Ep9　裏デュエル　作：ター坊

翌日。遊路はサニーアップ事務所にてジョセフィーヌとデュエルのスパーリングをしていた。
「トドメだ！スキュルートでダイレクトアタック！！」
「いやぁん！」

ジョセフィーヌ龍美:LP 1800→0

「ふぅ…。また負けちゃったわぁ…」
「いえいえ。先攻V.F.Dはビビりましたよ」
デュエルの反省をしているとそこに勝彦会長が現れた。
「遊路くん。君に電話だ」
「電話？誰ですか？」
「さぁ？男の声で遊路って奴を出せってな。…虹宮と言えば分かる筈だと」
「なんですって？…分かりました、出ます」
遊路は駆け足で事務室の電話に向かう。
遊路が電話に出る。
「もしもし」
「出よったか」
「昨日の連中の仲間か？虹宮で分かるってどういうことだ？」
「ま、それはこっちに来てから話そうか。虹宮の部屋に一人で来い。来んかったら…まぁ親子丼でお楽しみやろうなぁ。ハッハッハッ」
ここで電話が切れた。遊路は受話器を戻し、デュエルフィールドにいる勝彦会長の元に行く。
「会長。申し訳ありませんが、今日は早退させていただきます」
「ん？どうしたんだ？」
「緊急な用件ができたので。それでは失礼します」
遊路はそう言って事務所をあとにした。





電車を乗り、虹宮家が住むマンションに辿り着くと入り口に黒スーツの男が立っていた。
「おう来たか。ついてきな」
「虹宮家の…美奈子さんと詩音は無事なのか？」
「ああ。今んところはな。おら、行くぞ」







虹宮家の部屋に入るとそこは異様な光景だった。黒スーツの男が３人程並び、部屋の奥に正座させられている美奈子と詩音がいた。そして昨日美奈子と話し合ったテーブルには袴姿の男が鎮座し、その横にあのチビもいた。
「誰だ？」
「テメェ知らねぇのか？俺の親父はな」
「喧しいぞ」
チビが捲し立てようとすると、一喝して黙らせた。
「まぁ座れ、若いの」
「…」
遊路は黙って向かい合うように座る。
「ワシは鬼平権蔵(おにだいら ごんぞう)。もう引退しちまったが裏デュエルではちったぁ名の知れたモンよ」
「裏デュエル…」
遊路は裏デュエルについて噂程度に聞いたことはある。地下や雑居ビル等の人目のつかないところで不定期でデュエル大会が行われるもので、そこでは法外な額の賭け金が飛び交うと言われている。
「勝てば天国、負ければ地獄、そんな世界だ」
「で、何をやろうって言うんだ？」
「ワシの言いたいことが分かるか？」
「脅しまがいに呼び出されて、裏デュエルの事まで話されたんじゃ、仲良く遊ぼうってお誘いじゃないだろ？」
「勘の良い小僧は嫌いじゃない。話が早くて助かるな」
「で、何をやるんだ？」
「まぁ慌てるな。おい」
「へい」
権蔵が黒スーツの男を一人呼びつけると、その男はポケットからカードの束を取り出す。
テーブルに置かれたのはデッキと思わしき４０枚くらいのカードの束とそれの倍の厚さがありそうなカードの束だ。
「デッキか？」
「ああ。二人で使うな」
「二人で？」
「これはワシが使えそうと選んだカード４０枚のデッキだ。全部１枚ずつしか入っていねぇ。このデッキをランダムで半分に分け、それでワシ達がデュエルする。基本的なルールはほぼ同じだが初期手札は４枚、ＬＰは1、エクストラデッキは共通で使う」
「なるほど。運任せな限られた戦力でデュエルして一撃でもかすれば即敗北…スリリングなデュエルって訳か…」
「もの分かりが良いな。さて、賭けるものだが…ワシに勝てたらそこの家族の借金全部チャラにしてやろう。ただ負けたら…」
「ああ。何でも言うこと聞いてやる」
「ふっ。まだ言ってねぇのにそんな安請け合いして良いのか、若いの」
「どうせ勝つのは俺だからな。勝ちしか考えてない」
「大した度胸だが、後で泣くなよ？おい、配れ」
「へい」
黒スーツの男がカードをシャッフルし、カードを交互に配っていく。



「さて。じゃあ勝負といこうか」
「ああ」
「「デュエル！」」
こうして危険な裏デュエルが始まった。コイントスの結果、遊路が先攻となる。
「俺のターン、モンスターを裏守備でセット！カードを１枚セットしてターンエンド」
「ワシのターン、ドロー。…若いの。何故ワシがこんな勝負を吹っ掛けたと思う？」
「さぁ？」
「昔は金目当てで裏デュエルに参加する阿呆な若者が多くてな。賭けとして全財産や自分の女、親の店の権利書なんてものもあった。それを奪い取った時の絶望する様は滑稽だった。―だから今輝く若きチャンピオンを負かしたら、どんな顔になるか興味があるってわけだ」
「悪趣味だな」
「若者に現実を教えてやってる慈善事業と言ってもらおうか。…そしてそれを早くも拝めそうだ。ワシはまず魔法カード『治療の神-ディアン・ケト』でＬＰを１０００回復」

権蔵:LP 1→1001

「さらに『フォトン・スラッシャー』を特殊召喚。そしてすぐリリースして『風帝ライザー』をアドバンス召喚！モンスターをデッキの一番上に戻してもらおうか」
「それにチェーンして『強欲な瓶』を発動。１枚ドロー」
「苦し紛れだな。…所詮世界を獲ったとはいえ、小僧は小僧。日向(ひなた)で育った甘ちゃんって事だ。『風帝ライザー』でダイレクトアタック！」



おまけの次回予告

遊路「うーん。飽きたな。このおまけの次回予告」
美羽「うわっ、ぶっちゃけた」
遊月「元々は思い付きで始めたものですからね…」
遊路「そうだ！質問コーナーってどうだろ？結構早足で進んでるから細かい設定とか気になる人がいるんじゃないか？」
遊月「そうですよね。異世界から来た私の戸籍どうしてるの？とか」
美羽「読者さんはそこまで意地悪じゃないと思うけど…」
遊路「というわけでコメントに頼むぞ！次回、俺の逆転劇にご期待！！」