第４３話　二日目　『相棒』ＶＳ『色物』①　作：白金　将

～昼　死闘場の控室～
女戦士「なんか緊張してきた……」
射手「大丈夫だし？」
女戦士「人前でこういうことするの初めてだから……」
射手「すぐに慣れるから大丈夫なんだし」
射手（本当は私も緊張しているんだし……）

女戦士「自分の力出し切れるか不安だよぉ」
射手「うーん」
射手（今の女戦士さんじゃ無理なんだし……どうにかして覚醒させるんだし……）

射手「……おねえちゃん」
女戦士「！？」
女戦士「ど、どうしたの、射手ちゃん？」
射手「試合で勝ったら、おねえちゃんに甘えてもいいんだし？」
女戦士「……」

女戦士「勝つよ！　絶対に勝つよ！　行くよ我が愛しき妹よぉぉぉぉ！」ﾀﾞｯ
射手「わああああ」ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞ
射手（恥ずかしかったんだし……でもこれで良かったんだし）ｶｧ///

吹き矢兵「出番だ……あれ、もう行っちまったよ」



～昼　死闘場～
弩級隊隊長「私たちの番か……組むのは初めてだな」
調教師「ま、私は出ないけどな。問題はお前だ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
ペット虎「」ｸｰﾝ
弩級隊隊長「毎回驚かされるが、獰猛な虎も人になつくんだな……」
調教師「この子の場合は問題あり、だけどね……」
調教師「来たみたいね。始まるわよ」

女戦士「あ、やっぱり自信無くなって来た」
射手「終わったらいっぱい甘えたいんだし」
女戦士「う、うん！　お姉ちゃんとして頑張らなきゃ！」
射手（正直恥ずかしいんだし……早く終わらせるんだし）

弩級隊隊長「来たか射手！　ここで会ったが百年目、今日こそお前と決着をつける！」
調教師「となるとウチの虎の相手は女戦士か……ちと不安だな」
ペット虎「」ｸﾞﾙﾙﾙ
女戦士（ひゃあ……トラウマだよぉ）
射手（隊長もしぶといんだし……）

吹き矢兵「そろそろ始めるぞ」
格闘戦士「準備は出来たな……それでは、始め！」



～昼　医療テント～
訓練生（女戦士さんの試合、もう始まっちゃてるかな……）
訓練生（私も見たかったな……）ｺﾛﾝ
？？？「」ｽﾀｽﾀ
訓練生「？」

剣士「よう。足は良くなったか」
訓練生「は、はい。ただ、念のためまだ動かないことにしてて……」
訓練生「本当は今日の試合も見たかったんですけど、二回戦に影響が出るのは……」
剣士「ふぅむ」

エアトス「あ、剣士さん」
剣士「エアトス。訓練生の足はどうだ？」
エアトス「片方の関節が少しおかしい位ですね」
剣士「そうか……訓練生、さっき、試合を見たいと言ったな」
訓練生「は、はい」

剣士「行くぞ」ｸﾞｲｯ
訓練生「ひゃっ！？」
剣士「お前が歩かなきゃいいんだろ。私が背負って会場まで連れてってやる」
訓練生「す、すいません、こんな私に……！」

エアトス（まったく、アマゾネスって本当に元気がいいのね……）
エアトス（そこが良い所なんだけど）



～昼　死闘場～
射手「女戦士さんは頑張って虎さんの相手をするんだし。剣は弓に不利なんだし」
女戦士「が、頑張る！　そっちはよろしく！」
射手「わかったんだし」

射手「さあ、勝負なんだし」
弩級隊隊長「去年よりだいぶ変わったな……おっと、感傷に浸ってる場合じゃないか」
弩級隊隊長「私が勝ったら是非とも弩級隊に入ってもらおう」
射手「まだその約束覚えてるんだし……？　本当にしつこいんだし」
弩級隊隊長「何だとぉ？」
射手「そういうことは終わってから言うもんだし。じゃ、私から動くんだし」ｻﾞｻﾞｯ
弩級隊隊長「おっと、私も動かせてもらう！」ｻﾞｻﾞｯ

射手（流石に訓練してるせいか位置の補足は難しくなってるんだし）
射手（とりあえずは草むらに隠れながら相手の居場所を探すんだし）

ｽﾊﾟｯ

射手（……空撃ち？　でも、どうして……？）

ｽﾊﾟｯ

射手（……！）
射手（全方向に打ち続けていればいつか絶対にこっちに当たるんだし……！）
射手（向こうとこちらの間には草しか障害物がない……まずいことになったんだし）

ｽﾊﾟｯ

射手（方向からして左奥の方にいるっぽいんだし）
射手（こっちが動くと悟られる可能性が……どうにかしないと）



女戦士「と、虎さんは克服したから大丈夫！」
調教師「ほーう？　それなら……」
調教師「好きにやれ」ﾎﾞｿｯ
ペット虎「！」
ペット虎「ガウガウガウ！」
女戦士「ええっ……」

調教師「言っておくが私に当ててもノーカンだからな？　ちゃんと虎の的に当てろよ？」
女戦士「うるさーい！　私だってやるときはやるんだから！」
女戦士「か、かかってきなさい！　虎さん！」
ペット虎「ガウッ！」ﾋﾟｮﾝ
女戦士「ていやぁっ！」ﾌﾞﾝｯ

ｽｶｯ

女戦士（あれっ……？）
ペット虎「ガウー！」ｶﾞｼｯ
女戦士「ひいいいああああ！」ﾊﾞﾀｯ

ペット虎「ガウー」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ
女戦士「あ、また、なめられて……んあぁっ、そこ、みんなが見てるからやめて！」ﾋﾞｸﾝ
調教師（やっぱりやりやがった……）ｶﾞｯｸﾘ

ｻﾞﾜｻﾞﾜ　ｶﾞﾔｶﾞﾔ　ﾌﾞｺﾞｫ



剣士「女戦士はやっぱりケモナーの気があったんだな」
訓練生「だとしても変ですね……ああいうのはジャッジの判断で中断しないんですか？」
剣士「ま、勝負だからね。虎の方からしたらあれも立派な戦略の一つだ」
賢者「大変ね……彼女からしたら衆人環視ケモナープレイになっちゃうから」

賢者（彼女がケモナーだったなんて……今度図書館に取り寄せておかないと！）ﾜｸﾜｸ