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第24話 ”本物” 作:にしん
俺と鍛冶屋さんのエンタメデュエルが思わぬ形で終わり、俺は入場口裏の待機室で最後に出てきた魔剣について考える。あれはダークエッジの真の姿という感じだった。だけどそれよりも、あの魔剣も俺の覇王烈竜と同じく“本物”だということだ。
あの後、団長の粋な計らいにより観客を落ちつかせ、デュエル大会を続行することができている。今まさに舞台ではデュエルで盛り上がっているようだ。
そんな中、翔くんやローラさん、ミミカちゃんや待機中の所属デュエリストたちが心配してくれていた。あの恐ろしい魔剣を最も近くで見たデュエリストだからだ。俺は団長による強制サレンダーのおかげで大丈夫だったのを伝えたものの、ローラさんとミミカちゃんがすごい心配していた。
「ソリッドビジョンで実体を持つとはいえ、あんなカードもあるなんてね・・・あれほど強烈なカードなら少なからず影響を及ぼしているはずなんだけど、ホントに大丈夫なの?」
「ホントに大丈夫ですって。ほら、ぴんぴんしてr」
「虹くん少しつらそうな顔してるよぉ、ホントにホントに大丈夫なの?」
「これはただエンタメデュエルで疲れただけだって・・・」
「システムエラーは出てないのにあんなことが起きたんだしやっぱりホントは大丈夫じゃなかったり・・・」
そんなこんなでこの2人を安心させるまで数分かかったところで、ローラさんが今回の魔剣について興味を持っていた。
「ねえ虹くん。さっきのあの“魔剣”って・・・覇王烈竜と同じ感じがしたんだけど何か関係してる?」
「うーん、多分“本物”だから、かもしれません」
「“本物”かぁ・・・だとしたら相当やばいカードなんだ。何だろう、今のソリッドビジョンシステムでも本物っぽくできてるんだけど、“本物”をソリッドビジョンで出すって感じじゃなかった。“本物”そのものがソリッドビジョンとデュエルシステムに干渉して出てきていた。ということなのかな・・・でも、覇王烈竜の時とは微妙に違う」
なるほど。カードにインプットされたモンスターが表現されるのではなく、本物がインプットされたカードが逆にソリッドビジョンに干渉するのか。分かりやすくするとデュエルディスクによってカードの封印を一時的に解除して出てきたってことか。
「どういうことなの?ローラさん」
「例えば虹くんの覇王烈竜。あの竜は元々本当に実在していたモンスターがカードに封印されたって感じなんだと思う。んで、私やミミカちゃんのモンスターは作られたモンスターが封印されたカードってこと」
「???」
ミミカちゃんには理解できていないようだった。
「オレのRRも後者ってことだな。本物は昔に活躍した「黒咲 隼人」って人が持ってる」
「黒羽くんの言った感じね。この世界のカードには3パターンの作られ方があるの。まずは虹くんの覇王烈竜みたいに実際に存在していたモンスター、次は黒羽くんのRRみたいな元々実際に存在していたけどそのデータを複製してレプリカにしたもの、そしてミミカちゃんのチアちゃんたちみたいなミミカちゃんのために作られた架空のモンスター。それらを全てKC社がソリッドビジョンで実体化できるようにしたって聞いてるわ」
最初のパターンは俺はいつどこで覇王烈竜を手に入れたかは分からないけど、鍛冶屋さんは自分で魔剣を集めていた。大抵のカードはI2社が作って販売しているらしいけど、ミミカちゃんのチアブルームみたいに出回ってないカードもあるとするとI2社以外でもカードを作っている人がいるかもしれない。
「あ、ミミカちゃんのチアちゃんたち作ったの私とモニカさんだから」
「だよ~」
「マジか」
とすると翔くんのRRは買いそろえたものなのだろう。
「まぁ“本物”については虹くんの覇王烈竜を見た時から興味を持ったんだけど、調べるあてがないんだよねー。今度暇な日にその竜のカード解析させてよ」
「ま、まぁ危害なければいいと思う・・・」
「やった。あとは鍛冶屋さんにも・・・」
話をしているうちに翔くんの出番になった。舞台が静かになり、所属デュエリストが戻ってきた時にローラさんが思い出したかのように入場口のカーテンを少しめくって入った。
「次、黒羽くんだよー」
「んじゃ、遊飛の分まで楽しんでくるぜ」
俺は出番が終わったので腹ごしらえに食堂へ行く。まだサーカスのデュエル大会がやっているからか客はいなかった。時間は晩飯にはちょうどいい時間。一応食堂にもサーカスの様子が見れるテレビがいくつかあるものの、やっぱり生で見たいんだろうな。
俺がテレビの前の席に座ると、厨房から1人のシェフの格好をした女性が現れた。確か料理長のサラさん。
「あら、確か新人の・・・」
「虹 遊飛です」
「そうそう、虹くんね。いらっしゃい。多分紹介されているとは思うけど、私がこの食堂の料理長のサラ=ティアラ。よろしくね」
礼儀正しい仕草と優しい口調のサラさん。なんだかおっとりしていそうな人だ。だけど料理はおいしかったし腕前はすごいのだろう。腰のあたりを見るとフライパン型のデュエルディスクがあった。
「怖いことがあったみたいね。でも流石はメル団長。一気に立て直した」
「ホントにすごいです。いつか俺も団長みたいにみんなを楽しませたいからここに入りましたし」
「ふふ、エンタメっていうのは真似するものじゃないのよ?」
「それは・・・知ってます。俺は俺なりのエンタメで楽しませたい」
「流石、大型新人って言われるだけあるわね。じゃ、私も虹くんを私なりのエンタメで笑顔にさせちゃおうかな。何が食べたい?」
サラさんはデュエルディスクであるフライパンをまるで料理をするかのように前に出し、具材を入れるようにカードをセットすると、ソリッドビジョンによってメニュー表が浮かび上がった。EMSカードによる変装でもそうだったけどデュエル以外でも使えるんだな。
「じゃあ・・・パスタセットで!」
「はい。じゃあ少し待っててね」
数分後。厨房を覗くとまるでプロのような包丁さばきと調理や仕上げを素早くかつ的確に、そして華やかに演出していた。流石はエンタメサーカスの料理長。目と動きが本気だ。これは熱い。
そして完成された料理が俺の目の前に運ばれた。ペペロンチーノにミニチーズフォンデュ、そしてミニイタリアンサラダ。どれも輝いて見える。
「団員および所属デュエリストは報酬や給料から食費を引かせてもらってるから、色々気にせずに召し上がってね」
「じゅるり・・・いただきます!」
リアルでよだれが出るレベルの料理。俺は今日の出来事やお金、そしてテレビに映る様子も忘れて無我夢中でサラさんの料理を食べた。
・・・
「ごちそうさま!」
「はい。お味はいかが?」
「超おいしかったです!流石料理長!」
「うふふ、ありがとう。ミミカちゃんは何にする?」
ミミカちゃん?サラさんが向けている、俺が向いている方向の反対側への視線の方向を見ると、いつの間にかミミカちゃんが隣に座っていた。本当にいつの間に。
「あたしはハンバーグセットでお願いします☆」
「はい。少し待っててね」
そして再び厨房という名の戦場に行くサラさん。
「ミミカちゃん、いつの間に・・・」
「えへへー。虹くんが食べ終わった頃かな?あたしも出番終わったから来たんだ~」
「そうなんだ」
「・・・・・」
笑顔だったミミカちゃんは突然浮かない顔をする。
「ホントは虹くんのことが心配だったから・・・探してた」
「俺?俺はこの通り元気だけど」
「うん・・・でも、心配してるのはホントだけどホントのホントの理由があるの」
ミミカちゃんはサーカスの舞台が映っているテレビを指差す。特に変わったことはない。翔くんのRRがいい感じに飛行しているシーンだ。
「団長と教祖がサレンダーさせたその時ね、今はソリッドビジョンで見えなくしているけど、舞台のあちこちに大きな傷が入ってる」
ミミカちゃんは自分のデュエルディスクであるボンボンを取り出した。一部が欠けている。そしてテレビの映像をよく見ると、入場口にいるローラさんのデュエルディスクや団長のマント、そして天井の一部のライトが斬られていた。気づかなかった。俺は覇王烈竜のカードを取り出す。いつもより力を感じない。恐らく真正面からその衝撃を受けたのだろう。
「ホント、みたいだな」
「だから、ね。虹くんも心配、なんだけど・・・っ、あたし、それを見た瞬間虹くんや竜が傷ついちゃったって思ったら怖くなって・・・っ、ローラさんがすぐに舞台の傷を隠してくれたけど、虹くんが・・・うっ、うわあああぁぁん」
「ミ、ミミカちゃん?」
よほどあの魔剣とその影響が怖かったのか、いや、あの衝撃を覇王烈竜と共に真正面から受けた俺を見てしまって怖くなったのか。とにかくミミカちゃんは突然ボンボンに顔をうずめて泣いてしまった。
・・・これが、“本物”の力か。テレビを見る限りいつも通りのサーカスデュエル大会の様子だが、あの一瞬で団長が、教祖が、そしてローラさんが動いてくれたのか。だけど、その一瞬で魔剣の力もばらまかれた。それを覇王烈竜が俺を護ってくれた。強大な力を受けたことで俺や覇王烈竜が斬られたという嫌なイメージが浮かんだのだろう。
だけど、覇王烈竜も”本物”だ。でも、昔暴れてた頃のように、あの魔剣のように傷つけることはなかったし、そもそも俺にはできない。確かにローラさんの言う通り”本物”とは微妙に違うのか?
「でっ、でも、虹くん大丈夫だった・・・よかった・・・ホントに、よかった。みんなも大丈夫でよかった・・・」
ミミカちゃんは何とか自分を安心させようとしているのか、笑っているけどやっぱり涙が止まらないようだ。
・・・つまりこれは覇王烈竜はかなりのダメージを受けたっぽいな。しばらく休ませてやろう。デッキから抜いて布団でもかぶせてやろうか。
しばらくしてミミカちゃんにサラさんが料理を持ってきた。会話を聞いていたのだろうか。サラさんはミミカちゃんの頭を優しく撫でた。
「メル団長とローラさんが何とかしてくれるから、今はおいしい料理を食べて元気になってね。ミミカちゃんは元気じゃないと、みんな落ち込むわ」
「えへへ・・・心配しすぎて泣いちゃった☆虹くんもありがとっ。いただきま~す」
多分、ミミカちゃんの「誰も傷をつけさせない」デュエルと同じようにみんなのことを考える性格が今の心配に繋がったんだろう。ハンバーグをほおばるその顔は涙もなく、眩しいぐらいの笑顔になっていた。
あの後、団長の粋な計らいにより観客を落ちつかせ、デュエル大会を続行することができている。今まさに舞台ではデュエルで盛り上がっているようだ。
そんな中、翔くんやローラさん、ミミカちゃんや待機中の所属デュエリストたちが心配してくれていた。あの恐ろしい魔剣を最も近くで見たデュエリストだからだ。俺は団長による強制サレンダーのおかげで大丈夫だったのを伝えたものの、ローラさんとミミカちゃんがすごい心配していた。
「ソリッドビジョンで実体を持つとはいえ、あんなカードもあるなんてね・・・あれほど強烈なカードなら少なからず影響を及ぼしているはずなんだけど、ホントに大丈夫なの?」
「ホントに大丈夫ですって。ほら、ぴんぴんしてr」
「虹くん少しつらそうな顔してるよぉ、ホントにホントに大丈夫なの?」
「これはただエンタメデュエルで疲れただけだって・・・」
「システムエラーは出てないのにあんなことが起きたんだしやっぱりホントは大丈夫じゃなかったり・・・」
そんなこんなでこの2人を安心させるまで数分かかったところで、ローラさんが今回の魔剣について興味を持っていた。
「ねえ虹くん。さっきのあの“魔剣”って・・・覇王烈竜と同じ感じがしたんだけど何か関係してる?」
「うーん、多分“本物”だから、かもしれません」
「“本物”かぁ・・・だとしたら相当やばいカードなんだ。何だろう、今のソリッドビジョンシステムでも本物っぽくできてるんだけど、“本物”をソリッドビジョンで出すって感じじゃなかった。“本物”そのものがソリッドビジョンとデュエルシステムに干渉して出てきていた。ということなのかな・・・でも、覇王烈竜の時とは微妙に違う」
なるほど。カードにインプットされたモンスターが表現されるのではなく、本物がインプットされたカードが逆にソリッドビジョンに干渉するのか。分かりやすくするとデュエルディスクによってカードの封印を一時的に解除して出てきたってことか。
「どういうことなの?ローラさん」
「例えば虹くんの覇王烈竜。あの竜は元々本当に実在していたモンスターがカードに封印されたって感じなんだと思う。んで、私やミミカちゃんのモンスターは作られたモンスターが封印されたカードってこと」
「???」
ミミカちゃんには理解できていないようだった。
「オレのRRも後者ってことだな。本物は昔に活躍した「黒咲 隼人」って人が持ってる」
「黒羽くんの言った感じね。この世界のカードには3パターンの作られ方があるの。まずは虹くんの覇王烈竜みたいに実際に存在していたモンスター、次は黒羽くんのRRみたいな元々実際に存在していたけどそのデータを複製してレプリカにしたもの、そしてミミカちゃんのチアちゃんたちみたいなミミカちゃんのために作られた架空のモンスター。それらを全てKC社がソリッドビジョンで実体化できるようにしたって聞いてるわ」
最初のパターンは俺はいつどこで覇王烈竜を手に入れたかは分からないけど、鍛冶屋さんは自分で魔剣を集めていた。大抵のカードはI2社が作って販売しているらしいけど、ミミカちゃんのチアブルームみたいに出回ってないカードもあるとするとI2社以外でもカードを作っている人がいるかもしれない。
「あ、ミミカちゃんのチアちゃんたち作ったの私とモニカさんだから」
「だよ~」
「マジか」
とすると翔くんのRRは買いそろえたものなのだろう。
「まぁ“本物”については虹くんの覇王烈竜を見た時から興味を持ったんだけど、調べるあてがないんだよねー。今度暇な日にその竜のカード解析させてよ」
「ま、まぁ危害なければいいと思う・・・」
「やった。あとは鍛冶屋さんにも・・・」
話をしているうちに翔くんの出番になった。舞台が静かになり、所属デュエリストが戻ってきた時にローラさんが思い出したかのように入場口のカーテンを少しめくって入った。
「次、黒羽くんだよー」
「んじゃ、遊飛の分まで楽しんでくるぜ」
俺は出番が終わったので腹ごしらえに食堂へ行く。まだサーカスのデュエル大会がやっているからか客はいなかった。時間は晩飯にはちょうどいい時間。一応食堂にもサーカスの様子が見れるテレビがいくつかあるものの、やっぱり生で見たいんだろうな。
俺がテレビの前の席に座ると、厨房から1人のシェフの格好をした女性が現れた。確か料理長のサラさん。
「あら、確か新人の・・・」
「虹 遊飛です」
「そうそう、虹くんね。いらっしゃい。多分紹介されているとは思うけど、私がこの食堂の料理長のサラ=ティアラ。よろしくね」
礼儀正しい仕草と優しい口調のサラさん。なんだかおっとりしていそうな人だ。だけど料理はおいしかったし腕前はすごいのだろう。腰のあたりを見るとフライパン型のデュエルディスクがあった。
「怖いことがあったみたいね。でも流石はメル団長。一気に立て直した」
「ホントにすごいです。いつか俺も団長みたいにみんなを楽しませたいからここに入りましたし」
「ふふ、エンタメっていうのは真似するものじゃないのよ?」
「それは・・・知ってます。俺は俺なりのエンタメで楽しませたい」
「流石、大型新人って言われるだけあるわね。じゃ、私も虹くんを私なりのエンタメで笑顔にさせちゃおうかな。何が食べたい?」
サラさんはデュエルディスクであるフライパンをまるで料理をするかのように前に出し、具材を入れるようにカードをセットすると、ソリッドビジョンによってメニュー表が浮かび上がった。EMSカードによる変装でもそうだったけどデュエル以外でも使えるんだな。
「じゃあ・・・パスタセットで!」
「はい。じゃあ少し待っててね」
数分後。厨房を覗くとまるでプロのような包丁さばきと調理や仕上げを素早くかつ的確に、そして華やかに演出していた。流石はエンタメサーカスの料理長。目と動きが本気だ。これは熱い。
そして完成された料理が俺の目の前に運ばれた。ペペロンチーノにミニチーズフォンデュ、そしてミニイタリアンサラダ。どれも輝いて見える。
「団員および所属デュエリストは報酬や給料から食費を引かせてもらってるから、色々気にせずに召し上がってね」
「じゅるり・・・いただきます!」
リアルでよだれが出るレベルの料理。俺は今日の出来事やお金、そしてテレビに映る様子も忘れて無我夢中でサラさんの料理を食べた。
・・・
「ごちそうさま!」
「はい。お味はいかが?」
「超おいしかったです!流石料理長!」
「うふふ、ありがとう。ミミカちゃんは何にする?」
ミミカちゃん?サラさんが向けている、俺が向いている方向の反対側への視線の方向を見ると、いつの間にかミミカちゃんが隣に座っていた。本当にいつの間に。
「あたしはハンバーグセットでお願いします☆」
「はい。少し待っててね」
そして再び厨房という名の戦場に行くサラさん。
「ミミカちゃん、いつの間に・・・」
「えへへー。虹くんが食べ終わった頃かな?あたしも出番終わったから来たんだ~」
「そうなんだ」
「・・・・・」
笑顔だったミミカちゃんは突然浮かない顔をする。
「ホントは虹くんのことが心配だったから・・・探してた」
「俺?俺はこの通り元気だけど」
「うん・・・でも、心配してるのはホントだけどホントのホントの理由があるの」
ミミカちゃんはサーカスの舞台が映っているテレビを指差す。特に変わったことはない。翔くんのRRがいい感じに飛行しているシーンだ。
「団長と教祖がサレンダーさせたその時ね、今はソリッドビジョンで見えなくしているけど、舞台のあちこちに大きな傷が入ってる」
ミミカちゃんは自分のデュエルディスクであるボンボンを取り出した。一部が欠けている。そしてテレビの映像をよく見ると、入場口にいるローラさんのデュエルディスクや団長のマント、そして天井の一部のライトが斬られていた。気づかなかった。俺は覇王烈竜のカードを取り出す。いつもより力を感じない。恐らく真正面からその衝撃を受けたのだろう。
「ホント、みたいだな」
「だから、ね。虹くんも心配、なんだけど・・・っ、あたし、それを見た瞬間虹くんや竜が傷ついちゃったって思ったら怖くなって・・・っ、ローラさんがすぐに舞台の傷を隠してくれたけど、虹くんが・・・うっ、うわあああぁぁん」
「ミ、ミミカちゃん?」
よほどあの魔剣とその影響が怖かったのか、いや、あの衝撃を覇王烈竜と共に真正面から受けた俺を見てしまって怖くなったのか。とにかくミミカちゃんは突然ボンボンに顔をうずめて泣いてしまった。
・・・これが、“本物”の力か。テレビを見る限りいつも通りのサーカスデュエル大会の様子だが、あの一瞬で団長が、教祖が、そしてローラさんが動いてくれたのか。だけど、その一瞬で魔剣の力もばらまかれた。それを覇王烈竜が俺を護ってくれた。強大な力を受けたことで俺や覇王烈竜が斬られたという嫌なイメージが浮かんだのだろう。
だけど、覇王烈竜も”本物”だ。でも、昔暴れてた頃のように、あの魔剣のように傷つけることはなかったし、そもそも俺にはできない。確かにローラさんの言う通り”本物”とは微妙に違うのか?
「でっ、でも、虹くん大丈夫だった・・・よかった・・・ホントに、よかった。みんなも大丈夫でよかった・・・」
ミミカちゃんは何とか自分を安心させようとしているのか、笑っているけどやっぱり涙が止まらないようだ。
・・・つまりこれは覇王烈竜はかなりのダメージを受けたっぽいな。しばらく休ませてやろう。デッキから抜いて布団でもかぶせてやろうか。
しばらくしてミミカちゃんにサラさんが料理を持ってきた。会話を聞いていたのだろうか。サラさんはミミカちゃんの頭を優しく撫でた。
「メル団長とローラさんが何とかしてくれるから、今はおいしい料理を食べて元気になってね。ミミカちゃんは元気じゃないと、みんな落ち込むわ」
「えへへ・・・心配しすぎて泣いちゃった☆虹くんもありがとっ。いただきま~す」
多分、ミミカちゃんの「誰も傷をつけさせない」デュエルと同じようにみんなのことを考える性格が今の心配に繋がったんだろう。ハンバーグをほおばるその顔は涙もなく、眩しいぐらいの笑顔になっていた。
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| 116 | 第3話 EMS入門 前編 | 1011 | 3 | 2018-09-08 | - | |
| 102 | 第4話 EMS入門 後編 | 938 | 3 | 2018-09-10 | - | |
| 125 | 第5話 俺の覇王烈竜 | 971 | 1 | 2018-09-13 | - | |
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| 162 | 第8話 初陣:アイドル | 1081 | 2 | 2018-09-29 | - | |
| 154 | 第9話 初陣:俺の竜たち | 953 | 0 | 2018-10-02 | - | |
| 141 | 第10話 初陣:全力のエンタメ | 941 | 0 | 2018-10-06 | - | |
| 131 | 第11話 黒フード | 899 | 0 | 2018-10-12 | - | |
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