Ep10　守るための力　作：ター坊

この一撃で決まってしまう。
虹宮親子は絶望し、権蔵の息子と手下は勝利を確信してニヤリと笑みを浮かべる。しかし、遊路の目は絶望ではなく闘志に燃えていた。
「ダメージ計算時！手札から『クリボー』を捨てることで戦闘ダメージを０にする！」
「なにぃっ！」
「日向で育った甘ちゃん？…いいや、ここまでの道は楽じゃなかったさ。お前は何か大切な物はあるか？」
「なんだと？」
「命を賭けてでも守りたいと心に決めた存在(もの)がある限り、俺は負けない」
「ちっ！しゃらくせぇ！ワシはカードを１枚セットしてターンエンド！」
「俺のターン、ドロー。…お前は文字通り命を賭けたことがあるか？」
「命だと？ふんっ。そんなモン、ガキの言うことだ。賭ける物は金か女かで充分だ！」
「俺に言わせたら命を賭けたこともないお前の方が甘ちゃんだな！俺はまず速攻魔法『サイクロン』を発動！その１枚を破壊させてもらう！」
「くっ！」
遊路が撃ち抜いたものは『魔法の筒』だった。
「さらにチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚！これにより、墓地から『クリボー』を特殊召喚！そして俺の手札がコイツ１枚の場合、手札から特殊召喚できる！来い、『Ｅ・ＨＥＲＯバブルマン』！！」
「な、なんだと！なんだこの気迫は…」
「俺はレベル１の『クリボー』とレベル４のバブルマンにレベル３の『ジャンク・シンクロン』をチューニング。シンクロ召喚、レベル８『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』！！バトルフェイズ！『風帝ライザー』に攻撃！」
「しまった！『覚醒の魔導剣士』には！」

覚醒の魔導剣士 ATK 2500 VS 風帝ライザー ATK 2400

権蔵:LP 1001→901

「これでThe End だ。『覚醒の魔導剣士』がバトルで相手モンスターを破壊したことでその相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える！」
「…」

権蔵:LP 901→0

「…若いの」
「勝ったぞ」
「…おい。借用書出せや」
権蔵はチビに要求して虹宮家の1000万の借用書を出させた。
「これで良いだろ」

ビリッ、ビリッ、ビリッ…

権蔵はその借用書を２回３回と千切り破っていく。
「親父！何やってんだよ！」
「うるせぇ、アホンダラ！」
権蔵は反論するチビを渾身のビンタで張り倒す。
「…約束、守ってくれたのか」
「ふんっ。まぁ…テメェは生意気だが珍しい目をしてやがる。そこを買ってやったのよ」
「目？」
「甘ちゃんみたいにナヨナヨしたみっともねぇ目ではねぇ。かと言って全部滅ぼすような残忍な目でもねぇ。こう褒めるのは柄じゃねぇが、久々に良い目を持った奴に会ったぞ」
「そりゃあどうも」
「ふっ。おう。帰るぞ。あと、この家にまた手ぇ出した奴は組の看板汚しとして指全部詰めてやっからな！」
「へっ、へい！」
権蔵を先頭にぞろぞろと手下達とチビが退出する。
「やっと終わったか。…それにしても」
遊路はさっきの最後の局面を振り返る。そう、出したモンスターは全てかつて共に戦った…
「いや、まさかな。ただの偶然だな。…あっ、そうだ。美奈子さん、詩音。大丈夫？」
「はぁ！？何でアタシの名前を知って…」
「えっと…パスケース俺が持って来たって美奈子さんから聞いてない？」
「ぐぅっ…」
「詩音…。遊路さん。なんとお礼を言ったらいいか…」
美奈子は遊路に深々と頭を下げるが、詩音はむすっとしたままだった。
「詩音…。その…ちゃんとね」
「いえ、いいんですよ。それに…たぶん詩音は俺のことが気に入らなくて不機嫌というわけではないと思います」
「はぁ！？お前みたいな奴、気に入る訳ねぇだろ！」
「…ホントは守れない自分が嫌なんじゃないか？」
遊路の一言で突っ掛かってきた詩音は勢いを失う。
「何…言ってんのよ…」
「ホントは自分自身の手で美奈子さん…お母さんを守りたかったんじゃないか？」
「あの…遊路さん。それってどういう意味です？」
「俺が初めて詩音に会った夜、ホテルに連れ込まれました」
「えっ！？何の為に…」
「きっと詩音は睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて俺を昏睡させ、キズモノにされたとかのでっち上げの写真を撮って俺から口止め料を巻き上げるつもりだったと思います」
「そんな…！」
「けど、あんまり怒らないであげてください。確かにやり方は褒められたものではありませんが、詩音なりに考えた借金を無くす方法―美奈子さんを救う方法だったんだと信じてたんでしょう」
「…詩音。本当なの？」
「…」
詩音は俯いて黙ったままでいる。
「最終的に俺が権蔵に勝ったから良かったものの、結局、自分は何も守れずじまい。そんな無力な自分が一番嫌いで苛立っている…。そんな感じじゃないか？」
「…るせぇんだよ」
「…」
「うるせぇ！うるせぇ！！うるせぇ！！！」
詩音はうるさいと連呼するがその声は震え、ツリ目からは大粒の涙が溢れる。それを見た遊路は懐から何か取り出し、テーブルの上に置いた。
「何だよ、それ…」
「俺の名刺だ。裏には今働いてる事務所の場所が書いてある。…実は今週の日曜日にイベントがあってな。そのイベントの手伝いに来ないか？」
「はぁ？いきなり何言って…」
「もしかしたら、何かを守るための力のヒント、掴めるかもしれないぞ？」
「守るための力…？」
「まぁ手伝いは強制じゃないからな。来る来ないはお前の勝手だ。…じゃあな」
遊路は言うだけ言って虹宮家を出た。









おまけの質問解答

遊路「という訳で早速２通来たみたいだ」
（質問は要約しており、原文とは異なります）

Q1　遊路の家族ってどんなんだっけ？byギガプラント
遊路「遊月･美羽を除いたらやっぱり大和かな」
遊月「遊路様との愛の証です」
美羽「生まれて２ヶ月になるもんね」
大和「う~」
遊路「はぁ…可愛いなぁ。大きくなったら遊月みたいな美人確定だな」
遊月「まぁ… / / / 」
遊路「あと直接血の繋がった親族はいないな。みんなカオジェネ始まる前に死んでるし」
美羽「私のお母さんもカオスジェネレーションの影響で消えちゃったし…」
遊月「遊路様。橘様達を忘れてはいけませんよ」
遊路「ああ、そうだな。俺が働いているサニーアップ事務所の会長とその奥さんは俺を採用してくれた後、仕事以外にも色々助けてくれたもんな。今では心の親父、おふくろって感じの存在だ」
未来（私はスキュルートとして存在してるから家族って言うより守護霊みたいな感じだね♪）

Q2　風峰Daysってカオジェネのストーリーやオリキャラの未来の話なの？by tresさん
遊路「未来といえば未来だけど、そこまで遠い話じゃないな。年表風にするとこんな感じか？」

20XX年4月　カオスジェネレーション事件発生(カオジェネ第１話スタート)
↓５日後(詳細は後述)
カオスジェネレーション事件決着。元の世界に帰ってくる(同ＳＳ第186話辺り)
↓４ヶ月後
同年８月　墓参り･プロポーズ(同ＳＳ最終話前半)
↓１ヶ月後
９月　遊路、サニーアップ事務所所属のプロになる
↓４ヶ月後
翌年１月　デュエリンピック個人トーナメント決勝(同ＳＳ最終話後半)
↓数週間後
２月上旬　大和誕生
↓２ヶ月後
○月△日　風峰Daysのような日々

美羽「カオジェネって、たった５日の出来事だったけ！？」
遊月「そんな筈は！」
遊路「メアリー(←知らない人は前作見てね！)の話だと時間の進み方が世界によって違うみたいで、カオスジェネレーションの世界に閉じ込められて過ごした時間は１ヶ月半くらいだったけどこの世界の時間軸では５日分にしか相当しないらしいからな。まぁ深く考えるな」
美羽「時差って面倒だね」


遊路「まっ、ざっとこんな感じだな。果たして納得できる解答はできただろうか？質問ある人はまだまだ訊いても良いからな。じゃあ、今回はここまで！」