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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第27話 PLACE TO PLACE

第27話 PLACE TO PLACE 作:にしん

【エンタメデュエル】

「フィールド魔法、エンタメスクール!」

アクションマジックのためのフィールド魔法によって、この舞台と周辺が学校みたいになる。見慣れた机や椅子、黒板、掃除道具、サッカーボール・・・まるで学校で遊べるみたいな感じ。これには現役中学生の俺もわくわくする。


虹 遊飛  VS  音無 伊御


【ターン1:音無のターン】

「伊御さん先攻じゃね!」

「先攻だといいことあるのですか?」

「先攻だと先に盤面固められるから有利だぜ」

「む、先攻か」


音無さんは5枚の手札をじっくり見る。それよりもアホ毛がひらひらと動いている。効果を読み終わったのか、試すかのようにカードをデュエルディスクに置いた。


「まずはこれだな」
音無:手札5枚→4枚

音無さんが発動した魔法カードで何故か舞台の中央に驚くべきものが生成された。


「こ、こたつ?」

「みかんとお茶もあるよ」


今は秋だがこたつを出す寒さではない。いやそれよりもこの学校っぽい舞台でこたつ、いや、エンタメデュエルだからといっていきなりこたつは予想外すぎる。

その時、音無さんの頭から何故か黒い子猫がこたつにまっしぐらに走っていった。


「ねこもまっしぐらかー」
音無:手札4枚→3枚

「ね、猫・・・かわいい・・・いや、それ全部カードなのか!?」

「・・・らしい。盛り上げていきたいところだが、まずはこの謎の状況下でも落ち着かないとね」
伊御:手札3枚→2枚

音無さんがモンスターゾーンにカードを置くと、音無さんもこたつに入った。・・・ん?音無さんが出たということはまさか・・・!


「そう!EMSカードを超応用しちゃいました!!ついでにお友達の分も出せるよ」

「マジか!」


やっぱり入場口から自慢するように飛び出たローラさんの技術の結晶だった。


「ふむ。じゃあ・・・つみき」


音無さんはフィールドに召喚された音無さんの効果と思われるものでもう1人、ちっこくて青く長い髪、そして主張が激しいアホ毛の女の子がこたつに召喚された。


「にゃっ!?」

「ふぅ・・・落ち着く。つみき、みかん食べる?」
伊御:手札2枚→1枚

「た、食べゆ」

こたつで落ち着くその姿とは裏腹に、その手はデュエルディスク上でカードをどんどん回していた。それを見た観客席にいる黄色のおかっぱで団子で白衣の少女が気づいた。


「こ、これはあの時の!!」

「あの時?」

「マイナス伊御ンじゃよ!!」

「お、デッキからカードを選べるのか。なら・・・これかな」
音無:手札1枚→2枚

そして音無さんの頭にさっきの小さい黒猫が乗り、へにゃりとぐだって落ち着いた。

<マイナス伊御ン>(オリカ):永続魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「伊御」と名の付く「PP」モンスターが存在する場合に発動できる。以下の効果のうち、いずれかを適用できる。
●「伊御さんの頭上ってよく動物達が乗るよねん」:デッキから「PP」モンスター1体を手札に加える。
●「こ、これがー・・・マイナス伊御ンの完成形!」「なにがどうなった」:手札から「PP」モンスター1体を特殊召喚する。

「1枚セットして、ターンエンドかな」
音無:手札2枚→1枚
伏せカード:1枚

「な、なんだこのエンタメデュエルは・・・すごく、落ち着くな。って、なんでバーンダメージ?」
遊飛:LP8000→6300


虹 遊飛

LP:6300
手札:5枚
モンスター:
魔法・罠:
Pスケール:

VS
音無 伊御

LP:8000
手札:1(サーチしたPPモンスター)
モンスター:PP まったり伊御、PP 御庭つみき
魔法・罠:コタツ(永続)、マイナス伊御ン(永続)、伏せカード1枚
Pスケール:なし
備考:にゃ~んの効果適用中


【ターン2:遊飛のターン】

いきなりこたつからのまったり雰囲気で謎のバーンダメージを受けた俺。だけどこののんびりゆったりまったりした演出に観客もほわほわしていた。まるでこのサーカスがこたつになったみたいだ。

相手のモンスター・・・もとい、2人も女の子の方は何故か攻撃力2800とやたら高い。ここはダークリベリオンあたりでまずは攻めるべきか、展開重視すべきか・・・いや、この手札ならこれしかない。

「お、俺のターン、ドロー」
遊飛:手札5枚→6枚

なんだかいつも通りどーん!とやりにくい。だけど俺は俺のエンタメで勝って見せる。音無さんがみかんの皮をむきながら、残った手札1枚をくるくると高速で回していた。
>まったり伊御:裏側守備表示


「こたつから思わず出るレベルの俺の超展開を見せてやるぜ!俺は両方のペンデュラムゾーンに<黒牙の魔術師><慧眼の魔術師>をセッティング!!」
遊飛:手札6枚→4枚
Pスケール:<黒牙の魔術師> 8 × 5 <慧眼の魔術師>


こたつと舞台となっている学校風からは全く似合っていない、魔法による2本の光の柱と共に2体の魔術師が舞い降りた。そして天井付近には虹彩の魔法陣が展開される。


「星空みたいで綺麗だな」

「そうね」

「にゃ~ん」


こたつでまったりしている2人と1匹もこの魔法をじっくりと、みかんを食べながら見ていた。そして団長含む、審査員席にも何故かこたつが用意されていて、団長たちがはいってまったりしていた。


「慧眼の効果で自身を破壊し、デッキから<紫毒の魔術師>をペンデュラムゾーンにセット!」
遊飛:Pスケール 黒牙 8 × 1 <紫毒の魔術師>

「ここからが超展開だぜ!まずはペンデュラム召喚!エクストラデッキからさっきの慧眼、手札から<調弦の魔術師><幽鬼うさぎ>!」
遊飛:手札4枚→1枚

>慧眼の魔術師:星4:攻1500(守1000)
>調弦の魔術師:星4:守0(攻0)
>幽鬼うさぎ:星3:チューナー:守1800(攻0)

「調弦の効果でデッキから<相克の魔術師>を・・・って、俺のところにもこたつが!」

>相克の魔術師:星7:守500(攻2500):効果無効


いつの間にかそばにこたつがあり、そこにさっきペンデュラム召喚をした魔術師たちと幽鬼うさぎがまったりしていた。調弦の効果で特殊召喚された相克もこたつに入ろうとしていた。


「うーん、展開は調子いいのにこたつで乱されるなぁ・・・なら、もっと熱い展開を見せてやるぜ!」


ついでに観客席も一部こたつ布団のようなひざ掛けが用意されていた。


「レベル4の調弦の魔術師をレベル3の幽鬼うさぎでチューニング!シンクロ召喚!!」


俺はこたつの魔力に負けないシンクロ召喚の演出を念じる。するとこたつから2体のモンスターが光となって黒板にぶつかり、チョークでその絵が書かれた。そしてたくさんのチョークが黒板を走り、それがいつしか光となり、炎となって1体のモンスターがたくさんのチョークと赤いチョーク粉と黒板消しと共に飛び出した。

>オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン:星7:攻2500(守2000)

そしてメテオバーストもこたつに・・・入れない!!それを知ったメテオバーストはわざとらしく落ち込んだ。これには流石のまったりも吹き飛ぶ全員大笑い。


「メテオバーストの召喚時効果は使わず、レベル7のメテオバーストと相克でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!<オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン>!」


相克の闇の魔力とメテオバーストの炎が重なり合う。だけどこたつで学校だ。俺はその2つの力をぶつかり合わせ、椅子と机をその力で重ねて校門みたいに組み立てる。その横にそのドラゴンを降臨させた。


「絶対、遅刻厳禁!アブソリュートだけにな、だぜ!」

>オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン:ランク7:攻2800(守2500):ユニット×2

これであの女の子に同士討ちどころか効果で攻撃を防げる。

・・・やはりアブソリュートもこたつに入ろうとして大きすぎて入れなくて露骨に落ち込んでいた。というよりその属性、甲殻でこたつに入ったら溶けるか逆にこたつが冷えるんじゃないのか。


俺の十八番の超展開、3種の特殊召喚による怒涛の展開にもやっぱり音無さんたちはこたつでまったりしていた。それどころか音無さんは寝落ちしそうになっていた。


「遅刻厳禁だし、たたき起こすしかないか。バトル!アブソリュートで何故か裏側守備表示になっている音無さんに攻撃!」



・・・しーん



「・・・あれ?」


反応がない。それどころか、アブソリュートはこたつに何とかして入れないかと考えているようだ。

それを見た音無さんはむくりと起き上がる。

「ああ、これか。<コタツ>の効果でそもそも攻撃できないし、ねこ・・・<にゃ~ん>の効果で今回のバトルフェイズがスキップされているんだ。あ、俺が裏側守備表示になって眠くなったのもこたつの魔力」


その時、観客席の方から「コタツには魔物が潜んでいる」「えぇえ!?」の掛け合いが聞こえた。


「な、なんだってー!?」

<コタツ>(オリカ):永続魔法
①「コタツの魔力で皆ぽわってるなぁ」:このカードがフィールドに存在する限り、お互いのモンスターは攻撃宣言できない。
②「コタツを発明した人は偉大だよなー」「だな」:お互いのメインフェイズ開始時にフィールドの表側表示のモンスター1体を選択して発動する。そのモンスターを裏側守備表示にする。この効果で裏側守備表示になったモンスターは表示形式を変更する時、守備表示になる。
③「ちょ!?コタツに飲み込まれー!?」「コタツには魔物が住んでいる」「えぇえ!?」:自分エンドフェイズに1ターンに1度、裏側守備表示のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。この効果で除外されたモンスターの元々の持ち主はデッキから1枚ドローする。この効果で除外したモンスターが「PP」モンスターなら、代わりにデッキから「コタツハリケーン」1枚を手札に加えることができる。

<にゃ~ん>(オリカ):通常魔法
このカードは自分フィールドに「伊御」と名の付く「PP」モンスターが存在する場合に発動ができる。
①:次の相手のバトルフェイズをスキップする。この効果を発動した次の相手のターン終了時まで、お互いのプレイヤーは自身から見て相手のカードを効果の対象にできない。


「じゃ、じゃあ謎のバーンダメージは・・・はっ、もしや俺がこの雰囲気にのまれ・・・!」


<PP まったり伊御>(オリカ):星3:攻1000守1600
①:このカードは攻撃できない。この効果は無効化されない。
②:自分エンドフェイズに発動する。相手に100ダメージを与える。
③:このカードが召喚に成功した場合に発動できる。以下の効果のうち、いずれかを適用する。
●「無意識ぽむりん」:自分のデッキ、手札から「つみき」と名の付く「PP」モンスター1体を特殊召喚する。
●「動物わらわら」:次の相手のバトルフェイズをスキップする。

<PP 御庭つみき>(オリカ):星7:攻2800守1000
①:このカードは攻撃できない。この効果は無効化されない。
②:自分エンドフェイズに発動する。相手に800ダメージを与える。自分フィールドに「伊御」と名の付く「PP」モンスターが存在する場合、相手に与えるダメージは1600になる。
③:このカードが召喚に成功した場合に発動できる。以下の効果のうち、どちらかを適用できる。
●「ふかーっ!!」:相手フィールドのカード1枚を選択し、デッキに戻す。自分フィールドに「つみき」以外の「PP」モンスターが存在する場合、その数+1枚まで選択できる。
●「あによぅ」:次の相手のバトルフェイズをスキップする。この効果を発動した次の相手のターン中、自分が受ける効果ダメージは500減る。

「な、なんという家具と人間からは想像もできない実用性の高い効果・・・しかもちゃんとエンタメしてる・・・ターンエンドだぜ」


音無さんが御庭さんの頭をぽむりんしていた。それに対して「ふかーっ!」としていた。このままではこの流れに飲み込まれる。次のターンは何とかして耐えなければ。・・・俺もこたつに入ってしまわないように。

・・・とりあえず黒猫がこたつの中にもぐりこんだ。効果を見る限り多分<にゃ~ん>の効果が切れたのだろう。


虹 遊飛

LP:6300
手札:1枚
モンスター:慧眼の魔術師、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(ユニット×2)
魔法・罠:なし
Pスケール:黒牙の魔術師 8 × 1 紫毒の魔術師

VS

音無 伊御

LP:8000
手札:1枚
モンスター:PP まったり伊御(裏側守備)、PP 御庭つみき
魔法・罠:コタツ(永続)、マイナス伊御ン(永続)、伏せカード1枚
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