか!?そんな腰抜けに成り下がっちまったのかぁ!!」


遊路「……知らないからって言っていい事と悪い事があるぞ。」


三宅「んだとコラァ!?さっきから聞いてりゃ何なんだよ、俺が何を知らないってんだ!!」


遊路「…俺のターン。」



遊季都(遊路さん…凄く静かだけど。)

ラズベリー(あれ、内心キレてるわね…。)



遊季都(やっぱり…三宅プロが知らない事は…。)




遊路「俺はスケール9の『赤薔薇の救世者-ラブリー∞』とスケール3の『白薔薇の救世者-ピュアリー∞』をペンデュラムゾーンにセッティング!」




揺れろ、未来を描く軌跡!俺を勝利に導け!



ペンデュラム召喚!!




遊路「現れろ!アルル、シエラ、シグナム、オリハルコン・クロック!」

遊季都(一気に4体も…!)

三宅「っ…!」

遊路「シグナムの効果!コイントスの結果によって相手のモンスターか魔法罠を1枚破壊する。」

遊路「だがPゾーンのラブリーの効果によって、俺は好きな方を選択できる…!」

三宅「通すわけねえだろ!メルティスケイル・ドラゴンゾンビの効果!闇属性モンスターをリリースする事で相手モンスター1体の攻撃力を0にし、効果を無効にする!!」シグナムATK1800→0

メルティスケイル・ローチが掻き消える。

三宅「そして俺は罠カード『終焉の焔恨』を発動!自分フィールドに可能な限り『黒焔トークン』を特殊召喚する!」

三宅「トークン4体を特殊召喚!!」星1・DEF0


遊季都(そんな!それじゃあこのターンあと4回まで効果が使える事になる…!)

遊季都(いくらなんでもこんな状況…。)

遊路「………」

遊季都(いや、遊路さん…全然怯んでない。)


遊路「アルルの効果、デッキから救世者モンスター1体を特殊召喚。」

三宅「む、無効だ!ドラゴンゾンビの効果発動!」ATK700→0

遊路「どうした三宅プロ…!随分ビビってるようじゃないか。」

三宅「うるせえ!!強がってんじゃねえぞ!!俺は後3回効果を無効にできる!お前にこの布陣は突破できねえ!!」

遊路「シエラの効果。救世者のサーチ、または2枚ドローして1枚を捨てる効果だ。」


三宅(どんな大型モンスターが来てもそいつを封じちまえば何も問題は無ぇ…。ならここは…!)


三宅「そいつは通すぜ!好きな方を選びな!」

遊路「俺は2枚ドローし、その後1枚を捨てる効果を選ぶ。」

三宅(なんだこいつのこの気迫……!)



遊路「オリハルコン・クロックの効果発動!このカードとシエラをリリースして融合召喚を行う!」



融合召喚!


『叡智の真救世者-ユグドランZ(ゼウス)』!星8・DEF3000



遊路「ユグドランZの効果!このカードが融合召喚に成功した時、ターン終了時までフィールドのこのカード以外のモンスターの攻撃力は0になる。」

三宅「0になるのはそいつだけだ!ドラゴンゾンビ効果発動!」ATK1000→0

ラズベリー「あーもー厄介ねあのモンスター!」

遊路「更に俺はアルルとシグナムでオーバーレイ!!」



2体の救世者でオーバレイネットワークを構築!


エクシーズ召喚!!


『闘魂の真救世者-ダイブレード・グレートMAX』!! ランク4・ATK2600



遊路「バトルフェイズ…!ダイブレードでドラゴンゾンビを攻撃!!」

遊路「更にダイブレードの効果!エクシーズ素材を1つ使い……」
三宅「通すかよ!ドラゴンゾンビの効果!黒焔トークンをリリースして、ダイブレードの効果を無効にし攻撃力を0にする!」ATK2600→0



遊路「まだだ…!攻撃は中止しメインフェイズ2に移行、俺は魔法カード『無限の可能性(アンリテッド・フューチャー)』を発動!墓地のオリハルコン・クロックとタリスを除外してシンクロ召喚を行う!」



シンクロ召喚!


『運命の真救世者-ギアフェイト・X(クロス)・ドラゴン』!! 星8・ATK2900




三宅「今度はシンクロだと…!?」



遊季都(1ターンで3種の召喚方法を駆使するなんて……。)



遊路「ギアフェイト・X・ドラゴンの効果発動!相手フィールドの表側表示のカードを全て破壊し、この効果で破壊したカードの枚数×500ダメージを相手に与える!」


三宅「無効だ!ドラゴンゾンビの効果……」


遊路「ギアフェイトは相手モンスターの効果対象にならない!」

三宅「なっ!!?」

遊路「絶対に突破できない布陣なんて無い!」


三宅「クソッ!ならダイブレードの効果を無効にする!」ATK2600→0


遊路「だが残りの2体は破壊させてもらう…!」


三宅「がああああ!!」LP8000→7000


遊路「ターンエンド。」


三宅「っ!やってくれんじゃねえか…!」


遊路「……………」












遊路「…そんなに知りたければ教えてやるさ。」






遊路「姉さんは………姉さんはなぁ…!」







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風峰家









Prrrr....Prrrr....


美羽「はい、もしもし……。」



美羽「えぇ!?遊路が病院を!!?」

美羽「いえ、家には帰ってません…はい、はい…。」

美羽「分かりました。はい、失礼します…。」




美羽「もう…何やってるのよ遊路…。」


美羽(無理してなきゃいいんだけど…。)





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三宅「死んだ……?カゼミネが…?」






遊路「お前の経歴を調べたら納得できたよ。」

遊路「姉さんの命日と、お前が修行で海外に渡った時期はほぼ同時だった。だから運悪く知る事が出来なかったんだな……。」


有名選手の訃報とはいえ、海外に渡りバタバタしていた時期なら情報が入らないのも無理はない。


三宅「そんな……馬鹿な…じゃあ俺は、何の為に…。」



遊路「…最初からお前の望みは叶えられないんだ。どんなに悪魔の力を駆使しても。」

遊路「だからもう…こんな馬鹿な事はやめるんだ。」


遊季都(やっぱりそうだったんだ。)

遊季都(三宅プロはずっと、もうこの世にいない人を待ち続けて……。)

ラズベリー「…哀れな奴。」



三宅プロは膝から崩れ落ちる。

三宅「いない……カゼミネが…もう、」





~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~


未来「『大丈夫』と信じれば『大丈夫』はやってくるのです!きっと大丈夫!デュエルには自信あるから!」


未来「君も大丈夫?ごめんなさい巻き込んじゃったみたいで。」


未来「成程!つまりリベンジマッチがしたいってことね。そういうことなら大歓迎!」


未来「あ、でも手加減とかしないからね。遠慮なく行くわよ!」



未来「なんかさ」


未来「君、初めてあった時より良い顔してるね。」


未来「ううん。ただちょっと思っただけ。」













from:風峰未来
Re:
メールありがとう。
ごめんなさい、貴方とはもう会いません。
あのショップにももう二度と顔を出すことはないと思います。
急に一方的にこんなことを言って本当にごめんなさい。もう私の事は忘れてください。

さようなら



~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~




三宅「っくしょう!!なんだよそれ…!!こんな結末があってたまるかよ!!!」

三宅「一方的にあんなメール送りつけてきて……だからこんなことまでしたってのに、死んだ??もういない…?戦えない……?」




三宅「もう……会えない…?」


三宅「ふざけんじゃ……ねぇよ…。なんでそんな…。」

三宅「じゃあどうしろってんだよ…俺にどうしろってんだよカゼミネ…。俺は…俺はただお前に………」

悲し気に呟く三宅の瞳から雫が流れ落ちる。






遊路「お前………まさか姉さんのこと…。」





その時、崩れ落ちた三宅プロの背後が蜃気楼の如く揺らめき始める。

遊季都(あれは…!)

何も無い、いや何も無いように見えていたその場所にはっきりと輪郭が浮かび上がる。
弱弱しく地に臥しかけている三宅とは対照的に堂々とした佇まいでその姿を現したのは、彼の使役する悪魔『ブルーベリー』だった。



















ブルーベリー「立て、ランジロウ。」

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