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第12話 続・黒フード 作:にしん
「さっすが遊飛だぜ!」
「遊飛くんさすが」
「あ、ありがとう、虹くん」
「か、勝った・・・ぜ?」
VS黒フードはあっさりとデュエル終了。俺が調子乗って1VS1で挑んだけどあっさり。俺は手札事故を起こしていたものの黒フードの戦術がワンパターンであり、更には禁止・制限カードすら見ることなく、最終的には覇王烈竜を出した瞬間全てが終わった。
とまぁ圧勝だったわけだが、とりあえずはデュエルディスクに搭載されている通報ボタンを押しておこう。悪者とデュエルをした時にデュエルポリスを呼ぶ時に使うボタン。
デュエルが終わり、元気な方の友人が一歩前に出た。
「おいおっさん。なんで賭けデュエルしてたんだ?」
「俺はおっさんじゃねえっ!・・・ちっ、俺もお前らみたいに若けりゃあな。最強のデュエリストを目指していたんだ」
黒フードのおっさんは肩にかけていたバッグを放り投げる。地面に落ちた衝撃で開いた蓋の中にはカードがいっぱいはいっていた。恐らく今まで賭けデュエルで奪ってきたカードなのだろう。敗北し、全てをあきらめたかのように滑り台に座る。
「金がなくて、こうするしかなかったんだ・・・」
「「「・・・・・」」」
確かにデュエリストを目指すならお金は必要。俺だって親にデュエルディスクを買ってもらって、こつこつ貯めたお小遣いでカードを買って、デッキを組んで・・・
あれ?俺、いつこの覇王烈竜と会ったんだっけ?デュエリストを目指した時はあのサーカスに憧れて、オッドアイズに一目ぼれして、みんなのデッキ構成を調べて・・・でも、<覇王>だけは禁忌のカードだからどこも取り扱っていなかった。
とりあえず思い出せることは、俺がこの覇王烈竜のカッコよさに一目ぼれしたということだ。帰ったら手に入りにくいカードをまとめて買ってくれたお父さんに聞いてみよう。
通報によってデュエルポリスが到着し、デュエルログや奪ったカードを確認して逮捕された。奪ったカードはカードに残った情報から持ち主を特定して返すことになった(古賀さんのホープはすぐに返してもらった)。なんだかヒーローになった気分だ。俺たちはデュエルの話をしながら帰路に就いた。
「ただいまー!」
「おかえり、遊飛」「おかえり」
帰宅する。両親の声がリビングの方から聞こえた。部屋に荷物を置いて、早速覇王烈竜についてお父さんに聞いてみることにした。
「お父さん」
「ん?どうした、遊飛」
「俺の・・・覇王烈竜って、どこで手に入れたんだ?」
突然の俺の質問にお父さんはもちろん、お母さんも少しびっくりする。そして真剣な表情になる。
「・・・今は教えることができない」
お父さんの答えははぐらかされるかのように秘密にされる。それに続けてお母さんも「遊飛にはそれを知るのはまだ早いわ。子供だもの」と。どうやら秘密があるようだけど、俺が質問を続けても有効な答えは出なかった。俺が部屋に戻ろうとすると、お父さんが呼び止める。
「これだけは言っておくよ。その覇王烈竜は、遊飛にとって大切なカードだ。その竜でみんなを笑顔にするんだろう。遊飛にしかできないことだから、大切にしなさい」
「お父さん・・・」
答えが得られず悶々としながら部屋に戻る。デッキケースのEXデッキ枠から3枚のカードを取り出す。虹色の虹彩で輝く覇王烈竜。エンタメ向けに生まれ変わったのだけれど、俺はこいつといつ出会ったのかを思い出せない。
ふとメインデッキ枠から1枚のカードが目に入る。俺のEMSカードだ。
「ふへへ、カッコいい衣装だぜ・・・あっ」
そうだ、効果を読んでおこう。すっかり忘れていた。
<EMS 虹彩烈竜・遊飛>:炎属性:星7:エンタメ族:攻2000/守1500
このカード名のモンスターはフィールドに1体しか存在できない。このカードをX素材とする時、ドラゴン族XモンスターしかX召喚できない。このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれかしか使用できない。
①:自分フィールドにドラゴン族ランク7Xモンスターが存在する場合、手札を1枚捨てることでこのカードを手札から特殊召喚できる。
②:手札のこのカードのみがP召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル7Pモンスター1体を手札に加える。
③:このカードはフィールドから離れる時、またはXモンスターからX素材として取り除かれて墓地に送られる場合に持ち主のデッキに戻す。
「覇王烈竜につなげるって感じだな。俺とアブソリュートでエクシーズ召喚するのだろう。2の効果は別の用途でも使えそうだ。けど・・・やっぱり覇王烈竜を出さないとな!」
燃え上がるような朱色のマントが付いたヒーローっぽい恰好。案外メテオバーストとエクシーズ召喚するのもいいかもしれない。アブソリュートの効果でオッドアイズ蘇生できるし。
「っ!?」
突然頭にイメージが流れ込む。何だ?何だか燃え上がるような・・・だけど、それは盛り上げる為のものじゃない気がする。なんだかこのイメージは嫌な気分だ。頬を叩くとそのイメージは吹き飛んだ。
「何だったんだ・・・?」
翌日。今日は土曜日。学校やサーカスは休みだ。スマホを見ると、リンクルの通知が2件入っていた。
☆Tips
リンクルとは:いわゆるSNSである。チャットと通話ができる。グループを作成してグループでチャットもすることができる便利なアプリ。
片方は友人。いつものカードショップいるから来てねという内容。今日はどうやらティーチングサービスをやっているらしい。そしてもう片方は・・・
「ん?いつこの連絡先入れたっけ」
通知の名前には「ミミカ=カンナカラー」、冒頭の文字は「おはよ~」と書かれていた。サーカス団チアリーダーのミミカちゃんだ。よく見るとサーカス団連絡用のグループチャットもいつの間にか作られていた。どうやらこれでサーカスの連絡を回すということだな。だけど、ミミカちゃんだけ個別に入っていた。
「も、もしや・・・で、でーと・・・!?い、いや、まだそんな関係じゃ・・・も、もしかしたらデュエルのお誘いか?」
何故かすっごいドキドキする。これはヤバい。俺は恐る恐る開く。
「ミミカだよ☆いきなり連絡ごめんね、というより勝手に連絡先入れちゃってごめんね♪団長さんからの個別連絡について・・・」
「な、なーんだ・・・連絡か」
ドキドキが収まると同時に残念ってほんの少しだけ思う自分がいた。まぁ、まだ1回しかエンタメデュエルしていないし、そんなに話してもいないし、な、仲良くなった確証もないし・・・って俺は何を考えているんだ。連絡の内容を見ないと。
「デビュー戦が放送されてから虹くんがすっごい注目されているの。だから他エンタメ塾などからのお誘いなどいろいろ来ると思うけど、一つだけ注意してほしいのがあるんだって」
「注意・・・?」
「“帝王教”というエンタメ王国と謳っているデュエル教団だよ。気を付けてねっ☆」
帝王教・・・確か<帝王>デッキを使う人が教祖をしている教団。いい噂は聞かないけど、悪い噂も聞かない。というかあれエンタメ系だったのか。神聖な宗教みたいなエンタメデュエルをするのか?何だか変だな。イメージしたらなんだか謎な気持ちになった。
朝飯を済ませていつものカードショップへ行く。
「よう」
「来たか遊飛。店長にアドバイス貰ってデッキ改良したんだ。早速デュエルしようぜ」
「俺も調整したいところだしその後でいいか?」
「しゃーねえなー」
店長主催のティーチングに参加する。いつもの常連さんや見慣れない人など、様々なデュエリストがいた。ふと店の端にあるチラシ置き場に目が行く。
(エンタメ塾とかの宣伝チラシばっかりだなぁ)
その中にはもちろん“メルティオールサーカス団”のチラシもあった。そして、注意してほしいと言われた“帝王教”のチラシもあった。遠くから見る色合いからして確かに神聖な雰囲気っぽい気がしなくもない。
ティーチングを受け、俺は早速デッキを改良してみる。今日の俺の目標は「返し耐性」だ。俺のデッキは速攻故に相手の罠や手札誘発をされる前に決めることに特化した代わりにその対策がほとんどないに等しい。確かミミカちゃんも「詰めが甘かった」けどそれまでは俺のターンでの攻撃や行動を悉(ことごと)く封じていたけど、魔法・罠に対しては対策はしていなかった。つまりミミカちゃんも「返し耐性」は低い。
「遊飛くん。<魔術師>を増やしたらどうかな?」
「魔術師ですか?」
「<星刻の魔術師><ペンデュラムグラフ>をはじめとした<白翼の魔術師><刻剣の魔術師>など、返しに強くなる効果を持つカードが多い。欠点はレベル4主体になるから覇王烈竜は出しにくくなるかもね」
「あー、なるほどー」
レベル4魔術師シリーズを入れると<貴竜の魔術師><幽鬼うさぎ><灰流うらら>などのレベル3チューナーを数枚入れるとデッキを圧迫する。だけど効果や破壊を防いだり1:1~2交換できたり、サーチしたりと返しに強くなる。かといってそれ以外のチューナーやモンスターを採用するとレベルが合わなかったりする。
「ゴブリンドバーグが優秀だしなぁ」
俺のデッキの機動力は展開札となるゴブリンドバーグ。シンクロには貴竜とうさぎ、エクシーズには竜脈とトリオンと役割が決まっているが、サーチや返しに乏しい。それを超展開と速攻ビートダウンで補っているけどデビュー戦みたいにターンがかかることも少なくはなかったりする。
・・・
「よしっ、それなりに改良したぞ」
「おっ、済んだか遊飛。やろうぜ」
「おっしゃ」
友人とテストデュエルをする。一般的な大会と同じく3戦+候補カードを入れ替えながらもう3戦してみる。
「ぐわーっ、負けたぁ」
「でも半々かー」
結果は俺のデッキの回りが悪くなった・・・のかな。炎属性使いの友人の回りが以前より良くなっていたからかも。だけど、この構成では覇王烈竜をすぐには出せなくなっていたということが分かった。
「なぁ、俺のデッキの変わったところって何かある?」
「うーん、いつもの勢いがなかったな。展開が遅くなったんかなぁ」
なるほど確かに。悪い時は覇王烈竜どころかEXデッキからモンスターを出す前に終わった。以前は最低でも自分のターンで数えて2ターン目には1体か2体は出していた。
「中途半端に変えるよりも、軸を変えずにカテゴリすら変えてもいいかもしれないな」
「その方がうまくいくこともあるかもな。オレももうちょっと変えてみるぜ」
この際メインデッキをほぼ魔術師に染めてもいいかもしれないな。ゴブリンドバーグは・・・まぁ考えておこう。
気が付けばお昼。一人の常連さんが俺のエンタメデュエリストへのデビュー祝いとして昼飯をおごってくれることになった。その人も応募はしていたものの、俺が当選したという感じだ。ついでに友人も連れて行ってもらうことになった。
「ありがとうございます!」
「あはは、お礼なんていいよいいよ。僕の分までエンタメしてくれれば助かるからさ。虹くんとのデュエルも楽しいし、いつか僕もエンタメデュエリストになった時にはデュエルしてみたいし」
常連さんに車で連れてこられたのは一軒のラーメン屋。行列ができている。看板にある写真を見るとお腹が鳴る。これはおいしそうだ。いや、絶対おいしいやつだ。
並んでしばらく待つと、二人の少女が店から出てきた。その少女たちは見たことがあった。一人はあの目立つピンクの髪、そしてチアダンサーの衣装・・・というかプライベートでもチアの格好なのか。もう一人は紫のセミロングの髪で私服だけどブラック・マジシャンのイラストがうっすらと入った白衣。ミミカちゃんとローラさんだ。
・・・その二人の背後から迫る、一人の黒いフードの男。なんだ、いやな予感がする。さっきの黒フードはデュエルポリスに連行されたはず。だけど、感じる雰囲気が全く違った。
「先入ってて!後で入る!」
「えっ、遊飛、どこ行くんだ!?」
「虹くん?」
俺は二人と第2の黒フードの後を追いかける。路地裏に入った時、俺の足音に気づいたのか三人が同時にこっちを向いた。黒フードは俺を見て何かを思い出したかのような。そしてミミカちゃんとローラさんは黒フードを見てすぐに俺に向かって走ってくる。
「ん?貴様はもしや・・・」
「「虹くん!?」」
ミミカちゃんとローラさんがデュエルディスクを構えて俺の前に立つ。あれ、黒フードは二人を尾行していたよな、確か。立場逆じゃね?すると、ローラさんが鋭い目つきで黒フードを睨む。
「“帝王教”教祖・・・あんた、また何か企んでたでしょ?」
「虹くんは逃げてっ。ここはあたしたちに・・・」
その瞬間、黒フードは身に着けていたマントを思いっきり広げる。右手には杖型のデュエルディスク。教祖ということは注意すべき組織の人物。一体俺に、いや、ミミカちゃんたちに何をしようとしていたのか。その黒フードは不気味に笑う。
「くっ、はっはっはっは・・・我は何もするつもりはない。我もラーメンを食べて教会に帰ろうとしていただけだ。偶然だよ」
「確かにあんたの教会こっち方面だったわねー」
「気づかなかった・・・」
黒フード・・・教祖は杖をマントの中にしまうと歩き出す。しばらく歩いて目線だけをこちらに向けるように振り向いた。
「「虹 遊飛」だったかな。また会おう」
そう言い残して去っていった。なんだかすごい緊張した。殺伐とした雰囲気だったからか。緊張がほぐれたのか二人はデュエルディスクをしまう。ローラさんはやれやれとする。
「早速目を付けられちゃってるねー、虹くん」
「な、なんでだろ?」
「あたしがリンクル送ったと思うけど、虹くんの竜が大反響なの☆それだけならよかったんだけど・・・」
「あの教祖・・・帝王教だけは要注意!覚えておいてね。あの<覇王>を神として崇めているからもしかしたら虹くんの覇王烈竜を狙われているかも。あいつは過去にもいろいろやっているから」
「狙われている・・・!?」
「遊飛くんさすが」
「あ、ありがとう、虹くん」
「か、勝った・・・ぜ?」
VS黒フードはあっさりとデュエル終了。俺が調子乗って1VS1で挑んだけどあっさり。俺は手札事故を起こしていたものの黒フードの戦術がワンパターンであり、更には禁止・制限カードすら見ることなく、最終的には覇王烈竜を出した瞬間全てが終わった。
とまぁ圧勝だったわけだが、とりあえずはデュエルディスクに搭載されている通報ボタンを押しておこう。悪者とデュエルをした時にデュエルポリスを呼ぶ時に使うボタン。
デュエルが終わり、元気な方の友人が一歩前に出た。
「おいおっさん。なんで賭けデュエルしてたんだ?」
「俺はおっさんじゃねえっ!・・・ちっ、俺もお前らみたいに若けりゃあな。最強のデュエリストを目指していたんだ」
黒フードのおっさんは肩にかけていたバッグを放り投げる。地面に落ちた衝撃で開いた蓋の中にはカードがいっぱいはいっていた。恐らく今まで賭けデュエルで奪ってきたカードなのだろう。敗北し、全てをあきらめたかのように滑り台に座る。
「金がなくて、こうするしかなかったんだ・・・」
「「「・・・・・」」」
確かにデュエリストを目指すならお金は必要。俺だって親にデュエルディスクを買ってもらって、こつこつ貯めたお小遣いでカードを買って、デッキを組んで・・・
あれ?俺、いつこの覇王烈竜と会ったんだっけ?デュエリストを目指した時はあのサーカスに憧れて、オッドアイズに一目ぼれして、みんなのデッキ構成を調べて・・・でも、<覇王>だけは禁忌のカードだからどこも取り扱っていなかった。
とりあえず思い出せることは、俺がこの覇王烈竜のカッコよさに一目ぼれしたということだ。帰ったら手に入りにくいカードをまとめて買ってくれたお父さんに聞いてみよう。
通報によってデュエルポリスが到着し、デュエルログや奪ったカードを確認して逮捕された。奪ったカードはカードに残った情報から持ち主を特定して返すことになった(古賀さんのホープはすぐに返してもらった)。なんだかヒーローになった気分だ。俺たちはデュエルの話をしながら帰路に就いた。
「ただいまー!」
「おかえり、遊飛」「おかえり」
帰宅する。両親の声がリビングの方から聞こえた。部屋に荷物を置いて、早速覇王烈竜についてお父さんに聞いてみることにした。
「お父さん」
「ん?どうした、遊飛」
「俺の・・・覇王烈竜って、どこで手に入れたんだ?」
突然の俺の質問にお父さんはもちろん、お母さんも少しびっくりする。そして真剣な表情になる。
「・・・今は教えることができない」
お父さんの答えははぐらかされるかのように秘密にされる。それに続けてお母さんも「遊飛にはそれを知るのはまだ早いわ。子供だもの」と。どうやら秘密があるようだけど、俺が質問を続けても有効な答えは出なかった。俺が部屋に戻ろうとすると、お父さんが呼び止める。
「これだけは言っておくよ。その覇王烈竜は、遊飛にとって大切なカードだ。その竜でみんなを笑顔にするんだろう。遊飛にしかできないことだから、大切にしなさい」
「お父さん・・・」
答えが得られず悶々としながら部屋に戻る。デッキケースのEXデッキ枠から3枚のカードを取り出す。虹色の虹彩で輝く覇王烈竜。エンタメ向けに生まれ変わったのだけれど、俺はこいつといつ出会ったのかを思い出せない。
ふとメインデッキ枠から1枚のカードが目に入る。俺のEMSカードだ。
「ふへへ、カッコいい衣装だぜ・・・あっ」
そうだ、効果を読んでおこう。すっかり忘れていた。
<EMS 虹彩烈竜・遊飛>:炎属性:星7:エンタメ族:攻2000/守1500
このカード名のモンスターはフィールドに1体しか存在できない。このカードをX素材とする時、ドラゴン族XモンスターしかX召喚できない。このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれかしか使用できない。
①:自分フィールドにドラゴン族ランク7Xモンスターが存在する場合、手札を1枚捨てることでこのカードを手札から特殊召喚できる。
②:手札のこのカードのみがP召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル7Pモンスター1体を手札に加える。
③:このカードはフィールドから離れる時、またはXモンスターからX素材として取り除かれて墓地に送られる場合に持ち主のデッキに戻す。
「覇王烈竜につなげるって感じだな。俺とアブソリュートでエクシーズ召喚するのだろう。2の効果は別の用途でも使えそうだ。けど・・・やっぱり覇王烈竜を出さないとな!」
燃え上がるような朱色のマントが付いたヒーローっぽい恰好。案外メテオバーストとエクシーズ召喚するのもいいかもしれない。アブソリュートの効果でオッドアイズ蘇生できるし。
「っ!?」
突然頭にイメージが流れ込む。何だ?何だか燃え上がるような・・・だけど、それは盛り上げる為のものじゃない気がする。なんだかこのイメージは嫌な気分だ。頬を叩くとそのイメージは吹き飛んだ。
「何だったんだ・・・?」
翌日。今日は土曜日。学校やサーカスは休みだ。スマホを見ると、リンクルの通知が2件入っていた。
☆Tips
リンクルとは:いわゆるSNSである。チャットと通話ができる。グループを作成してグループでチャットもすることができる便利なアプリ。
片方は友人。いつものカードショップいるから来てねという内容。今日はどうやらティーチングサービスをやっているらしい。そしてもう片方は・・・
「ん?いつこの連絡先入れたっけ」
通知の名前には「ミミカ=カンナカラー」、冒頭の文字は「おはよ~」と書かれていた。サーカス団チアリーダーのミミカちゃんだ。よく見るとサーカス団連絡用のグループチャットもいつの間にか作られていた。どうやらこれでサーカスの連絡を回すということだな。だけど、ミミカちゃんだけ個別に入っていた。
「も、もしや・・・で、でーと・・・!?い、いや、まだそんな関係じゃ・・・も、もしかしたらデュエルのお誘いか?」
何故かすっごいドキドキする。これはヤバい。俺は恐る恐る開く。
「ミミカだよ☆いきなり連絡ごめんね、というより勝手に連絡先入れちゃってごめんね♪団長さんからの個別連絡について・・・」
「な、なーんだ・・・連絡か」
ドキドキが収まると同時に残念ってほんの少しだけ思う自分がいた。まぁ、まだ1回しかエンタメデュエルしていないし、そんなに話してもいないし、な、仲良くなった確証もないし・・・って俺は何を考えているんだ。連絡の内容を見ないと。
「デビュー戦が放送されてから虹くんがすっごい注目されているの。だから他エンタメ塾などからのお誘いなどいろいろ来ると思うけど、一つだけ注意してほしいのがあるんだって」
「注意・・・?」
「“帝王教”というエンタメ王国と謳っているデュエル教団だよ。気を付けてねっ☆」
帝王教・・・確か<帝王>デッキを使う人が教祖をしている教団。いい噂は聞かないけど、悪い噂も聞かない。というかあれエンタメ系だったのか。神聖な宗教みたいなエンタメデュエルをするのか?何だか変だな。イメージしたらなんだか謎な気持ちになった。
朝飯を済ませていつものカードショップへ行く。
「よう」
「来たか遊飛。店長にアドバイス貰ってデッキ改良したんだ。早速デュエルしようぜ」
「俺も調整したいところだしその後でいいか?」
「しゃーねえなー」
店長主催のティーチングに参加する。いつもの常連さんや見慣れない人など、様々なデュエリストがいた。ふと店の端にあるチラシ置き場に目が行く。
(エンタメ塾とかの宣伝チラシばっかりだなぁ)
その中にはもちろん“メルティオールサーカス団”のチラシもあった。そして、注意してほしいと言われた“帝王教”のチラシもあった。遠くから見る色合いからして確かに神聖な雰囲気っぽい気がしなくもない。
ティーチングを受け、俺は早速デッキを改良してみる。今日の俺の目標は「返し耐性」だ。俺のデッキは速攻故に相手の罠や手札誘発をされる前に決めることに特化した代わりにその対策がほとんどないに等しい。確かミミカちゃんも「詰めが甘かった」けどそれまでは俺のターンでの攻撃や行動を悉(ことごと)く封じていたけど、魔法・罠に対しては対策はしていなかった。つまりミミカちゃんも「返し耐性」は低い。
「遊飛くん。<魔術師>を増やしたらどうかな?」
「魔術師ですか?」
「<星刻の魔術師><ペンデュラムグラフ>をはじめとした<白翼の魔術師><刻剣の魔術師>など、返しに強くなる効果を持つカードが多い。欠点はレベル4主体になるから覇王烈竜は出しにくくなるかもね」
「あー、なるほどー」
レベル4魔術師シリーズを入れると<貴竜の魔術師><幽鬼うさぎ><灰流うらら>などのレベル3チューナーを数枚入れるとデッキを圧迫する。だけど効果や破壊を防いだり1:1~2交換できたり、サーチしたりと返しに強くなる。かといってそれ以外のチューナーやモンスターを採用するとレベルが合わなかったりする。
「ゴブリンドバーグが優秀だしなぁ」
俺のデッキの機動力は展開札となるゴブリンドバーグ。シンクロには貴竜とうさぎ、エクシーズには竜脈とトリオンと役割が決まっているが、サーチや返しに乏しい。それを超展開と速攻ビートダウンで補っているけどデビュー戦みたいにターンがかかることも少なくはなかったりする。
・・・
「よしっ、それなりに改良したぞ」
「おっ、済んだか遊飛。やろうぜ」
「おっしゃ」
友人とテストデュエルをする。一般的な大会と同じく3戦+候補カードを入れ替えながらもう3戦してみる。
「ぐわーっ、負けたぁ」
「でも半々かー」
結果は俺のデッキの回りが悪くなった・・・のかな。炎属性使いの友人の回りが以前より良くなっていたからかも。だけど、この構成では覇王烈竜をすぐには出せなくなっていたということが分かった。
「なぁ、俺のデッキの変わったところって何かある?」
「うーん、いつもの勢いがなかったな。展開が遅くなったんかなぁ」
なるほど確かに。悪い時は覇王烈竜どころかEXデッキからモンスターを出す前に終わった。以前は最低でも自分のターンで数えて2ターン目には1体か2体は出していた。
「中途半端に変えるよりも、軸を変えずにカテゴリすら変えてもいいかもしれないな」
「その方がうまくいくこともあるかもな。オレももうちょっと変えてみるぜ」
この際メインデッキをほぼ魔術師に染めてもいいかもしれないな。ゴブリンドバーグは・・・まぁ考えておこう。
気が付けばお昼。一人の常連さんが俺のエンタメデュエリストへのデビュー祝いとして昼飯をおごってくれることになった。その人も応募はしていたものの、俺が当選したという感じだ。ついでに友人も連れて行ってもらうことになった。
「ありがとうございます!」
「あはは、お礼なんていいよいいよ。僕の分までエンタメしてくれれば助かるからさ。虹くんとのデュエルも楽しいし、いつか僕もエンタメデュエリストになった時にはデュエルしてみたいし」
常連さんに車で連れてこられたのは一軒のラーメン屋。行列ができている。看板にある写真を見るとお腹が鳴る。これはおいしそうだ。いや、絶対おいしいやつだ。
並んでしばらく待つと、二人の少女が店から出てきた。その少女たちは見たことがあった。一人はあの目立つピンクの髪、そしてチアダンサーの衣装・・・というかプライベートでもチアの格好なのか。もう一人は紫のセミロングの髪で私服だけどブラック・マジシャンのイラストがうっすらと入った白衣。ミミカちゃんとローラさんだ。
・・・その二人の背後から迫る、一人の黒いフードの男。なんだ、いやな予感がする。さっきの黒フードはデュエルポリスに連行されたはず。だけど、感じる雰囲気が全く違った。
「先入ってて!後で入る!」
「えっ、遊飛、どこ行くんだ!?」
「虹くん?」
俺は二人と第2の黒フードの後を追いかける。路地裏に入った時、俺の足音に気づいたのか三人が同時にこっちを向いた。黒フードは俺を見て何かを思い出したかのような。そしてミミカちゃんとローラさんは黒フードを見てすぐに俺に向かって走ってくる。
「ん?貴様はもしや・・・」
「「虹くん!?」」
ミミカちゃんとローラさんがデュエルディスクを構えて俺の前に立つ。あれ、黒フードは二人を尾行していたよな、確か。立場逆じゃね?すると、ローラさんが鋭い目つきで黒フードを睨む。
「“帝王教”教祖・・・あんた、また何か企んでたでしょ?」
「虹くんは逃げてっ。ここはあたしたちに・・・」
その瞬間、黒フードは身に着けていたマントを思いっきり広げる。右手には杖型のデュエルディスク。教祖ということは注意すべき組織の人物。一体俺に、いや、ミミカちゃんたちに何をしようとしていたのか。その黒フードは不気味に笑う。
「くっ、はっはっはっは・・・我は何もするつもりはない。我もラーメンを食べて教会に帰ろうとしていただけだ。偶然だよ」
「確かにあんたの教会こっち方面だったわねー」
「気づかなかった・・・」
黒フード・・・教祖は杖をマントの中にしまうと歩き出す。しばらく歩いて目線だけをこちらに向けるように振り向いた。
「「虹 遊飛」だったかな。また会おう」
そう言い残して去っていった。なんだかすごい緊張した。殺伐とした雰囲気だったからか。緊張がほぐれたのか二人はデュエルディスクをしまう。ローラさんはやれやれとする。
「早速目を付けられちゃってるねー、虹くん」
「な、なんでだろ?」
「あたしがリンクル送ったと思うけど、虹くんの竜が大反響なの☆それだけならよかったんだけど・・・」
「あの教祖・・・帝王教だけは要注意!覚えておいてね。あの<覇王>を神として崇めているからもしかしたら虹くんの覇王烈竜を狙われているかも。あいつは過去にもいろいろやっているから」
「狙われている・・・!?」
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同シリーズ作品
イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
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163 | 第0話 プロローグ | 1022 | 4 | 2018-08-31 | - | |
67 | 第1話 第一歩 | 735 | 0 | 2018-09-02 | - | |
129 | 第2話 メルティオールサーカスへ | 821 | 2 | 2018-09-06 | - | |
77 | 第3話 EMS入門 前編 | 868 | 3 | 2018-09-08 | - | |
62 | 第4話 EMS入門 後編 | 796 | 3 | 2018-09-10 | - | |
82 | 第5話 俺の覇王烈竜 | 795 | 1 | 2018-09-13 | - | |
54 | EX-1 団長の決定 | 656 | 0 | 2018-09-17 | - | |
120 | 第6話 初陣の準備 | 719 | 2 | 2018-09-22 | - | |
77 | 第7話 初陣:入場 | 698 | 2 | 2018-09-26 | - | |
121 | 第8話 初陣:アイドル | 900 | 2 | 2018-09-29 | - | |
109 | 第9話 初陣:俺の竜たち | 785 | 0 | 2018-10-02 | - | |
100 | 第10話 初陣:全力のエンタメ | 794 | 0 | 2018-10-06 | - | |
81 | 第11話 黒フード | 703 | 0 | 2018-10-12 | - | |
103 | 第12話 続・黒フード | 802 | 4 | 2018-10-17 | - | |
59 | 第13話 事件!? | 640 | 0 | 2018-10-22 | - | |
87 | 第14話 教会 | 733 | 0 | 2018-10-25 | - | |
101 | EX-2 サーカス団員の休日 | 849 | 2 | 2018-10-27 | - | |
89 | 第15話 スピード勝負 | 672 | 0 | 2018-10-30 | - | |
94 | 第16話 覇王降臨 | 815 | 4 | 2018-11-03 | - | |
77 | 第17話 覇王とエンタメ | 699 | 4 | 2018-11-08 | - | |
105 | EX-3 メルとゼム | 740 | 0 | 2018-11-11 | - | |
83 | 第18話 転校生 | 686 | 0 | 2018-11-23 | - | |
67 | 第19話 学校のアイドル? | 773 | 0 | 2018-12-01 | - | |
56 | 第20話 鍛冶屋、推参! | 681 | 0 | 2018-12-11 | - | |
54 | 第21話 魔剣コレクション | 855 | 0 | 2018-12-15 | - | |
109 | 第22話 魔剣と竜 | 716 | 2 | 2018-12-22 | - | |
60 | EX-4 ??? Pt.1 | 605 | 0 | 2018-12-25 | - | |
72 | 第23話 「魔剣」 | 663 | 0 | 2018-12-30 | - | |
58 | 第24話 ”本物” | 620 | 0 | 2019-01-07 | - | |
53 | 第25話 解析結果 | 649 | 2 | 2019-01-20 | - | |
77 | 第26話 不思議なデュエリストたち | 715 | 2 | 2019-02-08 | - | |
105 | EX-5 サーカス七不思議 | 721 | 0 | 2019-02-11 | - | |
60 | EX-6 ??? Pt.2 | 636 | 0 | 2019-02-19 | - | |
79 | 第27話 PLACE TO PLACE | 780 | 0 | 2019-02-24 | - | |
94 | 第28話 あっちでこっちでこたつ | 753 | 4 | 2019-03-02 | - | |
66 | 第29話 新システムのうわさ | 684 | 2 | 2019-03-14 | - | |
74 | 第30話 新システムのお披露目 | 687 | 0 | 2019-03-27 | - | |
61 | 遊戯王EM更新についてのお知らせ | 682 | 0 | 2019-04-07 | - | |
89 | EX-7 サーカスの夏休み | 926 | 2 | 2019-04-14 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/04/27 新商品 INFINITE FORBIDDEN カードリスト追加。
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- 04/27 12:42 評価 7点 《トラップ・ギャザー》「《名推理》→《トラップトリック》や《ア…
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- 04/27 12:05 評価 8点 《天極輝士-熊斗竜巧α》「総合評価:特殊召喚しサーチを行えるカー…
- 04/27 12:00 評価 3点 《五月豹》「自己展開はあるがライフロスのデメリットが大きい。ノ…
- 04/27 11:47 評価 5点 《流星極輝巧群》「総合評価:回収にはリリースコストが必要だった…
- 04/27 10:35 評価 7点 《ブルーミー》「縛りが窮屈ですが少し便利そうなカード。 出すモ…
- 04/27 10:19 評価 8点 《ギミック・パペット-テラー・ベビー》「《ギミック・パペット》…
- 04/27 10:09 評価 8点 《ギミック・パペット-シザー・アーム》「《ギミック・パペット》…
- 04/27 10:03 評価 2点 《五月豹》「すっげー手間かけてライフ減らすと5000打点になる獣 …
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- 04/27 09:51 評価 4点 《千年の盾》「遊戯王はありとあらゆる除去が飛んでくるのが日常と…
- 04/27 09:47 評価 7点 《白き森のルシア》「「白き森」の《マジシャンズ・ソウルズ》的な…
- 04/27 09:31 評価 4点 《贖いのエンブレーマ》「メインとなる効果はフリチェ1枚除外。 …
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- 04/27 09:24 SS 第十話・3
- 04/27 09:16 評価 7点 《竜騎士アトリィ》「ずっと待ち望まれ、更に前弾の強化で《ウェイ…
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さてさて、ここから先はどうなるやら…。 (2018-10-17 07:48)
覇王…あいつが序盤のボスになるか? (2018-10-18 12:30)
ちなみに教祖が使うカテゴリはあくまでも「帝王」なのでどう覇王に繋げてくるか・・・知ってる人は知ってるかも?覇王が最初のボスとはなんとおおそれた・・・主人公も覇王烈竜使いの時点でモンスターの強さがぶっ飛んでいたりしなくもなかった。 (2018-10-18 18:48)